忘れ去られた自然素材が、静かな贅沢になる。ALEXANDER LAMONT(アレキサンダー・ラモント)が示す「経年を愉しむ」インテリアの思想

fy7d(エフワイセブンディー)代表/遠藤義人 

バスタブブランドHIDEO/JAXSONのクリスマスイベントを訪れたところ、独創的なインテリアブランドがコラボレーションしていた。ヨーロピアンテイストなシェイプながらもどこか和の伝統工芸的なテイストを感じさせるアレキサンダー・ラモントの佇まいに思わず惹き込まれた。

素材を生かすデザイン──アールデコと民藝の交差点

アレキサンダー・ラモントは、今年創業25年を迎えたインテリアブランド。創業者でありデザイナーである英国出身のAlexander Lamontが、タイのバンコクで設立した。

コレクションの主な源流になっているのは、20世紀初頭のアールデコ室内装飾に使用された素材。バーチメント(山羊皮)、シャグリーン(エイ皮)、ストロー(ライ麦)、金箔といった自然素材を引き立てるための手工芸中心の意匠は、日常の手許にあるものにこそ美しさを見いだしてきた日本の民藝のような眼差しを感じさせる。

聞けばやはり、「忘れ去られそうな素材をもう一度見直そうというコンセプト」だという。時を経るにつれ味わいが増すコレクションは、家具や照明から、ミラーや花瓶といった装飾小物まで広範に及ぶ。ここではイベント会場に展示されていたものを紹介する。

手間暇が生む愛着──時間を重ねることで完成する家具

光を内包する花瓶「Monochrome」

会場中央の長テーブルには、柔らかい光を放つ花瓶「Monochrome」を配置。レイヤー状になるよう少しずつ、何日も掛けて制作しては磨きを掛けることで、まるで磨りガラスのランプのような独特の光沢を湛える。

建築的造形のサイドテーブル「Saffron」

建築的な佇まいのサイドテーブル「Saffron」は、複数使うことで空間に動きが出る。五角形の天面は鋳造のブロンズで、側面にはシャグリーン(エイ皮)に磨きを掛けた象牙のようなひじょうに硬い皮を柔らかいイエローに染め貼っている。

身体を預ける重さ──「Wing Bench」の思想

長テーブルに合わせたベンチ「Wing Bench」の脚部はブロンズの鋳造でひじょうに重い。座り心地は、ファーストタッチが柔らかいものの最後にしっかりと体を支える。この160cmロングタイプのほか、90cmのタイプもある。

和の竹編み籠をモチーフにブロンズで制作した花瓶「Miko Jar」。語源は巫女

自分のためだけに設えた静謐な空間。

非対称の美を宿す「Aquifer Mirror」

会場の奥には、鏡台のように設えた一角があった。壁に掛けられたアシンメトリーな鏡「Aquifer Mirror」を中心に、引き出しのついたデスクとチェア、スツールが、マナトレーディングのラグの上に配置されていた。

チェア「Dais Spot Chair」にはバーチメント(山羊皮)が貼られ、背にはストロー・マルケタリー(ライ麦の寄せ木)が使われている。

経年で語り始める「Cliff Console Desk」

展示されていた「Cliff Console Desk」は、製造後10年ほど経年したもの。天面にはバーチメント(山羊皮)を貼っているが、同じくバーチメントを貼った比較的新しいチェア「Dais Spot Chair」と比べると、血管が浮き上がって素材感が露わに。これこそ、時を経るにつれ素材の良さが引き立つことを示している。引き出しの扉にはシャグリーン(エイ皮)が貼られておりキラキラと煌めいている。

縦長の間接照明「Citadel Floor Lamp」も、貼られたバーチメント(山羊皮)の個性が出ている。同じ処理を施しているのに、ブロック毎に少し黄味があったり青みがかったりしているのが分かる。ベースはブロンズ製で90kgにも及ぶ
化粧セット用にと女性に一番人気のスツール「Fan Tabouret」。脚部は鋳造のブロンズで、珊瑚をイメージして創られている

雰囲気を設計する照明という存在

ブロンズと祈りの造形「Galea Lantern」

照明器具も唯一無二の世界観を持っている。

ブロンズの台座のランプ「Galea Lantern」はローマ時代のヘルメットが光源を保護するイメージ。手を合わせているかのようなデザインが可愛らしい。

同じブロンズの台座のランプ「Galea Lantern」には、ロック・クリスタルの削り出しを採用したヴァージョンもある。水槽の熱帯魚を照らしているかのように美しい雰囲気を演出していた。

ストロー・マルケタリーが描く陰影「Stem Floor Lamp」

ミニマルなシェードの照明「Stem Floor Lamp」もよく見ると、チェア「Dais Spot Chair」の背と同様の漆黒のシストロー・マルケタリー(ライ麦の寄せ木)がヘリンボーンに遇われ、内側には金箔が貼られていた。

経年を愉しむという、もうひとつの豊かさ

ひととおり製品を見て回ってから、サンプルを手に取ると驚きの連続が待っていた。来場者はそれぞれを手に取って、光の角度を変えながら見入っていた。

見本帳。どれも職人による手作りなので、自由にカスタマイズ可能。割ったタマゴの殻に漆を塗り重ね平らになるまで研磨したものなど、ほぼほぼ日本の伝統工芸にも通ずる

とくにストロー(ライ麦)は、見る角度によってキラキラと異なる輝きが生まれる。節を取り除き50cmほどになった茎を開き、アイロンを掛けリボン状にして染色、それらを貼り合わせて寄せ木細工のように組み合わせている。

ストロー・マルケタリーのボード。角度によって万華鏡のように輝きを変化させる

いずれの製品も、時間を掛けて制作された経緯が伝わる逸品。身近に置いて触れ、眺めることで、オーナー自身も忙しない日常からそっと離れ、ゆったりとした時の流れに身を委ねることできる。そこにいい音と素材のいい食があればこれ以上の贅沢があるだろうか。

新品が最上で徐々に朽ちていく工業製品を買い替え続けるライフスタイルに再考を迫るアレキサンダー・ラモント。経年を楽しめる心のゆとりをも備えたオーナーの心の鏡となるようなブランドである。

[問い合わせ先]
エルクリエーション
東京都中央区築地1-10-11RATIO築地602
TEL 03-6264-1342
https://ailescreation.co.jp

ALEXANDER LAMONT

  • fy7d(エフワイセブンディー)代表

    遠藤義人

    ホームシアターのある暮らしをコンサルティングするfy7d(エフワイセブンディー)代表。ホームシアター専門誌「ホームシアター/Foyer(ホワイエ)」の編集長を経て独立、住宅・インテリアとの調和も考えたオーディオビジュアル記事の編集・執筆のほか、システムプランニングも行う。「LINN the learning journey to make better sound.」(編集、ステレオサウンド)、「聞いて聞いて!音と耳のはなし」(共著、福音館書店。読書感想文全国コンクール課題図書、福祉文化財推薦作品)など。

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