「時を創る器」を彩るドア──KAMIYA「MILAOS」が拓く、扉の新境地【ドア×IT】
取材/LWL online編集部
日本の空間思想を象徴する“空(うつ)”の概念が、いま最新テクノロジーによって再解釈されようとしている。KAMIYAが発表した4Kモニター内蔵フルハイトドア「MILAOS」は、扉を単なる仕切りではなく“演出の器”として機能させる新しい空間装置だ。「そもそも空間とは何か?」という根源的な問いと現代インテリアが交差する、この革新的なドアの本質を探る。
日本的空間の原点──“空(うつ)”という余白の思想
日本の空間文化を語るうえで欠かせないのが、「空(うつ)」という独自の感性である。
デザイナーの故内田繁氏は『茶室とインテリア』などで、茶室を“何も置かない器”と捉え、余白が外界の光や気配を受け止める仕組みそのものが、日本の空間の本質だと述べている。空は不在ではなく、可能性の場であり、そこに何を映すかによって空間の意味が更新されていく。
障子や襖、縁側に代表される日本の“ゆらぐ境界”は、閉じても完全には隔てず、開いてもすべてを露呈しない。空間を固定せず、変化を受け入れる余白を保ち続ける。それこそが「空(うつ)」の力だ。
この思想は現代建築やインテリアにも通底している。どれだけ余白を残し、どれだけ“変化のための余地”を保存できるか。
KAMIYAの新製品「MILAOS」は、その問いに対して新しい解釈を提示する存在となった。
フルハイトドア®が生む“連続する空間”という発想
11月12日に開催されたKAMIYAの新製品MILAOSの発表会。その冒頭で同社代表取締役社長神谷忠重氏は、ドア専業メーカーへと至った歩みやフルハイトドア®の思想を語ったうえで、「空間とは何か」という根源的な問題に触れた。

神谷氏は語る。
「空間の“空(くう)”は“空(そら)”であり、また“うつ”とも読む。この言葉の響きは『うつわ(器)』『うつろい(虚い)』『うつす(映す)』などにもつながる。そして定着すれば『うつし(写し)』となり、最後は『美しい』へと変化していく。」
KAMIYAが20年以上取り組んできたフルハイトドア®は、天井高まで伸びる構造によって空間の視線を途切れさせず、開口を壁面と連続させてきた。
一般的な室内ドアと異なり、垂れ壁がないため空間を“ひとつながりの器”として保つことができる。閉じていても圧迫感がなく、開くと空間同士が自然に溶け合う。これは襖や障子に代表される“日本的な境界”の現代的継承でもある。
フルハイトドア®は「部屋を分ける道具」から、「空間をチューニングする装置」へと進化してきた。
MILAOSは、その延長線上にある新たなステージを示している。

4Kモニター内蔵──ドアが“映す器(うつわ)”へと変わる
今回発表されたMILAOSは、4Kモニターをドア面に内蔵した世界でも稀なプロダクトだ。
採用されているのはLGの31.5型のスマートモニター「32U830SA-W」である。
表面には特殊なシートが貼られたアクリルが使われ、映像を透過する仕組みになっている。ガラスではなくアクリルを採用したのは、耐久性と重量バランスを考慮した結果だが、表示映像は鮮明で、高級感のある光沢も保たれていた。

操作はリモコンだけでなくスマートフォンアプリからも可能。
webOS搭載のスマートモニターのため、YouTubeをはじめとした各種サービスにもアクセスでき、スマートフォンのミラーリングも問題なく行える。
サウンドは、構造上フロントからの出力が難しいため、サウンドバーとの併用が前提となる。オプションとしてLGのサウンドバーが用意されている。

発表会ではゴルフの練習動画やスマートフォンのミラーリング、それにスマートモニターならではのYouTubeの映像などをデモンストレーションしていたが、ここに至ると、もはや単なる「ドア」ではない。「ドア」というカテゴリーの外へ踏み出していた。
普段は静謐な面として佇み、点灯すれば映像が立ち上がり空間の意味を変える──このダイナミズムこそ“映す器”の本質である。

「入口を演出する」という新しい価値
神谷氏は語った。
「入口を空間演出の起点にしたい。」
ドアは日常で最も多く触れる建材であり、その開閉は小さな“儀式”の連続だ。そこに映像や光が介入すると、生活動作に意味が宿り、空間体験そのものが変化していく。
入口は単なる区切りではない。
空間の開始点であり、終点であり、次の場への移行点である。
MILAOSはその“移行の瞬間”を可視化し、内と外、日常と非日常が切り替わるプロセスをデザインしている。これは建材の領域を超えた、体験設計そのものだ。
空(うつ)とデジタルが共鳴する、新しい住宅文化
MILAOSを興味深い存在にしているのは、テクノロジーを単なる装飾にせず、空間の“余白の編集装置”として扱っている点にある。
映像を消せば静かな平面に戻り、映像を点ければ空間が変わる。
固定せず、固めず、状況によって変化する──。
これは茶室が育んだ“変化を受け入れる空間”の思想に通じる。
現代の住宅は仕事・休息・社交が混在し、「場=シーンの切り替え」がますます重要になっている。
入口が空間の意味を変えるトリガーとなることで、住宅はより多層的になり、人の生活はより豊かになる。
MILAOSは、まさにその“次の住宅文化の入口”に立っている。

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LWL online 編集部