【スマートホーム/ホームオートメーション特集】富裕層住宅がクラウド依存型スマートホームを避ける理由
取材/LWL online編集部
クラウド連携スマートホームは便利さが謳われる一方、サービス終了・仕様変更で住宅の機能そのものが停止するという重大なリスクをはらむ。特に富裕層住宅では、住宅インフラとしての継続性・資産価値を担保するため、クラウド依存しない建築統合型・ローカル完結スマートホームが選ばれている。ここでは理由を明らかにする。
クラウド型スマートホームのリスクとは?
照明が点かない。
空調が反応しない。
シェードが動かない。
ハードウェアは壊れていない。
配線も生きている。
だが、スマートフォンのアプリだけが沈黙している。
これはフィクションではない。
近年、クラウド依存型スマートホームを導入した住宅で、世界的に実際に起きている現象だ。
詳細は下記のリンク先を読んでほしい。
サービス終了。サーバー停止。仕様変更。
その瞬間、住宅は「スマート」であることをやめる。
スマートホームがある日突然「ただの置物」になる⁉―― クラウド依存型スマートホームはリスクだらけ
富裕層住宅がクラウド依存型スマートホームを避ける理由

住宅はガジェットではなく長期インフラである
興味深いのは、この問題に最も敏感なのが、富裕層住宅の施主であるという事実だ。
理由は単純だが、極めて本質的である。
- 住宅は「ガジェット」ではない
- 住宅は「数年で買い替えるもの」ではない
- 住宅は「人生と資産を預けるインフラ」である
住宅価値と継続性の優先順位
富裕層にとって住宅とは、生活・安全・資産価値・継承を内包する、長期的な構造物である。
富裕層のラグジュアリー邸宅に、「サービス存続を自分でコントロールできない」「ベンダー都合で機能が消える」「インターネット前提でしか成立しない」という特徴を持つスマートホームサービスが入り込む余地はない。
そうした不確定要素を組み込むこと自体が、資産価値を下げかねない。
それはリスク以外の何物でもない。
【スマートホーム/ホームオートメーション特集】特集記事目次+超入門者向けQ&A10問
クラウド依存型の何が問題なのか?

中核機能を外部に置く設計思想の危険
誤解してはならない。
問題はクラウド技術そのものではない。
問題は、住宅の中核機能を住宅の外に置いてしまう設計思想にある。
照明、空調、遮光、セキュリティ。
これらは、本来、住宅の内部で完結すべきインフラである。
住宅とIoT家電との違いとは
それを「便利だから」「スマホで操作できるから」という理由だけで外部サーバーに依存させる。
この瞬間、住宅は「自律性」を失う。
住宅はIoT家電ではない。ガジェットではない。
人の生活をゆだねるインフラである。
富裕層住宅が選ぶのは「ローカル完結型」スマートホームに帰結する

富裕層住宅で選ばれる「Home OS」とは何か?
一方、富裕層住宅やハイエンドレジデンスで選ばれているのは、ローカルで完結する建築統合型スマートホームだ。
CrestronやLutronのHomeWorks、あるいはHOMMAのシステムが、オーケストレーション層で指令を司るHome OSによるスマートホームである。
住宅内部で完結する制御の本質
建築統合型スマートホームの特徴は明確である。
- 住宅内部に中枢(コントローラー)を持つ
- インターネットがなくても、ローカルネットワークのみで基本機能が動作する
- 状態を「ON/OFF」ではなく「現在値」として把握する
- 建築設備と同列のレイヤーで設計される
- 設備機器はプロトコルで動作する
「クラウド依存型」か「ローカル完結型」か、いずれがよいのかというのは単なる技術選択ではない。
住宅をどう捉えているか、という思想の違いである。
スマートホームは2つの系譜に分かれる── Fieldbus・ローカル制御が導く「Your home is yours.」という思想
スマホ操作は本質ではない。「住まい自体の知性」が重要

知性を宿した住まい。環境としての自律動作
多くの一般向け記事では、スマートホームは「スマホで操作できる便利な設備」として語られる。
しかし富裕層住宅では真逆だ。
スマホは非常用UIにすぎない。
日常操作は、そもそも「意識しない」ことが前提である。
そして富裕層住宅では、「照明・遮光・温熱環境・換気」は、環境として自律的に振る舞う必要がある。 ここで重要になるのが、「Home OS(住宅のためのオペレーティングシステム)」という考え方である。
スマートホームの答えは「住宅OS」。統合プラットフォームが提示する“本物のホームオートメーション”
統合プラットフォームの思想的価値
Home OSとは、家電を束ねるためのアプリではない。
「照明」「空調」「窓廻り(遮光)」「セキュリティ」「エネルギー」——これらを一つの建築体験として統合するための中枢思想だ。
富裕層住宅が求めるのは、「操作する家」ではなく、住む人を理解し、先回りする家である。
いわば「知性を宿した住まい」である。
その前提として、住宅は常に「今の状態」を正しく把握していなければならない。
クラウドに依存し、住宅設備の「いまの状態」すら住宅側で保持できない仕組みは、この条件を満たせない。
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「便利さ」よりも「継続性」を選ぶという判断

人間のインフラとしての住まい、資産価値としての住宅評価、文化の拠点としての邸宅
富裕層住宅がクラウド依存を避ける最大の理由は、実はセキュリティでも通信障害でもない。
継続性である。
10年後も使えるか。
20年後も修理できるか。
たとえ所有者が変わっても成立するか。
この問いに、クラウド依存型スマートホームは答えられない。
一方、建築統合型・ローカル制御型のスマートホームは、住宅と同じ時間軸で設計されている。
富裕層住宅がクラウド依存を避けるのは、流行に慎重だからではない。
住宅を、インフラとして、資産として、文化として捉えているからだ。
なぜ「IoTガジェット型スマートホーム」は、住宅インフラになりえないのか?
まとめと次の視点へ
次回は、『スマートホームで「やってはいけない設計」7選』を具体例とともに整理する。
なぜ高級住宅ほど、一度の設計ミスが取り返しのつかない失敗になるのか。
その構造を技術と思想の両面から解き明かす。

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