【スマートホーム/ホームオートメーション特集】別荘から考える建築統合型スマートホーム―― 別荘のスマートホーム設備監視とは?
取材/LWL online編集部
前回、LWL onlineでは「セキュリティは動線・ゾーニング設計である」と論じた。本稿ではその続編として、別荘における設備監視設計を取り上げる。インフィニティプール、露天風呂、サウナ、チラー、ワインセラー、アート室――ラグジュアリー設備は演出装置ではなく機械設備である。制御だけでは不十分だ。状態の可視化と予測制御を含む「建築統合型スマートホーム」の本質を解説する。
セキュリティ設計の次に来るもの──設備監視という発想
インフィニティプールからサウナ・チラーまで統合管理する設計思想
前回、LWL onlineでは「セキュリティは動線設計である」と述べた。顔認証と警備を連動させ、門扉やシャッター、エレベーター、照明、空調、床暖房までを一体で制御する。その設計思想こそが、建築統合型スマートホームの核心であると論じた。
だが、ラグジュアリー邸宅における統合設計は、セキュリティだけでは完結しない。
「スマートホーム」という言葉はとかく「快適」や「便利」と結びつけて語られる。だが、ラグジュアリー邸宅、特に別荘においては事情が異なる。
そこには、日常住宅には存在しない特殊設備が数多く導入されるからだ。少し例を挙げてみよう。
・インフィニティプール
・インフィニティ露天風呂
・外構照明
・プールサイドのBGM
・パーティールームのホームシアター
・ワインセラー室
・アート室
・サウナ/チラー
これらは単なる「付加価値設備」ではない。それぞれが独立した機械設備であり、継続的な監視とメンテナンスを前提とする設備群である。
ラグジュアリー邸宅、特に別荘におけるスマートホーム/ホームオートメーションは、「制御」だけでなく「監視」の設計が不可欠になる。
スマートホームのセキュリティは動線設計で決まる──顔認証と警備連動の実践例

インフィニティプールは「水景」ではなく「機械設備」である
インフィニティプールは美しい。それは水景でもあり、見つめるだけで穏やかな気持ちになる。
だがその裏側では、濾過設備、還水槽、水位計、循環ポンプ、排水ポンプなどが常時稼働している。
・濾過設備の発停制御
・ポンプのトリップ警報
・水位異常
・給水量の監視
・塩素濃度の維持
これらを現場でしか確認できない状態にしておくことは、別荘においては極めて危険だ。
使用していない期間に異常が起きれば、設備破損につながる。
前回採りあげた別荘では、濾過設備や排水ポンプの一括警報をホームオートメーションに取り込み、異常信号を集約表示できるよう設計した。プールのオートメーションで重要なのは、「制御」ではなくまずは「状態把握」である。

露天風呂もまた「常時監視設備」である
露天風呂もプールと同様だ。水位、給湯循環、濾過設備、温度管理。異常を検知しなければ、空焚きやポンプ破損につながる。
別荘では管理会社が巡回するとはいえ、異常発生のタイミングは選べない。
ホームオートメーションに警報信号を取り込み、状態を可視化する。これにより、遠隔からでも設備状態を把握できる構造をつくることができる。

サウナは遠隔ONしない──安全設計の優先順位
サウナは高温を扱う設備であり、安全設計が最優先となる。
わたしが請け負っていた案件では、サウナの遠隔からのオンは採用しなかった。オフ信号のみという仕様にした。無人状態での遠隔起動はリスクを伴うからだ。
ホームオートメーションに取り込んだのは、運転状態の監視、異常検知、遠隔OFF機能のみである。つまり「制御」ではなく「停止権限」。スマートホームは何でも遠隔操作できるべき、という発想は危険である。制御してよい設備と、してはならない設備がある。
サウナはその象徴的な例である。

チラーは「時間設計」が必要な設備である
一方で、チラーはまったく異なる性格を持つ。水冷式チラーは冷却に時間がかかる。わたしも設備設計から話を聞くまでは知らなかったのだが、スイッチを入れてすぐに最適温度になる設備ではない。数時間が必要だ。
そこで、数時間前からの事前起動を前提とした設計を行った。別荘に出発する前、あるいは到着数時間前に遠隔で導入できるようにしたのである。
ここで重要なのは、「遠隔操作ができる」ことではない。時間を設計に組み込んでいることだ。ラグジュアリー設備の統合設計とは、即時制御ではなく「予測制御」をも含む。
ワインセラー室とアート室は「文化財保管空間」
ワインセラー室とアート室は快適性ではなく保存性が求められる。温度と湿度の安定が最優先である。
温度逸脱・湿度逸脱、空調停止、電源トラブルなど、異常を検知できなければ、資産価値を毀損する可能性がある。ワインもアートも資産である。
温湿度センサーを統合制御系に組み込み、異常時に警報として表示する。ここでもプール同様、「制御」よりも「監視」である。

外構照明・BGM・ホームシアターも監視対象になる
外構照明は演出装置であると同時に、電気設備でもある。また、プールまわりのBGM機器は、屋外環境にさらされる。パーティールームのホームシアターは、別荘では長期間未使用となる可能性がある。
いずれも「動くかどうか」を把握できなければ、安心は得られない。別荘におけるラグジュアリー設備は、美しさの裏側に、必ず機械的リスクを抱えている。ここでもトラブルの状態監視が非常に重要となる。

別荘に求められる統合設備管理とは
別荘は常時有人ではない。管理会社も毎日入るわけではない。そこにある設備は「使うため」ではなく「維持するため」の設計が必要になる。ラグジュアリー設備は演出装置であるとともに、電気設備・機械設備である。
ホームオートメーションは、それらを一括で可視化し、異常を集約する。
セキュリティが「動線設計」なら、設備監視は「状態設計」である。
そしてサウナやチラーの設計が示すように、そこには「安全設計」と「時間設計」が加わる。

制御から監視へ、そして予測へ──建築統合型スマートホームの思想
スマートホームは「何ができるか」で語られがちだ。しかし、それ以上に重要なのは「何が起きているか」「何が起きるか」を把握できるか否かである。「ポンプは正常に動作しているか」「温湿度は安定しているか」「高温設備は安全か」「到着時に最適状態になっているか」
「状態のフィードバック」と「時間の設計」こそが、スマートホーム設計の成熟度を決定する。
ラグジュアリー住宅のホームオートメーションは、単なる制御装置ではない。統合監視・安全管理・予測制御システムである。
そしてここに、LWL onlineが提唱してきた建築統合型スマートホームの思想がある。機器を足し算することではない。電気設備、機械設備、警備、AV、空調、給排水──それらを「建築の中に統合する」ことだ。
フィールドバスによるローカル制御、Home OSによる階層化、そしてUIによる状態可視化。制御・監視・予測が一体となったとき、住宅ははじめて「統合されたシステム」として機能する。
建築と設備と制御が分断されている限り、建築統合型スマートホームは成立しない。セキュリティが動線を設計する思想であったように、設備監視は住宅の「生命維持構造」を設計する思想である。ラグジュアリー設備の統合は、贅沢のためではない。住宅というシステムを安定運用するための必然である。
次回は、これらの設備監視と警備をどのように統合し、「アラート設計」へと昇華させたかを掘り下げたい。

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LWL online 編集部