住まいは“生き方”の実験場だった。特別展「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」が兵庫県立美術館で開催中 

オーディオ&サブカルライター/杉浦みな子 

「住まい」は、単なる生活の器ではない。20世紀という激動の時代において、建築家やデザイナーたちは、住空間を通じて新しい社会像や人々のより良い生き方を構想してきた。兵庫県立美術館で開催中の特別展「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」は、そんな“住まいをめぐる思想の歴史”を紐解く展覧会だ。

7つの視点で読み解く、20世紀モダン・ハウスの実験 

1920年代以降、ル・コルビュジエやルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエといった多くの建築家が、時代とともに普及した新たな技術を用いて、機能的で快適な住まいを探求した。その実験的なビジョンと革新的なアイデアは、やがて日常へと波及し、人びとの暮らしを大きく変えていった。

特別展「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」が焦点を当てているのは、そんな1920年代から1970年代にかけてのモダン・ハウスの流れ。モダニズム建築を代表する建築家たちが手がけた戸建て住宅を軸に、「衛生」「素材」「窓」「キッチン」「調度」「メディア」「ランドスケープ」という、モダン・ハウスを特徴づける7つの観点から再考する。 

特別展「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s」。会期は2025年9月20日(土)〜2026年1月4日(日)まで

なかでも、特に鍵となる14邸の住宅を年代順に沿って展示。住宅設計の転換期となった1920年代から70年代までの約半世紀の流れの中で紹介している。

20世紀の住まいの実験を、写真や図面、スケッチ、模型、家具、テキスタイル、食器、雑誌やグラフィックなどを通じて多角的に検証することで、建築家たちの空間思想と試行錯誤のプロセスを、立体的に実感できる場となる。

フランク・ゲーリー フランク&ベルタ・ゲーリー邸 1978年
ⒸFrank O. Gehry. Getty Research Institute, Los Angeles(2017.M.66)
ピエール・シャロー メゾン・ド・ヴェール 1932年 撮影:新建築社写真部

過去の名作建築から、これからの住まいを考える 

本展で紹介されているモダン・ハウスは、国際的に隆盛したモダニズム建築の造形に呼応しつつも、時代や地域、気候風土、社会とも密接につながり、家族の属性や住む人の個性をも色濃く反映している。建築家たちが目指したのは、当代の暮らしを根本から問い直し、快適性や機能性、さらに芸術性を向上させることだった。 

この思想は現代において、「スマートハウス」などの最新技術と住宅を融合させる取り組みに形を変え、進化し続けていると言える。今回の展覧会は、過去の「住まいの実験」を振り返りながら、これからの住宅の未来を考えられる場ともなるだろう。

リナ・ボ・バルディ カサ・デ・ヴィドロ 1951年
藤井厚二 聴竹居 1928年 撮影:古川泰造

なお、展示会場である兵庫県立美術館は、日本を代表する建築家・安藤忠雄が設計した建築である。同館のガラス張りの回廊を抜けた先の展示会場に入ると、安藤忠雄が敬愛する巨匠、ル・コルビュジエが設計した「ヴィラ・ル・ラク」の窓辺を再現した空間が広がる展示になっているのも見どころ。 

実際の居住空間やスケールを体感できるこれら原寸大モックアップに加え、本展では当時の図面やドローイング、建物の写真や映像、新たに制作された模型などを通じて、世界中の名作住宅から見える豊かな景色を紹介。その中には、名作家具から隠れた逸品まで様々な展示物が配置されている。 

マルセル・ブロイヤー 《サイドチェア B32》 1928年 ミサワホーム株式会社 撮影: 立木圭之介

また、住宅建築を再考するにあたって、個々の住まいにおける暮らしのあり方に目を向けているのも特徴だ。20世紀に革新的な試みとして始まり、今日の我々の日常の中に生き続けているモダンな暮らしのアイデアが散りばめられている。 

本展は、1920〜1970年代のモダンデザインや建築に関心のある人はもちろん、これからの暮らし方を見つめ直したいすべての人にとって、思考を刺激する体験となるはずだ。いつの時代も、住宅デザインはそこに住む人の“生き方の提案”につながっていた。20世紀に起きた住まいの実験の軌跡を、ぜひ会場で辿ってみよう。 

<開催概要> 
展覧会名:リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s–1970s 
英語表記:LIVING Modernity: Experiments in the Exceptional and Everyday 1920s–1970s 
会期:2025年9月20日(土)〜2026年1月4日(日) 
会場:兵庫県立美術館 
住所:651-0073 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1[HAT神戸内]
展示室:兵庫県立美術館 企画展示室 
時間:10:00~18:00 ※入場は閉館の30分前まで 
休館日:月曜日[ただし、10月13日(月・祝)、11月3日(月・祝)、11月24日(月・振休)は開館、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)、12月31日(水)、1月1日(木)は休館] 
観覧料:一般 当日券 1,800円、団体料金 1,600円、前売券(9/19まで) 1,600円 
大学生 当日券 1,000円、団体料金 800円、前売券(9/19まで) 800円 
高校生以下 無料 
70歳以上 当日券 900円、団体料金 800円 
障害者手帳等をお持ちの方(一般) 当日券 450円、団体料金 400円 
障害者手帳等をお持ちの方(大学生) 当日券 250円、団体料金 200円 
TEL:078-262-1011 
URL:【兵庫県立美術館|公式サイト】https://www.artm.pref.hyogo.jp/ 
SNS:https://x.com/hyogoartmhttps://www.instagram.com/hyogo_pref_museum_of_art/ 
https://www.youtube.com/channel/UCR2VagFqUf1UtaBB46tfeVQ
https://www.facebook.com/artm.pref.hyogo

  • オーディオ&サブカルライター

    杉浦みな子

    1983年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒。在学時は映画研究会で映像制作に勤しみつつ、文芸評論家・福田和也教授に師事。2010年よりAV・家電メディアの編集/記者/ライターとして13年間従事し、音楽とコンシューマーエレクトロニクス系の分野を担当。2023年独立。音楽・オーディオ・家電から、歴史・カルチャーまで幅広いテーマで執筆中。実績はこちらから→https://sugiuraminako.edire.co/

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