“ボタンひとつ”から始まるスマートホーム。「ルンバ ミニ」が開く暮らしテクノロジーの入り口
オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子
ロボット掃除機の代名詞ともいえるiRobot「Roomba(ルンバ)」から、コンパクトで扱いやすい新モデル「Roomba Mini(ルンバ ミニ)」が登場した。日本の住宅にフィットしやすいコンパクトサイズで、簡単に使い始められるカジュアル感が特徴の入門モデルだ。日本における“スマートホームへの第一歩”を演出する1台となるか?
あのルンバからコンパクトモデルが出た
ロボット掃除機は、ずいぶん賢くなった。高度なマッピング性能により、部屋の形状や家具の配置を把握して動くのはもちろん、掃除も本体の手入れもほぼ自動化できる上、Wi-Fiにつながることでクラウドとも連携し、アプリ操作や音声アシスタントによるスマートなコントロールにも対応する。今やそれは、単なる掃除機ではなく、「空間を理解する家電」だ。
しかし、高度な進化は時として消費者に“置いてけぼり感”を与えることもある。特にスマート機能を享受するために必要なWi-Fi設定、アプリ連携、アカウント登録といった工程は、人によっては「自分にはちょっと難しい」という心理的ハードルになることもある。
そんな中、iRobotから登場したのが、今回ご紹介する「Roomba Mini(ルンバ ミニ)」だ。ロボット掃除機の代名詞ともいえるルンバから、コンパクトで扱いやすく、価格もカジュアルなシリーズが登場した。

充電スタンドの種類別に2モデルをラインナップしており、「Roomba® Mini 掃除機&床拭きロボット + AutoEmpty™ 充電ステーション」(49,800円)が2月27日(金)より、「Roomba® Mini Slim 掃除機&床拭きロボット + SlimCharge™ 充電スタンド」(39,800円)が4月6日(月)より、それぞれ全国のアイロボット認定販売店およびアイロボット公式オンラインストアで発売開始される。


メーカーが最も強調するのは、名称にも表れている通り、本体の小型化だ。公式発表によれば、ルンバ ミニのサイズは既存ルンバの約2分の1に(Roomba Combo105 ロボットとの体積比)になっている。これは、iRobotの日本法人が日本の住環境ニーズに合わせて提案した設計で、ワンルームや子ども部屋といった限られた空間にもなじみやすい。
同等サイズのロボット掃除機は他メーカーからも登場しているが、それが「世間で圧倒的認知度を誇るルンバから出た」というのはひとつのトピックだろう。

さらに本体カラーも、スタンダードな黒と白に加え、AutoEmpty 充電ステーションはくすみカラーの「桜(ピンク)」と「若葉(グリーン)」をラインナップ。ロボット掃除機は、使っていないときも部屋の中に存在し続ける家電だ。だからこそ、小さく可愛らしいカラーのフォルムは、空間への圧迫感を減らす。コンパクト化とは単なるサイズの問題ではなく、“家電が空間にどう居るか”を再設計する試みでもある。

“ボタンひとつ”でスマートホームの入り口に立つ
そしてもうひとつの特徴が、使い始めるまでのシンプルさ。
ルンバ ミニは、本体を小型化しつつ、高度なマッピングや吸引性能、スマート連携などの機能性は、できるだけフルサイズの既存ルンバを引き継いだ。Wi-Fiに接続すれば従来通りアプリと連携し、細かなコントロールが設定できる。さすがにモップ洗浄の自動化などには非対応であるが、従来のルンバを使いこなす層から見ても、基本の吸引掃除に関して機能不足感が大きく出ないよう配慮されている。

ただ、それを踏まえた上で、iRobot側は「Wi-Fiに接続しなくても良い。本体の物理ボタンを押すだけで使える」と訴求しているのがポイントだ。
製品を購入して部屋に設置して電源をつなぎ、本体の物理ボタンを押せば、その瞬間から掃除が始まる。今どきのロボット掃除機の高機能性に“置いてけぼり感”を覚えていたエンドユーザーが、「自分にはこれくらいがちょうど良い」と思えるシンプルな製品設計。
つまりこのルンバ ミニは、 入門者へのアプローチを強化するため、「Wi-Fiにつながなくても良い」という選択肢をあえて用意しているのだ。「テクノロジーの難しさを感じさせないこともまた、テクノロジーの進化」という言葉が浮かび上がってくる。
テクノロジーと暮らしの距離が静かに縮んでいく
「スマートホーム」という言葉は、どこか大きい。家全体をネットワーク化し、あらゆる機器を連携させる未来像はとても魅力的。だが、全員がその完成形から入らなければならないわけではない。それを身近に感じるきっかけとして、“難しくない入り口”の存在は、テクノロジーの裾野を広げる大事な要素となる。
いきなり家全体をスマート化せず、まずは一室、あるいはワンルームから、その便利さを少しずつ感じていくのも良い。ロボット掃除機は、家電の中でもいち早くスマート連携機能を実用化した存在。黎明期にその市場を牽引したiRobotの最新モデルであるルンバ ミニは、ひとり暮らしの部屋や、子ども部屋、書斎といった、家の中の小さな空間にスルッと入り込んでいく。
スマートホームの未来に向けて、小さな自動化が静かに積み重なっている今、ボタンひとつでその入り口に辿り着き、必要になったら“つなぐ”こともできるルンバ ミニは、スマートとアナログのあいだに、やわらかなグラデーションをつくる1台と言えるだろう。iRobotの再スタートを飾るこの日本モデルは、選択肢を広げるというかたちで、テクノロジーと暮らしの距離を静かに縮めようとしている。
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オーディオ&サブカルライター
杉浦みな子
1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/