【スマートホーム/ホームオートメーション特集】スマートホームをめぐる問題── 赤外線、トグル、そして状態不可視

 取材/LWL online編集部

スマートホームで重要なポイントはいくつかあるが、最も重要なポイントのひとつに、「Home OSが住まいの”現在の状態”を正確に把握すること」がある。 赤外線問題、トグル、リレー制御。 一見すると異なる技術に見えるこれらの問題は、すべて同じ本質に行き着く。 空間の状態がHome OSに返ってこないこと、すなわち「状態のフィードバックが取れない」という致命的な欠陥である。

本稿では、赤外線制御の問題を起点に、「トグル」という概念がいかにスマートホームの信頼性を損なうのかを整理し、さらにその根底にある「状態不可視」という問題が、赤外線以上にリレー制御、なかでもカーテンやシェードといった窓廻り設備で深刻に表出していることを明らかにする。
そして最後に、状態を可視化するプロトコルによる制御こそが、空間の品格と快適性を両立させる、ラグジュアリーなスマートホームに不可欠な条件である理由を提示したい。

赤外線の問題──なぜスマートホームに相応しくないのか?

『スマートホーム=スマホからハブを介して赤外線を飛ばし家電を操作することである』。
この理解はいまや一般化している。

だが、LWL onlineが扱う建築統合型スマートホーム/ホームオートメーションの文脈において、赤外線は選択肢にはならない。
理由は単純だ。赤外線では状態を把握できないからである。

赤外線は本質的に一方向通信だ。
命令は送れるが、その結果、「本当にONになったのか?」「OFFになったのか?」「命令は途中で止まっていないか」などを、Home OS側が知る術はない。

この時点で、「空間の状態を把握し、それに基づいて制御する」というスマートホームの前提は崩れている。

「トグル」とは何か?──状態を知らずにただ反転させるだけ

赤外線の問題をもう一段掘り下げると、「トグル」という概念に行き着く。

ONの時に押せばOFFに、OFFの時に押せばONになるスイッチを思い浮かべてほしい。これが典型的なトグルスイッチである。トグルとは、とにかく反転させる命令を指す。

赤外線リモコンの電源ボタンを思い浮かべてほしい。
ONとOFFが同じボタンになっているケースがほとんどだ。
ON専用コマンドはない。OFF専用コマンドもない。あるのは「反転」だけ。これが「トグル」である。

つまりトグル制御とは、「現在の状態がONであるかOFFであるかに関係なく反転させる」 という制御方式なのである。

物理的スイッチであれば、目の前で動作させるのだから現在の状態が把握できるので問題はない。
問題は赤外線のトグル制御をスマートホームに組み込む場合だ。

トグルが引き起こす現実的な問題──ONにしたつもりがOFF、OFFにしたつもりがON

例えば真夏、帰宅途中で部屋を冷やすためにエアコンをONにする場合を考えてみよう。

IoTガジェット系のスマートホームを実装しているとする。
スマートフォンからハブを通じて赤外線(あるいはトグル型リレー)で命令を送ると、「OFF → ON」になるはずだ。
しかし、例えば既に家人が誰か帰宅していて、自宅の赤外線リモコンでONにしていた場合は当然OFFになってしまう。

UI上では「ON」と表示されているのに、実際の空間では真逆──という事態が起こり得る。

これはもちろん操作ミスではない。
トグルをスマートホームに採り入れたときに起こりうる「必然的な事故」だ。

なぜトグル制御はスマートホームでは致命的なのか?

建築統合型スマートホームには必須の条件がある。
① 空間全体の現在の状態を把握すること。
② 現在の状態に基づいて制御すること。
③ 常に同じ結果を再現できること。

ところがトグル制御は以下の問題をはらむ。
① 状態を把握できない。
② 状態を把握できていないので、命令の結果を保証できない。
③ ①②によって、同じ結果の再現性がない。

そもそもの自動制御の前提条件を破壊してしまう。

「毎回、正しく動いたかを人が確認しなければならない制御」は、スマートではなく、ラグジュアリーでもない。

赤外線は「トグル問題」のわかりやすい象徴にすぎない

赤外線が問題視される最大の理由は、「トグル制御+状態フィードバック不可」という組み合わせを持つ点にある。

さらに赤外線には、「角度に依存する」「距離に制約がある」「家具や人で遮られる」「太陽光や照明の影響を受ける」といった「環境ノイズ問題」も重なる。
他にもひとつのハブから同時に複数の赤外線信号を出すと、送信できない場合も出てくる。

そもそも赤外線は、目の前に操作対象の機器があり、その機器の赤外線受光部に向けて使用する、というものなので、遠隔操作は向いていない。
スマートホームという観点からは目の前で操作することが前提の物理的なトグルスイッチと変わらないのだ。

さて、話をトグルに戻そう。
赤外線は「トグル制御の象徴」である。

なぜか。

赤外線の場合、現在の状態のフィードバックが取れないこと、つまり「状態不可視」が誰の目にも明らかだからだ。
だからトグル制御の問題の代表として例示したのである。

「状態を把握し、空間を自律制御する」Home OSを内蔵したスマートホームにおいて、「状態不可視」は根源的な問題である。

実はもっと身近な問題──リレー制御という「見えないトグル」

赤外線は「状態不可視」の象徴でもあり、理解しやすいだろう。
だが、実はより深刻なのはリレー制御である。

リレー制御は非常に原始的で堅牢だ。
そのため、住宅設備の世界にはリレー制御があふれている。

カーテン、ロールスクリーン、シェード、ブラインド、シャッター、換気扇、給湯器・床暖房の電源、各種ポンプ類──。
これらの多くは、「開/閉」「開/閉/止」「ON/OFF」を接点で指示するだけで、現在の状態を返してくることはない。
リレー制御の仕組み自体が現在の状態をフィードバックするものではない。
赤外線と同様に一方通行なのである。

リレー制御を採用していて、状態のフィードバックが取れないものとしては、「JEM-A端子が使えない(HA端子のない)機器」「メーカー独自仕様で状態が取れない機器」「プロトコル制御に対応していない機器」になる。

これは見た目こそ「有線で堅牢」だが、制御思想は赤外線と同じだ。 要するに、目の前にある機器・設備を手元で操作することを前提としている制御方式なのである。

最大の問題領域──窓廻りという「空間の表情」

この問題が最も深刻に現れるのが窓廻りだ。

カーテン、シェード、ブラインド、ロールスクリーン、シャッター。
これら窓廻りのプロダクトは空間の明るさや視線に関係し、温熱環境を支配する、極めて重要な要素である。
ある意味で、スマートホームで操作する要のプロダクトと言える。

にもかかわらず、多くの製品は「開/閉/止」の3接点制御、あるいはブラインドは5接点制御であり、現在開いているのか閉じているのか、途中で止まっているのか、ブラインドの羽は開いているのか閉じているのかなど、フィードバックが取れない。

しかも、こうした窓廻りの製品は標準の壁スイッチ以外に、リモコンをオプションで選ぶことが可能だが、そのリモコンは赤外線か、あるいはFM式なので、Home OSで制御することを前提としていない。

なお、シャッターの場合は、エンコーダーやセンサーを後付けすることで状態を把握できるようになることが多い。

状態可視を前提としたプロトコル制御がもたらす決定的な違い

建築統合型スマートホームにおいて、状態が表示できることは贅沢ではなく、必須条件だ。

例えば、LUTRONのHomeWorksやSivoia QSは、カーテンやシェード、ロールスクリーン、ブラインドをプロトコルで制御している。
そのため、開いているのか? 閉じているのか? という状態のフィードバックが取れる。

現在の状態を常に把握し、UIに反映できるからこそ、「空間の状態を把握して、快適な環境をつくり出す」ことが可能になる。

カーテン、シェード、ロールスクリーン、ブラインド。窓廻りのプロダクトもリレー制御のみという状態を脱して、プロトコル制御もできるようにアップデートすべきだろう。

実際、海外の窓廻りの製品は既にプロトコル制御を採用するケースが増えている。

窓廻りの未来像──映写用スクリーンメーカー、オーエスのEZが示すヒント

窓廻りのプロダクトについては、興味深い例がある。
映写用スクリーンメーカーとして知られるオーエスの商品「EZ」シリーズ。

このスクリーンは、IP制御によって状態を取得できる。
スクリーンが上がっているのか、下がっているのか。それをシステムが正確に把握できる。

これは映写スクリーンに留まらない示唆を与える。
映写用スクリーンも、シェードも、ロールスクリーンも、ブラインドも、構造としては同一である。
窓廻りメーカーこそ、この思想と筐体設計を採用すべきではないか。

カーテンやシェードは空間の表情を決める重要なアイテムである。
さらに、光と温熱環境を司る、スマートウェルネスの要でもある。
オーエスの「EZ」シリーズの筐体技術を自社の製品に採用すべきである。

オーエスのEZシリーズ

結論──スマートホームを壊すのは「状態のフィードバックが取れない」制御である

問題は赤外線ではない。トグルでも、リレーでもない。
真の問題は状態のフィードバックが取れない制御方式である。

例えばエアコンであれば、CoolAutomationを介在させれば、ほとんどの商品はフィードバックを取ることが可能である。CoolAutomationはオープンプロトコルである。

CoolAutomation。どんなエアコンも一括制御!──スマートホームに必須の空調の司令塔

あるいはHome OSからECHONET Liteに指令を送ることができれば、やはりほとんどの商品のフィードバックを取ることは可能だ。

日本のスマートホーム規格「ECHONET Lite」── ローカルスタンダードが抱える宿命

だがしかし、カーテン、シェード、ブラインドなど、窓廻りのプロダクトはリレー制御・赤外線リモコン・あるいはメーカー独自のFMリモコンを主としているので、状態のフィードバックを取ることができない。

スマートホームとは、空間の振る舞いを、知的に設計することだ。
状態を持たない制御が入り込んだ瞬間、その住まいはスマートではなくなる。

ラグジュアリーなスマートホームでは、常に「今の状態」を正しく知り、次の一手を誤らないことが前提となる。
その視点から、カーテン、シェード、ブラインドなど、窓廻りのプロダクトは制御方式を見直す時期に来ているのではないだろうか。

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