【スマートホーム/ホームオートメーション特集】建築統合型スマートホームとIoTガジェット型は何が違う? 「よくある誤解Q&A」

 取材/LWL online編集部

スマートホームを検討し始めたとき、多くの人が同じ地点で迷う。「スマートスピーカーやスマート家電を組み合わせたIoT型スマートホーム」と、「建築統合型スマートホーム」は、何がどう違うのか。そして、自分はどちらを選ぶべきなのか。

「操作」だけを比べれば、どちらも「便利そう」だ。
だが、この二つは似て非なるもの──というより、目指しているゴールそのものが異なる

本記事では、LWL onlineの読者から寄せられた数多くの疑問をもとに、建築統合型スマートホームとIoTガジェット型スマートホームの決定的な境目を整理する。

建築統合型とIoTガジェット型、その違いはどこにある?

まず大枠を整理しておこう。

  • IoTガジェット型スマートホームとは
    スマートスピーカー、スマート家電、ロボット掃除機などを後付けで導入し、アプリや音声操作で便利さを高めていくアプローチ。
  • 建築統合型スマートホームとは
    建築化照明、空調、床暖房、シェーディングなどの住宅設備を、新築時に最初から統合制御の前提で設計するアプローチ。スマホなどから操作をしても良いが、基本的には住まいが自律的に動作する。

この違いは「価格」や「規模」ではない。優劣でもない。
スマートホームという言葉を「ガジェットの集合」として捉えるか、「住まいのインフラ」として捉えるかという思想の違いである。

なお、「よくある誤解」で多いのはMatterに関する誤解である。これは昨日記事にした。

Matterネイティブデバイスで「スマートホーム」は構成できるのか?

また、改めて下記のリンクを掲示しておく。

Matterとは何か?──スマートホームの誤解とMatterをめぐる誤解を解く。

なお、これから展開する「よくある誤解」は、LWL onlineをお読みいただいている、設計士やデザイナー、インテリアコーディネーターの方から寄せられた質問をもとにしている。

よくある誤解Q&A—建築統合型スマートホームの視点から

Q1 MatterとKNX/DALI/BACnet/ECHONET Liteは競合関係なのか?

結論から言えば、競合ではない
Matterはガジェットやスマート家電がメーカーを越えて接続するための共通言語だ。
一方、KNXやDALI、BACnet、ECHONET Liteは、照明・空調・床暖房といった住宅設備が互いに通信し合う建築プロトコルである。

対象がそもそも異なるため、競合ではなく、また置き換え関係にはならない。
ここはまず知っておいてほしい。

Q2 「Apple Homeで足りる」と「Crestronが必要」の分岐点は?

分岐点は操作の簡単さなどではない。
制御思想と運用品質だ。

Apple Homeなどは日常的なIoTガジェットやスマート家電の操作には非常に優れている。
一方で、住宅設備を含めた統合制御、長期運用、拡張性まで考えると、Crestronなどの建築統合型のHome OSが必要になる。Home OSは住宅のインフラだからだ。

Q3 IoTガジェットを増やしていけば、建築統合型に近づくのか?

近づかない。
なぜなら、そもそもの設計の出発点が違うから。

IoTガジェット型は「後付け」を前提とする。
建築統合型は「最初から住宅インフラとして成立させる」ことを前提とする。
途中から方向転換することは、構造的に難しい。

Q4 Matter中心で住まい全体のスマートホームを構成するのは現実的か?

現時点では、住宅インフラは構成できない
Matterはあくまでもガジェットやスマート家電向けのプロトコルであり、建築化照明、床暖房、天井埋め込み型エアコンといった住宅設備には対応していない。
住宅設備のプロトコルはKNX/DALI/BACnet/ECHONET Lite/Modbusなどになる。
また、ラグジュアリー邸宅での要望が多い、噴水・照明・BGMを連動させたゲストへのウェルカムシーン演出や、ホームシアターの一括操作なども対応できない。
こうした設備機器にはプロトコルの他に、リレーやJEM-Aなどが必要になってくるが、リレーやJEM-Aに対応するIoTガジェット型スマートホームは現時点ではほとんど存在していない。

Q5 どんな人に建築統合型スマートホームを薦めたいか?

次のような価値観を持つ人には、建築統合型スマートホームが向いている。

  • 住宅をガジェットの集合体にしたくない
  • 空間の美しさや操作の静けさを重視したい
  • 10年、20年先まで使い続けたい
  • 将来の拡張や変更にも耐える構造を求めたい

ラグジュアリー邸宅に、IoTガジェットは似つかわしいのか

結論は明快だ。
ラグジュアリー邸宅の基盤は、あくまでも建築統合型スマートホームである。

重要なのは、ここに非対称性があるという点だ。
建築統合型スマートホームは、後からロボット掃除機やスマート家電を追加できる。
Matterを補助的な役割として使い、IoTガジェットを取り込むこともできる。

一方で、最初にIoTガジェット型スマートホームを選んでしまうと、後から建築化照明、床暖房、天カセエアコンなどの住宅設備を統合することはほぼ不可能になる。
プールのろ過の監視などもIoTガジェット型は困難だ。

この非対称性こそが、建築統合型とIoTガジェット型の決定的な違いである。

だからこそ「順番」が重要になる

建築統合型スマートホームは、最初に構造をつくり、後からガジェットを足せる。

IoTガジェット型スマートホームは、最初にガジェットを選ぶと、後から構造をつくれない。

この違いを理解することが、スマートホーム選びにおいて最も重要な判断軸だ。
今回取り上げた「よくある誤解」は、その入口として非常に価値のある問いである。

  • 取材

    LWL online 編集部

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