【短期集中連載スマートホーム/ホームオートメーション~The Luxury Intelligent Residence】第4回  建築の質を決める「インテリジェンス」としてのライティング

 取材/LWL online編集部

照明器具を選ぶだけの時代は終わった。いま必要なのは、人工光と自然光、シェードやロールスクリーン、センサー、そして中央制御までを統合し、「住まいの光が自律的にふるまう」環境をつくることだ。本稿では、LUTRON HomeWorksを中心に、CRESTRON・KNX・DALIが連動する次世代のライティングコントロールを解説する。

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目次

照明だけでは完結しない時代へ──人工光×自然光の統合

ホームオートメーションを導入したラグジュアリー邸宅のライティングデザインは、「照明器具の選定」のみならず、「光の総体をどう制御するか」が重要なポイントとなる。
照明計画に加えて、窓から入る自然光の量・時間帯・季節・方位なども含めて、光全体をどのようにコントロールすべきか?

「光を彫刻する」という表現があるように、人工光と自然光をひとつのメディアとして扱う姿勢が求められる。
朝には柔らかな間接光に合わせてシェードが上昇し、午後には直射を避けるためにロールスクリーンが自動で下降する。
こうした細やかな光環境の調律が、空間の快適性を決めていく。

既に時代は「照明計画=器具×配灯×回路」ではなく、「照明計画=人工光×自然光×制御(コントロール)」にシフトしたのだ。

窓廻りの制御(シェード/カーテン/ロールスクリーンなど)を含めたトータルライティングコントロールが必要とされている。
その中心にあるのが、照明と窓廻り(シェード/カーテン/ロールスクリーン/ブラインド)を統合して扱えるLUTRONのシステムである。

LUTRONが選ばれる理由──HomeWorksが拓く“光の建築”

LUTRONの日本法人、ルートロン・アスカのショールーム入口。この先にHomeWorksを体感できるショールームがある

ラグジュアリー邸宅において、照明のトータル制御と言えばLUTRON(ルートロン)はもはや世界標準だ。
世界の高級邸宅、スーパーハイエンドホテル、デザイン住宅の多くがLUTRONを選ぶ理由は明快である。

圧倒的に支持される理由としては、調光の美しさ、シェードとの連動性、施工後の安定性、洗練されたデザインのスイッチなどが挙げられる。いずれも他に比肩するブランドは少ない。

創業者 Joel Spira が家庭用の壁スイッチ型電子調光器を初めて実用化した歴史は象徴的であり、同社が「調光」にかけてきた情熱と技術の深さを物語る。

LUTRON公式サイト

同社のグラフィックアイQSは調光のみならず、複数の照明シーンをワンタッチで呼び出すシーンコントローラーであり、ライティングコントロールのアイコン的な存在である。

LUTRONのグラフィックアイQS。左が親機、右は子機(スイッチ)。複数のシーンをつくり、ワンタッチで呼び出すことができる。なお、筆者も自宅で使用しているが、調光の美しさ、消え入りそうな仄かな光まで描き出すことができる
グラフィックアイQSのシステム構成図

グラフィックアイQS公式サイト

また、最新のテクノロジーの導入にも積極的であり、例えば照明器具をデジタルで個別制御する国際規格DALIへの対応も早かった。

近年は、照明のみならず、Sivoia QSシリーズに代表されるように、窓廻りのコントロールも積極的に取り組んでいる。

Sivoiaシリーズをはじめ、窓廻りの連動もいち早く取り組んでいた

Sivoia QS公式サイト

「照明+窓廻り」の制御という流れの中で、今年発表されたHomeWorksは、住宅向けライティングコントロールの到達点と言えるシステムとなっている。
照明と窓廻りを一元的に管理し、家全体の光環境が呼吸するように制御している。
さらに空調の制御も連動させることが可能だが、ここでは空調の制御は割愛する。

HomeWorks公式サイト

HomeWorksのプロセッサー。この本体にDALI/位相/PWM/0-10V調光モジュールなどが接続される

HomeWorksは「建築照明×自然光×シーン演出」を統合し、「光の建築」をつくるための中枢装置そのものである。
以下はHomeWorksで実現できるコントロールの例である。「」内はスイッチのボタンに相当する。

  • 「Good Morning」:朝の光に合わせてシェード上昇+照度10%の柔らかい光
  • 「Welcome Home」:帰宅をトリガーに玄関ホール〜LDKが順光点灯
  • 「Dinner」:雰囲気に合わせて2700Kへ自動調色、間接光中心
  • 「Hometheater」:シアターシーンでロールスクリーンが自動的に降下
  • 「Good Night」:家全体消灯、外部シャッター/シェード全閉

同社のスイッチには、上記のようなシーン演出を各ボタンに任意に設定することが可能である。
しかも、そのスイッチのデザインが美しく、Alisseの金属の質感と浅いストロークは「触れる建築」と呼ぶにふさわしい完成度だ。

HomeWorksの発表会で建築家から絶賛を受けていたスイッチ「Alisse(アリース)」。ボタンには機能を任意に振ることが可能だ
「Palladiom(パラディウム)」も人気を集めていた
「International seeTouch(インターナショナルシータッチ)」
「seeTouch(シータッチ)」

【速報!】LUTRON HomeWorks ― ルートロンが描く“世界一のラグジュアリーホームシステム”

COLUMN|DALIとは何か? 世界標準プロトコルを理解する

照明のコントロールで時々耳にするDALIとは何なのか?
DALIとは照明器具をデジタルで個別制御するための国際規格であり、一般住宅よりもホテルや商業施設、オフィスなど、高度な照明演出を必要とする現場で使用されることが多い。

アナログ調光では実現できない1%単位の精密制御が可能となる。
また、1台ごとのアドレス割り振り、双方向通信による故障検知など、ハイエンド照明に欠かせない要素が揃う。

近年は住宅でも採用が増え、FLOS、Viabizzunoをはじめ多くの照明ブランドの上位機種がDALI対応となっている。照明器具における「世界標準の言語」と言っていい。

建築は光によって完成する。建築空間を唯一無二に仕上げる照明器具~Viabizzuno(ヴィアヴィッズーノ)

FLOS公式サイト

CRESTRON・KNX・LUTRON・DALIの階層構造──競合ではなく補完関係

ここまでLUTRONについて解説してきたので、次はセンサー類とライティングコントロールについて説明したいが、その前によく混同されがちな「CRESTRONなどの統合プラットフォームとLUTRONの関係」について解説しておく。
やや遠まわりになるが、明確に理解していただけるはずだ。

まず前提として、統合プラットフォーム(ここではCRESTRONを代表として扱う)、KNX、LUTRON、DALIなどは競合ではなく、すべて補完関係にあることを知っておいてほしい。
スマートホームの文脈で頻出する「CRESTRON」「KNX」「LUTRON」「DALI」。
いずれも住宅のインテリジェンスを支える重要な技術だが、役割は明確に異なる。誤解が多いのは、これらを“同じレイヤーの競合”として見てしまうためである。
階層構造として捉えるとクリアに理解できる。

まず最下層に位置するのがDALI。美術館やラグジュアリー邸宅の照明器具が採用する、デジタル調光の国際標準プロトコルで、器具1台ごとにアドレスを振り、明るさや色温度を精密に制御するための「照明専用の言語」だ。

次にLUTRONは照明・シェード制御に特化した世界的ブランドで、HomeWorksを中心に「光(人工光+自然光)を統合的に扱う」ための完成度が極めて高い。
DALIが「照明器具の制御方式」なら、LUTRONは「照明×窓廻りの総合制御システム」と言える。

その上位に位置するのがKNX。照明、空調、床暖房、シェード、センサー類など建物全体のデバイスを接続する「建築インフラの神経網」であり、DALIを含む複数のシステムを束ねるフィールドバスとして機能する。

そして最上位に位置するのCRESTRON。住宅全体のサブシステム(LUTRON、KNX、AV機器、セキュリティ)を束ね、センサー情報をもとに照明・空調・シェードを自動運転する“中央制御の脳”の役割を担う。

つまり、最上位のレイヤー(Central Control Layer)にCRESTRONが位置し、その次のレイヤー(Building Integration Layer)にKNXがあり、次いで(Lighting & Shades Layer)にLUTRONが位置し、下位のレイヤー(Lighting Control Protocol)にDALIが位置づけられるという階層だ。

これらが有機的に連動することで、住まいは「考える建築」として完成するのである。

光の「自動運転」が生む住まいの体験──朝と夜のシーン

自然光や照明、空調、セキュリティ、オーディオ、AVまでも含めて制御する上位プラットフォームがCRESTRONをはじめとする統合プラットフォームである。

統合プラットフォーム(CRESTRONなど)はLUTRONやKNXを束ね、照明・空調・セキュリティ・AVを自律的に最適化する。

光に関して言えば、照度センター、光量センサー、温湿度センサー、在室センサー、そしてLUTRONに内蔵された日の出・日の入りタイマーなどの情報をもとに、「建築そのものが判断し、光と空気を調整する」フェーズに入った。

統合プラットフォームはその中心にあり、LUTRONやKNXを束ね、住宅をインテリジェントなシステムへと変える。

例えば朝。目覚まし時計のけたたましい音で起きるのではなく、シェードが少しずつ開き、朝日が入るとともに、照明はその明るさに寄り添うように10~15%の微光でそっと立ち上がる。色温度は3000Kから徐々に2700Kへ。
自然光が満ちてくると、照明はその存在を薄め、家そのものが光で目覚めるような静かなグラデーションが生まれる。

あるいは夜、目を覚ましてトイレへ向かうとき、廊下の照明は決して「光を放つ」ことはない。
センサーが在室を察知すると、ほんの数%の低輝度で足元だけを淡く照らす。視界を確保する最低限の光量に抑え、覚醒を促すブルーリッチな成分を避けた2000K前後の柔らかい琥珀色。空間は暗さを保ったまま、そっと通路の形だけを浮かび上がらせる。
光を感じるというより、“影が薄まる”程度の存在感である。
住まいが眠りのリズムを乱さないように、光もまた眠っているかのように振る舞う。

このように光が自律的に動く時代が訪れているのである。

照明器具ではなく「光環境」をデザインする時代へ

照明器具だけでは、本当の光環境はつくれない。
自然光と人工光、シェードと照明、センサーと中央制御。すべてが有機的に連動してはじめて、住宅は一日中“美しい状態”を保つ。

ラグジュアリーレジデンスの世界では、LUTRON+HomeWorksは「標準」になりつつある。
その上位階層でCRESTRONをはじめとする統合プラットフォームが総合コントロールの脳として機能する。

いま求められているのは、「光を灯す」行為ではなく、「光が空間を理解し、自律的にふるまう建築」の実現である。

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