130がミラノで描く、存在の痕跡。新作《Link of Existence》をANTEPRIMA Showroomで発表
取材/LWL online編集部
身体が去った後にも、空間には熱や時間の残り香がある。デザインブランド「130(ワンサーティ)」がミラノデザインウィーク2026で発表する新作《Link of Existence》は、その見えにくい気配を椅子というかたちに結晶させた作品だ。ANTEPRIMA、WOWとの協働展「Link of Moments × Link of Existence」を通じて、記憶と存在の輪郭が、映像と立体の両面から静かに浮かび上がる。
記憶と存在を見つめる、3者協働の展示がミラノで実現
椅子とは身体を委ねる器であるとともに、そこに流れた時間の堆積を蓄える装置でもある。
ミラノデザインウィーク2026において、デザインブランド「130(ワンサーティ)」が発表する新作《Link of Existence》は、そうした目に見えぬ余韻にかたちを与えようとする試みだ。
会場となるのはミラノのANTEPRIMA Showroomで開催される特別展「Link of Moments × Link of Existence」。ファッションブランドのANTEPRIMA、ビジュアルデザインスタジオのWOW、そして130という異なる領域を横断する3者の協働により実現した本展は、日々の営みのなかで生まれる無数の瞬間が記憶として積み重なり、私たちの存在の輪郭を形づくっていく過程を映像と立体の両面から浮かび上がらせる。
「線を建築する」130、その造形思想と循環への視線
130はMagnaRecta Inc.が展開するデザインブランド。
一本のフレーム、すなわち「線」を建築するように空間へ立ち上げる独創的なアプローチにより、家具や照明、インスタレーションを手がけてきた。光や空気、そして余白が通り抜ける、その「抜け」そのものを意匠として扱い、構造体の硬質さと詩的な軽やかさを共存させている。
特筆すべきはその造形美の背後にある「循環」への眼差しだ。金継ぎのように修復を肯定し、役目を終えた後は解体して再素材化へとつなげる。完成品として固定されることを前提とせず、変容し続けることまで含めて設計する姿勢には、テクノロジーとクラフトマンシップを往還しながら、新たな循環型の造形文化を探ろうとする意志が見える。
《Link of Existence》が椅子に託した「不在の痕跡」
今回発表される《Link of Existence》は、そうしたブランドの矜持を、きわめて静謐なかたちで結晶化させた作品といえる。黒から透明へと移ろうグラデーションを纏った彫刻的な椅子は、つい先ほどまでそこに留まっていた身体の熱量や重み、そして時間の推移を想起させる。
そこに描かれるのは、不在によって逆に縁取られる「影」であり、光を透過する構造体は、鑑賞者の視点によって密度と奥行きを変えながら、誰かがそこにいた確かな痕跡を空間に刻んでいく。家具でありながら、同時に残像のメディアでもあるその佇まいは、機能や造形という枠組みを超え、住まいの中にいかにして気配が宿るのかを問いかける。


WOWの《Link of Moments》と交差して立ち上がる「時間のかたち」
この作品がWOWによる《Link of Moments》と対をなすことにも深い意味がある。WOWのインスタレーションが光と映像によって意識の底に眠る記憶の断片を呼び起こし、普遍的な情景を立ち上げるのに対し、130は物理的かつ静かな造形によって、存在の余韻を可視化する。
瞬間の記憶と存在の残像。その両極を往還することで、本展は個人の内面に編み込まれていく時間のあり方を、多層的に体験させる構成となっている。

ANTEPRIMA Showroomという舞台が与える文脈
会場となるANTEPRIMA Showroomという文脈もこの展示に奥行きを与えている。1993年の誕生以来、「Smart, Precious with LOVE」をコンセプトに、知性と慈愛に満ち、洗練されたエレガンスを提案し続けてきたファッションブランド。伝統の技術と現代的な感性を交差させてきたブランドが、ミラノという国際的な舞台で130とWOWの表現を受け止める。
そこには、ファッション、アート、空間デザインが緩やかに越境し合う、現代のミラノらしい審美眼の交差がある。
引き算の美学が示す、現代デザインの静かな強度
喧騒きわまるミラノデザインウィークにおいて、しばしば強い色彩や過剰な主張が注目を集めるが、《Link of Existence》が選んだのは、それとは対照的な引き算の態度だ。声高に語るのではなく、消えかけた痕跡を丁寧にすくい上げること。実体を誇示するのではなく、線と透過、密度の揺らぎによって、存在の輪郭を静かに浮かび上がらせること。
ラグジュアリーは過剰な装飾だけで成立するものではない。むしろ、見えにくい時間の層や質、空間に漂う微細な気配、詩的な余白をどこまで扱えるかが重要である。130の新作はまさにその領域に触れようとしている。構造体としての明晰さと、詩的な余白をあわせ持つ本作は、現代デザインが「存在の痕跡」をいかに静かに、そして豊かに語りうるかを示すステートメントとなりそうだ。
展示概要
展示名:Link of Moments × Link of Existence
プレスプレビュー:2026年4月19日(日)15:00–17:00
オープニングパーティー:2026年4月19日(日)17:00–21:00
一般公開:2026年4月20日(月)–4月26日(日)11:00–18:00
会場:ANTEPRIMA Showroom(Via Borgospesso, 23, 20121 Milano)
詳細:130公式サイト
https://www.130onethirty.com/
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LWL online 編集部