東京都美術館 開館100周年が問いかける「生きる糧としてのアート」とは
取材/LWL online編集部
1926年、日本初の公立美術館として誕生した東京都美術館が、2026年に開館100周年を迎える。その節目に掲げられた言葉は「世界をひらく アートのとびら」。本稿では、このキャッチコピーに込められた思想を手がかりに、東京都美術館が100年にわたり問い続けてきた「生きる糧としてのアート」の意味を読み解く。
世界をひらく、アートの入口へ
1926年、日本初の公立美術館として誕生した東京都美術館が、2026年に開館100周年を迎える。
それにあわせて発表された記念キャッチコピーは、「世界をひらく アートのとびら」。
この言葉は、単なる周年スローガンではない。100年という時間を経てなお、美術館が果たすべき役割を、あらためて現代に問いかけるメッセージでもある。
東京都美術館を支えた思想の原点
創設者・佐藤慶太郎が遺したもの
東京都美術館は、芸術家の作品発表の場であると同時に、国内外の名品と出会い、人々がアートを通じてつながる「開かれた場所」として歩んできた。
その原点には、創設に尽力した実業家・佐藤慶太郎の思想がある。彼が遺したのは、美術館という建築物だけではない。
佐藤は美術館だけでなく、困窮者の救済や学校設立、食生活・農村の改善、女子教育の向上など、人々が「より良く生きる」ための活動に私財の多くを捧げた。
彼が遺したものは、「人々がより良く生きることを実現する」という、今日で言う「ウェルビーイング」の理念そのものだった。
「アートへの入口」という美術館像
東京都美術館は、2012年のリニューアル以降、「あらゆる人にとってのアートへの入口」であることを使命として掲げてきた。
専門知識や鑑賞経験の有無を問わず、誰もが新たな価値観に触れ、自己と向き合い、世界との関係を編み直す——。
美術館を単なる展示空間ではなく、「創造と共生の場=アート・コミュニティ」として捉える姿勢は、現在のライフスタイル論や住空間論とも深く共鳴する。
物質的な豊かさだけでは幸福が保証されない時代において、心の拠り所となるものは何か。
東京都美術館は、その答えのひとつとして「生きる糧としてのアート」を提示し続けてきた。
100周年記念事業、第一弾は「北欧の光」
開館100周年記念事業の幕開けを飾るのは、特別展「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」展。
2026年1月27日に開幕し、北欧絵画が描いてきた「光」と「日常」のまなざしを通して、人間と自然、生活と芸術の関係を静かに問い直す内容となる。
このテーマ設定は、LWL onlineが注目してきた「住まい」「インテリア」「ウェルネス」とも親和性が高い。
派手な表現ではなく、日々の暮らしの中に宿る美しさを見つめる視線——それは、住空間における光の扱いや素材感、余白の思想とも重なり合う。
次の100年へ。「とびら」は開かれている
100周年を迎える東京都美術館は過去を回顧するだけの存在ではない。
むしろこれからの社会において、アートが果たす役割を再定義しようとしている。
分断が進み、不確実性が高まる時代だからこそ、アートは人間への信頼を育み、希望を灯す力を持つ。
「世界をひらく アートのとびら」という言葉は、鑑賞者一人ひとりに向けて、そっと差し出された入口なのだ。
美術館を訪れることは、特別な行為ではない。
それは、自らの感覚をひらき、世界との関係を少しだけ更新するための、静かな習慣なのかもしれない。
※本記事は、東京都美術館が発表した開館100周年記念プレスリリースおよび記念メッセージをもとに構成しています。
■東京都美術館
東京都台東区上野公園8-36 TEL 03-3823-6921
公式サイト
東京都美術館開館100周年記念特設サイト

展示会情報(東京都美術館 開館100周年記念)
展覧会名
東京都美術館開館100周年記念
「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」
(100th Anniversary of the Tokyo Metropolitan Art Museum
Masters of Swedish Painting from Nationalmuseum, Stockholm)
会期
2026年1月27日(火)〜 2026年4月12日(日)
開館時間
9:30〜17:30(最終入場 17:00)
金曜日は20:00まで(最終入場 19:30)
※月曜日休室(2/23は開館、2/24は休館)
主催・協力
東京都美術館、NHK、NHKプロモーション、東京新聞
スウェーデン国立美術館(全面協力)ほか
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LWL online 編集部