【短期集中連載スマートホーム/ホームオートメーション~The Luxury Intelligent Residence】第3回 ラグジュアリー邸宅の核となるのはインターフェイス

 取材/LWL online編集部

真のスマートホーム/ホームオートメーションとは、センサーが環境を読み取り、自律的にシーンを変化させる“操作しない住まい”である。しかし現実には、空間と暮らしを結びつけるインターフェイスが不可欠だ。タッチパネル、スマートスイッチ、顔認証ドアホン──最新の操作体系は建築デザインとテクノロジーが交わる領域に進化している。本稿では、ラグジュアリー邸宅にふさわしいインターフェイスをグローバルスタンダードなデザインという視点から解説する。なお、本サイトではIoTガジェットはラグジュアリー邸宅にふさわしいスマート「ホーム」とは捉えていない。CrestronやControl4に代表される、ローカルネットワークで住宅設備をKNXやBAC-NET、Modbusなどのプロトコルで動作させる、統合プラットフォームをラグジュアリー邸宅にふさわしいスマートホーム/ホームオートメーションとして位置付けている。そのため、IoTガジェットの話題は本連載では採りあげない。

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インターフェイスは「住まいの知性の器」

本サイトが理想とするスマートホーム/ホームオートメーションのあるべき姿は、「操作しない住まい」である。
センサーが空気の質・温湿度・照度・在室状況、さらには施主が次にどのような行動を行うのかを事前に読み取り、シーンが自動で変化する──そんな“考える建築”が真の到達点だ。

しかし現実には、全てをセンサーだけで完結させるのはまだまだ困難である。
だからこそ重要になるのが「インターフェイス=操作体系」。

インターフェイスとは単なるスイッチやタッチパネルではなく、住まいの知性をどう呼び起こすかを決定する「文化的デザイン」だ。操作体系が洗練されていなければ、どれほど高度なシステムを導入しても「賢い住まい」にはならない。

本稿では、ラグジュアリー邸宅を前提に、最新のインターフェイスを整理し、解説する。

インターフェイスの3大カテゴリ

スマートホームの操作体系は大きく次の3つに分類できる。
※センサーによる自律動作はここでは除外する。
①スマホ/タブレット/壁付タッチパネル(UIデバイス)
②スマートスイッチ(物理インターフェイス)
③顔認証ドアホン(AKUVOX など)

それぞれの役割を見ていこう。

スマホ/タブレット/壁付タッチパネル(UIデバイス)

CRESTRONやControl4などの統合プラットフォームは、スマートフォンやタブレットなどの専用アプリにより住宅のあらゆる機能にアクセスできる。
照明、空調、シェード、音響、防犯、エネルギー管理──すべてを “1つの画面” に統合できることが最大のメリットである。

また、スマートフォンやタブレットだけでなく、壁にマウントするタッチパネルという選択肢もある。
こちらは “住まいのダッシュボード” としての機能を果たし、シーンコントロールの中心となる。海外のラグジュアリー邸宅では、エントランスと各部屋にそれぞれ1台タッチパネルが必ずあると言っていいくらいだ。

スマートホーム/ホームオートメーションを早い時期から取り組んでいたハナムラのインターフェイス。日本では誰もインターフェイスデザインに取り組んでいない時期からインターフェイスデザインに尽力した。間取り図をインターフェイスに入れるなどの試みも早かった。
GLAS LUCE × SmartHomeショールームレポート

ただし、これらの操作デバイスが「便利」になるためには、 “ワンタッチで複合動作が連動すること” が必須条件だ。
高級住宅のインターフェイスの核心は ワンタッチ操作=マクロ設計 にある。
たとえば〈おやすみ〉シーンをタッチすると、以下が同時に動作する。

  • 電気錠のロック
  • セキュリティシステムの動作
  • カーテン・シェード・ブラインドの閉
  • 照明はオールオフ
  • テレビなどAV機器のオフ
  • 空調は温度湿度センサーと連動

これらの動作がひとつのボタンで連動して行われることがマストだ。いわゆるマクロボタンを設けることがグローバルスタンダード。
これこそがラグジュアリー邸宅の要件なのである。

あるマンションのモデルルームのiPad操作画面。「おはよう」「おやすみ」「ただいま」「おでかけ」というストレートな言葉によるマクロプログラムが使用されている
前述したGLAS LUCE × SmartHomeを展開するハナムラのUIデザイン例。直感的に操作でき、しかも間取り図内に照明の状態などが見える。ラグジュアリー邸宅に相応しいインターフェイスである
ホームシアターのワンタッチコントロールの典型例。ホームシアターでは、複数のAV機器やシェードなどの窓廻り、照明などを連動させる必要がある。ホームシアターで複数のリモコンを手に操作する姿はラグジュアリーとは呼べない。ホームシアターでは必須の機能である

また、UI(ユーザーインターフェイス)は単なる画面ではなく、住宅の構造、動線、シーン構成、建築照明の思想まで統合する必要がある。ベストは間取りを反映したUIだ。
例えば照明が点灯しているのか否か、あるいは空調がオンなのかオフなのかなどが画面上でひと目でわかるようなUIデザインがラグジュアリー邸宅では求められる。

UIデザインの巧拙で「住まいの快適度」が大きく変わるので、経験豊富で専門のプログラマーが在籍するシステムインテグレーターに依頼すると良いだろう。

スマートスイッチ(物理インターフェイス) ─ “真のスマートホーム”の象徴

仮にセンサーによる制御が主体であっても、物理的スイッチは必ず必要になる。
その中でも、CRESTRONやLUTRONなどのハイエンドスイッチは、国際的に「スマートホームの象徴」とされる。

理由は3つある。以下に整理する。

① デザインが建築として美しい

  • 材質、質感、押下感、エッジの精度まで建築的に統合
  • 壁面がノイズレスになり、空間の美学を損なわない
  • 建築家が選ぶ“ミニマルインターフェイス”として世界標準

次のようなエピソードがある。
あるマンションのモデルルームのオープンを控え、そのマンションのデザイン監修を務める、世界的に著名な建築家が事務所のスタッフを連れて確認に来た。建築家によってスイッチ類を見えるところから全て撤去するように指令が下ったが、現実問題、スイッチを全て見えなくすると不便であり、生活シーンとしても不自然となる。
インテグレーション企業のスタッフがその場でCRESTRONのスイッチを提案・説明することで、CRESTRONのスイッチの導入が決定した。

建築家に認められる数少ないスイッチ であることを示す象徴的エピソードだ。

世界的な建築家も認めたCRESTRONのスマートスイッチ「HORIZON」
デザインの良いスマートスイッチではLUTRONも多数ラインアップをそろえている。特に先日発表されたAlisseは発表会で建築家やデザイナーから注目を集めていた。Alisse
こちらもLUTRONのスマートスイッチPalladiom

② シーンコントロールの核心を担う

物理スイッチながら、1つのボタンに複数動作を割り当てられる。押すだけで複数の制御が連動するコマンドはプログラムにゆだねられる。
例えば前項で記した「おやすみ」ボタンで照明・シェード・BGM・空調など、多層制御を瞬時に呼び出せるような設定もひとつのボタンに割り当てることができる。

各ボタンに任意の機能を割り振ることができる。画像はCRESTRONのCameo

③ 家族・ゲストにとって直感的

アプリ操作に慣れていない家族や来客にも操作がわかる必要がある。
LUTRONの「Alisse」、CRESTRONの「Horizon」「Cameo」など、世界のラグジュアリー邸宅は例外なく“美しいスイッチ”を採用している。

顔認証ドアホン(AKUVOX など) ─ 玄関から始まるシーン制御の未来

近年インターフェイスとして急速に注目を集めているのが顔認証ドアホンだ。
単なるインターホンではなく、玄関という“住まいのゲートウェイ”から家全体を制御できる。

たとえば北米や豪州で著名なAKUVOXを使えば入室時に顔認証すると同時に以下の連動動作が可能になる。

  • 電気錠の解錠
  • 玄関ホール照明シーンの自動切替
  • ルート照明の点灯
  • エアコンのオン
  • エレベーターのガレージ階呼び出し
  • シャッターの開閉
  • セキュリティ会社のシステム連携(AKUVOXの強み)

以上はあくまでも例だが、仮に空調を入れたり(夏は冷房・冬は暖房)、給湯器のお湯はりをスタートすることも可能である。

玄関を「インターフェイスデバイス」としてしまうことで、従来のスイッチ操作すら不要になる“ゼロタッチ生活”が実現する。

また、たとえばAKUVOXのR29という製品は顔認証だけでなく、ICカードやワンデーパスワード(QRコード)を使用することもできる。R29にはリレー出力が3系統あるので、例えば以下のような使い方が可能である。
ある別荘にこの製品を導入したとする。
施主は顔認証ですべての部屋の電気錠を開錠できるが、別荘の管理会社はICカードなので、金庫のある部屋だけは開錠できない。ワンデーパスワードは毎月入る庭師向けに発行するので、家の中には入れない。

実際に、このような形で運営される別荘が、日本でもじわじわ増えていると仄聞する。

別荘へのホームオートメーションの導入はマストだと断言できる。

「GLAS LUCE × SmartHome」を展開するHanamuraのショールームではAKUVOXもLUTRONのGrafikEyeの両者を見ることができる

なお、本サイトではスマートスピーカーは推奨しにくい。その理由は明確だ。

  • インターネット・クラウド依存(IoTなので当然といえば当然だが…)
  • 遅延や誤作動が発生しやすい
  • 音声認識(特に日本語)が不安定
  • プライバシーの課題
  • 巨大ITプラットフォームの仕様変更によって全く使えなくなる可能性がある

ラグジュアリー住宅の要件には適合しない。

インターフェイス設計の本質 ─ それは「建築デザイン」である

最終的に、インターフェイスは「住まいの知性をどう人が扱うか」を決定する。
つまり、単なる機器の選択ではなく 建築デザインそのもの なのだ。

  • スイッチの位置、高さ、役割
  • どのシーンを作るか
  • 誰がどのインターフェイスを使うか
  • 生活動線と空間演出の関係
  • 操作しない時間をいかに増やすか

これらは建築家とシステムインテグレーター、それに施工業者(ゼネコン・サブコン・インストーラー)の共同作業によって初めて成立する。

“住まいが考えるようになる”とは、インターフェイスそのものが「居住者の文化」を学習していくということだ。

インターフェイス設計を相談できるプロフェッショナル3選

LWL onlineの読者層に向け、信頼できるホームオートメーション専門業者を紹介する。

hanamura(ハナムラ)

上質な住宅向けの統合制御に実績多数有。建築家との協働に強い。まだホームオートメーションやスマートホームという言葉がない時代(00年代)からインターフェイスデザインにこだわってきた。タブレットやタッチパネルなどのインターフェイスに間取り図を導入するのも時代に先駆けていた。なお、同社のショールームでは、タッチパネル、スマートスイッチ、顔認証ドアホンなど、すべてを見ることが可能だ。
https://www.h-trading.co.jp/smarthome/index.html

コンフォース(COMFORCE)

ホームオートメーションのシステムインテグレーター。CRESTRONやLUTRONを得意とする。第24回『Living Wellness in Luxury®』の際にCRESTRONによるサーカディアンリズムの照明シーンやAV over IPのデモをプログラムしたのはコンフォースである。専門のプログラマーが在籍しているので、自社でプログラムから施工まで完結できる。ホームオートメーションの知見が深く、設計段階からの伴走が可能だ。
https://comforce.jp/

SUMAMO

SUMAMOは、KNX、Modbus、BAC-NETなどのグローバルなプロトコルから、Echonet LiteのようなローカルプロトコルまでIP制御で動かせない住宅設備やAV機器はないというハイレベルのインテグレーター。近年のラグジュアリー邸宅では、照明・空調・音響だけでなく、玄関の電気錠、ネットワーク、ルーター構成、外部カメラ、遠隔アクセスのセキュリティレイヤーまで一体化した“住宅OS”が求められる。SUMAMOはこの領域で強みを発揮する。

https://sumamo.co.jp

インターフェイスは“ラグジュアリーの言語”である

スマートホームの進化は、テクノロジーの高度化以上に、人間と空間の対話をどうデザインするかにかかっている。

インターフェイスは、単なる操作ツールではなく、建築を知性化し、暮らしを滑らかにし、住まい全体の世界観を決定づける“言語”だ。

次回のテーマは「光」。『Architectural Lighting & Shades & more — 「光を操る」』がテーマ。
LUTRONのHOMEworksを軸に、ライティングコントロールについて見ていきたい。

LUTRON HOMEWorks発表会速報

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