ミラノの大空のように伸びやかに羽ばたく~意匠照明ブランドFirmamento Milano~
fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人
東京・赤坂のJAXSON(ジャクソン)・HIDEO(ハイデオ)ショールームには、自由闊達で革新性に富んだ照明器具が展示されている。イタリア・ミラノを本拠地とするFirmamento Milano(フィルマメント・ミラノ)の製品群。ミラノの大空を意味するこの照明ブランドについて詳細を探っていこう。
長きにわたりイタリアのインテリアを支えた重鎮の新たな挑戦
Firmamento Milano(フィルマメント・ミラノ)は、2017年にCarlo Guglielmi(カルロ・グリエルミ)が立ち上げた照明ブランド。その名はミラノの大空を意味し、広大な空のように自由で豊かな発想と美への深い洞察をもとに、著名な建築家やデザイナーによる革新的な意匠照明を多数世に放っている。
グリエルミは長年にわたりイタリアのインテリアを率いてきた重鎮だ。「ミラノサローネ」の社長を11年務め、ミラノサローネの母体となるイタリア家具工業連盟の照明部門「アッソルーチェ」元代表、イタリア高級ブランドを守る知的財産協会 「INDICAM」の元会長、イタリアラグジュアリー製品協会「Altagamma(アルタガンマ)」創設者、イタリアを代表する照明ブランド「Fontana Arte」の社長を歴任し、70歳を過ぎてからの新たな挑戦が、このFirmamento Milanoなのである。
国内総代理店は株式会社JAXSON。バスタブブランドJAXSONおよびHIDEOのデザイナー清水秀男さんが、グリエルミとイタリアで出会い共鳴してタッグを組む唯一のブランドだ。JAXSON・HIDEOのTOKYO SHOWROOMとともにHIDEOミラノスタジオにもFirmamento Milanoの製品がディスプレイされている。






[Carlo Guglielmiプロフィール]
ミラノのカトリカ大学在学中から、家業であるプラスチック射出成形金型設計の事業に携わり、1973年から1978年にかけて複数企業で管理職を務める。1979年から2011年まではFontanaArteのゼネラルマネージャー、CEO、社長を歴任。在任中にはCharles Williamsというペンネームで「Avico」「Amax」「Elvis」の照明デザインも手がける。2002年から2008年にかけてアッソルーチェ会長、フェデレグノアレド副会長を務め、2008年から2012年にはミラノ国際家具見本市の会長、2009年以降はCEOを兼任。1997年にアルタガンマを創設し、現在も名誉副会長としてデザイン文化の発展に尽力している。1999年にはその功績が認められ「コンパッソ・ドーロ賞」を受賞。2011年にはイタリア大統領から「コメンダトーレ・アル・メリート・デッラ・レプッブリカ」の称号を授与された。2001年から2013年までインディカム会長を務め、現在も名誉取締役として活動を支えている。現在は兄パオロとともにワイナリーAzienda Agricola Vinicola San Bernardo di Gaviを運営し、2017年に設立したFirmamento Milanoの社長として照明ブランドの舵取りを担う。

建築空間にふさわしい詩的な光を求めて
Firmamento Milanoの特徴について、マーケティング部長・清水亜子さんは次のように説明します。
「Firmamento Milanoは、建築家が光をデザインするというコンセプトを起点に誕生した、ミラノ発の照明ブランドです。プロダクトデザインのために生まれたのではなく、『建築空間にふさわしい詩的な光とは何か』という問いから始まったコレクションは、その佇まい、素材、そして陰影に至るまで、まさに空間と共鳴する“建築的”な美しさを宿しています。
手がけるのは、ミケーレ・デ・ルッキ(プリツカー賞受賞者のパートナーとして国際的に活動)、ピエルルイジ・チェッリ(コンパッソ・ドーロ金賞受賞)、チーノ・ズッキ、ベネデッタ・タリアブエ(スペイン館でのRIBA国際賞受賞)など、現代建築を語るうえで欠かせない名だたる建築家たち。照明器具は、彼らの思想の延長として形づくられ、単なるプロダクトではなく、空間と呼応する光の建築装置として存在します。配光設計やグレア制御、素材の選定からLEDの色温度まで、高い技術基盤に支えられた光は、建築やインテリアに寄り添いながら、その本質をそっと照らし出します」
数ある製品群のうち、いくつかお薦めを清水さんに挙げていただいた。JAXSON/HIDEOショールーム内に展示中のものも多く、ぜひ体験されたい。



[Franco Raggiプロフィール]
1969年にミラノ工科大学建築学科を卒業、以来ミラノを拠点に建築・デザイン・批評の分野で多彩な活動を続ける。著述家としても数多くの展覧会に関わり、世界各地で講演やセミナーを行う。1975年から1977年にはヴェネツィア・ビエンナーレの視覚建築芸術部門にてコーディネートセクレタリーを務め、1979〜80年にはミラノ・トリエンナーレにてデザインコレクション部門のディレクションを担当。建築からインテリア、家具、プロダクトまで、幅広い分野でのプロジェクトを手がけており、Cappellini、Danese、Artemide、Kartell、FontanaArteなどの著名企業と協働している。彼がLuсeplanのためにデザインした照明器具「On Off」は、ニューヨーク近代美術館のパーマネントコレクションにも収蔵されている。2001年から2011年までは、老舗照明ブランドBarovier & Tosoのアートディレクターを務め、ブランドの方向性と美意識を刷新。主な建築作品に、1996年ミラノのユマニタス病院内装、1998年ジャンフランコ・フェレ財団本社、1999年テクイント社本社など。ペスカーラ大学建築学部、NABA、ミラノのIEDで教鞭をとり、1996年から1998年まで建築学科の責任者を務めた。





[Park Associatiプロフィール]
フィリッポ・パリアーニとミケーレ・ロッシによって2000年にミラノで設立された建築スタジオ。「傾聴」「実験」「複雑性」「物語性」という4つのキーワードを軸に、独自のデザイン文化を構築した。常に変化を続けながらも一貫したスタイルを持ち、建築に対する開かれた、学際的で科学的な姿勢が、両創業者とそのチームの姿勢に反映されている。素材やフォルムをテクノロジーや機能性と柔軟に組み合わせることを通じて、Park Associatiはクライアントの多様なニーズに応える独創的な解決策を生み出している。その代表的な成果としては、Driadeとのプロダクト開発、高級ファッションブランドのBrioniの国際店舗デザイン、エレクトロラックスによる移動型レストランThe CubeとPriceless Milano、アッサーゴのネスレ本社ビルなど。近年は、ミラノ市内における都市再生や既存建築の再解釈にも力を入れており、「ラ・セレニッシマ」や「ジョイアオット」のリノベーション、さらにはコルドゥージオ広場やキエッセ通りでの最新プロジェクトを通じて、都市と建築の新しい関係を提案し続けています。Firmamentoでは、Park Associatiの持つ理知的かつ詩的な建築アプローチを、光による空間設計に応用している。








[問い合わせ先]
HIDEO TOKYO / JAXSON TOKYO
- 住所:東京都港区赤坂3-3-3 赤坂見附駅 徒歩3分
- 営業時間:HIDEO TOKYO 10時 – 18時 / 土日祝休館 完全予約制
- JAXSON TOKYO 10時30分 – 18時 / 日月休館 完全予約制
-
fy7d(エフワイセブンディー)代表
遠藤義人
ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。