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“音の居場所”はどこか? 町田瑞穂ドロテア氏がKEF Music Galleryで再定義する、インテリアと音の幸福な関係

オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子 

上質な家具をしつらえ、やわらかな照明を灯す。理想の住まいを追求するプロセスにおいて、私たちは視覚的な完成度に心血を注ぐが、果たして“音”についてはどうだろうか。先日、東京・青山の「KEF Music Gallery」にて、インテリアコーディネーター・町田瑞穂ドロテア氏を迎えて開催されたトークイベントは、住宅設計で後回しにされがちな「音と空間」の関係を鮮やかに再定義する場となった。当日の模様をレポートしていこう。

英国のエンジニアリングとデザインの邂逅

会場である東京・青山の「KEF Music Gallery」に足を踏み入れると、ギャラリーに設置されたKEFスピーカーの高品位なサウンドが来訪者たちを包んでいた。 

©Nacása & Partners

「ライフスタイルが激変する今、音はどうあるべきか」 

イベントの冒頭、KEF Japanの友田由紀子氏は、挨拶と共にそう問題提起する。 

1961年、英国ケント州の金属工場「Kent Engineering & Foundry」の構内で産声を上げたKEF。その名は今や、オーディオ界において革新的な音響テクノロジーの代名詞的存在だ。点音源の理想を追求し、自然な音の広がりを実現する同軸ドライバー「Uni-Q」は、ブランドの象徴となっている。 

友田氏は「時代によって異なる、多様なライフスタイルを思い描きながら、KEFはスピーカーを開発してきた」と、その歩みをアピール。そう、KEFスピーカーの魅力は技術のみに留まらない。 

ロス・ラブグローブやマイケル・ヤングといった世界的デザイナーとのコラボレーションによってデザインされた同社のスピーカーは、単に音を鳴らすだけの箱ではなく、空間を彩る「アートピース」としても存在感を誇る。 

これは、本イベントのテーマである「インテリアの中に音の場所をどう作るか」に対し、スピーカーのデザイン面から対応した実例と言えよう。 

ウェルネスとしての音響設計

また、イベント会場となった「KEF Music Gallery」自体が、建築事務所「クライン ダイサム アーキテクツ」が“音響とアートの融合”を目指して作り上げた建築であることにも注目だ。 

©Nacása & Partners

イベントには、実際に設計を手がけた同社のアストリッド・クライン氏とマーク・ダイサム氏が登壇し、現代の空間における“音のウェルネス”の重要性を説いた。 

「たとえば無機質なモルタル床や露出壁の空間は、音が反射しやすい。そこで会話をすると、聴こえにくくてストレスフルです。対して、音が整った空間はコミュニケーションがしやすくて心地よい。音の響き方は、そこに住む人のウェルネスに直結するのです」(アストリッド氏) 

現在のKEFのオーナーであるビクター・ロウ氏は、ダイサム氏曰く「サウンドオタク」とのことだが、そんな彼の徹底したこだわりがこのギャラリーに反映されている。建物内は、5つの異なるコンセプト・ルームで構成され、リサイクルフェルトボードや吸音材として機能する本棚の配置など、建築と音響が完璧なパートナーシップを結んでいる。 

また大事なのは、「いわゆるハイファイ・マニア向けじゃない空間を作り上げた」と語るダイサム氏の言葉。 

©Nacása & Partners

特筆すべきは、会場の1階と2階の設計である。普段はガラス窓から自然光を取り入れ、KEFのスピーカーがオブジェのように佇むギャラリーとして機能しているが、実はすべての窓に自動昇降型のブラインドが設置されている。音楽を奏でる瞬間、ブラインドが静かに下り、ガラスの反射を抑えたリスニングルームへと変貌するのだ。アート体験と音楽体験を鮮やかに両立させる、二段構えの設計である。 

©Nacása & Partners

そして、このアート空間と融合する音楽は、KEFが長年培ってきたエンジニアリングの歴史を乗せて響く。KEF創業者のレイモンド・クック氏は、かつて英国放送協会(BBC)のエンジニアとして、人の声をいかに自然に再現するかを追求した。 

その「原音再生」への執念は、現在もブランドの核となる同軸ドライバー「Uni-Q」に受け継がれている。KEF Japanの岩戸將和氏は、「音が良ければそれでいいという硬派なエンジニアリング・ファーストの時代を経て、現代的なデザインの美学が融合したのが現在のKEF」と語る。 

1セット2,000万円を超えるハイエンドモデルから、3万円台のポータブルスピーカーまで、製品のラインナップは非常に幅広い。中でも、米国で普及している「壁埋め込みスピーカー」への注力は、インテリアの意匠を損なわず空間を音で満たす、現代のラグジュアリー住宅における最適解といえるだろう。 

では、そんな“音”はいかにして私たちの私的な空間=インテリアに溶け込んでいくのか。そのヒントを、KEFの音に魅せられたというインテリアコーディネーター・町田瑞穂ドロテア氏が解き明かしていく。 

町田瑞穂氏が語る、暮らしと“音”の関係

「インテリアにおける音の居場所について」をテーマに語り始めた町田氏は、まず自身の中にある“音”の思い出について触れた。 

「私は朝起きてウォーキングするのが日課なのですが、そのときに聴こえてくる自然の音や鳥の声が大好きなんです。聴いているとすごく心地良くて。 
私はスイスで生まれているんですが、母は赤ちゃんの私をベビーカーに乗せてよく森の中を散歩していたそうです。もちろん自分にはその記憶はありません。でもきっと、そのときに聴いた鳥の声とか風の音、森のそよぎ、そういう“音”が心に刻まれていて、今も生きているんじゃないかと思います」 

町田氏の言葉通り、音は記憶の奥底に原風景のひとつとして刻まれ、潜在意識の中にある心地良さにつながっている。そんな町田先生は、KEFのスピーカーと出会ったときのことを、こう振り返る。 

「仕事を兼ねて、家電量販店のスピーカー売り場でさまざまなスピーカーを試聴したことがあったのですが、実は私、高音が耳に刺さるのが苦手で。けれど、KEFのスピーカーは高音が優しく、同時にしっかりした低音で空間を包み込んでくれて、一発で気に入りました。 
デザイン目線で見ても、中央にある同軸Uni-Qユニットがエンブレムのような美しい意匠を纏っていて、とても魅力的です」 

このとき町田氏が出会ったのは、KEFの「LSX II」だった。同軸Uni-Qドライバーを搭載した、デスクトップサイズのコンパクトなHiFiスピーカー。Wi-Fi/Bluetoothのほか、USB-C/光端子、さらにHDMI ARCポートも装備し、スマホからテレビまで多様なデバイスと接続できる多機能モデルだ。 

トークショーの解説役として登壇したLWL onlineの川嶋編集長は、同軸Uni-Qドライバーの生み出す高クオリティな低音の響きについて、「低音は音の基礎」と説明した。「低音がしっかりしていると、空間に響く音のクオリティは上がる。低音は耳から聴くだけでなく、その振動を受けた体でも聴いているんです。そう考えると、音は空間の心地良さを作る素材のひとつになるのではないでしょうか」(川嶋氏) 

その言葉に町田氏も頷きながら、インテリアにおける音の提案について、プロとしての葛藤と新たな可能性を語った。  

「インテリアにおいて、光や香りと同じく、“音”も目に見えない大切な要素ですが、コーディネーターが提案するときにはどうしても後回しになりがちでした。けれど、これからの豊かな暮らしを考えるとき、“音”というレイヤーは欠かせなくなってくると思いますね」(町田氏) 

現在の建築・住宅のトレンドの中にある、「スマートホーム」という大きな潮流。ホームオートメーションの中に、“音”も組み込まれていけば、それはひとつのエンタメになる。町田氏はインテリアコーディネーターの目線で、「インテリアを作るときに音環境をどう提案するか」を説いた。 

「これからは、朝起きた時の音楽とか、お客様をもてなす音楽といったように、スマートホームと連動して生活に音楽を取り入れていく暮らしをデザインしていくのも良いと思います。そこで大事なのは、インテリアコーディネーターがどのタイミングで音環境を作るか。 
もちろん理想は、KEFの埋め込みスピーカーのような製品を、設計段階で組み入れられたらベスト。ただ、予算の兼ね合いで難しい場合もあります。しかしそんなときでも、LSX IIのような音質とデザイン性を両立する単体製品を“あとから追加する”という選択肢が立ち上がります。 
照明などのインテリアアクセサリーを決めていく段階で、こういった後付けできるスピーカーを提案するのも良いと思いますね」(町田氏) 

“音”は、空間という素材を構成する、最もエモーショナルなエッセンスなのだ。 

没入と静寂。五感を研ぎ澄ます体験

イベントのラストは、ギャラリー内のオーディオルームを巡る試聴ツアーが開催された。そこで体験した“音の風景”を記して本記事を締めくくろう。 

中2階にあるカジュアルなリビング風の試聴スペース「THE WIRELESS HIGH-FIDELITY LOUNGE」では、ハイエンドサウンドバー「XIO」のデモが行われた。電源とHDMIケーブルのみという簡潔なシステムながら、映画『ゲーム・オブ・スローンズ』の迫真の重低音が空間を震わせる。 

一方、3階のハイエンドシアタールーム「THE EXTREME THEATRE」では、壁埋め込みスピーカーによる7.2.4chサウンドを体験。音を透過するサウンドスクリーンから放たれる『ブレードランナー 2049』の臨場感は凄まじく、もはや映画の中に入ったかのような錯覚を抱かせた。 

そして極め付けが、地下1階のプレミアムなオーディオルーム「THE ULTIMATE EXPERIENCE ROOM」だ。この部屋では、鏡面仕上げのアルミ削り出し筐体による巨大スピーカー『MUON』が、ビートルズからベルリン・フィルのオーケストラまで究極のサウンドとして響かせる。 KEFの理想の音場作りの思想を、デザイナーのロス・ラブグローブが具体化したその佇まいとサウンドは、まさにアートと音楽の融合した姿だった。 

理想の住まいを完成させる最後のピース。それは、目に見えない“音”という贅沢な素材なのかもしれない。五感を研ぎ澄ます音の居場所を見つけに、ぜひ一度、青山のKEF Music Galleryへ足を運んでみてはいかがだろうか? 

  • オーディオ&サブカルライター

    杉浦みな子

    1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/

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