HOMMA × アイリスオーヤマ資本提携。スマートホームは「IoTガジェット」から「Home OS」へ変わるのか⁉
取材/LWL online編集部
日本のスマートホームはなぜ家電やガジェットの話ばかりなのだろうか。スマートスピーカー、IoT家電、アプリ操作――。しかし海外では、住宅そのものをソフトウェアで動かす「Home OS」という概念が登場し、根付いている。
残念ながら、かつてのITや、現在のAIと同様に、日本のスマートホームの動きは、海外の動きから周回遅れになってしまっている。
さて、シリコンバレー発のスマートホーム企業HOMMAと、総合メーカーのアイリスオーヤマが資本業務提携を締結した。HOMMAのHome OS「Cornerstone OS」とアイリスオーヤマの照明・住宅設備を組み合わせ、日本のスマートホーム市場に新たな動きが生まれる可能性がある。
IoTガジェット、あるいはIoT家電中心だった日本のスマートホームは、これを機に「Home OS」という新しい段階へ進むのだろうか?
HOMMA × アイリスオーヤマが資本業務提携
シリコンバレー発のスマートホーム企業HOMMA Group株式会社と、総合メーカーのアイリスオーヤマ株式会社が資本業務提携契約を締結した。アイリスオーヤマは2025年末、HOMMAが実施した第三者割当増資を引き受けて出資を実行。両社は住宅市場におけるスマートホーム事業の連携を強化する。
今回の提携は、単なる企業間協力にとどまらない可能性を持つ。
もし両社の協業が本格化すれば、日本のスマートホームの構造そのものが変わる可能性があるからだ。
HOMMAが掲げる「Built-in Intelligence」という思想
住宅をソフトウェアで設計するHome OS
HOMMAは2016年、シリコンバレーで創業したスマートホーム企業だ。
同社が掲げるのは「Built-in Intelligence(ビルトイン・インテリジェンス)」という概念である。
多くのIoTガジェット型スマートホームであり、「家電をアプリで操作する仕組み」であるのに対し、HOMMAは住宅そのものをソフトウェアで設計するというアプローチを取る。
その中心となるのが、同社が開発したHome OS「Cornerstone OS」だ。このシステムは照明、空調、セキュリティなど住宅設備を統合制御する。重要なのは、住人がアプリ操作や音声指示を行わなくても、住宅が自律的に環境を整える点だ。
LWL onlineでも繰り返し指摘してきたように、従来のIoTガジェット型スマートホームとは根本的に異なる思想である。



アイリスオーヤマが狙う「住宅市場」
家電メーカーから空間ソリューション企業へ
一方、アイリスオーヤマは日本を代表する総合メーカーの一つだ。
生活家電やLED照明、インテリア製品を中心に事業を拡大し、近年は「空間ソリューション」「ロボティクス」「エネルギー関連」などBtoB領域にも進出している。
同社は住宅市場を重要な成長領域と位置付けている。
今回の提携は、HOMMAのソフトウェア技術と、アイリスオーヤマの製造力・製品ラインアップを組み合わせることで、住宅向けソリューションを強化する狙いがあるだろう。
無線制御技術「LiCONEX」とHome OSの連携
Cornerstone OSと照明制御システムの統合
両社の協業はすでに始まっている。
HOMMAが米国ポートランドで開発した住宅「HOMMA HAUS Mount Tabor」(2022年竣工)では、アイリスオーヤマの無線制御技術「LiCONEX」が導入されている。このシステムはHOMMAのCornerstone OSと連携し、住宅全体の照明環境を統合制御する。
その後もHOMMAの住宅プロジェクトでは、LED照明などアイリスオーヤマ製品の採用が進んでおり、今回の資本提携により連携はさらに強化される見通しだ。

「LABORN心斎橋」でスマートホーム体験空間を展開
今回の提携の第一弾として、アイリスオーヤマが大阪・心斎橋に開設するショールーム「LABORN心斎橋」にHOMMAのスマートホームシステムが導入される。
LABORN心斎橋は、照明や建材、住宅設備、ICT機器などを組み合わせた空間ソリューションを検証できるBtoB向けの“ラボ型ショールーム”だ。
施設は1階と地下1階で構成されており、1階ではLED照明の配光や光色、空間との組み合わせを検証、地下1階では住宅・オフィス・教育施設などの空間ソリューション展示といった形で構成されている。
ここにHOMMAのHome OS「Cornerstone OS」が組み込まれることで、住宅設備とソフトウェアが統合された次世代住宅の体験環境が提示されることになる。
LABORN心斎橋 概要
・名称:LABORN心斎橋
・所在地:〒542-0083 大阪府大阪市中央区東心斎橋1丁目 20-16 アイリス心斎橋ビル
・営業時間:10:00~18:00(定休日:土・日・祝日、その他アイリスオーヤマの休日に準ずる)
※予約制。
※下記フォームからも予約可能。
https://www.irisohyama.co.jp/b2b/form/?form_url=b2b-contact
日本のスマートホームはどこへ向かうのか
日本のスマートホーム市場はこれまで、スマートスピーカー、IoT家電、アプリ連携といった「IoTガジェット型スマートホーム」が中心だった。「ホーム」という言葉が付いてはいるが、住宅や建築とは全く関係がない“ガジェット”であった。
逆に、海外では、住宅設備や建築システムと統合された「建築統合型スマートホーム」が普及している。建築統合型スマートホームでは、住宅は単なる建築物ではなく、ソフトウェアによって動く「Home OS」を持つプラットフォームとして成立している。
HOMMAとアイリスオーヤマの提携は、その流れが日本市場にも到来しつつあることを示しているのかもしれない。
大手製造メーカーと新鋭Home OS企業の提携が意味するもの
もし今回の協業が本格化すれば、日本のスマートホーム産業の構造は大きく変わる可能性がある。
これまで日本の住宅市場では、建築、設備、家電、IT、ロボットがそれぞれ別の業界として存在していた。しかしHome OSという概念が普及すれば、住宅は「建築 × ソフトウェア × 家電」という新しい産業領域になる。
今回の提携は、その最初の試みになるかもしれない。
HOMMA Group株式会社
• 代表者:Founder & CEO 本間 毅
• 日本拠点:東京都渋谷区西原3丁目1-10 tefu YoyogiUehara
• 設立:2016年(シリコンバレーにて創業)
• 事業内容:建築・テクノロジー融合型スマートホーム開発、スマート住宅システムの設計・ライセンス展開
• URL:https://www.hom.ma/jp
アイリスオーヤマ株式会社
• 代表者:代表取締役社長 大山 晃弘
• 所在地:宮城県仙台市青葉区五橋2-12-1
• 設立:1971年
• 事業内容:生活用品の企画、製造、販売
• URL:https://www.irisohyama.co.jp/
FAQ:Home OSとは何か?
Q:海外のラグジュアリー邸宅で普及しているHome OSとは何ですか?
Home OS(ホームOS)とは住宅設備を統合制御するソフトウェア基盤のことです。
照明、空調、セキュリティ、エネルギー管理、家電など、住宅内のさまざまな設備を一つのシステムとして管理し、住環境を自動的に最適化する役割を持ちます。
日本で普及するIoTガジェット型スマートホームは、スマートフォンアプリや音声アシスタントを使って家電を操作する仕組みが中心です。基本的にはクラウドに依存しています。
一方、Home OSは住宅そのものをひとつのシステムとして設計し、住宅設備同士を連携させながら環境を自律的に制御することを目的としています。
Home OSは「照明・空調・セキュリティの統合制御」「居住者の生活パターンに応じた環境調整」「センサーやロボットと連携した住宅環境の最適化」などの機能を持ちます。
このようにHome OSは、住宅を単なる建築物ではなく「ソフトウェアで動く環境プラットフォーム」として捉える考え方です。
近年、欧米では建築とテクノロジーを統合した住宅設計の一部としてHome OSの概念が広がりつつあり、さらにAIが加わることで、住宅そのものが知能を持つ「AIスマートホーム」、あるいは「AIエージェントホーム」へと発展する可能性も指摘されています。
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