Bowers & Wilkins「800 Series Diamond D5」発表。60年の探求が結実した最高峰ラウドスピーカー

 取材/LWL online編集部

英国のハイエンド・オーディオブランド、Bowers & Wilkins(バワーズ&ウィルキンス)が、同社のフラグシップスピーカーシリーズの最新世代となる「800 Series Diamond D5」を発表した。日本国内における受注開始は2026年秋を予定。正式な受注開始日、出荷時期、国内希望小売価格については、確定次第改めて案内される予定だ。

新シリーズは、2ウェイ・スタンドマウントの「805 D5」、3ウェイ・フロアスタンディングの「804 D5」「803 D5」「802 D5」「801 D5」、さらにホームシアター用センタースピーカー「HTM81 D5」「HTM82 D5」の全7モデルで構成される。なかでも最上位に位置する801 D5は、Bowers & Wilkinsが掲げる「True Sound」の思想を最も高度に体現する存在であり、音楽愛好家だけでなく、録音・制作現場のプロフェッショナルにも向けられたリファレンス・ラウドスピーカーである。

Bowers & Wilkinsとは何か。「True Sound」を掲げる英国ブランドの哲学

Bowers & Wilkinsは、1966年に英国で創業したハイエンド・オーディオブランドである。創業者ジョン・バウワースが追求したのは、スピーカーが音楽に何かを付け加えるのではなく、録音された音楽を可能な限り忠実に再現することだった。ブランドが現在も掲げる「True Sound」とは、まさにその思想を示す言葉である。

Bowers & Wilkinsが目指してきたのは、アーティストがスタジオで生み出した表現、録音エンジニアが緻密に整えた空間情報、楽器の質感、声、そして空気感までをも、できる限り正確に聴き手の前に届けることである。それは、音楽を「鳴らす」というより、録音された時間と空間を住空間において再構築する行為といえるだろう。

この哲学は、ヘッドフォン、ワイヤレススピーカー、カーオーディオ、カスタムインストール製品へと広がっているが、その中心にあるのは、やはりラウドスピーカーであり、その頂点に位置するのが今回発表された800 Series Diamondなのである。

800 Series Diamondはブランドの思想を背負う象徴的シリーズ

Bowers & Wilkinsの800シリーズは、ブランドの研究開発、素材技術、エンクロージャー設計、製造精度、そして音に対する哲学をもっとも濃密に集約した、いわばブランドの到達点である。

その歴史を語るうえで欠かせないのが、1979年に登場した初代801である。この時、Bowers & Wilkinsはこのモデルにおいて、実用上の制約よりも、到達し得る最高水準の音響性能を優先するという姿勢を明確にし、開発を遂げた。以降、「801」という名は同ブランドのリファレンススピーカーとして受け継がれ、世界の録音スタジオや音楽愛好家から高い評価を得てきた。

とりわけ象徴的なのが英国Abbey Road Studiosとの関係だ。世界的な録音スタジオとして知られるAbbey Roadでは、1980年に最初の800シリーズがモニタースピーカーとして採用された。以降、Bowers & Wilkinsの800 Series Diamondは、数多くの音楽作品の制作現場で、音を判断するためのリファレンスとして用いられてきた。

こうしてみると、800 Series Diamondは、リビングルームに置かれる高級スピーカーであると同時に、音楽が生まれる現場と、音楽を聴く住空間とをつなぐ存在でもある。音楽文化を空間に迎え入れるためのプロダクトなのである。

Bowers & Wilkins 800 Series Diamond D5のトゥイーター・オン・トップ構造のクローズアップ
800 Series Diamondを象徴するトゥイーター・オン・トップ構造

800 Series Diamond D5。「60年の集大成」としての新世代

今回発表された800 Series Diamond D5は、Bowers & Wilkins創業60年のタイミングで登場する新世代モデルである。リリースでは「60 Years in the Making」という言葉が掲げられているが、これは単なる記念コピーではなく、1966年の創業以来、同社が積み重ねてきた素材研究、音響解析、キャビネット設計、製造技術の総体が、このD5シリーズに結実しているという宣言だといっていい。

D5シリーズでは、従来の800 Series Diamondがすでに確立していた高い完成度をさらに引き上げるため、音響的、機械的、電気的な改良が多岐にわたって導入された。Signatureモデルで培われた技術要素も惜しみなく継承され、解像度、開放感、ダイナミクス、歪みの低減といった基礎性能の向上が図られている。

特にキャビネットをいかに「鳴かせないか」という設計思想に注目したい。
ラウドスピーカーにおいて、音を生み出すべきなのはドライブユニットであり、キャビネットそのものが不要な響きを付加してはならない。D5シリーズでは、背面に新たな「Space Frame Bracing」を導入し、進化した内部の「Enhanced Matrix(エンハンスド・マトリクス)」構造と組み合わせることで、エンクロージャーの剛性をさらに飛躍的に高めた。音を出すための箱ではなく、音を濁らせないための構造体として、キャビネットを徹底的に設計し直しているのだ。

また、フロアスタンディングモデルには、チューンド・マス・ダンパーを搭載した新しいアルミニウム製台座を採用。トッププレートも再設計され、タービンヘッドやソリッドボディ・トゥイーターを支える構造の安定性が高められた。804 D5には新たにアルミニウム製ミッドレンジ・エンクロージャーが搭載され、より大型モデルに迫る空間表現力を狙っている。

ウォールナット仕上げのBowers & Wilkins 800 Series Diamond D5上部とトゥイーター部

音響工学が生んだ造形美。4つの新仕上げが示すモダン・ラグジュアリー

デザイン面でも、D5シリーズは大きく刷新された。

800 Series Diamond D5で大きく刷新されたのが、仕上げとディテールである。新シリーズでは、ステルス・ブラック、ウォーム・ホワイト、ライト・ウォールナット、ダーク・ウォールナットの4仕上げを展開する。

ステルス・ブラックは、ダークメタルのディテールと組み合わされることで、彫刻的な陰影を帯びた深い存在感を放つ。

ウォーム・ホワイトは、従来のホワイトモデルをより住空間に馴染みやすい方向へ進化させた仕上げである。シャンパンカラーのディテールが添えられ、ミニマルで明るいインテリアにも過度に冷たくならない。

ライト・ウォールナットは、天然素材を多用した住宅や、柔らかなトーンの家具と組み合わせやすい。

ダーク・ウォールナットは、限定モデル「801 Abbey Road Limited Edition」からのインスピレーションを受けた仕上げで、深い木質感とダークメタル、コノリー社製レザーのトリムが、英国的なクラフトマンシップと現代的なラグジュアリーを結びつけている。

そもそもBowers & Wilkinsの800 Series Diamondは強い造形性を持つスピーカーである。トゥイーター・オン・トップ、タービンヘッド、曲面を描くキャビネット、アルミニウムのスパイン。もちろん、音質のために存在しているのだが、結果として独自の視覚的アイコンを形成してきた。D5シリーズでは、そこに素材感、塗装品質、パーツ間の精度、隠された固定構造といったディテールが重なり、よりシームレスでプレミアムな仕上がりが追求されている。

800 Series Diamond D5は、音響機器であると同時に、工芸的な完成度を備えたラグジュアリー空間に適したプロダクトでもある。

ウォーム・ホワイト仕上げのBowers & Wilkins 800 Series Diamond D5フロアスタンディングスピーカー
新たな仕上げのひとつ「ウォーム・ホワイト」。シャンパンカラーのディテールにより、ミニマルな住空間にもなじむモダン・ラグジュアリーな佇まいを備える

ラインアップは全7モデル。ステレオからハイエンド・ホームシアターまで

新しい800 Series Diamond D5は全7モデルで構成される。

シリーズ最高峰となる「801 D5」は、Bowers & Wilkinsの技術を最も高度に投入したフロアスタンディングタイプであり、リファレンスモデルである。

「802 D5」は、801 D5に迫る性能をより扱いやすいサイズにまとめたフロアスタンディングタイプ。

「803 D5」は、タービンヘッド構成を備える最もコンパクトな800 Series Diamondモデルとして、リビングや専用室など幅広い空間に対応する。

「804 D5」は、より伝統的なフロアスタンディング形状を採りながら、800 Series Diamondの技術を凝縮したモデルである。比較的設置しやすいサイズでありながら、新たなアルミニウム製ミッドレンジ・エンクロージャーなどの進化を備える点が注目に値する。

「805 D5」は、シリーズ最小のスタンドマウントモデル。サイズはコンパクトながら、ダイヤモンドドーム・トゥイーターを備え、800 Series Diamondの世界をより小規模な空間に導入する選択肢となる。

さらに、ホームシアター用途として「HTM81 D5」「HTM82 D5」の2種類のセンタースピーカーも用意される。

海外での予定販売価格は、801 D5が2台1組で43,000ポンド/65,000ドル/50,000ユーロ、802 D5が32,500ポンド/45,000ドル/37,000ユーロ、803 D5が25,500ポンド/35,000ドル/30,000ユーロ、804 D5が16,500ポンド/25,000ドル/18,000ユーロ、805 D5が10,000ポンド/15,000ドル/12,000ユーロとされている。日本国内向け価格は、現時点では未定。

なお、新シリーズの発表に伴い、既存の800 D4シリーズおよび801 D4 Signature/805 D4 Signatureは、英国ワージング工場での生産をすでに終了している。日本へは本年秋ごろまで生産済み在庫の入荷予定があるものの、モデルや仕上げによっては早期の販売終了も見込まれるという。

住まいに「音楽のための場所」をつくるスピーカー

800 Series Diamond D5は、オーディオというカテゴリーに閉じ込めて語るには、あまりに多層的なプロダクトである。そこには、英国のクラフトマンシップ、音響工学、録音文化、スタジオの信頼、そして住空間に置かれるオブジェとしての存在感が重なっている。

Bowers & Wilkinsは、60年をかけて、スピーカーを「音を出す箱」から、「音楽に近づくための装置」へと磨き上げてきた。800 Series Diamond D5はその最新の到達点だといえよう。リビングに、リスニングルームに、ホームシアターに置かれたとき、このスピーカーは音楽と空間を結び直すためのラグジュアリーな建築要素となるだろう。

今回の発表は、ウィーンで開催されるオーディオショー「HIGH END ウィーン」にあわせて行われたものだ。現時点では、日本国内でその音に触れられる機会はまだ少し先になるだろう。しかし、Bowers & Wilkinsが60年をかけて磨き上げてきたフラグシップが、実際のリスニング空間でどのような音楽体験をもたらすのか。その瞬間を想像するだけでも、期待は高まる。オルゴールのような機械式の音楽再生から始まり、録音、Hi-Fi、ホームシアターへと受け継がれてきた音響再生の歴史のなかで、800 Series Diamond D5はどのような新しい到達点を示すのだろうか。日本の地でこのスピーカーが鳴り始めるその日を、オーディオの歴史のメルクマールとなるその瞬間を、心待ちにしたい。

800 Series Diamond D5

  • 取材

    LWL online 編集部

Related articles 関連する記事

  1. home Home
  2. INFO
  3. Bowers & Wilkins「800 Series Diamond D5」発表。60年の探求が結実した最高峰ラウドスピーカー