階段を上り始めたロボット掃除機。いよいよ住まいを“立体地形”として理解し始める?
オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子
ありとあらゆる家電の中で、“住まいの空間を認識する”という機能がいち早く実用レベルで活用された存在、それがロボット掃除機だ。近年も様々な機能進化が続いているが、CES 2026でRoborockが発表した“脚輪型”ロボット掃除機「Saros Rover」の登場によって、ついに“階段を掃除しながら上る”という機能が加わった。
「段差を避けて清掃」から「階段を上りながら清掃」へ
2000年代初頭に登場したiRobotの「ルンバ」が牽引したロボット掃除機という分野。これが画期的だったポイントは、掃除機としての吸引力というより、室内を走行して自動で掃除をしてくれる製品設計そのものだった。その鍵となるのがマッピング機能、ロボット掃除機自身の空間認識能力である。
ひと昔前だと、ランダムに走行して壁に当たったら方向転換するものもあったが、今や高性能なマッピング機能が搭載された高機能モデルが当たり前になっている。空間を認識し、自分がどこにいるのかを理解することで、ロボット掃除機は一気に進化した。
もはや近年はマッピング機能は大前提になり、吸引掃除と拭き掃除を一体化した2in1モデルや、メンテナンスの手間を省く全自動ドックを装備するモデルなど、仕様がどんどん高性能化してきた。内蔵のセンサーやカメラで障害物を検出したら回避して走行するため、かつてのようにロボット掃除機を動かすために床を絶対的に片付けないといけないということもなくなっている。
そして今、いよいよロボット掃除機は階段を上り始めている。特に注目したいのが、RoborockがCES 2026で発表した、世界初※の“脚輪型”ロボット掃除機「Saros Rover」だ。(※2026年1月時点 Roborockおよび外部調査に基づく。Roborockはロボット掃除機業界において、「ホイール付き折り畳み式脚部構造」を世界で初めて採用・導入したブランドであり、2026年第1四半期に本技術を正式にローンチ)。
本機の最大の特徴は、ただ階段を上るだけではなく、一段ずつ清掃しながら上の階へと移動できること。本体に搭載されたホイールレッグが独立して伸縮・昇降し、段差を越えるための動作や小さなジャンプ、急停止や方向転換など、人の動きに近い柔軟な移動を実現する。これにより、床の高さや形状が変化しても、本体は常に安定した水平姿勢を保ちながら清掃を行う。
さらに階段だけでなく、傾斜路や複雑な敷居など、複数種類の段差にも対応。AIアルゴリズムを利用しながら、高度なモーションセンサーと3D空間認識システムと連携することで、周囲の環境を正確に把握し、ホイールレッグを最適に動かすという。
CES 2026の時点では製品化の詳細は明らかにされず、プロトタイプとして披露されたものだが、従来のロボット掃除機単体では不可能とされてきたエリアの清掃を実現するプロダクトとして高い注目を集めた。
ロボット掃除機が、家を“立体的”に理解し始めたら
これまでのロボット掃除機は、部屋・フロア単位で動く家電となっていた。だが段差、しかも階段を上りながら清掃できるという能力は、その境界を消す。ロボット掃除機が、部屋・フロア単位の家電から、家全体を連続的に把握する存在へ進化する可能性が示唆されたと言えよう。
「床=平面」という認識から、「家=立体・地形」へ、ロボット掃除機の空間理解が切り替わっていくとしたら……。これをLWL視点で見ると、ロボット掃除機が毎日の自動清掃の中で家全体を立体的に把握し、そのデータが最新のAI・スマートホームに統合されることで、見守り・防災・異常検知などに活用される未来もあり得る。
これからのスマートホームの中で、ロボット掃除機は“点で便利な家電”から、“暮らし全体に効くインフラ”になり得るのではないか。つまり、「家事・掃除をどこまで自動化できるか」という従来の製品設計から、「住空間をどう管理するか」という役割の転換も視野に入ってくる。早い段階からIoT・スマート家電の代表格として暮らしに馴染んできたロボット掃除機だが、今後も住まいの未来を語るうえでますます欠かせない存在になっていきそうだ。
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オーディオ&サブカルライター
杉浦みな子
1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/