音楽と香りで味が変わる。KEFの点音源とサイレントプール ジンカクテルが生み出す、特別な夜の記憶
オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子
過日、英国の高級ジンブランド「サイレントプール ジン」とオーディオブランド「KEF」による完全招待制のクローズドイベント「A Sensory Journey —where sound meets gin 音とジンが響き合う、五感の出会い」が開催された。音・香り・味が立体的に絡み合う、特別な時間の記憶をお伝えしよう。
KEFとサイレントプールジン — 英国が生んだ「音」「香り」「味」の共演
今回のイベントは、タイトルにもある「音とジンが響き合う」というコンセプトのもと、音や香りが味覚に影響を及ぼす感覚を体験できる、いわば“テイスティング試聴会”と呼べるもの。来場者をスペシャルな五感の旅へと誘う催しだ。


会場は、東京・南青山にある「KEF Music Gallery Tokyo」(東京都港区南青山5丁目5番6号)。英国の名門オーディオブランドであるKEFのスピーカーやヘッドホンなど、カジュアルラインからハイエンドモデルまで幅広く体験できるギャラリーである。


今回は、同じ英国の高級ジンブランドであるサイレントプール ジンとのコラボということで、会場内にはKEFのスピーカー群と共に、サイレントプール ジンのボトルが立ち並び、来場者を迎えていた。

サイレントプール蒸留所は、ロンドンの南西、サリー州アルバリーエステートに位置するサイレントプール湖の畔で創業された。そんな湖をイメージしたエメラルドグリーンのボトルが美しい。


KEFのスピーカーといえば、独自のUni-Q同軸ドライバーもデザインアクセントの一つとするスタイリッシュな佇まいが有名だが、そこにサイレントプール ジンの世界観であるエメラルドグリーンとゴールドの光が加わることで、英国の美しい田園風景を思わせるラグジュアリーな空気感が演出されていたのが印象的だ。

ジンの華やかな甘みと、点音源のマリアージュ
メインとなる音・香り・味のテイスティング体験は、大きく3部構成で進行。第1部では、KEFのサウンドとサイレントプール ジンの味にまつわる紹介を聴きながら、実際にサイレントプール ジンのテイスティングが行われた。


世界中に約6000種あると言われるジンの中でも、サイレントプール ジンは「ジンの香水」と言われるほど豊かな香りが特徴である。蒸留などのアプローチ中に使用される様々なハーブやボタニカルによるフローラルな香りとハーバルな風味、そして最後にハチミツで仕上げることで実現する“華やかで甘い後味”を堪能した。


続く第2部では、KEFスピーカーのハイエンドライン「Blade」とフラッグシップモデル「MUON」の試聴体験へ。舌先にサイレントプール ジンのほのかな甘い後味が残る中、ギャラリー内の専用試聴室に移動し、2機種それぞれの高品位なKEFサウンドを満喫した。
1961年の創業以来、“原音再生”にこだわり続け、低音域から高音域まで、すべての音域において原音に忠実なサウンド再生を実現することをミッションとするKEF。それを形にしているのが、独自の同軸Uni-Qドライバーが織りなす“理想的な点音源再生”だ。

今回は、Bladeでジェームス・ブレイク「The Wilhelm Scream」、MUONでエリック・クラプトン「Blue Eyes Blue」が再生されたが、そのサウンドクオリティに参加者からは「すごい」「音の粒が明瞭で包み込まれるよう」と感嘆の声が漏れていた。

音と香りでマティーニの味が変わる
そしてクライマックスとなる第3部では、いよいよ音・香り・味を立体的に体験。「FLORAL」「CITRUS」「HERBAL」「SPICE」という4種類のセッションが設定され、それぞれのテーマに合わせたフード、音楽、アロマが用意された。

参加者は、会場を包み込むアロマの香りと音楽の響きを楽しみながら、目の前の料理に舌鼓を打つ。聴覚・嗅覚・味覚が同時に開いていく体験を満喫した。
そこにペアリングされるのが、サイレントプール ジンを使用したカクテル、マティーニだ。そう、4種類の音・香り・味を楽しむ中で、“ひとつのマティーニの味”はどんな風に変化していくのか……というのが今回のイベントの肝である。

実際、「高音域=甘く、花のような香り」「低音域=苦味やスパイシーさ」「穏やかな音楽=柔らかく丸みのある舌触り」など、音と香りにはある一定のイメージがシンクロする傾向があるのだとか。
例えば「FLORAL」のセッションでは、ラベンダーやカモミール、ローズを中心としたフローラル系アロマと共に、アンガス&ジュリア・ストーン「Chateau」が再生され、トマト系のフード「トスカーナ風パッパ・アル・ポモドーロとモッツァレラ」が提供された。

アンガス&ジュリア・ストーンの疾走感あるアコースティックサウンドと透き通るような高音ボーカルが、甘みのあるポモドーロソースやイングリッシュガーデンのような香りと結合する。そこでマティーニを口に含むと、どこか上品で華やかな後味だ。
一方、「SPICE」のセッションで登場したのは、樹脂感のある香りのジュニパーに、辛みのあるグレインズ・オブ・パラダイスなどを融合させたスパイシーなアロマ。そこに組み合わせる音楽はイエロー「The Race」、フードは「北海道産蝦夷鹿と黒豚のミートボール」が提供された。

イエローのエネルギッシュなエレクトリカルサウンドは、まさに“低音域がスパイシー”と表現できる魅惑的なダンスミュージック。そこでジビエにも使われる鹿肉を混ぜたミートボールを口に含むと、ウッディーなジュニパーの香りと相まって、深い森の中にいるような感覚に。すると、不思議とマティーニの味わいもどこか厚みを帯びてくる。

この「音と香りが味覚を変える」というのは、非常に面白い体験だった。単なる試聴会・試飲会ではなく、サイレントプール ジンとKEF、英国で生まれた両者の世界観が深く結びつき、 “五感を再構築させるイベント”だったと言えよう。味覚の奥に潜む感情や記憶を、KEFのサウンドが引き出し、サイレントプール湖のほとりで誕生したジンの物語がそこに流れ込んでくる……そんな特別な時間だった。
-
オーディオ&サブカルライター
杉浦みな子
1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/