家が「考える」時代へ──SwitchBot「AIハブ」に見る、「スマートホーム」の進化と課題
取材/LWL online編集部
LWL onlineが理想とするスマートホームとは、「操作のいらない住まい」だ。センサーとAIが環境を読み取り、「暮らしの文脈」に寄り添って自律的に動く──その未来に向けて市場が大きく動きはじめている。SwitchBotが発表した新中枢「AIハブ」は、VLMとローカルAIを搭載し、家が「理解し、判断し、動く」世界を現実のものにしようとしている。
LWL onlineが描くスマートホームの未来
LWL onlineのスマートホーム関連記事では一貫して、「自動で動く家」「考える建築」をテーマとしてきた。
タッチパネルを押し続ける暮らしでも、アプリを何十個も操作する生活でもない。
家そのものが、住まい手の気配・習慣・時間帯・体調・環境を読み取り、空気のように背景で作動するインテリジェンスこそが、ラグジュアリーレジデンスにおける本質だと考えている。
その意味で、今回SwitchBotが発表した 「AIハブ」 は、明確に次の段階へ踏み出した製品だと言える。

VLM(視覚言語モデル)×ローカルAI──家が「状況を理解する」ことの意味
まずプロフィールを簡単に説明しよう。
VLM(視覚言語モデル)を備え、カメラ映像を「文章として理解」できる点だ。
たとえば、「猫が餌を食べた」「祖母が横になった」「子どもがリビングに戻った」などの “出来事”をAIがテキストとしてログ化し、キーワード検索や1日のサマリー表示まで可能にする。
映像を「理解し、要約し、必要な判断をする」というレイヤーに到達したことで、スマートホームのトリガーは「センサーの反応」から「出来事そのもの」へと進化した。
LWL onlineが長らく指摘してきた「住まいのインターフェイスは、文脈を理解できるかどうかが決定的に重要」という観点において、SwitchBot AIハブはその先駆けとなり得る。
また、SwitchBot AIハブのもうひとつの柱は、ローカルAIだ。
顔認識・物体認識のローカル完結が可能となっている。
最大のポイントは、クラウドに頼らず、本体の中でAI処理を完結できるという点である。
「プライバシーをクラウドに送らない」「ローカルなので反応速度が飛躍的に向上」「ネットダウンでも家が“止まらない”」という特長を持つ。
特に家庭内カメラの認識・分類・イベント検出がローカルで実行できる点は、今後のスマートホーム/ホームオートメーションで求められる要件だ。
スマートホームの頭脳は、クラウドではなく家の中にあるべきである。
LWL onlineでは繰り返し主張してきたが、SwitchBotがその方向に舵を切ったことは非常に興味深い。
課題は残るが、重要な一歩。
Home Assistant Coreコンテナを本体に内蔵。別途ゲートウェイは不要で、Bluetoothデバイス・Wi-Fiデバイスをネイティブ接続できる、Matter Bridgeとして最大30台連携という特長を持つ。
SwitchBotという大衆向けブランドが、オープンなエコシステムと本格的な自動化環境に踏み込んだことは、今後のスマートホーム標準化に大きな影響を与えるだろう。
ただし、現時点では課題もある。
ローカルでの自動化はまだ一部の同社のデバイスのみに対応、またプロトコルでの操作ではなく赤外線操作が中心となる。赤外線操作の場合、フィードバックは取れない。その赤外線制御を行うには別途ハブが必要。AI+によるオートメーションはクラウドでの処理が必要なのでローカルでの自動化実行はできない。
本格的なローカルオートメーションは今後の対応拡大待ちとなる。
しかし、重要なのは「“住まいが考える”というコンセプトに向けて、実際の製品が動き始めた」という点である。
それも、SwitchBotという大衆向けブランドがその一歩を踏み出したことは重要だ。
LWL onlineとしても、今後のアップデートや実機検証など、続報を改めてお届けしたい。
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LWL online 編集部