DEVIALET クオーツ心斎橋店がオープン。パリ発ラグジュアリーオーディオが示す、音と空間の新しい関係
取材/LWL online編集部
フランス・パリ発のラグジュアリーオーディオブランド、DEVIALET(デビアレ)の新たなオフィシャルストア「DEVIALET クオーツ心斎橋店」が、大阪・心斎橋にオープンした。Phantomシリーズやサウンドバー「Dione」を体験できる専用試聴室を備え、音楽、映像、光を一体で楽しめる空間となっている。パリ・オペラ座とのパートナーシップやFENDIなどのラグジュアリーブランドとの協業でも知られるDEVIALETは、なぜ心斎橋に新たな体験拠点を構えたのか。オープン記念イベントで語られたブランドの思想とともに、その意味をレポートする。
クオーツ心斎橋に誕生した、DEVIALETの新たなショールーム
DEVIALET クオーツ心斎橋店は、製品を展示・販売するだけの店舗ではない。店内には専用の試聴室が設けられ、PhantomシリーズをはじめとするDEVIALETのスピーカーや、サウンドバー「Dione」などを実際に体験できる。
クオーツ心斎橋は、ファッション、インテリア、ライフスタイルに関心の高い来店者との接点を持ちやすい商業施設である。こうした場所にDEVIALETのオフィシャルストアが構えられたことは、同ブランドが単なる音響再生機器メーカーではなく、暮らしの中で音をどのように響かせ、どのように楽しむかを提案するブランドであることを象徴している。
オーディオは、一般的には「音を聴くための機器」として語られることが多い。だが、ラグジュアリーな住空間、あるいは別荘やホテルのようなホスピタリティ空間においては、音は照明、シェード、家具、アート、フレグランスと同じように、空間の質を左右する要素になっている。DEVIALET クオーツ心斎橋店は、その考え方を実際に体験できる場所といえる。
試聴室で体験する、音・映像・光の一体感

クオーツ心斎橋店には独立した試聴室が備わっている。PhantomシリーズやDioneなどが設置され、音楽再生だけでなく、映像コンテンツを含めたイマーシブな音響体験を確認できる。
壁面や天井には、見た目の美しさと音響面の機能性を両立するため、ファブリック系の素材が用いられている。音のためだけに無機質な部屋をつくるのではなく、視覚的にも心地よい空間を保ちながら、必要な吸音や音場づくりを行う。これは、住宅やホテルのインテリア計画にも通じる考え方だ。
さらに試聴室には調光装置も導入されており、照明を落とすことで映像と音への没入感を高められる。明るい状態ではPhantomの造形や素材感を確認でき、照明を絞るとスピーカーの存在感は抑えられ、音と映像が空間の中心に浮かび上がる。

音だけでなく、光まで含めて体験を設計する。DEVIALET クオーツ心斎橋店の試聴室は、オーディオのショールームであると同時に、音と空間の関係を考えるための「場」でもある。
Martin KU氏が語った、DEVIALETというブランドの現在地

オープン記念イベントには、DEVIALETのAPAC Regional Directorを務めるMartin KU氏が来日。来場者に向けて、DEVIALETのブランドヒストリー、技術思想、グローバルでの展開についてプレゼンテーションを行った。
DEVIALETは、2007年にフランス・パリで創業したオーディオブランドである。現在は世界7拠点、約300名規模の体制を持ち、そのうち35%以上が研究開発に従事しているという。販売拠点は世界で1,700以上に広がり、その約3分の1がアジア地域にある。アジアにはオフィシャルブランドストアも約20店舗を展開し、今回のクオーツ心斎橋店もその新たな一拠点となる。なお、日本国内では、他にNEWoMan高輪にもショールームがある。
KU氏が強調したのは、DEVIALETが「ハイエンドオーディオやプロフェッショナルオーディオに匹敵する音質を、家庭で扱えるコンパクトな製品へ凝縮する」ことを目指してきたブランドだという点だ。大型システムでなければ到達できなかった音を、住まいの中に置ける美しいプロダクトへと落とし込む。その思想がDEVIALETの製品開発を貫いているということだ。
実際、同社は長年にわたる研究開発を続け、250件を超える技術特許を保有している。KU氏は、DEVIALETの音は一度聴かなければ説明しにくいものだとしながらも、世界各国で獲得してきた数多くのアワードやレビューが、同社の音響技術の高さを示していると説明した。

アンプからPhantomへ。DEVIALETのヒストリー
DEVIALETは、2010年にアンプでコンシューマ市場に登場した。その後、2015年には現在のブランドを象徴するワイヤレススピーカー「Phantom」を投入する。
Phantomは、従来のスピーカーのイメージとは大きく異なるラウンドフォルムを持つ。オーディオ機器というより、オブジェやアートピースのようにも見える独特の存在感を放つ。
ただし、その造形はデザイン面から導き出されたものではない。コンパクトな筐体から深い低域を引き出し、部屋全体を満たすようなサウンドを実現するために、技術的な必然性と結び付いたデザインなのである。「Form follows function.」を体現したプロダクトだといってもいいだろう。

さて、その後DEVIALETはイヤホン、ポータブルスピーカー、サウンドバーなど、さまざまなカテゴリーへ展開を広げてきた。KU氏は、DEVIALETが新しいカテゴリーに参入する際には、そのカテゴリーでベストな製品を目指すという姿勢を持っていると説明した。

さらに2024年には、新たなOS/プラットフォームを導入。DEVIALETは、これを起点にフラッグシップ製品を新しい基盤の上で再構築していく段階に入っている。KU氏はこれを、同社にとっての「第二章」と位置付けていた。
パリ・オペラ座、FENDI。ラグジュアリー領域へ広がるDEVIALETの世界観
DEVIALETの特徴は、音響技術を追求する一方で、グローバルではラグジュアリーブランドとしても強い存在感を持っている点にある。
象徴的なのが、パリ・オペラ座とのパートナーシップだ。パリ・オペラ座内にはDEVIALETのストアが設けられ、複数台のPhantomによる特別な音響体験が提供されている。また、各ラインアップには「Opéra de Paris」エディションも展開され、金箔を用いた意匠など、フランスのクラフツマンシップと音響技術を結び付けている。

さらにDEVIALETは、FENDI、KRUG、ArianeGroupなど、ファッション、シャンパーニュ、宇宙開発といった異分野のブランドや企業とも積極的に協業してきた。オーディオを単体の製品として売るだけではなく、特定の空間やブランド体験に「音が創造する物語」を与える存在として活動している。
こうしたラグジュアリー領域での展開は、単にブランドイメージを高めるためだけのものではない。DEVIALETの音響技術は、ホテル、レジデンス、商業空間、移動空間など、さまざまな場所で体験価値を高める要素になり得る。ラグジュアリーな空間において、DEVIALETのつくりだす音は、もはや空間の背景ではなく、体験そのものを形づくる重要な要素となっている。
技術があるからこそ、デザインが意味を持つ
さて、DEVIALETのブランドイメージの背景にあるのは、あくまで卓越した技術力だ。
イベント会場では、ADH、HBI、SAMといった同社の独自技術も紹介された。ADHはアナログの力強さとデジタルの精度を融合するアンプ技術。HBIはコンパクトな筐体から歪みの少ない深い低域を引き出すための技術。SAMは接続するスピーカーの特性に合わせて信号を最適化し、位相や振幅の再現精度を高める技術である。

こうした技術は、DEVIALETのプロダクトが単なるデザインオーディオではないことを示している。丸みを帯びたPhantomのフォルム、コンパクトでありながら空間を満たす音の広がり、住宅の中に違和感なく置ける存在感。その背景には、技術とデザインを切り離さずに考える姿勢がある。まさに「Form follows function.」を体現する。
だからこそDEVIALETは、オーディオファンだけでなく、インテリアや建築、ライフスタイルに関心を持つ層にも届く。音響技術を突き詰めた結果として、住空間の中で美しく成立するプロダクトが生まれているのである。

DENZAやHisenseにも広がる、DEVIALETのライセンス事業
イベントでは、THT Japan代表取締役の高橋和哉氏から、DEVIALETのライセンス事業についても紹介があった。
たとえば自動車領域では、BYD系ブランドDENZAの車室内音響にDEVIALETの技術が活用されている。車内は限られた空間でありながらも、乗員の位置、反射、騒音、素材など、音響設計の難度が高い場所である。そこにDEVIALETのチューニング技術が応用されていることは、同社の技術が家庭用スピーカーの枠を超えて展開していることを示す。
また、テレビ領域では、日本でも存在感を増しているグローバルテレビメーカーHisenseとの協業も進んでいる。薄型テレビの高画質化は凄まじい勢いで進展するが、一方、筐体の薄型化によって内蔵スピーカーの音質向上は難しいテーマとなっている。そこにDEVIALETの音響技術やチューニングノウハウが生かされることで、テレビの視聴体験そのものを高めたのだ。
こうしたライセンス事業は、DEVIALETが単に自社製品だけを展開するブランドではなく、他社のプロダクトや空間体験に「音響が創り出す体験価値」を与える技術ブランドでもあることを物語っている。

日本でDEVIALETを伝えるために必要な「体験」の場
KU氏は、日本市場について、信頼を得るには実際に聴き、理解してもらうことが重要だと語った。海外で高く評価されているから、あるいはFENDIをはじめとする高級ブランドとの協業実績があるからといって、日本のユーザーがすぐに信頼するわけではない。だからこそ、一人ひとりに聴いてもらい、体験を通じて納得してもらう場所が必要になる。
この言葉は、DEVIALET クオーツ心斎橋店の意味を端的に提示する。DEVIALETは、見た目のインパクトが強いブランドである。Phantomのデザインは独創的で、初めて見る人に強い印象を与える。しかし同時に、DEVIALETが本当に伝えたいのは、その造形の奥にある音であり、空間体験であり、音を通じた体験価値である。
だからこそ、ショールームは必要な存在だ。たとえば、写真やスペックだけでは伝わらない低域の量感、音場の広がり、映像との一体感、そして照明を落としたときの没入感。これらをひとつの空間で体験できることが、DEVIALET クオーツ心斎橋店の価値である。

生演奏でも示された、Phantom ULTIMATEの空間再現力

イベント中盤では、ヴァイオリンの神崎悠実氏、ピアノの小柳祥子氏による室内演奏も行われたのだが(初日のみ髙木理枝子氏)、電子ピアノの音がDEVIALETのPhantom ULTIMATEから出力されていた。
会場では、ヴァイオリンの生音と、Phantom ULTIMATEを通じて再生される電子ピアノの音が、同じ空間の中で重なり合った。単なる製品デモではなく、実際の演奏の一部としてDEVIALETのスピーカーが組み込まれたのである。
録音音源を再生して音質を確認する一般的な試聴とは異なり、生演奏とスピーカー再生が同時に存在することで、音の立ち上がり、音像の自然さ、空間への広がりがより直感的に伝わる。DEVIALETが目指す「空間に音をつくる」思想を、来場者が音楽体験として受け取るプログラムだった。
高橋和哉氏と窪川勝哉氏が語った、オーディオとインテリアの接点
また、イベント後半には、高橋氏とインテリア&プロップスタイリストの窪川勝哉氏によるトークセッションも開催された。テーマは、DEVIALETのプロダクトがインテリア空間の中でどのように機能するかについてである。

窪川氏は、従来のオーディオ、とくに5.1chサラウンドのように複数のスピーカーやケーブルを室内に配置するスタイルは、インテリアとの相性が難しい場合があると指摘。その一方で、DEVIALETのPhantomはラウンドしたフォルムを持ち、スタンドを用いることで空間の重心を上げられるため、部屋の中に動きやアクセントをつくりやすいと評価した。

このトークセッションの内容をはじめ、当日のイベントの詳細については、後日、別記事で詳しく紹介する予定である。
音は住空間を構成する要素になる
あらためて、DEVIALET クオーツ心斎橋店に戻ろう。このショールームは、音を、映像、光、家具、素材、そして空間体験とともに見せる場所である。
高級住宅や別荘、ホテル、レジデンスにおいて、オーディオは、空間の質を左右し、そこで過ごす時間の密度を高める、暮らしのインフラのひとつになりつつある。
パリ発のラグジュアリーオーディオブランドDEVIALETが、心斎橋という街に体験拠点を構えた意味も、そこにあるのだろう。音は、聴くだけでなく、空間の印象を変え、時間の流れまでも変えていく。美しい音は、美しい空間の中でこそ、より深く響く。
DEVIALET クオーツ心斎橋店は、そのことを実際に体験できる新たな場所である。
フランス・パリ発のラグジュアリーオーディオブランド、DEVIALETの新たなオフィシャルストア「DEVIALET クオーツ心斎橋店」が大阪・心斎橋にオープン。PhantomやDioneを体験できる試聴室、パリ・オペラ座やFENDIとの協業、ブランドの技術思想をレポートする。
-
-
取材
LWL online 編集部