“ゼロエネルギー建築”実現のキーマンに。小型・表面実装対応の新型センサー「S12 CO₂」発表

オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子 

「ゼロエネルギー建築(ZEB)」の実現を目指す都市開発やスマートビルディングの設計において、需要制御換気(DCV)のCO₂センシングは、エネルギー消費と空気質の最適化に直結する制御技術として注目が高まっている。こうした潮流の中で、旭化成エレクトロニクス株式会社の子会社であるセンスエア社が、新型のCO₂センサー「S12 CO₂」を開発した。

世界が求めるゼロエネルギー建築と需要制御換気 

スマートハウスの空調や換気の制御システムにおいて、二酸化炭素(CO₂)濃度を正確に計測することは、エネルギー効率と室内環境の快適性を両立させる上で欠かせない要素である。 

近年、建物のエネルギー効率に関する法規制や指針はグローバルで強化されている。日本でも環境省がZEB(Zero Emission Buildings)の特設サイトでその重要性を啓蒙しているほか、EUでは2028年以降に公共建築で、2030年以降には一般建築でも非常に高いエネルギー性能を持つZEB化が求められている。 

こうした背景により、人の不在時にも稼働してしまう従来の温度制御換気に代わり、CO₂濃度に応じて換気量を自動調整する需要制御換気(DCV:Demand Controlled Ventilation)への関心が高まっている。省エネルギーと快適な室内空気質(IAQ:Indoor Air Quality)の両立を可能にするアプローチとして評価されているのだ。 

同時にこのDCV導入には、室内のさまざまな場所へCO₂センサーを設置することが前提になる。しかし従来型のセンサーは、設置スペースやデザインとの調和、設備内蔵のしやすさという点で制約があった。 

「S12 CO₂」が切り開く空調制御のこれから

このたびセンスエア社が開発した「S12 CO₂」は、そうした課題に対応すべく設計された最新世代のCO₂センサーだ。 

同社が長年培ってきたNDIR(非分散型赤外線吸収)方式のセンサー技術をベースに構造を刷新し、これまでに確立してきた高精度および低消費電力性能を維持したまま、モジュール全体の高さを大幅に低減。従来モデルから体積比で約25%の小型化を達成した。 

これによってSMD(表面実装デバイス)リフロー実装に対応し、基板への実装も容易に。これまで設置が困難だった薄型パネルや空調内部、デザイン性が重視される空間にも組み込みやすくなっている。低消費電力と設置自由度の高さを生かし、後付けできる電池駆動型ワイヤレスCO₂モニタリングへの展開も可能で、配線が困難な既存建築に活用できるのもポイント。スマート建築におけるセンサーインフラの拡張を強力に後押しする技術だ。 

測定レンジは400〜10,000ppmの範囲をカバーし、読み取り誤差は「±(30ppm+測定値の3%)」という性能を提供。34μA以下の低消費電力を実現しており、想定寿命も15年以上と長寿命設計。これらの仕様はANSI/ASHRAEやWELL Building Standard®といった国際規格に準拠する。 

コロナ禍を機に高まった「空気の最適化」という潮流

旭化成のプレスリリースによれば、「S12 CO₂」は、欧州・北米・アジアを中心とした国際市場での展開を見据えており、2026年内の量産開始を予定している。 

特にコロナ禍以降は、オフィスビルや商業施設、教育・医療施設など、多数の人が集まる環境での換気最適化が引き続き重要視されている。「S12 CO₂」はまず、そういった公共施設全体のエネルギーマネジメントシステム(BEMS)におけるIAQモニタリング用途への展開が期待される。 

そしてゆくゆくは、住宅分野への応用も視野に入れられており、家庭用空調機器や全熱交換器内蔵など、多様なシーンでの利用が想定される。 

環境規制の強化やZEB実現化への流れを背景に、先進的なCO₂センシング技術は単なる空調制御を超え、建物のエネルギー最適化や快適で安全な居住空間づくりのインフラ技術として欠かせないものとなっていくだろう。この小さなモジュールに、建築物のエネルギー・環境デザインの未来を拓く技術が詰まっている。

  • オーディオ&サブカルライター

    杉浦みな子

    1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/

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