【スマートホーム/ホームオートメーション特集】スマートホームシアターとは何か?──ホームオートメーションの源流から再定義する制御中枢
取材/LWL online編集部
ホームオートメーションの源流は、実はホームシアターにあった。照明、遮光、AV機器をワンタッチで統合制御する「シーン制御」は、住宅における統合制御思想の出発点だったのである。では、現代のスマートホームにおいてホームシアターはどのような位置づけにあるのか。本稿では、AVの進化という視点ではなく、ホームオートメーションの観点から、スマートホームシアターを「制御中枢」かつ「最大負荷環境」として再定義する。
ホームオートメーションの源流はホームシアターにあった
かつてLWL onlineでは、こう記した。
「ホームオートメーションの源流は、ホームシアターにある。」照明を落とし、スクリーンを降ろし、プロジェクターを起動し、AVアンプを順序立てて立ち上げる。
複数の機器をワンタッチで統合制御する―この「シーン制御」こそが、住宅におけるホームオートメーションの出発点だった。
ホームシアターは単なる娯楽設備ではなかった。それは、住宅内で最初に本格的な統合制御が実装された空間だったのである。
そして今、その関係は再び重要な意味を持ちはじめている。
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「スマート」ホームシアターはAVの延長だけでは語れない
ホームシアターは映像機器と音響機器の技術の高度化、規格の更新によって語られることが多い。4K、8K、HDR、Dolby Atmos──技術進化の中心は常にAV機器側にあった。しかし、ホームオートメーションの視点から見ると、その理解は不十分である。
なぜなら、ホームシアターとは住宅内で最も多くの制御要素が同時に動作する空間だからだ。
映画を再生する、ホームシアターの裏側で何が起きているのか。
照明が段階的にフェードアウトする、遮光ブラインドが自動で閉じる、空調が静音モードに切り替わる、AV機器が順を追って起動する。これらは独立して動いているのではない。
映画に没入する体験のために、遅延なく、破綻なく連動しなければならない。
ここにホームオートメーションの成熟度が現れる。
ホームシアターとは単なる「AV設備」ではない。統合制御アーキテクチャの集約点である。

なぜIoTガジェット型では成立しないのか
IoTデバイスは単体では優秀だ。しかし、照明はクラウド、空調は別アプリ、AVは個別リモコンという構造では、瞬時の同期は難しい。そもそも赤外線での通信に依存している時点で確実性が担保できず、論外である。
ホームオートメーション視点では、ローカル制御、低遅延通信、統合UI、階層化された制御アーキテクチャが不可欠になる。
これらが成立することで、ホームシアターはHome OSの実装空間として機能するのだ。
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スマートホームシアターは「最大負荷環境」である
ラグジュアリー邸宅のホームオートメーションで最も負荷が集中するのはどこか? それは間違いなくホームシアターだ。少し挙げてみよう。
ネットワーク負荷
高ビットレート映像やリアルタイム音声処理、低遅延通信などによって、ネットワークの負荷も大きくなる。
制御負荷
照明フェード、遮光同期、電源シーケンス、AV機器の制御を順序をつけて遅延なく行うわけだから、制御の負荷は当然大きい。
UI負荷
ワンタッチ操作での全体制御と遅延ゼロのレスポンスが必要となる。
これらが同時に安定動作しなければならない。つまりホームシアターはHome OSのストレス空間なのである。
ホームシアターが破綻なく機能する住宅は統合制御設計が成熟している。

建築統合という視点
建築統合という視点からのホームシアターは、遮光性能や電源分離はもちろんのこと、機器放熱、ラック配置、配線経路の確保など、少なくとも実施設計前には組み込まれるべき要素が多い。
そういう意味でも、ホームシアターは建築と制御設計の交差点なのである。

源流から中心へ、そして設計の起点へ
ホームオートメーションは、かつてホームシアターから始まった。照明を落とし、スクリーンを降ろし、機器を順序制御する。複数の設備を「ひとつの体験」のために統合するという発想は、ここから生まれた。
そしていま、スマートホームの成熟度を測る指標として、再びホームシアターが中心に戻ってきた。
ホームシアターは、住宅内最大の統合制御空間であり、エンターテインメント制御中枢であり、Home OSの完成度を可視化する空間であると同時にHome OS設計の起点でもある。なぜなら、最も高い負荷に耐えうる設計は、他のすべての空間を包含できるからだ。
ホームシアターが成立する住宅は、リビングも、寝室も、ダイニングも、統合制御の思想で設計されている。次世代スマートホームを構想するのならば、まず「最大負荷空間」をどう設計するかを考えるべきだ。
源流は再び中枢へ帰還した。そしてその中枢は住宅OSの未来を決定する。
「スマート」ホームシアターとは単なるホームエンターテイメント空間ではない。
それは住宅というシステムの思想を最も純粋な形で露出させる空間である。
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