バウハウスの思想を現代の住空間へ。アクタス・丸の内店で「TECTA MIT MARUNOUCHI」開催

 取材/LWL online編集部

アクタス・丸の内店にて、ドイツの家具ブランド「TECTA(テクタ)」の企画展「TECTA MIT MARUNOUCHI -バウハウスとテクタの名作家具展-」が、2026年5月1日(金)から6月21日(日)まで開催される。

TECTAはバウハウスのデザイン哲学を現代に受け継ぐ稀有な家具ブランドである。
ヴァルター・グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、マルセル・ブロイヤーら、近代建築とモダンデザインの歴史を形づくった巨匠たちの名作家具を復刻し、その思想を現在の生活空間へと橋渡ししてきた。

今回の企画展では、バウハウスの創設者であり、初代校長を務めたヴァルター・グロピウスの思想に着目。「現代の生活に溶け込むデザイン」をテーマに、TECTAの名作家具と新作コレクションを、実際の住空間を想定したブースの中で紹介する。

名作家具を「見る」だけではなく、実際に座り、その構造や心地よさ、空間との関係を体感できることも本展の大きな特徴だ。

アクタス・丸の内店 企画展ブース
アクタス・丸の内店 企画展ブース

バウハウスとは何だったのか。芸術、工芸、建築を再び結び直す運動

バウハウスは1919年にドイツ・ワイマールでヴァルター・グロピウスによって創設された芸術学校である。その活動期間は1933年までのわずか14年間に過ぎない。しかし、その短い歴史の中で、バウハウスは建築、家具、プロダクト、グラフィック、タイポグラフィ、教育制度にまで及ぶ広範な影響を残し、今日のモダンデザインの基礎を築いた。

初代校長を務めたグロピウスが目指したのは単なる装飾様式の刷新ではなかった。彼が掲げたのは、芸術、工芸、建築を分断された領域としてではなく、人間の生活を形づくる総合的な創造行為として再統合することだった。

バウハウスの思想において、椅子やテーブル、照明、建築は、それぞれが孤立した「商品」ではない。人が暮らす環境を構成する要素であり、生活そのものを支える構造である。

この視点は、LWL onlineが重視してきた「住空間を、家具や設備の集合ではなく、体験価値として捉える」考え方とも深く響き合う。優れた家具とは、単に美しい形を持つものではない。身体を受け止め、視線の流れを整え、人と人との距離感を調律し、空間に秩序と余白をもたらすものでもある。

バウハウスが今日なお古びないのは、デザインを生活から切り離さなかったからだ。

グロピウスが見た「生活の素材」としてのデザイン

ヴァルター・グロピウスは1883年に生まれたドイツの建築家であり、近代建築を代表する思想家のひとりである。バウハウスの創設者として知られるだけでなく、デザイン教育のあり方そのものを変革した人物でもある。

グロピウスにとって、デザインは一部の芸術家や富裕層だけのためのものではなかった。本展では、グロピウスの思想を、デザインは文明社会において誰にとっても不可欠な「生活の素材」である、という理念として紹介している。すなわち、デザインとは知的な概念に閉じたものでも、単なる物質的な製品でもなく、人間が日々を営む環境の中に自然に組み込まれるべきものだった。

この視点は、今日のラグジュアリーを考えるうえでも重要である。現代におけるラグジュアリーは、過剰な装飾や高価な素材だけで成立するものではない。身体に違和感なく寄り添う座り心地、空間の中で自然に視線を導く造形、長い時間を経ても使い続けられる構造、そして暮らしのリズムに静かに溶け込む佇まい。そうした要素の積み重ねこそが、住空間における豊かさを形づくる。

今回の「TECTA MIT MARUNOUCHI」が示すのも、まさにこの意味でのデザインである。家具を単なるインテリアアイテムとしてではなく、生活の質を支える構成要素として捉え直すこと。そこに、バウハウスを現代に紹介する意義がある。

機能、構造、生活から導かれる造形。バウハウスが現代に残したもの

バウハウスを語るうえで重要なのは、装飾を否定したことそのものではない。むしろ、使う人の身体、素材の性質、構造の合理性、生産方法、そして空間との関係を見つめ直すことで、生活に必要な形を導き出そうとした点にある。

椅子は座るための道具である。しかし、優れた椅子は単に身体を支えるだけではない。空間の中で人の姿勢を整え、視線の高さを決め、周囲の家具との距離感をつくり出す。テーブルもまた、単なる天板と脚の組み合わせではない。人が集まり、食事をし、語り合う場の中心として、住空間の関係性を形づくる。

バウハウスの家具が今日なお古びて見えないのは、表面的な意匠ではなく、生活のための合理性から形が導かれているからだ。カンチレバー構造(片持ち構造)の椅子が生み出す浮遊感、スチールパイプの軽やかさ、直線と曲線の緊張関係。そこには、単なるミニマリズムではなく、暮らしをより自由に、より明快にするための知性がある。

TECTAが復刻し、現代へ継承しているのは、まさにこの思想である。過去の名作を単に保存するのではなく、そこに込められた構造、素材、身体性、生活へのまなざしを、現代の住空間へと接続している。

グロピウス、ミース、ブロイヤー。バウハウスの名作家具を体感する

本展では、TECTAが継承してきたバウハウスのオリジナルコレクションが一堂に展示される。

注目すべきはヴァルター・グロピウスによる「F51 ARM CHAIR」である。グロピウスが手がけたこのアームチェアは、直線的な木部の構成と、座面・背面のボリュームが明快な対比を生み出す作品であり、建築家の視点から家具を捉えたバウハウス的な発想を象徴している。

F51 ARM CHAIR

また、ミース・ファン・デル・ローエによる「D42 ARM CHAIR」も展示される。ミースはバウハウス最後の校長として知られ、20世紀モダニズム建築を代表する存在となった人物である。その家具には、構造の明快さと、素材が生み出す静かな緊張感がある。

D42 ARM CHAIR

さらに、マルセル・ブロイヤーの「ワシリーチェア(WASSILY CHAIR)」の折りたたみ式モデル「D4 FOLDING CHAIR」も登場する。ブロイヤーは、バウハウスで学び、のちにマイスターとして教育にも携わったデザイナーであり、スチールパイプ家具の可能性を切り開いた人物として知られる。D4は、軽やかさ、構造性、機能性を併せ持つバウハウス家具の精神を、今日の生活空間の中で体感できる一脚である。

D4 FOLDING CHAIR

「奇跡のテーブル」M21。モダンデザインの対話から生まれた食卓

本展では、TECTAを代表するテーブル「M21」も紹介される。1991年の発表以来、日本でも1万軒以上の住まいで愛用されているというこのテーブルは、「奇跡のテーブル」とも呼ばれている。

M21は単独のデザイナーによる完結した作品というより、複数の思想と感性が交差したプロジェクトに近い。ジャン・プルーヴェが描いた不定形の天板フォルム、TECTA創業者アクセル・ブロッホイザーによるレッグの構想、ピーター&アリソン・スミッソンによる軽量化への提案、ステファン・ヴェヴェルカによるガラス棚板のアイデア。それらが重なり、独自の存在感を持つテーブルが生まれた。

ジャン・プルーヴェ
アクセル・ブロッホイザー
ピーター&アリソン・スミッソン
ステファン・ヴェヴェルカ

M21の魅力は単に造形が個性的であることではない。四角でも丸でもない天板は、着席する人の関係性を固定しすぎず、視線や会話の流れに柔らかな余白をもたらす。センターレッグによる構造は、脚元の自由度を高め、使い手の身体の動きを妨げない。

食卓は住まいの中で最も社会的な家具のひとつである。家族が集まり、来客を迎え、食事をし、対話を交わす。その中心に置かれるテーブルが、空間の硬直を避け、関係性をしなやかに開く。M21は、そうした意味で、機能と造形、日常とデザインが高度に結びついたプロダクトといえる。

バウハウスの思想を現代へ。M22 TABLEとB15 CHAIR

今回の企画展では、バウハウスの思想を現代的に解釈した新作アイテムも展示される。

「M22 TABLE」はM21の流れを受け継ぎながら、デザイナーのカトリン・グライリングがセンターレッグを現代的にリデザインしたテーブルである。側面にスリットを入れたベースフレームは、重さを感じさせすぎず、空間に軽やかな印象を与える。M21が持つ不定形の天板とフレキシブルな使用感を継承しながら、より現代のインテリアに馴染む造形へと更新されている。

TECTA M22 TABLE | Design / Katrin Greiling
外形寸法:W1750×D1350×H750㎜
¥985,600(税込)

一方、「B15 CHAIR」はTECTAが長年探求してきたカンチレバーチェアの新たな進化形である。カンチレバー構造は、バウハウス家具を象徴する形式のひとつであり、脚部を後方に逃がすことで、椅子に浮遊感と独特のしなりをもたらす。

B15では、既存モデルであるB25チェアの背もたれを低くリサイズし、さまざまなテーブルや空間との調和を高めている。さらに、人間工学を考慮した有機的なシートデザインにより、見た目の軽やかさだけでなく、座り心地の面でも現代的な快適性を追求した。

TECTA B15 CHAIR | Design / Wolfgang Hartauer
外形寸法:W500×D590×H790 SH470mm
¥139,700(税込)

バウハウスの思想は、過去の名作を博物館的に保存するだけでは継承されない。現代の身体、現代の住まい、現代の生活様式に合わせて更新されることで、はじめて生きた思想となる。
M22とB15は、TECTAがバウハウスを「歴史」としてではなく、「現在進行形のデザイン」として捉えていることを示すプロダクトだ。

名作家具を見るだけでなく座って体感する展覧会

今回の「TECTA MIT MARUNOUCHI」は単なる名作家具の展示会ではなく、会場では、実際に家具を配置したリアルな住空間を再現し、来場者が座り心地や空間との関係性を体感できる構成となっている。

これは、バウハウスの思想を伝えるうえで非常に重要である。
なぜなら、バウハウスの家具は、視覚的な鑑賞物ではなく、暮らしの中で使われるための道具だからだ。椅子は座って初めてその構造を理解できる。テーブルは囲んではじめて、その形が人と人の関係性にどう作用するのかが見えてくる。

モダンデザインとは白い壁の中で眺めるための静物ではない。生活をより合理的に、より美しく、より自由にするための実践である。TECTAの家具を通じてバウハウスを体感する本展は、現代の住まいにおいて「良いデザイン」とは何かを考える機会となるだろう。

企画展限定のイベントグッズも販売

会場では、本企画展の開催を記念した限定イベントグッズも販売される。

TECTAのオブジェとしても知られる「TECTA CAT」をモチーフにしたトートバッグ、TECTAロゴとTECTA CATをプリントしたグラス、ネコとTECTAの家具コレクションをイラストにしたオリジナルステッカー、さらにアクタス・丸の内店限定のTECTA CATなどがラインアップされる。

名作家具の世界を日常の小物としても楽しめる企画となっている。

バウハウスを「いまの暮らし」として読む

バウハウスは、過去のデザイン運動、あるいは歴史上の思想としてのみ捉えるべきものではない。むしろ、住まいのあり方が大きく変化している現在だからこそ、あらためて読み直されるべき思想である。

TECTAの家具が示すのは、名作家具というカテゴリーを超えた、生活とデザインの関係である。優れた形は、生活から切り離された造形ではなく、身体、構造、素材、空間の関係から導かれる。そして優れたデザインは、生活を窮屈に管理するのではなく、そこに自由と秩序を同時にもたらす。

アクタス・丸の内店で開催される本展は、バウハウスの名作を通じて、現代の住空間におけるモダンデザインの意味を再確認する機会となるはずだ。

開催概要

TECTA MIT MARUNOUCHI -バウハウスとテクタの名作家具展-

  • 会期:2026年5月1日(金)~6月21日(日)
  • 会場:アクタス・丸の内店
  • 住所:東京都千代田区丸の内1-5-1 新丸の内ビルディング3F
  • 営業時間:平日・土曜日 11:00~21:00/日曜日・祝日 11:00~20:00
  • 入場:無料
  • 特設サイト:https://online.actus-interior.com/sp/tecta-mit-marunouchi/

TECTAについて

TECTAは、1972年のブランド創立以来、ヴァルター・グロピウス、ミース・ファン・デル・ローエ、マルセル・ブロイヤーらがデザインした、バウハウスを代表する数々の名作家具を復刻してきたドイツの家具ブランドである。

考え抜かれた機能性を持つバウハウスのオリジナル家具と、その思想を現代の解釈でデザインした家具を作り続け、バウハウスのデザイン哲学を現代へと継承している。

なお、アクタスはドイツ・TECTA社の日本総代理店を務めている。

https://www.tecta.de

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    LWL online 編集部

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