入浴文化を世界に! ~日本を代表するバスタブブランド’JAXSON’ショールーム~
fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人
豪華なジェットバスといえばJAXSON(ジャクソン)…多くの人は真っ先にそれをイメージするかもしれない。しかしJAXSONのありようが、日本古来の「皆で入浴する」ことのイミを探りながら40年以上時代とともに歩み続けてきた足跡そのものだということはあまり知られていない。本稿ではそんな観点から改めて紹介してみたい。
JAXSONは“ジェットバスで有名なラグジュアリーブランド”なのか
JAXSONのアイコンともいえる、欧州車を思わせる流麗なデザインと巨大なジェットバスという印象は、確かにその通りだ。

しかし、より重要なのは、創業者でありデザイナーの清水秀男さん自身が43年の活動を通じて、日本のバスルームの在り方そのものを変えてきたという文化の歴史だ。
一般的な家庭においてバスルームは、一日の体の汚れを落とす場所であり、間取りとしても住宅の隅に追いやられていた。
しかしいまやお風呂は、単に汚れを落とすための場ではなく、日本人が古来より持つ入浴習慣……親と子あるいはパートナーとのコミュニケーション、あるいはひとり静かに一日を振り返りつつゆったりと疲れを癒やす……といった、精神の安定に及ぼす作用が重要視されている。
そうした文化的側面を踏まえたうえで、入り心地や安全性といった機能性にデザインを持たせて完成したのがJAXSONのバスタブなのである。
JAXSONからHIDEOへ。根本理念は同じ
それは、2022年に立ち上げたHIDEO(ハイデオ)でも基本的に同じである。
むしろデザイナーの清水さんは、新たな素材を得たことで、それまでのジャクソンのコンセプトをより先鋭化させ、世界に打って出た。薄い白磁のように端正なバスタブを次々と発表するや、瞬く間にドイツ、イタリア、スロベニアでアワードを受賞。「これがあることで家全体が豊かになる」といってもいいほど、住空間の中心に位置づけるべき存在となったのだ。
サスティナブルな最先端の素材で次世代へ~バスタブブランド HIDEOショールーム~

お風呂を文化に
一見正反対のようにみえるJAXSONとHIDEOは、清水さんがこれまでJAXSONのデザインを通じて育んできた経験が同じく反映されている。受賞したHIDEOの製品群は、すべてJAXSONの40余年の歴史そのものなのだ。ここではその足跡をざっと振り返ってみよう。
JAXSONの創業は、いまから43年前。イタリアの高級家具ブランドが次々と日本に展開を始めた当時、一世を風靡したarflex(アルフレックス)の日本での製造会社を経営していた親戚の仕事を体験してきた清水さんは、ソファと肩を並べるようなこれからの日本の居住文化を築く存在として、“お風呂”に目を付けた。
そもそも、長く愛されるメーカーに共通するのは、確固たる技術に基づいていること、背景に理念があること。清水さんには、日本ならではのお風呂文化を発信するためにブランドを立ち上げようという、確固たる理念があったのだ。
海外ブランドかと見紛うその名の由来も、実は、ジャパン(Japan)とお釈迦様(Jaxon=釈尊)の掛け合わせ。

1982年当初は、清水さんご夫妻と従業員数名の小さな会社で、ポリエステル樹脂ベースのFRP素材でバスタブを製造していたが、1990年代に入り転機が訪れる。6メートル×4メートルの世界最大のバスタブなどの「スパグランデ」シリーズが続々と入っていったのだ。




大型の一体型バスタブが大ヒット。名だたる高層ビルや高級ホテルのプールサイドに。
工期も限られるなかこのような一体型のデザインバスタブは非常に重宝され、市区町村のプールサイドに採用されるまでに普及。一般の人が多く利用する公共施設に入ったことで、JAXSONの知名度は一気に上がった。
1994年には「半身浴」という概念を、他に先駆けて取り入れるようになる。「Venti(ベンティ)」が、 グッドデザイン賞の中小企業庁長官賞をはじめ、世界的な最高峰のデザインアワードにノミネートされるなど大ヒットを記録した。

この頃清水さんは、バスタブの素材をそれまでのFRPから、海外で目にしたアクリルへと切り替えを図る。それを最初に導入したプロジェクトが、船の形をしたヒルトンホテルだった。
こうしたプロジェクトを通じて培った経験を生かし、ホテルのスイートルーム向け大型モデルを次々と開発。それをカタログモデルに落とし込むことで、いまある豊富なJAXSONバリエーションの大半を形成した。




ミラノデザインウィークなど世界へ
2000年代に入ると、現在の巨大な千葉工場を建設。ミラノデザインウィークに招聘されるなど、海外からも注目を浴びるようになる。それに伴い、従来の埋め込みタイプに加え、置き型のバスタブを開発するようになっていく。




このようなアジアンテイストの編み込み素材で覆うラタン調のアウトドア家具的意匠は、海外も含め別荘やホテルのプロジェクトに現在も多く採用されている。

その後、縁あって2009年にLIXIL(当時のINAX)に会社を譲渡。それでも清水さんの情熱は衰えることなく次の時代を見据え、2018年に新たに自身の名を冠したHIDEOを立ち上げることになるのである。
そして2021年、ふたたびJAXSONは清水さんの元へと戻ってきた。現在は、株式会社JAXSONはHIDEO製品の日本の総代理店として、株式会社HIDEOは海外市場を専門に活動し今に至る。
お風呂だけをデザインして実に200モデルを超える製品を世に放った、世界でも唯一無二の日本のブランド。それがJAXSONである。







ぜひショールームでその世界観とバリエーション豊かな製品群に触れて欲しい。







[問い合わせ先]
JAXSON TOKYO
- 住所:東京都港区赤坂3丁目3−3住友生命赤坂ビル1F
- 電話番号:03-6826-7775
- 営業時間:10:30 – 18:00(予約制)
- 定休日:月曜日、日曜日
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fy7d(エフワイセブンディー)代表
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。