いよいよAI家電は眠りを設計する⁉ AI家電、進化の脈動

 取材/LWL online編集部

空調、エアコン、エアコンディショナー。それは長らく「暑さ寒さをしのぐための家電」だった。もちろん、いまでも主目的自体が変わったわけではない。しかし、AI家電の進化にともない、こうした従来の空調観から一歩踏み出した世界が広がりはじめている。

AI家電が眠りを設計し始めたのはなぜ?

CES 2026でSamsungが見せたのはそうした未来だった。Galaxy WatchやGalaxy Ringが眠りの状態を読み取り、Bespoke AI WindFree Pro空調機やAI空気清浄機、照明、センサーと連携しながら、就寝中の環境を自動で整えていく。そこで主役になっていたのは、もはや「冷やす機械」「暖める機械」としてのエアコンではなかった。人が眠りに就き回復するための環境を組み上げるためのエアコンディショナーである。

Samsungは既にSamsung HealthとSmartThingsを連携させ、温度、湿度、CO2、照度といった寝室の環境要素の見える化として、「Sleep environment report」を打ち出している。さらにGalaxy WatchやGalaxy Ringと組み合わせることで、ユーザーが眠りに入ったタイミングや起床したタイミングに合わせて、照明や家電を自動制御する仕組みも整えつつある。2025年夏には、エアコンの「Good Sleep」モードが睡眠段階に応じて温度を変動させる仕組みであること、そしてウェアラブルの睡眠検知で自動起動できることも明かされた。

家電が「部屋を快適にする」装置から、「人が回復する環境を静かに整える」装置へと役割を変え始めているのである。

睡眠環境は「温度」だけでは決まらない

睡眠をめぐる環境条件は温度ひとつでは完結しない。寝室の空気は、温度、湿度、気流、清浄度、換気、そして光のバランスで成り立っている。

2025年9月に早稲田大学の研究チームが公表した整理では、寝室内のCO2濃度が1,000ppmに達すると睡眠効率や深睡眠割合が低下しうるとされ、安全側に余裕を持つなら800ppm以下が望ましいと推計された。睡眠環境は、単純な「涼しさ」だけでは成立しない。温度、湿度、換気、空気質、気流、そして朝の目覚めに向かう光までを含んだ、複合的な回復環境として捉え直す必要がある。

そうした視点に立つと、最近の家電各社の動きはかなり明瞭に見えてくる。興味深いのは、この「睡眠環境の最適化」という発想が、SamsungのようにAIを前面に掲げる製品だけでなく、周辺の空気家電や気流家電にも広がり始めていることだ。これは一大潮流になりかねない。

Image:Shcherban Oleksandr /Shutterstock.com

「睡眠のための空気制御」は既に始まっている

ダイキンは「空気のシーン」として睡眠を捉える

たとえばダイキンが2026年2月にASEAN市場向けに打ち出した「AIR CREATOR」は、空調を単体機器としてではなく「空気のシーン」として設計しようとする提案だ。
アプリ「DAIKIN AIR SELECT」では、sleep、focus、relaxation、fitnessといった生活場面を「AIR CARD」として選択でき、対応するエアコンや空気清浄機をまとめて同期制御できる。温度や湿度だけでなく、香りまで含めて空気を調整する構想も示されていて、エアコンとアロマ拡散機能付き空気清浄機をワンタップで連動させる設計になっている。
ここでは空気がもはや「冷やす/暖める」対象ではなく、気分や行為に合わせて編成される『空間のレイヤー』として扱われている。睡眠はそのなかの重要なシーンのひとつとして、はっきり位置づけられている。

「DAIKIN AIR SELECT」アプリ(スマートフォン)UIイメージ図。ソフトウェア開発を担った株式会社ACCESSのプレスリリースより

Blueairはベッドサイドで「眠りから目覚めまで」を支える

Blueairの「Mini Restful 空気清浄機 and Sunrise Clock SC9i」も同じ潮流をベッドサイド側から具体化した。約12畳対応の空気清浄機にサンライズクロック、アラーム、ムードライトを一体化したものだ。Blueairはこれを、「日の出」をイメージした光と音で眠りから目覚めまでを支援する空気清浄機と位置づけている。HEPASilent技術により0.1〜1μmの微粒子を99.97%以上抑制するフィルター性能をうたいつつ、ナイトモード時の運転音は21dB(A)。USB Type-C出力まで備え、ベッドサイドでの使い勝手を強く意識した構成になっている。空気清浄機に「起床の演出」まで背負わせる発想は、家電が睡眠の前後を含めた時間設計に踏み込み始めていることをよく示している。

スウェーデン発のブルーエアの「Mini Restful™ 空気清浄機 and Sunrise Clock SC9i」

Twinbirdは「風を当てすぎない」睡眠環境に踏み込んだ

Twinbirdの「サーキュレーション扇風機3D EF-J951W」もまた、「おやすみ空間モード」によって就寝時の風向と風量を自動制御し、体を冷やしすぎず空気を循環させる設計を採っている。

これらを厳密にAI家電と呼ぶのはやや強いが、少なくとも「睡眠のための空気制御」という新しいテーマが、家電の設計思想そのものを変えはじめていることは間違いない。

AI家電の先にある、「回復環境」としての住まい

こうして見ると、AI家電の次に来るのは単により賢いエアコンではなく、温度、湿度、空気質、気流、そして目覚めまで含めて、住まいを回復環境としてどう再編集するか、その問いが、いま家電の側から逆照射され始めているのである。SamsungがAIでその先頭を走り、ダイキン、Blueair、Twinbirdがそれぞれ別の角度から睡眠環境へ接近している。この設計思想の転換そのものを注視していくべきだろう。温度を下げる、湿度を整える、風を体に直接当てない、空気を清浄に保つ、必要な換気を確保する、朝には光で身体を起こしていく。こうした複数の要素を身体のリズムに沿って編成する「睡眠のための空気制御」である。

そして、このテーマは建築とも深く接続する。
どれほど賢い家電であっても、断熱・気密が不十分で、換気計画が弱く、光や騒音の制御が粗ければ、眠りの環境は安定しない。逆に言えば、建築側の性能と設備側の知能がかみあったとき、初めて住まいは「回復する空間」になり得る。

空調は部屋を快適にする装置だったが、AIによって、少しずつ、眠りを支える環境インフラへ変わり始めている。AI家電はついに眠りを設計し始めた。そう言ってもいい段階に私たちはもう既に入っているのだ。

Image:ImageFlow /Shutterstock.com
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