カフェ キツネ~仏日2人が立ち上げたアパレル&カフェ。全店Sonosでエレクトロ系を音楽配信
fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人
Kitsuné(キツネ)は、フランス・パリに本店を持つアパレル&カフェのブランド。フランス人と日本人の共同経営で、それぞれの国の文化と音楽が共通言語として世界で知名度を上げ、近年はブランドアイコンである「キツネ」のクッキーがSNSを中心に大バズりしている。そこで、カフェのフラッグシップショップ青山店を訪れて話を聞くと、驚くべきルーツと企業哲学が隠されていた。
かわいらしいキツネが象徴する“多面性”
カフェ キツネは、青山にフラッグシップショップとして2013年にオープン。現在の場所には2019年末に移転し、日本全国6店舗の本店である。“カフェ&バー”としているのは、アルコールも提供しているため。朝9時オープンだが、取材に訪れた平日の朝10時ですでに座席は半分ほど埋まっており、外国籍らしい客の姿も多く見える。

ブランドの創業者は、フランス人のジルダ・ロアエックと日本人の黒木理也(まさや)の2人。クリエイティブな分野、とくにファッションと音楽に対する情熱を共有すべく、2002年に立ち上げた。

「キツネ」を採用した理由は、単なるロゴにとどまらず、心優しく多面的な性格を持つ生き物という日本の伝説にちなむ。また、あらゆるものに変身できるという意味で、ファッション、音楽、カフェといった多面性を持つブランドの立ち位置の象徴でもある。
ファッションブランド「メゾン キツネ」はパリ、東京、ソウル、バンコク、北京を含む40のブティックを展開し、コレクションは公式オンラインストアのほか、世界中の400を超える小売店でも販売されている。
一方の「カフェ キツネ」は2013年にコーヒー事業を立ち上げて以来、東京、パリ、ソウル、北京を含む世界35の都市で展開、2019年にはロースタリー、バー、レストランにまで事業を拡大している。


日本のロースタリーは岡山に
ドリンクの中心は、なんといっても吟味されたオリジナルコーヒー。岡山県に焙煎場があり、各店舗では豆の販売も行っている。
フードは、元々はパティスリーがメイン。ケーキはすべてオリジナルで、常駐のシェフが作っており、パリ本店と同様、本格的な味が愉しめる。季節限定メニューも嬉しい。
軽食としては、フランスっぽい要素のあるクロワッサンのサンドやキッシュ、クロックムッシュなどを用意する。
店内には、パリのカフェのようなテラスやチェアが並ぶ一方で、組み木や襖、ガラスのランプなど、至る所に和のテイストも感じられる。



BGMはSonosスピーカー
興味深いのは、アパレル「メゾン キツネ」でも、カフェ&バー「カフェ キツネ」でも、日本のほぼ全店でネットワークスピーカーSonos(ソノス)が導入されており、時間帯に合わせたKitsuné MusiqueのプレイリストがBGMとして流れていることだ。


実はKitsunéは、音楽業界で新たな才能を発掘するためのミュージックレーベル「キツネ ミュージック」からスタートしたブランド。創業者の2人が音楽通で、とくにフランス人のジルダは、元Daft Punkのマネージャーで、音楽のキュレーションをし、幾多のコンピレーションアルバムを制作。エレクトロを中心に扱うレコードショップ「Street Sounds」をパリにオープンした。
一方の黒木も、12歳でフランスに渡りファッションに携わりつつ「Street Sounds」に通い詰め、ジルダと夢を共有したといういきさつがある。ふたりを結びつけたのは、音楽にほかならなかったのだ。
Sonosを全店に導入しようと決めたのは、音響設備をよく知っていた黒木。スタイリッシュなデザインとクリアでバランスの取れた、立体感のある音質を気に入り、全店で使うことになった。
「なによりも、奥行きが深く、音質がいい。カフェは様々な人が集まって会話をする場でもあるので、心地いい空間を作ってくれることはとても大切です。コントロールアプリ『Sonosアプリ』もわかりやすく操作性も良くて使いやすいと思っています」(PR Manager塚本さん)

南青山のブティックやショールームを散策の折りにはぜひ立ち寄って心地よい空間に身を委ね、いい音とおいしい食のマリアージュに浸っていただきたい。

[施設概要]
Café Kitsuné Aoyama
住所:東京都港区南青山3−15−9
開店時間:9時‐19時(定休日は年末年始)
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fy7d(エフワイセブンディー)代表
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。