2025年、ラグジュアリー住宅におけるスマートホームの到達点【後編】―― スマートホームシステムインテグレーター3選

 取材/LWL online編集部

2025年、日本のラグジュアリー住宅において、スマートホームは明確に次の段階へと進んだ。それは、優れたシステムを導入すること自体が価値なのではなく、その思想を誰が、どのように住宅体験として完成させるのかが問われるフェーズへの移行である。Home OSという概念が現実解として立ち上がった今、決定的な役割を果たすのが、スマートホームシステムインテグレーターの存在だ。

スマートホームシステムインテグレーターとは何者か

Home OSは、優れたシステムが存在するだけでは成立しない。
建築、インテリア、設備、そして住まい手のライフスタイルを横断的に理解し、それらをひとつの環境として統合する——その役割を担うのが、スマートホームシステムインテグレーターである。

日本のラグジュアリー住宅市場において、Home OSを現実の空間へと昇華させてきた3者を紹介したい。

スマートホームシステムインテグレーター3選

SUMAMO オープンプロトコルでスマートホームを成立させる実装者

SUMAMOは、建築統合型スマートホームの分野で、各種オープンプロトコルを自在に操る、日本では数少ないインテグレーターである。
特定メーカーや単一プラットフォームに依存するのではなく、KNX、DALI、BACnet、IP系制御、さらにはECHONET Liteまでを横断的に扱い、案件ごとに最適な制御体系を設計する姿勢が大きな特長だ。
実装の難易度が高い領域を、当たり前の品質で成立させている。

なかでも、ECHONET Liteに対応していることは、日本の住宅において決定的な意味を持つ。
日本のスマートホーム規格「ECHONET Lite」── ローカルスタンダードが抱える宿命、日本で完成し世界で孤立
床暖房や給湯器といった日本独自の熱源設備を制御でき、しかもルームエアコンも含めた空調制御をフルに扱えるため、温熱環境全体をHome OSの一部として統合できる。

SUMAMOが重視するのは、機器の多さやUIの派手さではない。
照明・空調・遮光・AV・セキュリティ・ウェルネスまでを横断し、居住者の生活動線や時間の流れに自然に寄り添う環境の振る舞いを設計する点が特徴である。
同社は超高級ホテルにおけるオートメーション案件も手がけており、ホスピタリティで培われた知見をラグジュアリー邸宅にも応用している。
技術を前景化させることなく、完成度として表に出せるチームである。

SUMAMO

COMFORCE(コンフォース) CEDIAの系譜から生まれた、体験価値設計の正統進化

コンフォースは、日本においてCEDIA的文脈を正統に継承する、数少ないオーセンティックなインテグレーターである。
その出自がホームシアターのインストーラーである点は、極めて重要だ。

本来、ホームシアターのインストーラーは、単にAV機器の設置や取付を行う存在ではない。
映像と音響による体験価値の質を最大化するため、照明やカーテンなどの窓廻り、AV機器をワンタッチで統合制御する環境設計を行う、体験価値のプロデューサーである。
ホームシアターのインストーラーは、「スマートホーム」と呼ばれる概念が一般化する以前から、体験価値を起点としたスマートホーム/ホームオートメーションを実践してきた。

コンフォースはそうしたホームシアターのインストーラーが持つ「体験価値向上」を、ホームシアターから住宅全体へと拡張し、スマートホームのシステムインテグレーターへと進化した。

同社が重視するのは、操作の簡略化や自動化そのものではなく、生活の中で何があれば快適になるのかという体験設計である。
派手なUIや多機能性を前面に出すことなく、住み手が意識せずとも快適であり続ける環境を構築してきた。

本拠地は名古屋に置きつつ、東京にも拠点やパートナー企業を持ち、全国規模でラグジュアリー邸宅や高級集合住宅の案件を手がけている。
コンフォースは、ホームシアターから始まった「体験価値設計」の思想を、スマートホームという領域へと正統進化させた存在と言える。

コンフォース
Home Automation Lab「COMFORCE」が示すホームオートメーションの最前線

HANAMURA(ハナムラ) 日本のスマートホームのパイオニア

ハナムラは、日本におけるスマートホーム/ホームオートメーションのパイオニアであり、同社代表の花村 勇氏は日本スマートホーム界のレジェンドである。
黎明期から「住まいを機能の集合ではなく、体験として成立させる」という思想を掲げ、今日のHome OSの基層を築いてきた。

特に、空間・光・音・インターフェイスの統合における卓越した設計力と、美意識に裏打ちされた演出は、日本随一のラグジュアリー邸宅体験設計として高く評価されている。
ハナムラの取り組みは、単なる機能制御にとどまらない。

花村氏は、2000年代半ばから、GLAS LUCEの開発や、iPhone黎明期から住宅全体を操作感なく統合するUI設計など、住宅体験の新しい文法をつくる試みを続けてきた。
やがて、照明・空調・遮光・AV・セキュリティが一つの「静かな知性」として振る舞うべきだという思想へと進化。
花村氏の20年近い歩みは日本のスマートホーム史そのものと言っても過言ではない。

同社が提唱する空間は、感情と体験の質を高めるラグジュアリーな「舞台」そのものであり、訪れる人が意識せずとも五感で感じる居心地のよさこそが最大の価値だ。
新宿OZONEに構える「GLAS LUCE × SmartHomeショールーム」は、単なる展示空間ではなく、建築・インテリア・技術が融合した体験装置としての住まいの現在形を示している。

さらにハナムラは、「操作を減らす住まい」という美学を設計理念の中心に据えている。
機能を詰め込みすぎることなく、余計な操作を排し、空間そのものが住まう人の状態に寄り添い、先回りする環境を実現してきた。
これにより、同社の設計は単なる技術融合ではなく、ラグジュアリー住宅における体験価値そのものを高める作用を持つ。

ハナムラは、Home OSを「知性のある住まい」として成立させる、日本のラグジュアリー体験設計の旗手である。

ハナムラ
日本のスマートホームの「原点」をつくった男 ──レジェンド、ハナムラ・花村 勇 氏が語る「住まいのOS」の15年と未来

そして2026年へ──ラグジュアリーは「所有」から「体験」へ

2025年、日本のラグジュアリー住宅において、スマートホームは明確に次の段階へ進んだ。
優れたシステムを導入すること自体が価値なのではなく、その思想を誰が、どのようにHome OSとして完成させるかが問われる段階に進んだ。

スマートホームシステムが「住宅に内在する知性」の輪郭を示し、インテグレーターがそれを現実の空間へと定着させる。
2025年は、こうした動きが初めて日本市場で明確に可視化された年だったと言えるだろう。

スマートホームは、もはや設備ではない。
それは、住まいの完成度、ひいては人生の質を左右する住まいのOSである。

この到達点の先に、2026年のラグジュアリー邸宅が見えてくる。
これからのラグジュアリーは、面積や素材、ブランド名といった「可視的な価値」では測れない。
住宅が生み出す心身の状態(コンディション)、時間の質、思考の余白——
そうした「住まうことで整う体験」そのものが、真の価値基準となっていく。

Home OSはその中核を担う存在である。
照明・空調・遮光・音・セキュリティが個別に語られる時代は終わり、2026年以降は、それらが連動して生み出す環境の振る舞いそのものが評価軸となる。
操作しなくても、説明されなくても、「気づけば快適で、静かに満たされている」——
そんな住宅体験こそが、ラグジュアリーの新しい条件となるだろう。

2025年は、その問いに現実解が伴い始めた年だった。
そして2026年へ。
これからの住まいは、住むための器ではない。
人生の質を設計するための環境である。

LWL onlineはこれからも、建築・テクノロジー・ライフスタイルが交差する最前線で、「住まいに知性が宿る瞬間」を記録し続けていく。

2025年、ラグジュアリー住宅におけるスマートホームの到達点【前編】―― LWL onlineが選ぶスマートホームシステム(Home OS)3選

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