【スマートホーム/ホームオートメーション特集】テクノロジーが“住まい”を再定義する~HOMMAが描く、ラグジュアリー・スマートホームの未来

 取材/LWL online編集部

アメリカ・シリコンバレーを拠点に、建築とテクノロジーの融合から生まれる新しい暮らしのかたちを提案するHOMMA。創業者・本間毅が掲げるのは、住宅を単なる「ハードウェア」としてではなく、「OS=オペレーティングシステム」として再定義する構想だ。 2025年、同社はついに日本市場での展開を開始。東京・六本木ショールームで体験したのは、照明・シェードが最新のセンシングテクノロジーと連動し、自律して動作する、「知性を宿した住まい」。日本ローカルのプロトコルEchonet Liteや、ラグジュアリー邸宅で採用されるBACnet / Modbusにも対応を見据えている。建築インフラとテクノロジーの統合の完成形である。 本サイトが定義する「Home OS」の理想形が、いま確かに姿を現している。

建築 × テクノロジー──世界でも稀有な「フルスタック住宅開発」

いま、スマートホームという言葉がようやく“本来の意味”を取り戻しつつある。
これから紹介するHOMMAによって。

HOMMAは、IoT機器を住まいに詰め込むのではなく、建築の内側からテクノロジーを統合するという発想で住宅を再定義してきた。

HOMMAが他のスマートホーム企業と一線を画すのは、出発点が「建築」そのものにあることだ。
多くのIoTベンチャーがデバイス開発から始まるのに対し、HOMMAは最初から「家そのものをプログラムする」アプローチを採る。

創業者の本間毅氏は、ソニー、楽天を経て、2016年にアメリカ・カリフォルニアでHOMMAを設立。シリコンバレーのエンジニアリングと日本的な空間設計の精度を融合し、建築をテクノロジーで再構築する挑戦を始めた。
本間氏が目指したのは、「家電をつなぐスマートホーム」ではなく、「住まいそのものが知性を持つ空間」。
そのスタンスはスマートホーム業界のスタートアップとしては稀有な存在だ。

シリコンバレーを中心とするカリフォルニアや、オレゴン・ポートランド、ボストンなどで複数のプロジェクトを展開し、集合住宅や戸建住宅における自動化のノウハウを積み重ねてきた。

「操作をしない暮らし」を実現するために、建築・ソフトウェア開発・UXデザインをワンチームで行う。

HOMMAのスマートホームはセンシングテクノロジーにより、操作せず、人の動きに従って、先まわりして設備をコントロールする。まさに「知性を宿した住まい」である
住まいに張りめぐらされたセンサー。センサーを含むさまざまなデバイスの位置情報を間取り図にマッピングしてデータ化しているので、メンテナンスにも役立つ

アメリカ・ポートランドで実証された、「美しく動く家」

HOMMAが注目を集めたのは、オレゴン・ポートランドでのスマートタウン開発だ。

緑豊かな住宅街に建てられた18世帯が住むタウンハウス「HOMMA HAUS Mount Tabor」は、自然素材とAI制御を融合した「呼吸する建築」と評された。

照明は時間帯に応じて色温度が変化し、風の流れや居住者の活動リズムに合わせて窓が自動的に開閉する。
キッチン、リビング、バスルームの各空間は、デジタルコントロールでありながら、むしろ「手仕事のようなぬくもり」を感じさせる。

すべての操作は、スマートフォンや音声ではなく、「何もせずとも整う」状態に設計されている点が象徴的だ。
その体験は、テクノロジーが人の生活を支配するのではなく、むしろ人間の生理的リズムに「従う」というアプローチに基づいている。

HOMMA HAUS Mount Tabor

東京・六本木のショールームで出会う「操作のいらない」体験

六本木のショールームに足を踏み入れた瞬間、来訪者はHOMMAが掲げるコンセプトを身体で理解する。

照明、電動シェード、オートロック──あらゆる要素が人の動きに呼応し、光が導き、空間が語りかける。
玄関扉を開ければやわらかな光が足元を照らし、リビングへ進むと空間の明るさが自然に変化する。人がいなくなると、照明は静かにフェードアウトする。

「スイッチを押さない」、「アプリを開かない」、「音声操作も不要」。
そこにあるのは、光と空気が呼吸するような、知的で静謐な暮らしのリズムだ。

これを支えるのが、HOMMA独自のエッジコンピューティング技術。
天井や壁にビルトインされたセンサーが居住者の動きを感知し、クラウドを介さずローカルで即時制御するため、遅延のない自然な反応が得られる。

まるで空間そのものが人を理解しているかのようだ。

HOMMA六本木ショールーム

サーカディアンリズムに寄り添う、光のインテリジェンス

HOMMAの照明システムは、単に明るさを変化させるだけではない。

人間の生体リズム「サーカディアンリズム」に基づき、朝は柔らかな光で目覚めを促し、昼は白色光で集中を支え、夕暮れには温もりある光で安らぎをもたらす。
「サーカディアンライティング」は、太陽の動きを模した自然光の再現であり、光を単なる照明から「身体の拡張」へと昇華させる試みだ。

HOMMAの照明システムではサーカディアンリズムにもとづいたライティングシーンをつくりだす

ユーザーはアプリを通じて光のリズムを微調整したり、「ディナー」「映画」「読書」などのシーンごとにプリセットを登録することもできる。

日々の生活が光によって美しく構成されていくその感覚は、まるで五つ星ホテルのスイートで過ごすような、静かな贅沢である。

アプリを用いてカスタマイズして照明シーンを作成することも可能

「建築段階からのスマート化」というアプローチ

一般的なスマートホームは、入居後にデバイスを買い足し、アプリを設定し、ネットワークを調整するという煩雑な手順を伴う。

HOMMAでは、そうした「後付けの複雑さ」をすべて排除。住宅設計段階からセンサー、照明、空調、オートロックの配置を一体的に計画し、建築に統合している。

結果として、入居者はアプリの初期設定さえ不要。鍵を開けた瞬間から、住宅が居住者の行動を理解し、環境を最適化する。

これをHOMMAでは“Built-in Intelligence (ビルトイン・インテリジェンス)”と呼ぶ。
テクノロジーが建築の中に溶け込み、機能は見えず、感覚だけが残る。
これこそ、同社が掲げるラグジュアリーの定義なのだ。

日本の住宅事情とラグジュアリー邸宅の要件を同時に満たすHome OS

HOMMAのシステムで重要なポイントは日本ローカルの住宅要件と、ラグジュアリー邸宅の設備要件の両者をクリアしていることだ。

本サイトの【スマートホーム/ホームオートメーション特集】で再三にわたって主張しているが、ラグジュアリー邸宅のスマートホームのシステムには独特の階層構造がある。
最上位のオーケストレーション層にはHome OSが座り、その下に各種プロトコルが位置する。

この各種プロトコルのうち、Echonet Liteというプロトコルがある。
床暖房や給湯器、ルームエアコンなど、日本国内の住宅設備や家電はこのEchonet Liteで動く。
日本ローカルのプロトコルのため、Crestonなど海外の統合プラットフォームは直接の対応はしていない。
だが、HOMMAは対応しているため、床暖房のオンオフだけでなく、温度設定など詳細までも操作可能である。

一方で、高級レジデンスで採用される天カセの空調などの住宅設備はビルオートメーション系のシステムとなる。
こうしたプロ仕様の設備はBACnetをはじめとするビルオートメーション系のプロトコルで動作する。
HOMMAはこうしたプロ仕様のプロトコルにも近々対応する予定だ。

つまり、一般住宅の生活インフラにも、ラグジュアリー邸宅の建築設備にも、両者に対応する稀有なHome OSなのである。

これは実はスマートホーム業界でも非常に珍しい。当然後付けガジェットIoTでは絶対に到達できない領域である。
ある意味、当サイトが定義する「Home OS」の理想形とも言える。

HOMMAのスマートホームは、Echonet Liteなど、プロトコルでのコントロールに対応しているため、赤外線とは異なり、現在オンなのかオフなのか、冷房なのか、何度なのかなど、どのような状態なのか「フィードバック」を取ることが可能である

「見えないサポート」が快適性を支える

HOMMAのシステムは、設置後のサポートまでが一貫してデザインされている。

住宅内のすべてのデバイスは、内部ネットワーク上で管理され、異常が発生すれば即座にエンジニアが検知。
ユーザーが気づくより先に遠隔で修正が完了している──そんなことが日常的に起こる。

導入事例では、同一タワーマンション内で「HOMMA化されたフロア」は、通常より約6%高い賃料設定にも関わらず、稼働率ほぼ100%を維持しているという。

単なる「スマート化」ではなく、「資産価値を上げる設計」としても評価が高い。

シリコンバレーから、世界の住まいを変える

アメリカでは、既にポートランドの高層アパート「WIllamette Tower」シリーズや、ボストン、ベニシアでのスマート住宅群など、導入が進んでいる。

これらのプロジェクトで得たデータと知見をもとに、HOMMAは日本市場での展開を本格化した。

住宅のすべてをHOMMAのHome OS上で制御する構造は、ライティング、空調、床暖房・給湯器、防犯をシームレスに統合。

クラウドに依存せず、家そのものが独立して動く点で、IoTガジェットのスマートホームとは一線を画し、日本ローカルのEchonet Liteに対応している点では他のHome OSから一歩抜きん出ている。

ポートランドの高層アパート「WIllamette Tower」。HOMMAのシステムは既に北米のラグジュアリー邸宅で実装が急速に進む
コントロールパネル(スイッチ)もスマート。プリセット呼び出し、サーカディアンライティングのオン、照明をすべてオフ、の3つの操作ボタンを装備

テクノロジーの透明化がもたらす、未来のラグジュアリー

「HOMMAが目指すのは、便利な家ではなく、心地よい家です。スイッチを触らない、設定をしない。それだけで、私たちは多くの小さなストレスから解放されます。そして気づかぬうちに、省エネで、より自然に調和した暮らしへと導かれていく。」と本間氏は語る。

この「テクノロジーの透明化」こそ、HOMMAが描くラグジュアリーの本質である。

何もしていないのに、光が整い、空気が流れ、音が静かに包み込む。
見えないところで働く知性が、住まいを「静かな芸術」に変えていく。
そのとき、スマートホームは単なる利便の産物ではなく、「暮らしの美意識を高める設備」として新しい価値を獲得する。

HOMMAが提案する「スマート」とは、機能的な便利さではなく、住空間の豊かさを取り戻すための静かな装置である。

木目が呼吸するように変化するリビング、朝日を迎えるために開くシェード、サーカディアンリズムに最適化された照明シーン、空調や床暖房もセンサー類との連携によって身体に最適な温熱・空気環境を実現する。
それはまるで、ひとつの邸宅がオーケストラのように調和し、住まう人の存在そのものを“奏でる”ような体験だ。

過剰な装飾やブランド性ではなく、調和・静寂・時間の質という、より内面的な豊かさ。
その思想は、日本建築における「間(ま)」や「光の陰影」の美学にも通じている。

HOMMAの描く住まいの在り方を見つめると、冒頭に記した「いま、スマートホームという言葉がようやく“本来の意味”を取り戻しつつある」という意味がおわかりいただけるであろう。

HOMMA Group株式会社 Founder & CEO 本間毅氏

HOMMA

  • 本店所在地:東京(日本)
  • 事業拠点:シリコンバレー、ポートランド(アメリカ)、ソウル(韓国)
  • 創業:2016年
  • 創業者:本間 毅(ソニー、楽天などを経て起業)
  • 事業内容:建築・テクノロジー融合型スマートホーム開発/スマート住宅システムの設計・ライセンス展開
  • 日本拠点:HOMMA Group 株式会社 〒151-0066 東京都渋谷区西原3丁目1-10 tefu YoyogiUehara

2026年2月3日、HOMMA Built-in Intelligence Session vol.1 開催!

代々木上原のHOMMAのオフィスでは、2月3日(火)に建築・デザイン関係者向けに、同社の ホームオートメーションシステム/ビルトイン・インテリジェンスに関する説明会/体験会「HOMMA Built-in Intelligence Session vol.1」を開催します。
概要は下記のとおりです。
応募フォームから参加したい回にお申込みください。

  • ●日時:2月3日(火) 第1回 13:00~15:00  第2回 16:00~18:00 ※第1回・第2回とも同じ内容です。
  • ●場所:HOMMA 代々木上原オフィス  〒151-0066 東京都渋谷区西原3丁目1-10 tefu YoyogiUehara
  • ●対象:建築家、デベロッパー、インテリアデザイナー/コーディネーター、リフォームプランナー、PM等、ハイエンドレジデンスに関わる建築関係者の皆様
  • ●応募フォーム:参加ご希望の方は、下記フォームよりお申し込みください。
  • https://forms.gle/R3Wa6qd4KmsmdakT8
  • ●エントリー締切: 第1次 1/7 / 第2次 1/22
  • お席に限りがございますため、先着順でのご案内となります。
  • 参加確定の方には、1月24日までにご案内をお送りいたします。

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