有機的な曲線が紡ぐ、現代の“漆の詩”——ポルトローナ・フラウ東京青山で笹井史恵「漆逍遙」展
取材/LWL online編集部
漆芸家・笹井史恵による展覧会「漆逍遙」がポルトローナ・フラウ東京青山で10月31日(金)〜11月18日(火)開催。乾漆の有機的フォルムと色漆の深い光が、モダニズム以降の工芸の位置づけを問い直す。民藝以後の素材観と、イタリア家具の美意識が交差する空間で、現代工芸の新たな視座を提示する。
ポルトローナ・フラウ青山で、現代工芸の臨界に触れる
イタリアの名門家具ブランド「Poltrona Frau(ポルトローナ・フラウ)」が、現代漆芸の旗手・笹井史恵を迎えた特別展「漆逍遙」を開催する。
会期は2025年10月31日〜11月18日。
「漆逍遙」は、乾漆技法による有機的な造形で知られる笹井氏の作品世界を紹介する特別展。雲や太陽をモチーフにした作品や、果実・草花を思わせる丸みのあるオブジェなどを配し、空間全体で回遊しながら鑑賞できる構成とした。

本展における漆の存在は、古典的工芸の延長ではない。物質の純度が問い直される現代において、不可視の生命力を可視化する「知覚の装置」である。
空間の随所に佇むのは、雲の密度や果実の息づかいまでも封じ込めたような有機的なフォルム。乾漆のボリューム、朱漆の艶、柔らかな稜線。湿り気を含んだ光が、表面に滞留する。光に触れ、影を纏い、静かに“生”を語り始める。
笹井の作品は、古来の技法を駆使しながらも、どこまでも清冽で現代的だ。
そこにあるのは、装飾でもオブジェでもなく、生命の歓びそのもの— 小さな感動が日常に潜むことを、そっと思い出させてくれる。

日本の伝統工芸とイタリアの美意識が交差する
舞台は、東京・青山のポルトローナ・フラウショールーム。ポルトローナ・フラウは1912年創業のイタリアを代表するラグジュアリーファニチャーブランド。
アルティジャーノ(イタリア語で職人を意味する)の技に裏付けられたクラフツマンシップを軸に、建築家やデザイナーとの協業やホテル・美術館・空港ラウンジ、ハイエンドカー内装など幅広い分野で採用されてきた。独自の最高級レザー「PelleFrau(ペレ・フラウ)」を特徴とし、しなやかな質感と曲線表現に適した素材で同社の「家具芸術」を支えている。
本展では、同ブランドの哲学と共鳴する漆芸作品との組み合わせにより、家具とアートの新たな調和を提案。
「PelleFrau」が醸す柔らかな空気と漆の深い呼吸が溶け合うとき、家具とアートは役割を超え、“住まい”という文化へと昇華する。そこに流れる時間は、クラフツマンシップが紡ぐ豊穣なものだ。

日本の伝統とイタリアの美意識。二つの「美」が静かに交差する。
暮らしにアートが宿るとき、人生はどれほど豊かになるのだろう。
その答えに触れるため、青山の空間を訪れたい。

Exhibition Information
- 展覧会名:漆逍遙
- 会期:2025年10月31日(金)〜11月18日(火)
- 会場:ポルトローナ・フラウ東京青山 東京都港区南青山5-2-13
- 営業時間:11:00〜19:00(水曜定休・祝日は営業)
https://www.idc-otsuka.jp/poltrona-frau-tokyo-aoyama

笹井 史恵氏
漆芸家・京都市立芸術大学教授。
京都市立芸術大学大学院修了。京都市芸術新人賞、タカシマヤ美術賞、京都府文化賞奨励賞、京都美術文化賞、芸術選奨文部科学大臣新人賞など受賞多数。作品は国立工芸館、ボストン美術館、ヴィクトリア&アルバート美術館など国内外の主要美術館に収蔵されている。
公式サイト
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LWL online 編集部