【スマートホーム/ホームオートメーション特集】家全体が「ひとつの音楽体験」になるとき──Sonosのマルチルームアンプ「Sonos Amp Multi」が切り拓く新カテゴリー≪建築統合オーディオ≫
取材/LWL online編集部
リビングや自分のリスニングルームだけで音楽を聴く時代は、すでに終わりつつある。海外のラグジュアリー住宅では、オーディオは「ひとつの部屋のリスニングシステム」としてではなく、「住まい全体の環境」として設計される。
エントランス、リビング、ダイニング、ベッドルーム、そしてバスルームやトイレに至るまで——空間を横断して、ひとつの音楽体験が流れる。
そんな建築統合型マルチルームオーディオの思想を、より本格的に、より現実的なものへと引き寄せるプロダクトが登場した。Sonosが発表した、プロフェッショナル向けマルチチャンネル・ストリーミングアンプ「Sonos Amp Multi」だ。

マルチルームオーディオは「贅沢」ではなく「設計思想」である
日本では、住まいの至るところで音楽を楽しめる環境=マルチルームオーディオは、「大掛かりで難しいもの」という印象がまだ強い。
しかし欧米のラグジュアリー邸宅の設計では事情がまったく異なる。
天井埋込スピーカーや壁内配線の敷設を前提として、Crestron や Control4 などのHome OS=ホームオートメーションシステムと連携し、生活動線や時間帯に合わせて、光環境と連動するなどして、音楽を「環境」として流し出す。
たとえば、朝はキッチンからダイニングへ穏やかな音楽がつながり、ゲストを迎えるときにはエントランスからリビング、テラスまで同じ楽曲がシームレスに流れる。パーティでは噴水やアウトドア照明が音楽と連動して、華やかな演出を添える。
ラグジュアリー邸宅では音楽は空間の品格を支える背景として存在する。
この発想において最も重要なのは、「どの機器を置くか」ではなく、どのように制御し、どれだけ柔軟に設計できるかだ。

家全体で音楽を聴くという文化──Sonosが築いてきた、建築統合型マルチルームオーディオの思想
米国発のオーディオブランドSonosは、日本ではサウンドバーやワイヤレススピーカーのブランドとして認知されることが多い。もちろん、その文脈でもSonosの確かな品質は周知されている。
しかし海外、とりわけ北米や欧州の住宅市場において、Sonosはまったく異なる文脈で語られることがある。それは、建築統合型マルチルームオーディオの中核を担う存在としてのSonosである。
そこでは、Sonosは天井や壁に埋め込まれたスピーカー、ラックに収められた制御機器、そしてホームオートメーションシステムと連携しながら、住まい全体に音楽を行き渡らせる。
北米や豪州、あるいは日本を除くアジアでは、ホームオートメーションやホームシアターをカスタムインストーラーがゼロから手がけ、カスタマイズして構築する「カスタムインストール」が非常にさかんだ。
Sonosは早くから、そうしたカスタムインストール(CI)市場において、「複雑な音響システムを、日常的に使えるものにする」役割を担ってきた。
Home OSの源流を辿る──「ホームシアター体験の質向上」から始まり、CEDIAが育んだ建築統合型スマートホームの思想
事実、海外のラグジュアリー邸宅や別荘など、ラグジュアリーな場の多くで、CrestronとSonosの組み合わせは、ひとつの「定番」として機能してきたのである。

個人的な体験 ──「ハワイの別荘では、家中で音楽が流れている」
ここで、少し個人的なエピソードを挿入したい。
それは2016年の秋のことだった。わたしがホームオートメーションの設計業務をスタートして間もない時期だ。ある設計の先生を解して、ウルトラ富裕層の顧客から相談を受けた。
相談の内容は下記になる。
「ハワイの別荘では家の中はどこでも音楽が楽しめます。スピーカーは全部で30か所くらい、それぞれ埋込スピーカーがステレオでセットしてある。別荘の管理会社に聞いたら、CrestronとSonosというブランドのシステムを使っているそうです。とても快適で居心地がいいので、日本の家でもこのふたつのブランドを使って、まったく同じような環境にしてもらって、快適で心地良い時間を過ごせるようにしたい」
ホームオートメーションの設計業務をしているので、Crestronは当然なじみが深い。Crestronという言葉を目にしない日はないほどだ。建築統合型スマートホームの世界では、制御の中核を担う「当たり前の存在」である。
だが率直に言えば、当時のわたしはSonosのことを知らなかった。
調べてみて、驚いた。Sonosはアメリカのマルチルームオーディオ市場、とりわけカスタムインストールの現場では欠かすことのできない存在だったのだ。
当時Sonosは「Connect」というストリーミングプレーヤーでCI市場に本格参入し、急速にシェアを伸ばしていた。ただしその頃はまだ日本法人が存在しなかった。
仕方なくわたしは個人輸入をしてSonos製品を取り寄せ、Crestronの制御下でどのようなことができるのか、テストを重ねることになった。
操作性、安定性、そして「誰が使っても破綻しないUI」。さらに、パワフルでいて繊細な表現も可能な音質。テストを通じて、確かにホームオートメーションと組み合わせるに足る完成度を持っていることを確認した。
そうこうしているうちに、Sonosは正式に日本市場へ参入する。前述の顧客宅には、最終的にSonos AMPが22台導入されることになった。

Sonos AMPという揺るぎない名機
Sonos AMPは、建築統合型マルチルームオーディオを現実のものにした名機だ。
ストリーミングとアンプを一体化し、天井埋込スピーカーをスマートに駆動する。わたしがホームオートメーションの設計業務をしていた頃、必ずスペックしていたのもSonos AMPだった。
ただし設計者の視点から見れば、課題も明確だった。AMPはステレオ出力(2ch)しか持たない。ゾーンが増えれば、その分AMPを増やす必要がある。
わたしに相談してくるエンドユーザーのクラスとなると、たいてい11部屋以上、10LDK以上の規模であり、1件あたり導入するSonos AMPはおおよそ10〜20台になっていた。中には、30台ほどSonos AMPを導入したラグジュアリー別荘もあった。
規模が大きくなるほど、ラックスペース、配線、電源、そして排熱設計が問題になってくる。
「マルチルームオーディオを本格的に設計するなら、マルチチャンネル専用のSonosが欲しい」
わしは常日頃、そのような想いを抱いていた。おそらくそれは、ラグジュアリー邸宅の設計に関わる多くのシステムインテグレーターが、長年感じてきた「願望」でもあっただろう。
そして登場した「Sonos Amp Multi」──「設計者のためのSonos」が、ついに姿を現した

そして2026年、その「待望」への明確な答えとして登場したのがSonos Amp Multiだ。
この製品は、偶然生まれたものでも、単なるラインアップ拡張でもない。Sonos Amp Multiは、システムインテグレーターとの綿密な対話を通じて生まれたプロダクトだ。
誕生の背景:変化し続ける住まいに寄り添うために
オープンな間取り、多目的化する居住空間、可変性を前提とした住まい。そうした現代住宅の変化に対し、複雑すぎず、しかし妥協のない音質と制御性を備え、将来的な拡張にも耐えうる「現実的で、長く使えるマルチルームオーディオの中核」が求められていた。
Sonos Amp Multiはその要求に真正面から応えた存在だ。
CEOが語る、Amp Multiの本質
SonosのCEOである トム・コンラッド は、Sonos Amp Multiについて次のように語っている。
「お客さまは長年にわたり、住宅向けインストール業界で最も人気の高い2チャンネル・ストリーミングアンプであるSonos Ampの信頼性と汎用性を高く評価してきました。Sonos Amp Multiは、この思想をより大きなシステムに広げ、複雑な設計であっても、構築や設置の面でより効率的に、そして日常的に使いやすいものにします」
このコメントが示しているのは、Sonos Amp Multiが「Ampの上位機種」ではなく、「Ampの思想を拡張する存在」であるという点だ。
Sonosが一貫して守ってきた「日常的に使えること」「家族全員が迷わないこと」「住まいの変化に寄り添えること」。それらの思想を大規模・多ゾーン邸宅でも成立させるための回答がSonos Amp Multiなのである。
マルチチャンネル化がもたらす、設計思想の転換
Sonos Amp Multiは、1チャンネルあたり125Wの出力を持つ8chアンプであり、最大4ゾーンを別々に出力でき、1台で最大24台の埋込スピーカーをドライブすることが可能である。
だが設計者の視点で重要なのは、単なるスペック面だけではない。
これまでのAMPベースの構成では、「ゾーン=アンプ1台」という発想が前提だった。Amp Multiでは、その前提が変わり、たとえば、下記のような要件に対応する。
- ゾーン構成を後から柔軟に変更できる
- 出力の割り当てを設計段階で最適化できる
- コンポーネントの物理的な台数を減らし、ラック設計をシンプルにできる
これは、マルチルームオーディオを「機器単位」ではなく、「システム単位」で設計できるようになったことを意味する。


インテグレーターにとってのSonos Amp Multiという存在
Sonos Amp Multiは、明確にプロフェッショナル向けに設計されている。たとえばラック設置を前提とした1.5Uシャーシは、設計実務者、あるいは施工者の視点から見ても扱いやすい。
また、ファンレス設計による静音性と信頼性、GaN電源アーキテクチャによる高効率・低発熱。これらはすべて、「施工後、長期間トラブルなく動き続けること」を重視した設計だ。
さらに、インテグレーター向けには、各ユニットを識別するための可聴チャープ音が用意され、ゾーン・出力・音源を一元管理できるアプリ設計や、10バンドEQ/ディレイ調整が可能な「ProTune」ツールなど、現場の作業効率と最終的な音質調整の両立が図られている。
「設計 → 施工 → 調整 → 運用」という住宅オーディオの全工程をSonosが熟知していることが明確にわかる。そして、インストーラーやシステムインテグレーターからの意見を丁寧に反映した証拠でもある。



「静けさ」を守るという、ラグジュアリーへの配慮
特筆すべきは、Sonos Amp Multiがファンレスである点だ。ラグジュアリー住宅において、音響機器が発する「わずかな駆動音」や「熱」は「体験」を確実に損なう要因となる。
ラグジュアリーは崩壊し、ウェルネスが破綻する。
Sonos Amp Multiは自然対流冷却と高効率設計により、機械音を発さず、メンテナンス負荷を下げ、長期間安定して稼働することを実現している。
これは単なる技術仕様ではなく、ウェルネスと快適性を支えるための設計思想にほかならない。
Sonos Amp Multiが示す、次のマルチルームオーディオ像
Sonos Amp Multiが象徴するのは、音楽が「操作するもの」から「空間に溶け込むもの」へと変わる瞬間だ。
朝のキッチン、昼のリビング、夜のバスルーム、深夜のベッドルーム。
あるいは、ゲストを迎えるウェルカムモードでは、エントランスからリビング、テラスまで、同じ音楽が一斉にゲストを讃える。
そこに必要なのは、リモコンでもスマートフォン操作でもない。感動を呼び起こす「体験」であり、イ居心地の良い「時間」である。
建築とテクノロジー、インテリアとウェルネス。その交点に、マルチルームオーディオは確かに存在している。
Sonos Amp Multiは、その思想をようやく日本でも「本気で選べる」形にしたプロダクトだと言えるだろう。
Sonos AMP Multi FAQ

Q1. マルチルームオーディオとは何ですか?
A. 住まいの複数空間(リビング、寝室、洗面、バス、トイレ等)で、同じ音楽を同期再生したり、部屋ごとに別の音楽を流したりできる仕組みです。オーディオを「部屋の装置」ではなく「住まいの環境」として設計するスタイルです。海外のラグジュアリー邸宅では広く普及しています。
Q2. 「ゾーン」とは何を指しますか?
A. 同じ音量・同じ音源で一体運用する「音を流す場所の単位」です。例えば「LDK=1ゾーン」「主寝室+WIC=1ゾーン」のように、生活動線に合わせて設計します。
Q3. Sonos Amp Multiは、従来のSonos AMPと何が違いますか?
A. AMPは基本的に2ch(ステレオ)で「ゾーン=1台」になりがちでした。Amp Multiは8chを束ねて最大4ゾーンを柔軟に構成でき、出力の割り当てを最適化しやすい点が大きな違いです。
Q4. なぜ「プロフェッショナル向け」と言えるのですか?
A. 19インチラック設置前提の筐体設計、施工・識別を支援する仕組み、細かなチューニング機能など、設計→施工→調整→運用の実務ワークフローを前提に作られているためです。
Q5. ファンレス設計は、住まいにとってどんなメリットがありますか?
A. 生活空間で問題になりやすい「わずかな駆動音」を発生させにくく、静けさを損なわずに運用できます。埃や可動部由来のトラブル要因も抑えやすく、長期安定稼働の観点でも有利です。
Q6. どんな住まい・ユーザーに向いていますか?
A. 10部屋規模以上の邸宅、別荘、複数フロア、来客シーンが多い住まいなど、「家全体の音環境」を設計したいケースに向きます。ウェルカムモード等、シーン運用を重視する方ほど効果が出ます。
Q7. 導入時に最初に決めるべきポイントは?
A. 「どこを何ゾーンにするか」「天井埋込の前提(配線・ラック・電源・将来拡張)」「照明や空調と同様に“設備としての音”をどう設計するか」です。ここが固まると、機器選定はブレにくくなります。
-
-
取材
LWL online 編集部