DREAME NEXTから考える「Whole-home Smart Ecosystem」。AI家電は家全体の知能化と融合するのか

 取材/LWL online編集部

ロボット掃除機やスティッククリーナーで知られてきたDreame Technologyが、いま大きく姿を変えようとしている。2026年4月に米サンフランシスコで開催された「DREAME NEXT 2026」のLiving Next Showcaseでは、空調、レンジフード、スチームオーブン、食洗機、洗濯ロボットなど、住まいの複数領域にAIとロボティクスを展開する構想が披露された。ロボット掃除機で培ってきた技術を、住まい全体の家電領域へと広げようとする動きである。

この動きを単なる新製品ラッシュとして捉えるだけでは不十分だろう。DreameはAI家電を個別に賢くする段階を超え、家全体をひとつの環境として運用する「Whole-home Smart Ecosystem」へと向かっている。

では、Whole-home Smart Ecosystemとは何か? それは建築統合型スマートホームやHome OSとどのように接続し、どのようなライフスタイルを実現しようとしているのか。本稿では、DREAME NEXTを起点に、AI家電の次に来る住まいの姿を考えてみたい。

この記事のポイント

DREAME NEXTではAI家電が単体製品から家全体のエコシステムへ広がる流れが示された。
Whole-home Smart Ecosystemとは、複数のAI家電やスマートデバイスを連携させ、家全体をひとつの生活環境として運用するための家電側エコシステムである。
ただし、Whole-home Smart EcosystemはHome OSそのものではない。Matterなどの共通プロトコルを介して、建築統合型スマートホームと接続していく前段階として捉えるべきだろう。

DREAME NEXT 2026 San Franciscoで発表されたDreameの次世代スマートホーム製品群
Image:Dreame
Dreame Launches More Than 20 Smart Home Products at DREAME NEXT Living Next Showcase

Whole-home Smart Ecosystemとは何か

DreameはWhole-home Smart Ecosystemを『個人住宅を「自宅まるごと」スマート化するAI搭載の統合スマートシステム』と説明している。
Whole-home Smart Ecosystemを直訳すれば「家全体のスマートなエコシステム」となる。ここでいうエコシステムとは単に家電がたくさんインターネットにつながっている状態を指すのではない。複数の家電カテゴリーが、ひとつのアプリ、ひとつのAI層、あるいはひとつのメーカーエコシステムのもとで連携し、統合され、住宅内外の生活行為をまとめて支えるという考え方である。
つまり、Whole-home Smart Ecosystemとは、複数のAI家電やスマートデバイスを連携させ、家全体をひとつの生活環境として運用するための家電側エコシステムだと整理できる。

Dreameは2026年1月のCESで「Whole-home Smart Ecosystem」を初公開した。同社はこの構想を、単体のスマートデバイスブランドから、家庭、ガーデン、アウトドア、モビリティまでを含むコネクテッド・ライフスタイルの総合プロバイダーへ進化するものとして説明している。

Dreameが示したWhole-home Smart Ecosystemは、スマートホームスマートクリーニングスマートキッチンスマートパーソナルケアスマートガーデンスマートエンターテインメントという6つの相互接続されたカテゴリーから構成される。

そこには、冷蔵庫、テレビ、AIインバーター洗濯機、エアコン、空気清浄機、掃除機、レンジフード、オーブン、食洗機、ヘアドライヤー、電動歯ブラシ、AIスマートリング、ロボット芝刈り機、ロボットプールクリーナー、AIスマートグラスなど、多様な製品カテゴリーが含まれる。

このエコシステムを支える中核技術として、DreameはAIアルゴリズム高速モーターバイオニック・ロボットアームの3つを挙げている。
AIアルゴリズムはユーザーのニーズを学習・予測する「頭脳」となり、高速モーターは各機器を動かす「心臓」となり、バイオニック・ロボットアームは人間に近い操作能力を担う「身体」となる。そして、これらの機器群はDreameアプリを通じて一元的に管理される。

Whole-home Smart Ecosystemとは、単純に「AIを搭載した家電が増えること」ではなく、また家の中にAI家電が点在しているだけでは、まだWhole-home Smart Ecosystemとは呼べない。個々の家電が相互に連携し、家全体をひとつの生活環境として運用し始めること。ここにこの概念の意味が生まれる。

Dreameが掲げるWhole-home Smart Ecosystemは、AI家電を単体製品ではなく、家全体を支えるエコシステムとして捉える考え方である。
CESで展示されたDreameのスマートキッチン家電とビルトイン家電
Image:Dreame
Dreame Smart Kitchen at CES 2026
DreameのCESプレスリリースより
Image:Dreame
2026年1月のCESで、Dreameは「Whole-home Smart Ecosystem」を提示した

Living Next ShowcaseはWhole-home Smart Ecosystemの具体例だった

この文脈で見ると、DREAME NEXT 2026のLiving Next Showcaseは、DreameがCESで掲げたWhole-home Smart Ecosystemを、より具体的な製品と技術によって市場に提示する場だったと言える。

Living Next Showcaseで中心に置かれたのは、Dreameがロボット掃除機で磨いてきたバイオニック・ロボットアーム技術を、空調、レンジフード、スチームオーブン、食洗機などへ横展開していく発想である。

たとえば、X Series Air Conditionerでは、デュアルアーム型の気流制御によって126度の広角送風やゾーン別送風を行う。HX01レンジフードでは、ミリ波レーダーによって調理器具の位置を検知し、煙を捕捉する角度をリアルタイムで調整する。OX01スチームオーブンでは庫内全体の気流ガイドとして、DX01食洗機ではAI搭載ロボットアームによる巡回洗浄を実現する。

Dreameが「ロボット掃除機メーカーとして別ジャンルの家電にも進出した」という単純な話ではない。ロボット掃除機で培った、動く、見る、判断する、届かせるという技術を、空気、煙、水流、熱、衣類へと範囲を拡張しているのである。

その象徴がZ1 Laundry Robotである。Dreameの海外でのプレスリリースによれば、Z1は多関節ロボットアーム、マルチモーダルセンシング、AI知覚技術を備え、衣類を拾い上げ、洗い、乾燥させ、取り出すまでの一連の工程を自律的に行うことを目指す。洗濯機は長い時間をかけて進化してきた。しかし、衣類を集める、分類する、投入する、取り出す、移動させるといった周辺工程は、人間の手に残されてきた。Z1 Laundry Robotが示しているのは、家電の自動化が「機器の運転制御」から「生活行為そのものの支援」へ移ろうとしている可能性である。

DREAME NEXT 2026でDreame Axial Motorとインバーターコンプレッサー技術を紹介するプレゼンテーション
Image:Dreame
DREAME NEXT 2026におけるNext-generation laundry care technologyのプレゼンの様子

AI家電は「単体最適」の時代を終えつつある

Image:Dreame
Dreame X60 Max Ultra Complete robot vacuum。業界最薄設計のフラグシップロボット掃除機

最初に変化がわかりやすく現れたのは、ロボット掃除機だった。

ロボット掃除機は、もはや単なる床を掃除する家電ではない。部屋をマッピングし、障害物を認識し、汚れの状態を判断し、必要に応じてモップを洗浄し、充電ステーションへ戻る。いまやロボット掃除機は、住宅内を移動し、環境を把握し、物理的な作業を実行する自律型ロボットの代表例になっている。

このロボット掃除機から始まり、冷蔵庫、洗濯機、空調、レンジフード、オーブン、食洗機、テレビ、ウェアラブル、さらには芝刈り機やプールクリーナーなどの屋外機器まで、AI家電は住まいのさまざまな場所へ広がりつつある。

かつて家電はそれぞれの用途に閉じた機械だった。エアコンは空調を行い、洗濯機は洗濯を行い、食洗機は食器を洗う。そこに、住まい全体の文脈を読むという発想は乏しかった。

しかし、AI、センサー、クラウド、アプリ、ロボティクスが組み合わさることで、家電は生活の文脈を読み取り、相互に連携し、家全体を支えるシステムの一部になろうとしている。ここで起きているのは、家電の高機能化ではなく、家電のシステム化である。

AI家電から家全体の運用へ

Whole-home Smart Ecosystemの要点は、個々のAI家電が賢くなることではなく、それらが家全体の運用へ接続されることだ。
ロボット掃除機は床の状態を知る。空調は室温や気流を管理する。レンジフードは調理中の煙や熱を検知する。食洗機は食器の汚れや水流を扱う。洗濯ロボットは衣類という柔らかく不定形な対象を扱う。各AI家電が別々に動いている限り、それは「高機能家電がたくさんある家」にすぎない。それぞれのAI家電の情報や動作が連携し始めると、単なる機器の集合から、生活を支えるひとつの環境へと近づいていく。

この変化は、Boschの動きにも見られる。BoschはCES 2026で、Home Connectアプリ内で提供される「Bosch Cook AI」を発表した。同機能は、エージェント型AI、Bosch独自の家電技術、センサー、Home Connectアプリを組み合わせ、調理を支援するものとして紹介されている。
Bosch Cook AIは、ユーザーが持っている食材に応じてリアルタイムに調理をガイドし、複数の家電を連携させながら最適な調理結果へ導くものと説明されている。

ここで起きているのは、家電の単体操作から、生活行為のオーケストレーションへの移行である。AI家電はもはや「ボタンを押して自動で動く機械」という存在を脱して、ユーザーの目的と行動の文脈を理解し、その目的に向かって複数の機器を連携させる存在へと変化しつつある。

つながる家電とHome OSは同じではない

ただし、LWL onlineの視点からは、慎重に考えておかなければならないことがある。家電がたくさんつながることと、Home OSが成立することはイコールでは結べない。

Dreameの主張である「Whole-home Smart Ecosystem」は、現時点では単一ブランドを中心とした縦統合型のエコシステムとして読むのが自然である。Dreameアプリを中枢に、Dreame製品群を一元管理する。この方向性は、ユーザー体験をわかりやすくし、製品間連携を深めやすい。
一方で、照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、電気設備、給湯、床暖房など、住宅設備全体を建築と一体で統合する仕組みとは異なる。

LWL onlineが重視してきた建築統合型スマートホームとは、単に家電やIoT機器をアプリで操作するシステムではない。住宅の設計段階から、照明、空調、シェード、セキュリティ、AV、通信、電源、場合によってはエネルギー管理までを統合し、空間全体の体験品質を設計するものである。
その意味で、Whole-home Smart EcosystemはHome OSそのものではない。むしろ、Home OSの前段階、あるいは家電側からHome OSへ接近する準備段階と捉えるべきだろう。

Whole-home Smart EcosystemとHome OSの違い

整理すると、Whole-home Smart EcosystemとHome OS/建築統合型スマートホームには、次のような違いがある。

項目Whole-home Smart EcosystemHome OS
建築統合型スマートホーム
主体家電メーカー、スマートデバイスメーカー住宅統合プラットフォーム、設計者、インテグレーター
中心領域AI家電、掃除、調理、洗濯、空調、ガーデン、エンターテインメント照明、空調、シェード、AV、セキュリティ、住宅設備、電源、通信
強み家電体験を統合しやすく、生活者が導入しやすい空間全体の体験設計、施工、保守まで統合しやすい
課題ブランド内に閉じやすく、住宅設備全体の統合には限界がある導入設計や施工に専門性が必要
接点Matterなどの共通プロトコルMatter対応機器やAI家電を住宅側に取り込む

Whole-home Smart EcosystemはHome OSの代替ではない。むしろ、AI家電側から住まい全体へ近づいていく動きであり、その先で建築統合型スマートホームと接続していく可能性を持つ領域だと言える。

MatterはAI家電と建築統合型スマートホームをつなぐ橋になり得る

では、AI家電エコシステムと建築統合型スマートホームをつなぐのは何か?
ここで重要になるのがMatterである。

Matterは信頼性と安全性を備えたIPベースの統一接続プロトコルとして位置づけられている。さらにMatterのMulti-Admin機能は、スマートデバイスを複数のアプリやエコシステムへ、ローカルかつ安全に、同時接続できる仕組みとして説明されている。
この考え方は、AI家電エコシステムと建築統合型スマートホームの関係を考えるうえで重要だ。

Dreameのようなメーカー独自の家電エコシステムは、Matterを介することで、Apple Home、Google Home、Amazon Alexa、Samsung SmartThingsなどの主要プラットフォームと接続しやすくなる。さらにその先では、住宅側の統合制御プラットフォーム、すなわちHome OS的なシステムとの接点も生まれていく。
つまり、Matterは「家電側の知能」と「住宅側の統合制御」をつなぐ橋になり得る。
ただし、MatterがあればHome OSが完成するわけではない。Matterはあくまで接続のための共通言語であり、住宅全体のシーン設計、空間演出、施工品質、保守運用、セキュリティポリシーを自動的に解決するものではない。Matterは重要な基盤である一方、それだけで建築統合型スマートホームを代替するものではない、という認識が必要である。

以前より当サイトで何度か主張している「Matter Ready」という思想こそが重要になってくる。
家電やガジェット側がMatterを介してまとまり、その上でCrestronなどの統合型プラットフォームのもと、住まい全体を動作させる。そうした階層構造として捉えることが重要である。

Matter Readyとは何か? 建築統合型スマートホームとMatter 1.5の現在地

AI家電エコシステムはHome OSそのものではない。Matterなどのプロトコルを介して、住宅側の統合制御プラットフォームと接続していく可能性がある

ワンブランド統合か、オープンエコシステムか

この構図はSamsungの動きとも重なる。SamsungはCES 2026で、Home AIの実現には閉じたエコシステムではなく、オープンな協業と相互運用性が重要だと強調している。同社は、業界横断のパートナーシップによって、コネクテッドホームをよりシームレスで安全な知的環境へ変えていくという方向性を示した。

Samsungの動きを鑑みると、現在のスマートホーム市場の二つの方向性が見えてくる。

ひとつは、Dreameのように自社製品群をひとつのアプリと技術基盤で束ねるワンブランド統合である。もうひとつは、SamsungやMatterが示すように、複数ブランド、複数サービス、複数プラットフォームを相互運用させるオープンエコシステムである。

前者は体験価値を深く設計しやすいが、閉じた世界になりやすい。後者は自由度が高いが、体験設計が粗くなる危険もある。AIホームの未来は、おそらくこの二つのせめぎ合いの中で形づくられていく。

この論点は、建築統合型スマートホームにとっても重要である。家電メーカーのエコシステムが強くなればなるほど、住宅側の統合制御とどう接続するかが問われる。逆に、住宅側のHome OSが家電側の知能を取り込めなければ、住まい全体の運用は分断されたままになる。

Whole-home Smart Ecosystemはスマートホームと同じなのか

ここで、誤解しやすい点を整理しておきたい。Whole-home Smart Ecosystemは、広い意味ではスマートホームの一形態といえる。AI家電やスマートデバイスを連携させ、住まいの中の複数の生活行為を支援するからである。

しかし、LWL onlineの視点では、それは建築統合型スマートホームそのものではない。

Whole-home Smart Ecosystemは、AI家電を中心に、掃除、洗濯、調理、空調、ガーデン、エンターテインメントを連携させる家電側のエコシステムである。一方、建築統合型スマートホームは、照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、通信、電源などを、建築設計や施工と一体で統合する考え方である。

両者は競合するというより、レイヤーが異なる。Whole-home Smart Ecosystemはより生活行為に近く、Home OSはより住宅の構造や設備に近い。この二つがMatterなどを介して接続されるとき、AIエージェントホームはより現実的な姿を取り始める。

住宅内の壁面タッチパネルで照明や空調などを操作する建築統合型スマートホームのイメージ
建築統合型スマートホームでは、家電単体ではなく、照明、空調、シェード、AV、セキュリティなどを空間全体の体験として統合する

Whole-home Smart Ecosystemは「Home OS前夜」である

DreameのLiving Next Showcaseで新たに示された20種類以上のプロダクトは、Whole-home Smart Ecosystemという概念を考えるうえで、非常にわかりやすい具体例だった。ロボット掃除機から始まったDreameは、AIとロボティクスを空調、キッチン、食洗、洗濯、ガーデン、エンターテインメントへ広げようとしている。これはスマートホームというよりも、AI家電が家全体へ拡張していく動きである。

ただし、Dreameの構想は、まだ建築統合型スマートホームの完成形ではない。家電側から住宅全体へ接近する力強い流れではあるが、住宅設備、建築設計、施工、保守、空間体験を統合するHome OSとは異なる段階にある。

だからこそ、Whole-home Smart Ecosystemは「Home OS前夜」として捉えるのがよい。

AI家電が単体最適を超え、家全体をひとつの環境として扱い始めた。その先で、Matterのようなプロトコルを介して、建築統合型スマートホームのプラットフォームへ接続していく。重要なのはすべての家電がつながることそのものではない。住まいの中で、どのシステムが環境を理解し、どのレイヤーが判断し、どこに住宅の主権が置かれるのかが最も重要である。つまり、階層構造こそが重要なのだ。

DreameのLiving Next Showcaseはその問いを可視化した。AI家電はもはや便利な単体製品にとどまらない。Whole-home Smart Ecosystemという形で、住まい全体の知能化へ向かい始めているのだ。

そして、LWL onlineが注目しているのはその先にある建築統合型スマートホームとの接点であり、その先にはAI家電とHome OSがどのように出会うのかという大きな論点がある。DreameのLiving Next Showcaseは、その接点を考えるうえで重要なイベントだったと言えるだろう。

DREAME NEXT 2026のステージでDreameのロゴと大型スクリーンが表示されている様子
Image:Dreame
DREAME NEXT
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    LWL online 編集部

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