スマートホームがある日突然「ただの置物」になる⁉―― クラウド依存型スマートホームはリスクだらけ。建築統合型Home OSという最適解

 取材/LWL online編集部

スマートホームは便利で、先進的で、未来的なもの。そう信じて導入した住宅設備が、ある日突然、何も言わずに機能を失う──そんな事例が、いま世界各地で現実のものとなっている。

照明が点かない。アプリが起動しない。スマートロックが反応しない。
ハードウェアは壊れていないにもかかわらず、クラウドサービスが停止した瞬間、その家は「スマート」であることをやめる。
本記事では、海外・国内の実例をもとに、クラウド依存型スマートホームが孕む構造的リスクを明らかにし、建築統合型Home OSという、もう一つの選択肢を提示する。

海外で相次ぐ「クラウド停止=スマートホームサービス終了」

Insteon:一夜にして「沈黙」した家

2022年、米国のスマートホームブランドInsteonは、事前予告なくクラウドサーバーを停止した。
結果、世界中のユーザー宅で照明・センサー・自動化が一斉に機能停止した。

アプリはログイン不能。リモート操作不可。
「家が壊れたわけではないのに、使えない」。

後に事業は再建されたが、この事件は「クラウド依存型スマートホームの構造的脆弱性」を白日の下にさらした。

Wemo:2026年、静かに終わるスマートホーム

Belkinが展開するスマートホーム「Wemo」は、2026年1月で多数のスマートホーム製品のクラウド/アプリサポート終了を発表している。
照明、プラグ、スイッチ——ハードは残るが、スマートな機能は失われる。

代表的な事例を示したが、こうしたクラウドに依存したIoTガジェット型スマートホームのサービス停止は実は世界中で静かに増えている。

企業側を批判する声もあるが、企業の使命は利潤を追い続けることであり、経営判断としてスマートホーム事業停止・クラウド停止は充分にありうる。
これを批判することはできない。
住宅という人間のインフラをクラウドに依存する危険性を認識しておかなくてはならない。

そして、これは海外の話ではない──日本でも起きている。

マウスコンピューター「mouseスマートホーム」

国内でもスマートホームのサービスが終了したことがある。
マウスコンピューターがかつて展開していたクラウド依存型スマートホームサービス「mouseスマートホーム」が終了したことがある。

  • 製品販売終了
  • クラウドサービス終了
  • アプリ操作不可

IoTガジェット型スマートホームの大部分はクラウド依存型スマートホームとなるが、クラウドサービス終了は、すなわちこれまで使用していた「スマートな」機能が使えなくなるということだ。

なぜ、クラウド依存型スマートホームは危険なのか

制御の主権が住宅側に存在しない
事業継続と住宅機能が直結してしまう構造
サービス停止時に「代替」が効かないという致命傷

問題はクラウドそのものではない。クラウド「前提」で設計された構造である。
構造的な問題点は3つある。

  1. 制御の主権が住宅側にない
    → 住宅内の挙動が、住宅外のサーバーに依存している
  2. 事業継続=住宅機能の継続
    → 企業判断・採算・買収で家が止まる
  3. 停止時の代替が効かない
    → 「スマート」機能が使えなくなる

ガジェットなら許容できても、これでは住宅インフラとしては致命的である。

スマートホームは「サービス」ではなく「建築の一部」である

人間の生活の基盤・インフラをクラウドサービスにゆだねるリスク

当然と言えば当然なのだが、スマートホームは「ホーム」がつく以上、「サービス」ではなく「建築の一部」である。
当たり前だが、ガジェットとは前提となる条件も、必要となる要件も異なってくる。
なぜなら、「ホーム=住宅」は人間のインフラになるからだ。

本来、照明・空調・遮光・セキュリティは、30年、40年と長期にわたって使われる建築設備である。
それを、数年で終了する可能性があり、クラウドサービス前提で、ベンダーロックインされた仕組みにゆだねること自体が、設計思想として破綻している。

脱クラウド依存という選択肢。建築統合型「Home OS」を選択する

ラグジュアリー邸宅ではクラウド非依存型のHome OS、建築統合型スマートホームを選ぶべきである。

代表例が以下である。

これらHome OSに共通する思想は明確である。
「家はインターネットがなくても機能しなければならない」

KNX/BACnet/ECHONET Lite/Modbusという建築のためのプロトコル

これらのHome OSは、単体で完結しているわけではない。

その下位レイヤーには、建築・ビル・住宅設備分野で長年使われてきたオープンプロトコルが存在する。
KNX、BACnet、Modbus、ECHONET Liteなどである。

これらは、①クラウド非依存、②ベンダー非依存、③数十年単位での互換性を前提に設計された、建築のための言語だ。

正しいスマートホームのレイヤー構造とは何か

[UI/UX層] スマホ・タッチパネル・スイッチ
[Home OS層] Crestron / Lutron HomeWorks / HOMMA
[制御プロトコル層] KNX / BACnet / Modbus / ECHONET Lite
[物理設備層] 照明・空調・カーテン等窓廻りエレメント・シャッター・床暖房・給湯器・電気錠

この構造であれば、仮にクラウドが止まっても、アプリが終了しても、ベンダーが撤退しても家は動き続ける。

スマート「ホーム」はあくまでも建築の領域!

これからのスマートホームに必要なのは、「新しいUI」「派手なアプリ」「AIっぽい演出」などではない。

止まらないこと。
壊れないこと。
オープンプロトコルであること。

ラグジュアリー邸宅に相応しいスマートホームは、「IoTガジェットの集合体」ではない。

「ホーム」がつくのであるから、ガジェットではなく、あくまでも建築領域であることを常に思い起こしておく必要がある。
建築に組み込まれるべき「OS」であり、クラウドはあくまでメンテナンス時などの「補助的な役割」であるべきだ。

クラウド依存から脱却し、建築統合型Home OSとオープンプロトコルで家を設計すること。

それは贅沢ではない。
未来に対する、最も合理的な投資である。

スマートホームをめぐる問題── 赤外線、トグル、そして状態不可視
なぜ「IoTガジェット型スマートホーム」は、住宅インフラになりえないのか?

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