アナログが呼び覚ます、深い聴覚──Audio-Technica × Oswalds Mill Audio “Deep Listening” in 築地本願寺

 取材/LWL online編集部

アナログは懐古ではない。それは、感覚を研ぎ澄まし、空間とともに音と向き合うための方法、フィジカルなオーディオ体験だ。11月2日(土)・3日(日)、築地本願寺にて開催される「Analog Market 2025」で、オーディオテクニカとOswalds Mill Audio(OMA)がコラボレーションすることで、“Deep Listening”─聴くことの本質を問い直す体験を提示する。

聴覚を超えて、音の中に沈む

オーディオテクニカが60周年を機に発した「もっと、アナログになっていく。」というメッセージは、単なる再生メディアの選択ではなく、人間の感性の在り方そのものを示している。

デジタルが均質な快適さを提供する一方で、アナログは「ゆらぎ」「手ざわり」「温かさ」といった、人の心身に響く要素を取り戻すための鍵となる。

11月2日、3日に開催される「Analog Market 2025」では、同社の創業60周年記念カートリッジ『AT-MC2022』と『Oswalds Mill Audio(オズワルズ・ミル・オーディオ)』(以下、OMA)がコラボレーションした、アナログ音響を体感できる。

それは「聴く」ではなく「浴びる」に近い感覚──音が身体を通り抜け、心を震わせる瞬間をつくり出す。人間の感性の在り方そのもの、「もっと、アナログになっていく。」を体験できる。

Oswalds Mill Audio ── 音を彫刻するブランド

アメリカ・ペンシルバニア州の山間部の街フリートウッド。製造業が根付くクラフトマンシップのこの街で、18世紀の石造りの製粉所をそのまま拠点とするOMA。

創設者Jonathan Weiss氏は、プリンストン大学とLSEで国際関係を学び、のちに映画制作へと転じた人物。古い映画館のホーンスピーカーや真空管アンプに魅せられ、音響を「再生」ではなく「再構築」するブランドとしてこの場所でOMAを立ち上げた。

創設者Jonathan Weiss氏

彼の哲学は明快だ。

「音楽の本質的な美しさと力強さ」を追求し、ヴィンテージ技術と造形美を通じて音楽体験に芸術としての深みを与える。

「Analog Market 2025」にあたってJonathan Weiss氏が出したコメントを掲載する。

「音楽は感情をありのままに伝えます。そして、その感情を伝えるのは“音の質”です。それがなければ、音楽が何を語ろうとしているのか、聴き手には届きません。テクノロジーが進化するほど、人は音楽から遠ざかっているように感じます。アナログは、私たちを音楽の源へと引き戻してくれる手段です。Audio-Technicaとともに、Analog Marketで“音楽が本来持つ力”を再発見していただけることを願っています」

OMAのスピーカーは高能率ホーンロード方式を採用し、わずかな出力で空間を満たす音圧を生み出す。

ペンシルバニア産のハードウッド、スレート、鋳鉄や鋳造アルミなど、素材にも意味がある。熱処理木材や鋳造金属によってつくられるキャビネットは、音響機器というよりも彫刻作品に近い。

代表作『IMPERIA』はじめ、『Ironic』『MONARCH』『K3 TURNTABLE』など、OMAの製品群はいずれも「音響工芸」と呼ぶべき存在だ。

音楽は背景ではない。空間を変える出来事である。そう感じさせる。

和の空間との共鳴

OMAは日本の木工や和紙、自然素材の質感にも共鳴している。そのプロダクツデザインは、ジョージ・ナカシマやイサム・ノグチ、さらには千利休たちの美意識から深い影響を受けたという。

「Analog Market 2025」では、その思想が築地本願寺という場に重なることで、これまでにない音響体験・時間へと昇華されることだろう。

アナログが持つ「時間を感じる力」が、静謐な寺院空間でどのように響くのか──

それは体験してはじめてわかるだろう。

アナログの未来へ

快適さと効率の先にあるのは五感の再生。

アナログはそのための媒介であり、身体と空間を調律する装置でもある。

音に包まれ、思考がほどける瞬間──。

それが、この秋、築地で体験できる“Deep Listening”だ。

ハイエンドリスニングイベントDeep Listening」 — Program

会期中、「Deep Listening」エリアではOMAのシステムによる特別なプログラムを展開する。セレクターたちがテーマごとに吟味した音源を、世界最高峰のサウンドシステムで体感する贅沢な時間。 床に座り、身体ごと音に包まれるようなリスニング体験が用意されている。

すべての公演は無料。各回の定員は100名。事前予約制である。

イベント特設サイトにて予約

Selector <Pick Up>

日本のFREE JAZZを聴く by 原 雅明

11月2日(日)14:00-15:00には文筆家、選曲家、プロデューサーとして活躍する原雅明による「日本のFREE JAZZを聴く」を開催。ご自身のコレクションから貴重なアナログ音源を持参する。

原 雅明 氏

テープで聴く、日本の環境音楽 by 尾島 由郎

11月3日(月・祝)13:30-14:30には環境音楽のシーンを牽引してきた尾島由郎氏がカセットテープでセレクトする。

尾島吉郎氏

 

Talk & Live

Animistic Music | Gagaku Electronics by 石田 多朗

石田多朗氏

11月3日(月・祝)15:30-16:30には作曲家・音楽プロデューサーの石田多朗氏と、雅楽奏者の三浦元則氏(篳篥)、中村かほる氏(楽琵琶)、中村華子氏(笙)、伊﨑善之氏(龍笛)、音響エンジニアの小俣佳久氏を迎え、雅楽×ダブミックス・ライブを開催。神秘的な響きを現代的に体感できる。

雅楽演奏写真撮影:矢野津々美

その他、Analog Market2025では、アナログレコードや機器の展示、ワークショップなども同時開催予定である。

『Analog Market 2025』開催概要

  • ■イベント名:Analog Market produced by Audio-Technica
  • ■会期:2025年11月2日(日)10:00~20:00(予定)
  •     2025年11月3日(月・祝)10:00~17:00(予定)
  •     ※天候状況などにより、変更となる場合有
  • ■会場:築地本願寺(〒104-8435 東京都中央区築地3-15-1)
  •     ※会場へのお問い合わせはお控えください。
  • ■入場料:無料
  • ■特設サイト:https://www.audio-technica.co.jp/analogmarket/
  • ■公式Instagram:https://www.instagram.com/analogmarketokyo/
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    LWL online 編集部

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