「第10回 JAPAN BUILD TOKYO-建築・土木・不動産の先端技術展」速報~スマートビルディングEXPOで見えた「建築OS」の最前線
今年で10回目を迎える「JAPAN BUILD TOKYO」は、日本最大級の建築・建設・不動産分野の専門展示会であり、建材、設備、ビル管理、エネルギー、DX、AI、IoTといった建築のフルスケールを横断する最新技術が一堂に集まる場となっている。設計・施工・管理・運用まで、建築ライフサイクルのあらゆる領域のプレイヤーが集まり、国内外の企業が今後の市場を方向づける新製品・新技術を提示する。会場は複数の専門展が並列する構成で、スマートビルディング、スマートハウス、建材・設備、ビル管理、防災、リノベーション、不動産テックなど、分野ごとに体系的に閲覧できるつくりになっている。JAPAN BUILDの特徴は、単なる製品展示ではなく、建物の性能向上、運用効率化、脱炭素、デジタル化といった「都市と建築が抱える課題」を軸に、多様なソリューションが集積する点にある。
スマートビルディングEXPOこそ、建築OSの本丸だった
今回LWL onlineが集中的に見てきたのは「スマートビルディングEXPO」と「スマートハウスEXPO」。
特に前者は、ラグジュアリー邸宅のスマートホーム/ホームオートメーションにとって、見倣うべき点が非常に多く、インテリジェントレジデンス分野において示唆に富んでいた。
加えて、スマートビルディングEXPOには、当サイトが注目するCoolAutomationが参画する「スマートビルディングコンソーシアム」が出展している。
【スマートホーム/ホームオートメーション特集】CoolAutomation。どんなエアコンも一括制御!──スマートホームに必須の空調の司令塔
スマートハウスEXPOも住宅のDXや省エネ基準対応、あるいはIoTガジェットを知る上では欠かせないが、当サイトが推し進めている建築統合型スマートホームとなると、スマートビル領域の方にこそ、Home OSの時代に直接つながる学びが多い印象を受けた。

最注目は「スマートビルディングコンソーシアム」
JAPAN BUILD TOKYOの会場の中でも、最も示唆に富んでいたのが「スマートビルディングコンソーシアム」の展示ゾーンである。
「スマートビルディングコンソーシアム」は、ビルや大規模施設のDX、BAS/BEMS、環境制御、そして建築のOS化を推進する企業・団体によって構成され、スマートビル領域の最新潮流を体系的に示す存在として業界内での存在感を高めている。
今回の展示では、展示ゾーン中央に大きなビル模型が設えられ、それを取り囲むように協賛メーカー各社のブースが設けられている。
この模型が非常に興味深い。
単なる模型ではなく、「サーカディアンリズム」を基軸とした照明シーンとロールスクリーン制御をリアルタイムで可視化する、実践的なデモとなっていた。

日の出から昼光、夕刻、夜間まで、光の色温度や明るさが段階的に切り替わる。
そのタイミングに応じて窓際のスクリーンが上下し、屋内外の光環境を連続的に最適化する。


いわば「建物が自律的に振る舞う」様子を目に見える形で示したもので、建築OS時代の到来を象徴する展示だった。
ビル模型が可視化した「TRaas × プロトコル設計」統合アーキテクチャ
さらに印象的だったのは、このビル模型の背後にある技術アーキテクチャだ。

制御の中核にはトラース・オン・プロダクトのデバイス「TRaas」がOSとして据えられ、照明・空調・遮光・センサーなど複数分野のプロトコルを翻訳し、統合的に運用する仕組みが提示されていた。

TRaasを中心に、KNXやCoolAutomationをはじめとするプロトコルがどの層で接続され、どのようにシーン制御へと落とし込まれるのか、そしてどの程度のサイズの制御盤が必要になるのか。
階層構造をはじめ、「プロトコル設計の見本」が一望できる構成になっていた点は特筆したい。
スマートホーム領域だけを見ていると見えてこないが、ビルの世界ではこうした統合アーキテクチャが実運用レベルにある。
この事実はラグジュアリー邸宅の次のステージを示唆している。
当サイトがスマートハウスEXPO以上にスマートビルディングEXPOに強い関心を寄せる理由はここにある。

CoolAutomationが示す「ビルOS」と「住宅OS」の連続性
また、コンソーシアムにはCoolAutomationも出展しており、空調におけるマルチプロトコル接続の強みをビル領域でも発揮していた。
住宅OSにおける空調統合の文脈は、そのままビルOSにも通底する。
今回の展示は、その橋渡しとなる構成が随所にあったのが印象的だった。


スマートハウスEXPOは「住宅向け便利デバイス」が中心
一方、スマートハウスEXPOは、傾向としてIoTガジェットやスマートロックが中心で、住宅向けの便利デバイスが主軸になっていた。
スマートリモコンやWi-Fiカメラ、ワイヤレス照明、音声デバイスといったカテゴリーが主力である。
住宅の制御基盤やプロトコル設計といった、当サイトが扱う「住宅にもOSを」という文脈とはやや距離がある展示構成だった。
もちろん、一部AKUVOXのように、住宅OSと親和性が高い出展もあったが、大半はIoTやスマートロックの出展である。

関連セミナーも聴講したが、主題はスマート「ホーム」というよりもスマート「家電」、あるいはMatterが統合するIoTガジェットに近く、家電連携・見守りサービス・音声アシスタント運用といった消費者向けソリューションの話題が大半を占めていた。
登壇者からはCEDIAの話題も少しだけ出てきたが、議論の中心はそこにはなかった。
住宅市場全体を見れば自然な流れではあるが、ラグジュアリー邸宅の建築統合型スマートホームとは重なる部分が少ない。
ラグジュアリー邸宅は「スマートビルを見倣う」時代へ
今回改めて感じたのは、ラグジュアリー邸宅のスマートホーム/ホームオートメーションは、やはり「スマートビルディング」を参照すべきだということである。
ビルの世界では、照明・空調・遮光・セキュリティが最初から「建築の性能」として扱われ、プロトコル設計が前提に組み込まれている。
そもそもBACnetやModbusといったプロトコルはビルディングオートメーションから出てきた規格である。
KNX、BACnet、Modbusといった世界標準プロトコルが基盤にあり、その上にTRaasのようなオーケストレーション層(住宅OS)が乗ることで、建物全体が自律的に振る舞う。
住宅であっても、ラグジュアリー邸宅の文脈ではこの思想がますます重要になる。
建築と設備、インテリアとテクノロジーをひとつのOSで統合し、光・空気・温度・遮光・セキュリティを「空間の振る舞い」としてデザインするためには、ビル分野で積み上げられた知見のほうが圧倒的に有用だ。
JAPAN BUILD TOKYOが示した「二つのスマートホーム観」
今回会場を見比べることで、日本市場に存在する「二つのスマートホーム像」がより明確になった印象がある。
スマートハウスEXPOは生活利便に寄ったガジェット型の進化形、スマートビルディングEXPOは建築統合型であり、OS化とプロトコル設計の世界観。
そしてLWL onlineが扱うスマートホーム/ホームオートメーション──ラグジュアリー邸宅の「Home OS設計」「プロトコル設計」──は、確実にスマートビルディングEXPOの世界観と地続きだと強く感じた。
いずれにしても、とても興味深く示唆に富む展示会である。12/12まで東京ビックサイトで開催しているので、是非とも足を運んでほしい。
- 第10回 JAPAN BUILD TOKYO
- -建築・土木・不動産の先端技術展-
- 会期 2025年12月10日(水)~12日(金)10:00-17:00
- 会場 東京ビッグサイト
- 主催 RX Japan株式会社
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