Bang & Olufsen 100周年の到達点──Beolab 90 Titan Editionが示す、音響×モダニズム×ラグジュアリーの現在地
取材/LWL online編集部
ラグジュアリーとは、時間をかけて培われた思想と、美意識の結晶である。デンマークを代表するオーディオブランドBang & Olufsenは、創立100周年という節目にあたり、世界限定10台の特別なフラッグシップスピーカー《Beolab 90 Titan Edition》を発表した。このモデルは、単なる記念モデルではない。1925年から続くブランドの思想、20世紀モダニズムの美学、そして最先端の音響工学が「音響彫刻」として結晶化した存在であり、まさにラグジュアリーの逸品である。
1925年。それはラジオを電池から解放することから始まった
Bang & Olufsenの歴史は、1925年、デンマーク・ストルーアの一軒の屋根裏部屋から始まった。
創業者ピーター・バングとスヴェン・オルフセンの試行錯誤の末に生まれたのが、電池式ラジオを家庭用コンセント、すなわりAC電源で使えるようにする革新的なアダプターである「The Eliminator」である。
Bang & Olufsenの第一歩はラジオを電池から解放することだった。
100年の音響美学、その原点とモダニズム
1925年、デンマーク・ストルーアの屋根裏工房で始まった Bang & Olufsen の探求は、単なる「良い音を作る」というレベルに留まっていなかった。
創業期から同ブランドは、バウハウスに連なるモダニズムの精神を取り入れ、「機能を超えた造形」と「技術を結晶化した美学」をプロダクトの中心に据えた歴史を持つ。
モダニズム──20世紀初頭に生まれたデザイン思想は、「Form follows function.」 という哲学を掲げ、美術と工芸、工業設計の垣根を取り払い、生活環境のあり方そのものを問い続けた。
Bang & Olufsenはこの精神を自らの音響機器の設計に落とし込み、素材・構造・音響という三位一体の美意識を築き上げてきたのである。
歴史の中で傑出した名作の数々―Jacob Jensenによるミニマルデザイン、David Lewisが磨き上げた象形的プロポーション、そして「Form follows function.」を体現した数々のプロダクト―これらはすべて、モダニズムの理念を、音響体験として昇華したものだ。
音を設計する──建築的プロダクトとしてのフラッグシップ

「Beolab 90 Titan Edition」は、2015年に登場したBeolab 90の音響設計を核に、アトリエ作品=一点物の芸術領域へと引き上げた存在だ。
1台あたり8,200ワット。
18基のスピーカードライバー、14基のICEpowerアンプと4個のHelioxアンプ計18基のアンプ。
Bang & Olufsenが誇るBeam Width Control、Beam Direction Control、Active Room Compensationといった先進DSP技術は、「一点で聴く完璧な音」と「複数人で共有する音場」という、相反する体験を高次元で両立させる。
Beolab 90 Titan Editionは単なるオーディオ機器ではない。空間そのものを音響的に設計するための建築的プロダクトである。
無垢のアルミニウムに宿るクラフツマンシップ
Beolab 90 Titan Editionの造形はBang & Olufsenが得意とするアルミニウム加工技術の集大成だ。
最先端のCNC加工と、砕いた火山岩の微粒子を用いた手作業のサンドブラスト。
マットとポリッシュ、異なる質感のアルミニウムを無着色で仕上げ、素材そのものの美しさを際立たせている。
カバーを排した「ありのままのスピーカー」という思想。
137kgという圧倒的な物量でありながら、磨き上げられたベースパネルが生み出す視覚的な浮遊感。
音響機器でありながら、空間に置かれる彫刻作品でもあると言っていい。
「百年の美学」が詰め込まれた記念碑
各ドライバーには音響スペックがレーザー刻印され、トップスクリューには「1925–2025」「100」の数字が刻まれる。
さらに、創業者の精神を象徴する「何事にも挫折することなく、最高の製品だけを作り出し、たゆまず新しい方法を探る意志」というメッセージが、静かに刻印されている。
「Beolab 90 Titan Edition」を所有することは、Bang & Olufsenの100年を引き受けることに等しい。


そして次の100年へ──アトリエ・エディションの幕開け
本作はBang & Olufsenのカスタマイズプログラム「Atelier Bespoke(アトリエ・ビスポーク)」による、記念すべきアトリエシリーズ第1弾でもある。
今後、Beolab 90を再解釈した複数のコレクションが予定され、100周年を祝う全5モデルで完結する構想だという。
それは過去を讃えるための回顧ではない。
100年という時間をいったん引き受けたうえで、次の100年を、どのような思想と美意識で築いていくのか。その姿勢をプロダクトという形で示すための明確な意思表示である。
アトリエ・エディションの幕開けは、Bang & Olufsenがいまなお「完成」ではなく、更新され続けるモダニズムの現在形であることを、静かに、しかし雄弁に語っている。
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