檜創建、ミラノで川上元美デザインの木製浴槽新作「sa yu」を発表へ。檜と水の文化を国際バスルーム展で提示
取材/LWL online編集部
木製浴槽を単なる和の意匠としてではなく、日本の入浴文化そのものをかたちにするプロダクトとして提案してきた企業がある。岐阜県中津川市に本社工場を構える檜創建だ。地元特産の木曽檜材を中心に用い、職人の手仕事によって木製浴槽を製造・施工までを一貫して行う。ホテルや旅館、リゾート、注文住宅、別荘、介護・福祉施設に加え、海外にも展開し、単体浴槽だけでなく浴室ユニットやシステムバスまで視野に入れた提案を行ってきた。木を素材として扱うだけでなく、浴室という空間全体を設計対象としてきた点に、この会社の独自性がある。
その檜創建が、2026年4月21日から26日にかけてイタリア・ミラノで開催されるSalone del Mobile.Milano / International Bathroom Exhibitionに出展し、日本を代表するプロダクトデザイナー、川上元美氏による木製浴槽の新作を発表する。会場はFiera Milano, Rho、出展場所はPavilion 10 – C07。今回の発表は、日本の木と湯の文化を、国際的なバスルームデザインの舞台へ持ち込む試みとして注目される。
檜創建が手がけてきたのは、「木の浴槽」ではなく「湯の空間」
檜創建は、岐阜県中津川市を拠点に、木曽檜を中心とした木製浴槽の企画・設計・製造・施工を手がけてきた企業だ。受注生産を基本とし、規格品だけでなくサイズや仕様変更にも対応。全国の宿泊施設や住宅案件に納入実績を持ち、欧米やアジアへの輸出展開も行っている。
さらに、単体の浴槽販売にとどまらず、新築・リフォームの双方に対応する浴室ユニット、システムバスの提案まで行っている点が特徴だ。
ここで重要なのは、檜創建が浴槽を単体製品として切り出しているのではなく、入浴という行為が成立する空間全体を扱っていることだろう。浴室は素材、湿度、香り、光、肌触り、そして湯に身を沈める時間の感覚が重なり合う場所である。木製浴槽という存在はその中心に置かれるべき静かな建築的要素でもある。
今回の新作を手がけるのは、プロダクトデザイナーの川上元美氏。1940年兵庫県生まれ。東京藝術大学で学んだのち、1966年から1969年までミラノのアンジェロ・マンジャロッティ建築設計事務所に勤務し、1971年に川上デザインルームを設立した。以後、プロダクトデザイン、インテリアデザイン、環境デザインを横断しながら、日本のデザイン界において長く重要な仕事を重ねてきた。
川上氏の仕事には、造形を過度に主張するのではなく、素材や用途、空間との関係のなかで静かに立ち上がる美しさがある。浴槽のように、身体が直接触れ、日常の所作を受け止めるプロダクトにおいて、その抑制の効いた設計思想はきわめて相性がよい。しかも今回は、川上氏自身がかつてキャリアの一部を過ごしたミラノでの発表である。その意味でも、この新作は単なる海外出展以上の奥行きを帯びている。
新作「sa yu」が託す、檜と清水の感覚
今回発表される新作のコンセプトは、「sa yu – On the purity of HINOKI and clear water」。檜創建によれば、同社の本社工場がある岐阜県は「清流の国」とも呼ばれる水と緑の豊かな土地であり、その地域に息づく木工技術を背景に、檜の浴槽を製造してきたという。新作では、日本の入浴文化に見られる「深い湯に浸かること」と「天然の檜、白木の浴槽を用いること」という二つの特徴を、白湯と白木から着想した「sa yu」という言葉に込めて提示する。
ここで語られているのは、檜の白さ、水の透明感、湯に浸かる深さ、そして身体を整える静かな時間。そうした感覚を装飾の「和」のような過剰な演出ではなく、プロダクトの佇まいとして翻訳しようとする姿勢が、このコンセプトからは感じられる。ラグジュアリーの文脈でもいま求められているのもまた、派手な記号ではなく、素材と所作が矛盾なく結びついた静かな豊かさである。
International Bathroom Exhibitionは、Salone del Mobile.Milanoのなかでもバスルーム空間に特化した隔年開催の専門展で、2026年会期は4月21日から26日まで、Fiera Milano Rhoで行われる。
バスルームを単なる水回りではなく、現代のインテリアとライフスタイルの重要な領域として位置づける場であり、素材、設備、空間提案が国際的に交差する舞台でもある。
その場において、檜創建と川上元美氏が提示する「sa yu」は、日本の入浴文化を表層的な異国趣味としてではなく、素材と身体感覚に根ざしたデザインとして示せるかどうかが問われる展示になるはずだ。
木製浴槽の新作発表というニュースでありながら、その射程はむしろ、浴室をどのような空間体験として再定義できるかという問いに向かっていることが感じられる。その答えがミラノでどのようなかたちを取るのか、注視したい。
出展概要
Salone del Mobile.Milano / International Bathroom Exhibition
会期:2026年4月21日〜26日
会場:Fiera Milano, Rho
出展場所:Pavilion 10 – C07
デザイン:川上元美
コンセプト:sa yu – On the purity of HINOKI and clear water
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取材
LWL online 編集部