【スマートホーム/ホームオートメーション特集】「マニフェスト」──スマートホームの答えは「住宅OS」。統合プラットフォームが提示する“本物のホームオートメーション”

スマートホームはIoT家電ではない──スマートホームの本質は「住宅OS（Home OS）」

「スマートホーム＝IoT家電」という誤解は根強い。
しかし、LWL onlineが扱う「スマートホーム／ホームオートメーション」は、IoT家電やスマートフォンで操作するガジェットではない。

私たちが定義するスマートホームとは、建築の基盤に組み込まれた統合プラットフォーム（住宅OS＝Home OS）が住宅設備や家電などを制御する「自律的に動作する住まい」である。
照明、空調、給湯、玄関、セキュリティ、オーディオ、シェード、エネルギー管理。
これらをセンシングテクノロジーなどによって「統合的に」「自律的に」「ローカルネットワークで」制御し、あたかも住まいが知性を宿したかのように振る舞わせることである。

Home OS＝統合プラットフォームが「住宅の知性」を担い、プロトコルが動作の安定性と正確さを担保する

住宅における「OS」＝Home OSとは、Crestron／Control4／HOMMA／LUTRON HomeWorksなどが提供する、統合プラットフォーム層を指す。
スマートフォンに喩えれば、「iPhone」が住宅に相当し、「iOS」が統合プラットフォーム（CrestronやHOMMAなどのHome OS）に相当する。

統合プラットフォーム（Home OS）の下位レイヤーには、以下のような産業用・建築用プロトコルが存在する。

• KNX（欧州の建築標準プロトコル）
• BACnet（空調など設備機器の国際プロトコル）
• Modbus（インフラ機器で用いられる制御プロトコル）
• Echonet Lite（日本の家電向けプロトコル）

他にもさまざまなプロトコルがあるが、「プロトコル設計」に関しては、別途記事を用意する。

さらにその下には、各種センサー、スマートスイッチ、スマートフォンの操作アプリやタッチパネルなど、動作のトリガーとなる入出力デバイス層がある。
そのさらに下層には有線LAN・電源系統・配線ルートといった建築インフラ層が広がっている。

この階層構造の頂点に住宅OSが存在してはじめて、照明・空調・セキュリティ・音響・エネルギーが「同じ言語で通信する」家が生まれる。
LWL onlineの提唱する“Home OS”とは、スマホアプリではなく、建築そのものに宿る知性のことである。

ガジェット型スマートホームの限界──赤外線、アプリ乱立、クラウド依存

一般的なIoT家電中心のスマートホームには、次のような限界がある。

① ネットワーク依存（クラウド前提）
クラウド障害や通信の遅延が、そのまま生活上のトラブルにつながる。

② アプリが乱立し、統合されない
それぞれの家電が別々のアプリ・別々の規格で動き、シーン制御や一括管理がしづらい。

③ 赤外線で家電を操作する方式
赤外線はKNXやBACnetなどのプロトコルとは異なり、一方通行の信号のため、操作状態のフィードバックが取れない。例えばエアコンが冷房なのか暖房なのか除湿なのか、本当のところは分からないうえ、動作も不安定になりやすく、建築の要素として組み込むには限界がある。

④ 建築との一体化ができない
ラグジュアリーなスマートスイッチ、建築化照明、全館空調、セキュリティ会社のシステムとの連動など、住まいの根幹に関わる住宅設備は、ガジェットレベルでは実現できない。

⑤ 自動化のレベルが低い
“操作できるデバイス”が増え続けるだけで、住まいそのものは賢くならない。

これに対し、CrestronやControl4などの住宅OSは完全ローカルで動作し、住宅のインフラレイヤーに組み込まれることで、安定感のある正確な動作を実現する。

LWL onlineが定義する「インテリジェント・ラグジュアリー」とは

私たちが提唱する“インテリジェント・ラグジュアリー”とは、高価なガジェットを並べることではない。
それは、光・空気・温度・音・セキュリティ・時間といった「建築を構成する要素」をOSで再設計し、空間全体の体験価値を再定義することである。

住宅OSにより、次のような体験価値が生まれる。

● 光
日の出に合わせて自動的に照明が少しずつ照度を上げ、色温度も高くなり、シェードが静かに時間をかけて上がっていく。身体のリズムに寄り添った、自然な目覚めを演出する。

● コンフォート
人の在室状況や温湿度、季節や時間帯、さらにはその日の健康状態までをもとに、住宅OSが最適な空気環境・温熱環境を検討し、住まい手が最も快適に感じる状態へと自動調整する。

● Audio／Visual／Entertainment
施主の行動や時間帯に合わせてBGMが切り替わり、リクライニングチェアで脚を伸ばすとセンサーがそれを検知して自動でシアターモードへ移行する。さらには、ゲストを乗せた車がセキュリティゲートを通過し住まいの前に到着した瞬間、噴水が吹き上がり、照明が華やかに灯る──邸宅全体がウェルカムモードに切り替わる。

● セキュリティ
顔認証ドアホンが施主を検知すると、自動で解錠し、同時にセキュリティ会社の監視モードを解除する。シェルターやパニックルーム、アートルームへの通路は多重のセキュリティによって守られ、施主以外は立ち入ることができない。
電気錠、生体認証、セキュリティ会社のシステム、照明、カメラを統合し、住まいと住まう人、そして大切なモノを守り抜く。

● アラート
プールのろ過装置が何らかのトラブルで停止した場合、あるいはアートルームやワインセラールームの温度・湿度に変調があった場合、住宅OSは自動で管理会社にアラートを発信する。

● エネルギー
太陽光発電・蓄電池・EV充電までを統合的に制御し、環境負荷と快適性のバランスを最適化する。

このように、Home OSによって住まいが“考え”、自律した動きを行い、施主の行動を先まわりしてくれる住まいこそが、いまや欧米のラグジュアリー邸宅のスタンダードになりつつある。

住宅は“OS”で語る時代へ──スマートホームの未来を再定義する

LWL onlineは、スマートホームを「ガジェット」では語らない。
ラグジュアリー邸宅は、もはや建築OSなくして成立しない時代に入った。

これから始まる特集では、
「住宅OSにはどのようなものがあるのか」
「建築プロトコルとは何か」
「ラグジュアリーレジデンスのインテリジェンスとは何か」
といった問いを軸に、スマートホーム／ホームオートメーションを深く掘り下げていく。

スマートホームの誤解を解き、新しい『住まいの言語』を提示すること。それが、本特集の使命である。