戦後日本のモダンデザインを、次の「生活文化」へ―― 日本橋三越本店発「DESIGN PULSE TOKYO」始動

 取材/LWL online編集部

戦後日本のモダンデザインがいま再び「生活文化」として動き出す。日本橋三越本店を拠点に始動する「DESIGN PULSE TOKYO」は、JAPAN MODERNISM 2.0を掲げ、素材、技、空間、そして暮らしの思想を現代のライフスタイルへと再接続するプロジェクトだ。百貨店と街を舞台に、次世代のモダンが立ち上がる。

戦後日本のモダンデザインは、いま再び「生活文化」になる

JAPAN MODERNISM 2.0という再定義

戦後日本が築いてきたモダンデザインは、単なる様式や歴史ではない。
それは、暮らしをどう設計し、どのような価値を日常に宿らせるかという、きわめて実践的な思想だった。

2026年1月7日から2月3日まで、日本橋三越本店を拠点に開催される「DESIGN PULSE TOKYO」は、その思想を次世代の生活文化へと接続する試みである。
掲げられたテーマは「JAPAN MODERNISM 2.0」。
モダニズムの精神と美意識を起点に、現代の素材、技術、感性を重ね合わせながら、「いまの暮らしにおけるモダン」を再定義するプロジェクトだ。

失われゆく「かたち」と、継承されるべき「思想」

解体・散逸の時代に問われるデザインの本質

高度経済成長期以降、日本のモダンデザインを象徴する建築やインテリア、生活道具の多くが、いま解体や散逸の局面を迎えている。
形としての保存が難しくなる一方で、そこに込められていた設計思想や、暮らしの知恵、美意識をいかに継承すべきかが、あらためて問われている。

日本橋という歴史的文脈が持つ意味

「DESIGN PULSE TOKYO」は、そうした問題意識を背景に、日本橋という歴史的文脈をもつ街を舞台に構成された。
百貨店という拠点にとどまらず、近隣ショールームと連携し、来場者が街を回遊しながら、モダンデザインの現在地を「体験」として捉え直せる設計となっている。

素材が語り、技が未来をつくる。MATERIAL DIALOGUES

<アートクラフト バウ工房>

木・紙・金属が響き合うモダンデザインの現在地

会期中、本館5階ライフスタイル/イベントスペースでは、「MATERIAL DIALOGUES」と題した特設展示を展開。
木、石、金属、布、紙、樹脂──それぞれの素材がもつ歴史や文化、可能性に光を当て、それらが交差することで生まれる新たな表現を紹介する。

アートクラフト バウ工房が示す工芸とモダニズムの連続性

木工の世界技能五輪でメダルを獲得した職人・大門巌氏の技を受け継ぐ和真氏による〈アートクラフト バウ工房〉では、日本が育んできた木という素材を、確かな手仕事によって現代のプロダクトへと昇華。
素材の声に耳を澄ませるような展示は、工芸とモダンデザインが本来連続したものであることを、静かに物語る。

紙・構造・感性の再編集

会期後半には〈ATELIER MATIC〉〈siwa〉〈RITON〉といったブランドも加わり、紙や構造、ミニマルな造形を通じた、現代的な生活提案が重ねられる。

<ATELIER MATIC>
<siwa>

■1月7日(水)~1月20日(火):<アートクラフト バウ工房>
■1月21日(水)~2月3日(火):<ATELIER MATIC> <siwa> <RITON>
■本館5階 ライフスタイル/イベントスペース

モダニズムを日常へ。karimoku「CAP chair」POP UP

<karimoku>CAP chair(日本製/ナラ材/約幅42×奥行45×高さ66・座面までの高さ46.5cm)

トラフ建築設計事務所との協働が生んだ回転式チェア

本館5階ライトウェルでは、〈karimoku〉による「CAP chair」のPOP UPを実施。
トラフ建築設計事務所とのコラボレーションから生まれたこの回転式木製チェアは、帽子のツバを思わせる背板が象徴的な一脚だ。

ナラ材の質感を活かした構造と、空間を選ばないコンパクトなサイズ感。
多彩なカラー展開によって、モダニズムの思想は、特別な空間ではなく、日常の住空間へと軽やかに溶け込んでいく。

■1月14日(水)~2月3日(火)
■本館5階 ライトウェル

150年を超える技が宿る、永田良介商店の継承美

<永田良介商店>(日本製/本体:カバ材、座面:布張り/約幅44×奥行52×高さ90・座面までの高さ43cm)

ホテルオークラの記憶を受け継ぐアップサイクル家具

同じく本館5階家具/イベントスペースでは、創業154年を誇る洋家具店〈永田良介商店〉の技術を紹介。
明治5年創業、ヨドコウ迎賓館(旧山邑邸)の家具制作にも携わった同店が、ホテルオークラ神戸で使用されていたダイニングチェアをアップサイクルした特別モデルを展示・販売する。

時間を内包するモダンデザインという価値

ホテルオークラ東京の内装を手がけたデービット・ヒックス氏のデザインと、永田良介商店が選定した塗装やファブリックが融合した一脚は、モダンデザインが「時間」を内包する存在であることを雄弁に語る。

■1月14日(水)~2月3日(火)
■本館5階 家具/イベントスペース

デザインは、味覚や音楽とも交差する。Belleville Brûlerie TOKYO × ligne roset

空間・家具・コーヒーが生む五感のデザイン体験

デザインウィーク期間中、日本橋三越本店5階にオープンしたばかりの「Belleville Brûlerie TOKYO」では、一定額以上の購入で、フランス発ロースター〈Belleville〉と、フランスのインテリアブランド〈ligne roset〉がコラボレートした特別仕様のコーヒーバッグがプレゼントされる。

空間、家具、食、そして音楽。
「DESIGN PULSE TOKYO」は、デザインを視覚的な対象にとどめず、生活文化全体として体感させる構成が特徴だ。

日本橋から広がる、モダンデザインの回遊体験

三越を起点に巡るショールームネットワーク

本企画では、日本橋三越本店を起点に、A_ROGOBA Tokyo、Karimoku Commons Tokyo、maruni tokyo、Stressless® Showroom Tokyo、Ligne Roset Ginza、山形緞通 東京ショールームなど、近隣ショールームとも連動。
街を歩き、空間を体験することで、日本のモダンデザインが現在も更新され続けていることを実感できる。

A_ROGOBA Tokyo
〒101-0053 東京都千代田区神田美土代町1番地
WORK VILLA MITOSHIRO 1階
B_Karimoku Commons Tokyo
〒106-0031 東京都港区西麻布2丁目22-5
C_maruni tokyo
〒103-0004 東京都中央区東日本橋3-6-13
D_Stressless®Showroom Tokyo
〒104-0031 東京都中央区京橋2-5-18 京橋創生館ビル2F
E_Ligne Roset Ginza
〒104-0061 東京都中央区銀座4-10-3
セントラルビル1F-2F
F_山形緞通 東京ショールーム
〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2ー11
アガタ竹澤ビル

百貨店が担ってきた「生活文化」の現在形

モダンデザインを未来へ手渡すための思考装置

1673年に越後屋として創業し、日本初の百貨店を宣言した三越は、常に生活文化の編集者であり続けてきた。
DESIGN PULSE TOKYOは、その歴史の延長線上にある。

モダンデザインを、過去の遺産として保存するのではない。
これからの暮らしを構想するための思考装置として、再び日常へ解き放つ。
日本橋から放たれるこの静かな脈動は、次世代の生活文化へと確かに接続されていく。

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