Cassina 2026年新作コレクション発表。名作再解釈と次世代デザインを体感
取材/LWL online編集部
モダンデザインの歴史を現在進行形で更新し続けてきたCassina ixc.が、2026年の新作コレクションを発表する。展示は2026年3月19日(木)より、カッシーナ・イクスシー青山本店にてスタートする。名作の再解釈から次世代デザインの提案まで、Cassinaの思想を多角的に体感できる内容となる。
2026年 Cassina 新作展示スケジュール
- 青山本店・名古屋店:2026年3月19日(木)~
- 大阪店・福岡店:2026年3月26日(木)~
「The Cassina Perspective」が示す、名作・サステナビリティ・建築的家具の現在地
名作・革新・クラフツマンシップを横断するプロダクト群
今回の新作群を貫くキーワードはCassinaが掲げる「The Cassina Perspective」。
単なるスタイル提案ではなく、リサーチ、イノベーション、卓越した職人技、そして時代を超えるシグネチャーデザインを横断的に結び直し、「いまの住まい」にふさわしいかたちで再構築する。
多様化するライフスタイルに応えながらも、決して流行に流されない強度を備えている。
<Cassina>
・FIANDRA sofa
・FLUID JOINERY – Side Table Ⅰ(展示開始時期未定)
・FF. SPINE bookshelf (青山本店・大阪店のみ)
・TL59 table (青山本店・大阪店のみ)
・TREFLO table
・CONSOLE DORON (青山本店のみ)
・TABLE BASSE EN FORME LIBRE (青山本店のみ)
・MON-NID bed (青山本店のみ)
・RUUNA pouf
・GLYNTEA centerpiece
<Karakter>
・CLESSIDRA vase
・GLASS CARAFE
名作を未来へとつなぐ再構築という創造
FIANDRA sofa ヴィコ・マジストレッティの名作を現代へ
新作の中核を担うのはヴィコ・マジストレッティが手がけた「FIANDRA(フィアンドラ)」の再構築である。
マジストレッティ自身も愛用していたFIANDRA。
かつて「くつろぎの隠れ家」として愛されてきたこのソファは、現代の生活に即したプロポーションへとアップデートされた。座面はよりゆったりと、構造はより軽やかに再設計され、リラックス感と視覚的な洗練を高い次元で両立している
サステナブル構造が示す、Cassinaの次世代基準
注目すべきはその内部構造にまで及ぶCassinaの思想だ。不要な要素を排したメタルフレーム構造、異なる密度のクッション材、そして分解・リサイクルを前提としたサステナブル設計。名作を「保存」するのではなく、「未来に適応させる」というCassinaの姿勢が、ここに表れている。


素材・構造・クラフツマンシップの最前線
FLUID JOINERY 吹きガラスと彫刻性の融合
2022年に始まったカッシーナとリンデ・フレイヤ・タンゲルダーによる若手才能を育成する協働プロジェクト「Patronage」から生まれた「FLUID JOINERY – Side Table Ⅰ」は、吹きガラスの流動性と彫刻的造形が融合したアートピースのような存在である。
完全なハンドメイドによって生み出される一台一台が異なる表情を持ち、家具と工芸、プロダクトとアートの境界を軽やかに越えていく。

FF. SPINE bookshelf 無垢材とサステナブル設計の到達点
一方、Formafantasmaによる「FF. SPINE bookshelf」は、無垢材の可能性を徹底的に掘り下げたモジュール型のブックシェルフである。一本の原木を最大限に活かす構成や、木目を際立たせる仕上げは、サステナビリティと美意識を両立するCassinaの思想が表現されている。


建築的スケールで空間を規定するテーブル群
TL59 スカルパが描いた建築彫刻としてのテーブル
アフラ&トビア・スカルパによる「TL59」、ロナン・ブルレックの「TREFLO」はいずれもテーブルという日常的な存在を、空間の「構造要素」へと引き上げるプロダクトだ。
特にTL59の新バージョンでは、アルミニウム×ガラスという構造に加え、石膏細工から着想を得た彫刻的仕上げが加わり、家具でありながら建築彫刻のような存在感を放つ。





TREFLO ロナン・ブルレックが示す有機的構造美
ロナン・ブルレックによるTREFLOは、バイオ由来ポリオールを含む硬質ポリウレタンを用いた新たなベース構造を採用する。
流動的なフォルムと豊かなカラーパレットが、リビングからダイニングまでを柔らかくつなぎ、空間に生命感をもたらす。
クローバーの葉を思わせる丸型や、無限大の形を描く三本脚ベースなど流動的なフォルムが特徴的。天板はラッカー仕上げに加え、テクスチャーガラス仕様も用意。カラーはニュートラルから深みのあるブルー、ピノ・ノワール、レンガ色、ダークグリーンまで洗練されたパレットを展開。

住まいの「詩的な機能」を呼び覚ますペリアンとウルキオラ
CONSOLE DORON / TABLE BASSE EN FORME LIBRE シャルロット・ペリアンの思想
シャルロット・ペリアンによる「CONSOLE DORON」、「TABLE BASSE EN FORME LIBRE」は、機能と詩性が不可分であった時代の精神を、現代の住空間に呼び戻す存在だ。
彫刻的でありながら用途に縛られないその佇まいは、「住まいを装備する」というペリアンの思想を雄弁に物語る。
1947年にシャルロット・ペリアンが手がけたCONSOLE DORONは、彼女が度々訪れたフランス・アルプス、メリベルの名門ホテルに由来するコンソールだ。
木材の豊かな素材感を生かした建築的造形が特徴で、徐々にボリュームを増すフォルムと、わずかな傾斜変化を持つ非対称の天板が彫刻的な存在感を生む。
壁付けを想定した設計に一本脚の円柱型レッグを組み合わせることで、軽やかな視覚性と高い安定性を両立。玄関のコンソールからリビングのテーブル、寝室のドレッサー、さらには通路空間まで、用途を限定せず住まいに寄り添う柔軟さを備えている。

1939年にシャルロット・ペリアンが構想した「アン・フォルム・リーブル(自由な形)」は、空間を最大限に活かすための思考から生まれた造形であり、彼女が掲げた「住宅の装備」という思想を端的に示すものだ。
1959年にローテーブルとして結実したTABLE BASSE EN FORME LIBREが誕生。
今回登場する新モデルは、1953年に日本でデザインされたダイニングテーブル「TABLE EN FORME LIBRE」の系譜を引き継ぐ自然な進化形である。
なめらかな曲線を描く天板と三本の円柱脚は、カッシーナの精緻な木工技術によって彫刻的な存在感を獲得しながら、コンパクトな空間にも無理なく溶け込む。
機能と美学が不可分であった時代の思想を、現代のリビングに静かに呼び戻す一台だ。


MON-NID / RUUNA 包み込まれる造形と循環型デザイン
パトリシア・ウルキオラによる「MON-NID bed」や「RUUNA pouf」では、包み込まれるようなフォルムと循環型素材の採用が際立つ。快適性とサステナビリティが対立するものではなく、同時に成立する価値として提示されている。
MON-NID bedはその名が示すとおり、「巣」を思わせる包容力を三次元的造形として結晶させたベッドだ。
豊かなボリュームと流れる曲線が身体を受け止め、眠りという体験そのものを空間の中心へと引き上げる。
1970年代の実験的デザインに着想を得つつ、素材と構造の統合という現代的進化を先取り。
ポリウレタンを用いず、リサイクルポリエステル綿によって成形された柔らかなフォルムは、循環型デザインの思想を体現する。接着剤を使わない構造により、分解・再資源化も容易。
広がりのあるフレームとヘッドボード、精緻なトップステッチが、造形美と実用性を高い次元で結びつけている。


RUUNAは柔らかな造形と静かな存在感によって、空間に温度をもたらす張りぐるみのスツールコレクションである。その丸みを帯びたフォルムは、視線にやさしく触れ、ひと目で快適さを予感させる。
3サイズの円形スツールとベンチで構成され、すべてを包み込むファブリックと脚部の関係性が、家具でありながらオブジェのような佇まいを生み出している。
単体でも、組み合わせても自在に配置でき、玄関、リビング、寝室といった住空間のあらゆるシーンに自然に溶け込む。さらに、リサイクル素材を用いた構造により、循環型デザインの思想を静かに内包。
機能を超えて空間の質を整えるための「居場所」として、住まいに寄り添う存在だ。

Cassina Details 暮らしの完成度を高めるディテールというラグジュアリー
GLYNTEA centerpiece 光と所作が交差する、もてなしのためのセンターピース
キアラ・アンドレアッティが手がけたGLYNTEAは、光のきらめきと社交の時間をひとつの造形へと昇華したセンターピース。
名称は、反射や輝きを意味するglintに通じる「Glyn」と、儀式性や洗練を象徴する「tea」を組み合わせた。その名が示す通り、日常のテーブルシーンに静かな輝きと優雅な緊張感をもたらす。
2種の長方形と1種の正方形、3サイズで構成されるトレイは、わずかなラインのみで描かれたミニマルなフォルムが印象的だ。
高度な成形技術によって仕上げられた薄板のステンレススチールは、手作業による組み立てと研磨を経て、光を受けるたびに表情を変える豊かな反射を生み出す。
中央に施された切れ込みが、軽やかなアクセントとして視覚的なリズムを添えている。
さらに、5軸加工によって精緻に彫刻された木製の脚部が、金属のシャープさに温もりを与え、素材同士の美しい対話を完成させる。
GLYNTEAは、単なるトレイではなく、もてなしの時間そのものを演出するための「舞台装置」として、どんなテーブルにも洗練された存在感を刻み込む。

Karakter 暮らしを完成させる、ディテールの提案
CLESSIDRA vase / GLASS CARAFE 使われる彫刻という思想
今回の発表では、Cassinaグループの「Karakter」から、フラワーベースやグラス、カラフェといったテーブルウェアも新たに展開される。
ジョエ・コロンボの「CLESSIDRA vase」、アルド・バッカーの「GLASS CARAFE」はいずれも、日常の所作そのものを美しく引き立てる「使われる彫刻」だ。
CLESSIDRA vase 花を浮かび上がらせる、ガラス彫刻という静かな存在感
イタリアを代表する建築家でありデザイナーでもあるジョエ・コロンボは、日用品に機能を超えた芸術性を与えることで、20世紀デザインに鮮烈な足跡を残した人物だ。
形状、光、シルエットを自在に操り、ホームウェアを小さな彫刻へと昇華させるその感性は、いまなお色褪せることがない。
彼が手がけたCLESSIDRAは、コロンボの美学を凝縮したタイムレスなガラスベースである。
軽やかな基部からすっと立ち上がるスレンダーなフォルムは、花を支えるという行為を超え、まるで宙に浮かばせるかのような視覚効果を生む。空間に置かれた瞬間、静謐で洗練された緊張感が立ち上がる。
その原点は1969年、幾何学的フォルムを基盤とした多用途ガラスオブジェのスケッチにある。機能と美が対立するものではなく、ひとつの造形として結晶していた時代の思想をCLESSIDRAは現代の住空間へと静かに継承している。


GLASS CARAFE 注ぐという所作を、美しい風景へと変える器
アルド・バッカーが2000年にデザインしたGLASS CARAFEは、長らくプロトタイプとして眠っていた作品である。
時を経て世に現れたその姿は、幅広のボトムから極めて細いネックへと連なる有機的なラインによって、やわらかな緊張感と詩的な均衡を湛えている。
同じフォルムを反復したグラスは、カラフェの蓋としても機能し、並べても、逆さに重ねても、ひとつの完成された造形として成立する。水を注ぐ、グラスを重ねる──その何気ない動作すら、視覚的なリズムと美しさをともなう「場面/シーン」へと変換される。
単体でも、セットでも成立する構成は、機能性と彫刻性を等価に扱うバッカーの思想そのものだ。GLASS CARAFEは、テーブルの上に置かれた瞬間から、日常の時間を静かに格上げする存在として、洗練された余韻を残す。




家具からオブジェ、空間からディテールへ。
Cassinaの2026年新作コレクションは、住まいを単なる箱ではなく、思想と時間が積層する「生きた空間」として再定義する試みだと言えるだろう。
2026年 Cassina 新作展示スケジュール
- 青山本店・名古屋店:2026年3月19日(木)~
- 大阪店・福岡店:2026年3月26日(木)~
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