【埋込スピーカー小特集】第2回 埋込スピーカーは実は音が良い!~埋込スピーカーの選び方ガイド

 取材/LWL online編集部

前編では、埋込スピーカーが「音が悪い」とされる誤解が設備用ハイインピーダンス方式にあると解説した。本稿では続編として、“音質の良い埋込スピーカー”の条件と選び方をさらに掘り下げる。選定のポイントからブランドの違い、そして住宅で確実に音を引き出すために欠かせないインストーラー(施工業者)まで、必要な情報を網羅する。

埋込スピーカーは「音が良い」。ハイファイブランドを選べば成功する

埋込スピーカーに対する「音が悪い」という偏見は、“設備用”のハイインピーダンス方式と、“住宅用・音質重視”のローインピーダンス方式が混同されていることから生まれた誤解だ。
前編でも述べたとおり、結論は明快である。Bowers & Wilkins、KEF、DALI、JBLなど、ハイファイオーディオの実力ブランドの埋込スピーカーを選べば、音質の問題は一気に解決する。

【埋込スピーカー小特集】第1回 埋込スピーカーはなぜ“音が悪い”と言われるのか? その偏見の正体を探る

その理由は明確で、これらのブランドは「キャビネットがあるスピーカーで培った音響技術」「材料工学・音響工学のノウハウ」「オーディオ哲学」「振動・共振制御の技術」を埋込スピーカーに適用しているからだ。

言い換えれば、形状こそ異なるが、中身はフルサイズのハイファイスピーカーそのものなのである。

各ブランドの音の傾向は異なるものの、いずれもクオリティの高さは折り紙付きで、ラインアップも豊富。本稿の後半で各ブランドの特徴を紹介するが、それ以上に重要となるのが、AVシステムの選定・設計・施工を担う「インストーラー」の存在だ。

埋込型スピーカーを選ぶ際の注意点──日本の住宅だからこそ押さえるべきポイント

① 日本の住宅では“薄型モデル”がほぼ必須

日本の木造住宅やマンションは天井の懐(天井裏の空間)が極めて薄い。
そのため、海外モデルで一般的な「深さ150〜200mm級の埋込スピーカー」は物理的に入らないケースが多い。
そのため、選ぶポイントとしては、60〜100mm程度の浅型(Slimタイプ)が実質的な基準となる。

KEFのインシーリングスピーカーCi160。このように薄型の埋込スピーカーを選ぶ必要がある

また、天井裏に梁・配管・エアコンダクトが走っている可能性が高い。
さらに、梁・配管・空調ダクトなどが干渉するケースも多いため、「音」よりも先に「物理的に入るか」を確認することが鉄則である。

② 壁内・天井裏の構造チェックは必須

空調、換気、電気、ガス…日本の住宅の天井裏は多くの設備が交差する。
エアコンの冷媒管、照明配線、断熱材カバー、梁や二重天井の支柱など、想像以上に「使える空間がない」ことは珍しくない。
設置位置は、必ず設備図面と現場確認の両方で判断する必要がある。

③ 断熱材の接触は“致命的”

断熱材(グラスウール・ロックウール)がスピーカーユニットに触れると、高域が吸収され、こもり、歪みが発生する。
バックボックスの追加や断熱材の処理など、適切な施工が不可欠だ。

④ 用途により選ぶべきスピーカーは変わる

埋込スピーカーはブランド・シリーズ・モデルによって音の方向性が大きく異なる。
BGM用、ホームシアターのサラウンド、専用室の天井Atmosなど、用途に応じて最適解は変わるため、事前のヒアリングとプランニングが欠かせない。

ホームシアター用、BGM用などで埋込スピーカーの選択は異なる

⑤ アンプの選定も重要

埋込スピーカーの実力を引き出すうえで、重要な要素が「アンプ」の選定である。
スピーカーは「受動的」な存在であり、どれほど優れたB&WやKEFの埋込モデルを導入しても、適切なアンプが組み合わされていなければ、その潜在力の半分すら鳴らしきれない。
B&WやKEFのポテンシャルを引き出すのはアンプである。

代表的な選択肢として、まずSonos Ampが挙げられる。
音質とストリーミングの両立に優れ、UIも極めて洗練されていることから、ラグジュアリーレジデンスのBGMシステムで高い人気を誇る。
AirPlay 2対応で使い勝手も抜群だ。

Sonos Amp。住宅向けオーディオ/マルチルーム用途において非常に優れた選択肢。定格出力は 125 W/チャンネル(8 Ω時) を実現しており、4 Ω時には250 W/チャンネル相当の駆動能力を備える

また、マランツのマルチルームアンプMODEL M4も強力だ。
4ゾーン/8チャンネル・マルチルーム用ディストリビューションアンプとして設計されており、高級住宅やラグジュアリー邸宅のマルチルーム音響システムに最適化されているモデルである。
しなやかな中域と音楽的表現力を備え、大規模なゾーン再生にも安定して対応する。複数部屋を高品位に鳴らしたいケースでは理想的な選択となる。

マランツのMODEL M4。8 Ωで8チャンネル×100Wという強力な出力を持ち、4 Ω時でも各125W/チャンネルまで対応する

埋込スピーカーの真価は、アンプの質で決まる。空間と音の両方を美しく仕立てるために、アンプ選定は最後ではなく「最初の検討項目」であるべきだ。

上記を留意して進める必要があるが、実際にはフローが多く、構造確認や施工調整など手間のかかる工程が多い。そのため登場するのが、AVシステムの選択から設計、施工までを請け負う「インストーラー」である。

インストーラーの役割と重要性

住宅におけるAVシステム──ホームシアター、マルチルームオーディオ、スマートホーム/ホームオートメーションとの統合──は、機器を単に購入するだけでは成立しない。

部屋の用途、音響環境、配線経路、防振/調音/遮音条件、仕上げ、操作インターフェイスまで、一貫して設計・施工できる専門家=インストーラーの存在が極めて重要となる。

具体的な業務は以下になる。

  • 機器仕様の選定(スピーカー、アンプ、プロジェクターなど)
  • 図面作成・配線計画
  • 壁内配線、天井・床・壁の仕込み
  • スピーカー・プロジェクター設置
  • システム設定と音場調整
  • 納品後の検証・メンテナンス

特にラグジュアリー邸宅では、施工品質、現場実績、建築とのデザイン調和がブランド価値を左右する。良い機器を選ぶ以上に、良いインストーラーに出会うことが成功の鍵となる。

推奨インストーラー情報

ここでは当サイトが自信を持って推奨できるインストーラーを紹介する。

コンテック 株式会社

コンフォース株式会社

IDEAL TOKYO

オーディオ&ホームシアター のだや

アバック

トムテック

AV Kansai

アンティフォン

各ブランドの特長

Bowers & Wilkins

1966年、英国南部ウェストサセックス州ワージング近郊に構えた小さな電器店から始まったB&Wは、BBCモニターに触発されたニュートラルな音づくりを特色とする。
1990年代にケンブリッジに設立した「ステノリサーチセンター」で革新的技術──ノーチラス・チューブ、ケブラー・コーン、ダイヤモンド・トゥイーター──が生まれ、世界的なハイエンドブランドとなった。
音質は「ピュアで整った英国正統派モニター」。中高域の透明度と情報量に定評があり、音場の奥行きや定位の明瞭さは屈指。レファレンス用途で用いられることも多く、“音像を観察する”ようなクリアネスが特徴だ。

埋込スピーカーのラインアップも豊富で、複数グレードを展開。角度調整可能なトゥイーターを備えるモデルもある。

KEF

1961年、BBCエンジニア出身のレイモンド・クックが創設。正確な音響工学に基づく設計を得意とし、1988年の同軸ユニット「Uni-Q」はブランドの象徴となった。
音質は「精密で立体的」。Uni-Qによる定位の良さは唯一無二で、部屋のどこにいても均一な音を届ける。近年はMAT技術の導入により、高域がさらに純度を増し、現代的で洗練された“静寂”を描く。

埋込スピーカーはCiシリーズが中心で、Uni-Qとの相性は抜群。世界中のラグジュアリーホームで採用される理由がここにある。

DALI

デンマークで創業したDALIは、北欧らしいクラフトマンシップと合理的な設計を両立するブランド。
ウッドファイバーコーン、低歪磁気回路SMCが生み出す自然でウォームな音が特徴で、アコースティック楽器や声をリアルに再現する。
音質は「自然で情緒的」。没入型のリスニングに適している。

日本ではPHANTOMシリーズが主力となっている。

JBL

1946年、ジェームズ・B・ランシングがロサンゼルスで設立。劇場音響やスタジオモニターの分野で圧倒的な存在感を誇り、「アメリカンサウンド」を象徴するブランドとなった。
音質は「エネルギッシュでダイナミック」。
ホーン/ウェーブガイド技術による生命力ある中高域、大きなスケールの低域が魅力で、ロックやジャズなどリズム主体の音楽と相性が良い。

近年はモダンでニュートラルなチューニングへ進化し、往年の力強さと現代的な透明度が融合している。

「音の建築”が描く」これからの住まいの豊かさ

住まいとは、単に「暮らす」ための場所ではなく、感性や価値観が最も自然に現れる「舞台」である。
前編では、埋込スピーカーが持つ本来の可能性を曇らせてきた誤解を解きほぐし、後編では、その潜在力を最大限に引き出すためのブランド選びと施工の重要性を紐解いた。

いま、世界のラグジュアリー住宅では、視覚的なノイズを排しながら、空間全体がひとつの楽器のように響く「音の建築」が求められている。壁に、天井に、そして建築そのものにスピーカーを溶け込ませるという発想は、ただの省スペースではなく、「暮らしの質を音でデザインする」という思想の表れだ。

高品位な埋込スピーカーは、見えないところで“本物の音”を鳴らす。
その静かな佇まいの奥にあるのは、Bowers & Wilkinsの精緻、KEFの立体感、DALIの自然な没入感、JBLの臨場感と迫力──世界の名門ブランドが積み重ねてきた技術と哲学の結晶である。

そして、その魅力を住まいの中で完全に解き放つには、インストーラーの存在が欠かせない。
機器の選定、図面、施工、調整という一連のプロセスは、まるでオーケストラの指揮者が音を束ねるように、住まいの音環境を統合していく工程だ。
良いインストーラーと出会うことは、良いスピーカーを選ぶこと以上の価値を持つと言っていい。

これからの住まいにおいて、「音」は贅沢の象徴ではなく、心地よさの基準となる。
見えないところにこそ、美と技術を惜しみなく注ぐ──それがラグジュアリーレジデンスの本質であり、埋込スピーカーが生み出す“静かなる豊かさ”なのだ。

  • 取材

    LWL online 編集部

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