建築家のための「Home OS」体験。HOMMAが掲げる“後付けIoTではないスマートホーム”の思想とは
オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子
2026年2月、シリコンバレー発のスマートホーム企業「HOMMA(ホンマ)」が、建築・デザイン関係者を対象とした体験型スマートホームセミナー「HOMMA Built-in Intelligence Session vol.1」 を開催した。ラグジュアリー住宅や高付加価値レジデンスに携わる建築家・設計者・デベロッパーに向け、「後付けIoTではないスマートホーム」の本質を体験的に提示する催しとなった。
住空間づくりのプロたちが集った1日
本イベントは、HOMMAとLWL onlineの共同運営により開催されたもの。会場となったのは、HOMMAの代々木上原オフィスだ。セッションでは、照明・空調・遮光・セキュリティといった住空間の要素を、設備単位ではなく「建築段階から統合するOS」として捉えるHOMMA Home OS構想が紹介された。
特に、プレゼン資料による説明に加え、実際の空間とデモンストレーションを通じて、その思想がどのように建築体験へ落とし込まれるのかを体感できる構成となっていた点が特徴だ。
会場には住空間づくりの上流に関わる様々な分野の方々が集い、終始高い関心に包まれていた。以下より、当日行われたプレゼンテーションの詳細をレポートしていこう。

LWLが捉えるスマートホームの現在地。「操作する家」から「住宅インフラ」へ
イベント冒頭では、LWL onlineの川嶋編集長が登壇し、本セッションの前提となる「スマートホームの捉え方」について整理を行った。

LWL onlineは、ラグジュアリー住宅を軸に、建築・インテリア・ウェルネス・テクノロジーを横断的に扱う専門メディアとして立ち上げられた媒体だ。その中で、特に重点的に伝えてきたテーマのひとつが、建築の文脈で語るスマートホームである。川嶋編集長は、LWLが扱うスマートホームは「操作するためのガジェット」ではないという点を強調した。
スマートスピーカーやスマート電球に代表されるIoTガジェット型のスマートホームは、製品単体としての利便性は高い一方、多くがクラウド依存の仕組みとなる。それに対しLWL onlineが重視しているのは、テクノロジーを住宅の一部=建築インフラとして設計する「建築統合型スマートホーム」という考え方だ。

照明、空調、遮光、セキュリティといった要素を統合し、住宅そのものが知性を持ったかのように自律的に振る舞う、“操作しない家”を目指すこのアプローチは、本格的な統合制御システムを中心に、これまで主にラグジュアリー住宅の領域で発展してきた。

建築統合型スマートホームの新たな系譜「ユニット型」
そしてさらに掘り下げると、建築統合型のスマートホームにも、大きく2つの系譜がある。ひとつは、システムインテグレーターが施主ごとにゼロから構築していく「レガシー型」。完成度はシステムインテグレーターの力量に大きく左右されるものの、理想的に仕上がれば非常に完成度の高い住空間が実現する。一方で、時間・コストがかかり、長期運用においても継続的なサポートが欠かせない。また、 システムインテグレーターの力量に左右されるため、属人的な性質を帯びることは避けられない。

そしてもうひとつが、「ユニット型」。長期運用を前提に、あらかじめ建築に住宅OSを組み込むスタイルである。住宅システムを、ソフトウェアの仕組みそのもので成立させて提供することで、属人的にならずOSをアップデートする形で進化させていける。いわば、後付けIoTとレガシー型スマートホームの良いとこ取りをするような考え方だ。
そんな「ユニット型」を実現する選択肢のひとつが、今回のセミナーで紹介されたHOMMA Home OSなのである。川嶋編集長はこれを、「レガシー型が“作品”をつくるのに対し、ユニット型は“文化”をつくる」と表現した。

HOMMAが目指してきた住宅の進化
続いては、HOMMA Group株式会社の創業者であり代表取締役の本間毅氏が登壇。ブランドの成り立ちとこれまでの歩みを語った。「HOMMA」というブランドは、2026年5月で10周年を迎える。シリコンバレーで設立され、テスラやiPhoneのようなイノベーションを“住宅”の領域で起こしたいという思いからスタートした。


初期にはルートロンなどのレガシーシステムを用い、高性能な照明制御や、スマートロックでの鍵の開閉など、既存のスマートな技術を住宅に実装してきた。コロナ禍には、ベッドルーム内にワークスペースを組み込むなど、生活様式の変化を反映した住宅も手がけている。





そして2020年頃からは、建築とテクノロジーをより深く融合させるため、独自技術の開発に本格的に着手。その技術を住宅に実装すると同時に、外部へのライセンス提供という形で展開していく方針をとった。これが「ユニット型の住宅OS」に相当する。





本間氏が語る未来の住まい像は、単なる効率化ではない。AIが多くを代替できる時代だからこそ、人間の幸福度をどう高めるか。時間の価値が「量」から「質」へと移行する中で、住まいはその質を底上げする存在であるべきだという。そこで掲げられたテーマが「Quality of Home Living」。HOMMAは、住宅そのものが、人生の充実度を支える基盤になることを目指している。


そして、そんな思想の中核にあるのが、「Built-in Intelligence」というコンセプトだ。冒頭で川嶋が紹介したように、スマートホームを後付けのIoT機器や操作デバイスの集合としてではなく、「建築に内包された知性として設計する」という思想に基づく住宅システムを表すワードである。

その特徴は、同社のシステムを住宅全体の「Home OS」として捉えている点。センサーが感知した環境条件に応じて、照明などの各設備が連動しながら自律的に最適化されていくのだ。住人による頻繁な操作や設定を必要としない、「意識せずとも整う住環境」を目指している。
もちろん、住人がより良い設定に調整できるカスタマイズ性も確保し、アプリによる遠隔操作や見守り機能などにも展開できる。さらに大きいのは、ローカルネットワークを基本としながら、Home OS自体を遠隔でアップデートしていける仕組みだ。

設計・施工プロセスから見える「第3の選択肢」
後半では、HOMMAで建築部門を担う井上亮氏が、より具体的なプロセスについて解説した。HOMMAのHome OSは、レガシーシステムの統合性と、IoTの手軽さを併せ持つ「第3の選択肢」として位置づけられる。接続方式、施工手順、情報処理、サポート体制、拡張性、費用対効果といった観点から、上述の通りレガシーとIoTの“良いとこ取り”を実現している点がアピールされた。

特に印象的だったのは、住宅システムを個別の担当者に属人化させず、仕組みとして成立させることへ、同社が強い意識を持って取り組んでいること。システムのデフォルト設定を用意して提供するうえで、入居者やデザイナーが自由にカスタマイズできる余地も残す。さらに、集合住宅への展開も見据えた設計思想も語られた。

続いてプレゼンテーション後は、HOMMAのオフィス内にあるショールームに移動。そこに組み込まれたHome OSによるスマートホームシステムの心地良さを、参加者全員で体感するデモンストレーションが実施された。




また、イベントのラストに行われた質疑応答では、レガシー型システムが抱えてきた課題についても率直に触れられた。担当インテグレーターが変わることで運用が難しくなる問題や、クラウド依存によるリスク。それらに対し、本間氏は「家は長く住むものだが、中に入るテクノロジーは進化し続けるべき」と語る。住宅の価値を色褪せさせないためにも、ソフトウェアアップデートを前提としたHOMMA Home OSは有力な選択肢となるのだ。

“家が人に合わせる”スマートホームへ
本イベントを通して示されたのは、スマートホームの本質的な体験価値だったと言える。これからのスマートホームが目指すのは、操作できること自体がゴールではなく、家が人に寄り添い、自然に振る舞うこと。人が帰宅したときに、家そのものが「おかえり」と言ってくれるような未来だ。HOMMA Home OSが、それを実現する現実解として提示された。
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オーディオ&サブカルライター
杉浦みな子
1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/