Artemide 2025 New Collection:光の詩学、建築を纏うラグジュアリー

 取材/LWL online編集部

イタリアの名門照明ブランド〈Artemide〉が、2025年の新作コレクションを発表。建築と光を融合させたデザインは、カルロ・コロンボ、ヘルツォーク&ド・ムーロン、フォスター+パートナーズら世界的建築家との協働によるもの。光が空間を形づくる瞬間を体感する。

光の建築としてのArtemide — 「The Human Light」が描く未来

1960年、エルネスト・ジスモンディとセルジオ・マッツァによって創業された〈Artemide(アルテミデ)〉は、光を単なる照明ではなく「人のためのデザイン」として捉え続けてきたブランドだ。その理念「The Human Light」は、機能と詩情を兼ね備えた光を追求する哲学であり、建築空間と人間の感性を結ぶ架け橋でもある。

これまでにリチャード・サッパー、ヴィコ・マジストレッティ、ミケーレ・デ・ルッキなど、20世紀を代表するデザイナーと協働し、数々の名作を生み出してきた。近年では、BIGやフォスター+パートナーズ、ヘルツォーク&ド・ムーロンらとのコラボレーションにより、照明は建築の延長として再定義されつつある。

2025年の新作群は、光学技術とクラフトマンシップ、そして建築的造形美が融合した「光の彫刻」たち。ここでは、その中でも注目の5シリーズを紹介する。

Zephyr Suspension — 光を彫刻する建築美

Design: Carlo Colombo

建築的な緊張感と、詩的な透明感。「Zephyr」は、その両義を兼ね備えた、ミニマルでエレガントなペンダントだ。

上下を照らすシェードは、透明ガラスで、内側が波型の形状を持つ型で手吹きされ、その頂点は研磨されて細いラインをつくりだしている。

透明ガラスの内部に刻まれた繊細な波形は、光を屈折させ、まるで風が形を持ったかのように空間に漂う。手吹きによるガラスの微細な凹凸は、デザイナーCarlo Colombo特有の精緻な構造美を映し出している。

彼は建築家として、光を素材の一部として扱う。その結果、Zephyrは照明でありながら、建築的ディテールの延長として機能する。アルミ塗装による端正なボディと、3000Kの柔らかな光を放つLEDは、機能と美を高度に融合。

空間に静謐なリズムをもたらすこの照明は、装飾を排しながらも、豊かな情感を湛えている。 風のように軽やかでありながら、建築空間に確かな存在感を刻む、光の彫刻である。

ZEPHYR EXAGONAL SUS.
BLACK/BRONZ

ZEPHYR CHANDELIER
BLACK/BRONZ

ZEPHYR LINE AR SUS.
BLACK/BRONZ

Design: Carlo Colombo

1993年にミラノ工科大学で建築学を卒業後、主に工業製品のデザインとマーケティング、グラフィック、展示設計に専念し、イタリアを代表するデザインブランドと協業しながら活動を開始。2011年には北京大学でインテリアデザインの修士課程を指導。2013年にはルガーノにてパオロ・コロンボと共同でA十+建築スタジオを設立。ルガーノ、チューリッヒ、ニューヨーク、マイアミ、ドバイにスタジオを構え、世界中のインテリアおよび大規模プロジェクトを手がけた。彼のプロジェクトは、パリ、ブレーメンのヴェーザーブルク現代美術館ケルン装飾美術館、ミラノ・トリエンナーレ、カタンツァーロ美術館MARCAなどで展示されている。

Carlo Colomboによるスケッチ

Unterlinden — 時を刻む光の遺構

Design: Herzog & De Meuron

バーゼルを拠点とする建築家ユニット、Herzog & De Meuronによる「Unterlindenシリーズ」に新しくシャンデリア、ペンダント、ブラケット、フロアスタンドが加わった。

金属の酸化プロセスを途中で止め、クリア塗装で封じ込めたダイカストアルミや真鍮の灯具は、一つとして同じ表情を持たない。まるで時の経過を内包するような質感が、無機的な照明に生命を吹き込んでいる。

レンズによって制御されたLED光は、シャープな指向性と柔らかな拡散を両立。建築の陰影を緻密に描き出す光は、ギャラリーやミュージアム空間のような静謐さを演出する。
さらに、ブラケットやフロアスタンドタイプでは、アームを軸に灯具の高さを自在に調整でき、用途に応じて彫刻的な佇まいを変化させることができる。

ヘルツォーク&ド・ムーロンが建築で追求してきた「素材と構造の詩学」が、Unterlindenでは照明というスケールで実現された。光が物質の中に刻まれる——そんな思想的な美学が、静かな時間の中に息づく。

UNTERLINDEN
CHANDELIER FREE

UNTERLINDEN SUSPENSION

UNTERLINDEN
CHANDELIER RING

UNTERLINDEN TABLE

UNTERLINDEN FLOOR
ALMINIUM

UNTERLINDEN WALL
ALMINIUM

Unterlinden Design: Herzog & De Meuron

1978年に設立されたヘルツォーク&ド・ムーロンは、スイスのバーゼルを拠点とする国際的なデザイン事務所。500人を超える協力者を擁する国際的なチームが、世界各地でさまざまなプロジェクトに取り組んでいる。プロジェクトの開発を通じて、家具、照明、テキスタイル、そしてコートフックやドアの取っ手といった建築のディテールといった「オブジェクト」までをもデザインしてきた。Artemideの製品では、PIPEシリーズが、コンパッソ・ドーロ賞を受賞した。

Orsa — 精密と静謐のあいだ

Design: Foster+ Partners Industrial

英国を代表する建築事務所、フォスター+パートナーズによる「Orsa」は、ミニマリズムの極致にある。

シェード上部に光源を内蔵し、直接見えないように設計された構造により、まるで宙に浮かぶ円盤のような光を生み出す。光は精密にコントロールされ、ガラスと金属の境界を曖昧にしながら、柔らかく空間に広がっていく。

フォスター+パートナーズのインダストリアル・デザイン部門は、「デザイン・バイ・メイキング」という理念を掲げ、試作と職人技を繰り返すことで完成度を高める。Orsaもまた、素材の厚みや表面の微細な反射を徹底的に実験した成果だ。

その結果、光は構造の中に消え、可視的な存在から“体験”へと昇華する。

また、クラスター仕様では複数の灯具が重なり合い、建築の吹き抜けやホール空間に詩的なリズムを与える。

「機能を超えた照明の建築化」——Orsaはその理念を具現化する作品であり、持続可能な素材と構造の合理性が、現代のラグジュアリー空間に新たな光の文法を提示している。

ORSA 21
ORSA 35

ORSA21 CLUSTER 3

Orsa Design: Foster+ Partners Industrial Design

Look at Me — 光が語りかけるフォルム

Design: Alida Catella, Silvio De Ponte

2種類のシェードのペンダントのシリーズ「Look at Me」は、光を幾何学として再構築する。

三角錐のシェード内部に設けられた段差が、レンズを通した光を反射・屈折させ、直接照射ではなく“線”として明るさを伝える。結果として、下方向への照度を確保しながら、光自体が彫刻的な表情を持つ。

天井から吊るされた姿は、音符が並ぶ楽譜のようでもあり、建築空間にリズムを与える。

光は決して眩しくなく、視線を導くように穏やかに流れる。

デザイナーのSilvio De Ponteは舞台美術や建築照明の分野で知られ、光を「空間の演出者」として扱う。Look at Meにおいても、照明は単なるプロダクトではなく、体験を構築するメディアとして設計されている。

光源が見えず、円盤のように浮かぶ造形は、昼と夜で異なる表情を見せ、ラグジュアリーなリビングからホテルラウンジまで、多様なシーンに呼応する。

また、複数灯のクラスター仕様では、建築のヴォリュームと共鳴し、光が“構造化”されていくような印象を与える。

感覚的でありながら理性的——Look at Meは、幾何学の中に情緒を宿す、21世紀的照明デザインの到達点だ。

LOOK AT ME 21
LOOK AT ME CLUSTER 21

LOOK AT ME 35

LOOK AT ME CLUSTER 35

Look At Me Design:Alida Catella, Silvio De Ponte

Alida Catella
Silvio De Ponte

Eclisse × Squid Game – ポップカルチャーとデザインの融合

1965年にヴィコ・マジストレッティが生み出した名作「Eclisse」。

半世紀を超えて愛されるこのアイコニックなデザインが、Netflixドラマ『Squid Game』とのコラボレーションで再登場した。

「プレイヤー」「ピンクガード」「ブラックオフィサー」をテーマにした限定版は、磁石式のマスクを付属し、ドラマの世界観を象徴的に表現する。

手動でシェードを回転させて光量を調整できる仕組みは、デジタル時代の今なお鮮烈だ。

“月の欠ける光”をモチーフにした構造は、アナログな人間的操作感と、時代を超える普遍的な造形美を兼ね備える。

アートピースであり、コレクターズアイテムでもあるEclisseは、〈Artemide〉の原点を再認識させる存在だ。

左からECLISSE「BLACK OFFICER」「PLAYER」「PINK GUARD」

Artemide 東京ショールーム — 光の建築を体感する

東麻布の〈Artemide 東京ショールーム〉では、ブランドを代表する名作から最新作まで約120点を常設展示。ラグジュアリー空間における照明の在り方を、実際の光の質とともに体感できる。ここには、単なる製品展示を超えた「光の建築」が存在している。予約制で静かに味わうその空間は、まさに“光の美術館”と呼ぶにふさわしい。

Artemide 東京ショールーム

  • 住所:東京都港区東麻布1-23-5 PMC ビル8F
  • 電話:03-6230-9912
  • 営業時間:11:00-17:00 (予約制)
  • 定休日:土・日・祝日
  • アクセス:赤羽橋駅より徒歩2分

https://artemidejapan.jp



  • 取材

    LWL online 編集部

Related articles 関連する記事

  1. home Home
  2. INFO
  3. Artemide 2025 New Collection:光の詩学、建築を纏うラグジュアリー