【スマートホーム/ホームオートメーション特集】AIスマートホームとは何か? CASPARからSwitchBot AIハブ、Josh.aiまで徹底解説。生成AI時代の「理解する住宅」
取材/LWL online編集部
AIスマートホームは、単なる自動化の時代を終え、「住まいの文脈」を理解する段階へと進みつつある。かつて日本でも話題となったCASPARから、最新のSwitchBot AIハブ、そしてJosh.aiまで。生成AIと建築統合が交差する現在地を、わかりやすく整理する。
AIスマートホームとは? 従来のスマートホームとの違い

生成AIが住宅に入ると何が変わるのか?
いま、「AIスマートホーム」という言葉が再びメディアを賑わせている。各種ニュースでは「ローカルAI処理」「生成AI統合」「意図理解型ハブ」といった言葉が並び、AIが住宅を理解する段階へ進化していることが語られている。
AIスマートホームとは何か?
それは、従来のスマートホームのように家電や照明を自動制御する仕組みを超え、生成AIや機械学習を活用して住宅内のデータを解析し、「住まいの文脈」を理解しながら空間を最適化する次世代スマートホームである。
現状のスマートホームとの違いは、単なる条件設定ではなく、時間・行動履歴・環境情報を統合して意味を推論する点にある。
快適性向上や省エネといったメリットが期待される一方で、プライバシーや誤推論といったデメリットも指摘されている。こうした状況において、いまAI住宅は、「操作する家」から「理解する家」へと進化の過程にある。
こうした状況を受けて、LWL onlineでは、先日、『住宅に入り始めたAI。いよいよ住まいを理解し始める?』という記事を公開した。
【スマートホーム/ホームオートメーション特集】住宅に入り始めたAI。いよいよ住まいを理解し始める?
だが、日本の住宅市場でこの問いが最初に提示されたのは、実は10年ほど前のことだった。それが CASPAR(キャスパー)である。
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株式会社エコライフエンジニアリングのニュースリリース
CASPARという革命、そして「早すぎたAIスマートホーム」

日本でも話題になったAI住宅の原点
いまから10年近く前、2017~2018年頃、CASPARは「AIスマートホーム」という表現で紹介され、国内メディアでも取り上げられていた。
実はわたし自身もCASPARを体験したことがある。2017年の秋、デベロッパーの方と一緒に、新宿のマンションの一室を改装したショールームを訪れ、実際にデモを見ながら説明を受けた。
CASPAR(Caspar.AI)は、米国シリコンバレー発のAIスマートホーム企業として2010年代後半に注目を集めた存在だ。住宅内のセンサーやカメラ、環境データを統合し、居住者の生活パターンを学習して最適な環境を自律的に生成する──その思想は当時としては画期的だった。
特に米国では、シニア向け住宅や集合住宅への導入を通じて「住まいが見守る」というコンセプトを具体化し、西海岸を中心に実績を重ねていた。
早すぎた「AI × スマートホーム」。時代に先駆けた!

一方、日本では2018年前後に不動産デベロッパーと連携した導入例が話題となったものの、市場全体に広く普及するには至らなかった。
現在、米国では高齢者住宅やプロパティテック領域で技術活用が継続しているものの、一般消費者向けの主流プラットフォームとして大きく展開している状況ではない。日本市場でも目立った展開は見られない。むしろCASPARが掲げた「AIが生活を学習する住宅」という理念が、今日の生成AI統合型スマートホームへ思想的に引き継がれていると見るほうが自然だろう。
当時のCASPARは、照明・空調・AV・セキュリティを統合制御するだけでなく、住まいの各所に設置されたカメラを通じて、クラウド上のサーバーが各住宅の生活パターンを学習し、シーンを最適化するという技術を掲げていた。
ショールームでは、タブレット型インターフェースを操作すると、「Welcome」シーンに切り替わり、玄関からリビングへと照明が順次点灯し、音楽がフェードインし、空調が快適温度に自動調整される、といった一連の流れを体験した。それは単なる「便利な一括操作」ではなかった。住まいを一つの知的システムとして扱う思想が確実にそこにはあった。
当時のニュースでは「住宅が住人を学習する」「生活パターンに合わせて最適化するAI住宅」といった言葉が並び、未来感に満ちていた。
しかし、技術インフラはまだ十分とは言えず、AIの推論能力も限定的で、クラウド依存型処理への不安も大きかった。CASPARは、日本市場に深く根付くには少し早すぎたのである。
だが重要なのは、あの時点で「住宅が理解する」という問いが既に提示されていたことだ。
SwitchBot AIハブとは?ローカルAI処理の衝撃

VLM(視覚言語モデル)とは何か
それから約10年。生成AI、自然言語処理、視覚言語モデル(VLM)、エッジAI──技術環境は大きく進化した。
その象徴の一つが、先日発表されたSwitchBot AIハブである。SwitchBotの新型ハブはVLMを搭載し、カメラ映像やセンサー情報をローカルで解析して、「何が起きているのか」を文章レベルで理解・記録する設計を採用している。これは、CASPARが志向していた「生活の文脈理解」が、ようやく実装可能な段階に入ったことを意味する。
かつては「人感センサーが反応→照明ON」という条件制御だったものが、いまや「家族が帰宅し、キッチンで料理を始めた」「ペットがリビングで遊んでいる」といった「意味単位の出来事」として解釈される。
スマートホームが扱う単位は、「信号」から「意味」へと変わりつつある。
家が「考える」時代へ──SwitchBot「AIハブ」に見る、「スマートホーム」の進化と課題
Josh.aiと建築統合型スマートホームの未来

生成AIによる空間演出とCrestron連携が意味する建築統合
さらに進化しているのが、自然言語理解を中核に据えた建築統合型プラットフォームだ。
米国のハイエンド市場で存在感を示すJosh.aiは、単なる音声コントロールではなく「文脈理解型制御」を掲げている。
「少し落ち着いた雰囲気にして」という曖昧な発話に対し、照明の色温度や照度、シェード、音楽などを総合的に推論し、空間を生成する。ここでは「指示」や「命令」ではなく、「意図」が入力になる。これはCASPARの時代には実現が難しかった領域だ。
前回の記事(「AIはついに『住宅』を理解し始めたのか?」)で触れたように、AIはすでに映像やセンサー情報を「意味として要約」できる段階に到達している。
AI×建築統合で何が変わるのか

次の段階は何か。
それは、建築設計そのものとAI推論を結びつけることだ。
たとえば「動線設計×行動予測」「光環境・温熱環境×生体リズム推定」「空気環境×健康データ」。こうした建築とAI推論が交差する未来において、住宅は単なる設備の集合ではなく、「知性を宿す環境」へと変わる可能性がある。
CASPARは日本市場ではなかなか受け入れられなかった。だが、その思想は決して間違っていなかった。当時は技術が追いついていなかっただけだ。 いまは違う。ローカルAI処理、生成AIによる意図理解、マルチモーダル解析、そしてオープンプロトコル統合。これらが揃った現在、CASPARが内包していた「AI的学習住宅」はようやく本格化しつつある。
住宅はどこまで人を理解するのか

そして「意味の設計」へ
AIスマートホームの本質は、派手な自動化ではない。生活の文脈を理解し、意図を推論し、空間を自律的に調律する──いわば「意味の設計」にある。
CASPARはその問いを投げかけた。SwitchBot AIハブはそれを実装段階へ押し上げた。Josh.aiは意図理解の高度化を示し、Crestronとの連携を通じて建築統合の現実解を模索している。
AI×建築統合型スマートホームは、いまようやくCASPARが種をまいた「理解する住宅」という原点に追いついた。
ここから先は、住宅がどこまで人間の生活に寄り添い、どこで人間の主導権を残すのか──そのバランスを問う、新しい設計思想の時代へと入っていくことになるだろう。
AIスマートホームに関するよくある質問(FAQ)

Q:AIスマートホームとは何ですか?
AIスマートホームとは、生成AIや機械学習を活用し、住宅内のセンサーやカメラ、環境データ、さらには生体データを解析して「住まいの文脈」を理解しながら空間を自動最適化する住宅システムのことです。従来のスマートホームが条件設定による自動化であったのに対し、AIスマートホームは状況や意図を推論して制御する点が大きな違いです。
Q:CASPARは今どうなっていますか?
CASPAR(Caspar.AI)は米国発のAIスマートホーム企業で、現在も主に高齢者住宅やプロパティテック分野で技術活用が続いています。ただし、日本市場では大規模な普及には至っておらず、一般消費者向けの主流プラットフォームとして広く展開している状況ではありません。ただし、その思想は現在の生成AI型スマートホームに引き継がれています。
Q:SwitchBot AIハブとは?
SwitchBot AIハブは、視覚言語モデル(VLM)を搭載し、カメラ映像やセンサー情報をローカルで解析して「何が起きているか」を文章レベルで理解できるスマートホーム中枢機器です。従来の条件制御型ハブとは異なり、意味単位で状況を解釈できる点が特徴です。

Q:Josh.aiとは?
Josh.aiは米国の高級住宅市場向けAI音声制御プラットフォームです。自然言語を理解し、「少し落ち着いた雰囲気にして」といった曖昧な発話から照明・シェード・音楽などを総合的に推論し制御します。意図理解型スマートホームの代表例といえます。
Q:AIスマートホームのデメリットはありますか?
AI住宅には快適性向上や省エネ、見守り機能といったメリットがありますが、プライバシーの懸念、誤推論のリスク、初期導入コストの高さといったデメリットもあります。どこまでAIにゆだねるべきかを設計段階で検討することが重要です。また、AIは進歩が著しいため、設計段階で可能なことが増えていく可能性があり、どこまで採用すべきか悩みどころです。これはメリットでもありますが、デメリットにもなります。

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