Artek 2nd Cycleが宮城へ。アアルト家具を読み解く『IN GRAIN』

 取材/LWL online編集部

宮城県川崎町のNumata(DESIGN+ART)Museumで2026年10月11日、Artek 2nd Cycleを迎えた特別トークエキシビション「IN GRAIN」が開催される。アルヴァ・アアルトのヴィンテージ家具を手がかりに、デザインや製造背景、保存・修復、フィンランドでの評価までを掘り下げる参加型のトークイベントだ。長く使われた家具に刻まれた時間を新たな価値として捉え、次の世代へと受け渡すArtekの思想に触れる機会となる。

アアルト家具を収集・研究するミュージアムで開催

Numata(DESIGN+ART)Museumは、これまで長年にわたりアルヴァ・アアルト作品の収集と研究に取り組んできた。今回の「IN GRAIN」は、そうした活動を通じて親交を深めてきたArtek 2nd Cycleの協力によって実現するものだ。

当日は、ヘルシンキを拠点とするArtek 2nd Cycleからスタッフ2名が来日。参加者から事前に寄せられた質問をもとに、参加型のトークショーを行う。

一方的な講演ではなく、愛好家やコレクター、建築・デザイン関係者がそれぞれの疑問や視点を共有しながら、アアルト家具への理解を深めていく構成となる。家具の年代や仕様を見分ける知識にとどまらず、なぜアアルトの家具が約90年にわたり使い続けられてきたのかを考える機会となりそうだ。

Artekとは? アートとテクノロジーを結んだフィンランドブランド

Artekは1935年、フィンランド・ヘルシンキで設立された家具・インテリアブランドである。創業者は、建築家・デザイナーのアルヴァ・アアルトとアイノ・アアルト、芸術家でありパトロンでもあったマイレ・グリクセン、美術史家のニルス=グスタフ・ハールの4人だ。

社名の「Artek」は、「Art」と「Technology」を組み合わせたもの。芸術と技術、建築とデザイン、工芸と工業生産を横断しながら、モダンな生活文化を広めるという創業者たちの思想を表している。

Artekは当初から、単にアアルト夫妻の家具や照明を販売する企業にとどまってはいなかった。展覧会や文化活動を通じてモダニズムをフィンランドに紹介すると同時に、フィンランドのデザインを世界へ発信することを目指していた。現在もアルヴァ・アアルトやアイノ・アアルトの家具や照明を中心に、フィンランドの巨匠や現代の国際的デザイナーによる製品を展開している。

代表作として知られるのが、アルヴァ・アアルトが1933年に発表した三本脚の「スツール 60」だ。フィンランド産バーチ材を曲げて脚部をつくる「L-レッグ」の技術は、木材の温かさと工業生産の合理性を両立させた。住宅だけでなく、学校、図書館、レストランなど多様な場所で使われてきたことも、Artekの家具が単なる鑑賞対象ではなく、日常生活のための道具として設計されていることを物語っている。

水草が浮かぶ湖と緑豊かな森林が広がるフィンランドの自然風景
静かな湖と森林が広がる自然風景。自然素材を尊重するArtekの家具づくりを想起させる

古い家具に「二度目の命」を与えるArtek 2nd Cycle

Artek 2nd Cycleは、長年使われてきたフィンランドデザインを再発見し、買い取り、必要な手入れを施して再販売するArtekのプラットフォームである。

その活動は2006年、公共施設や個人住宅、フリーマーケット、古い工場、学校、造船所などから、使い込まれたアアルト家具を探し出すプロジェクトとして始まった。2011年にはヘルシンキ中心部に実店舗を開設し、現在では家具だけでなく、照明、ラグ、セラミック、テーブルウェア、ファインアートプリントなど、20世紀初頭から現代までのフィンランドデザインを幅広く扱っている。

アルヴァ・アアルトをはじめとするヴィンテージ家具が並ぶArtek 2nd Cycleの空間
長年使い継がれてきたアアルト家具をはじめ、さまざまなフィンランドデザインが並ぶ。傷や色の変化、補修の跡も、それぞれの家具が刻んできた時間の一部として受け継がれる

2nd Cycleの家具に残る傷や色の変化、補修の跡は、新品の製品においては「欠点」と見なされるかもしれない。しかし、それらは家具が実際の空間で使われ、人の暮らしを支えてきた記録でもある。

Artek 2nd Cycleの活動は、耐久性や修理可能性、素材の質、時代に左右されないデザインが不可分であることを示している。

傷や補修跡も価値に。ヴィンテージ家具を未来へ継承する

ヴィンテージ家具の世界では製造年代や希少性が注目されやすい。しかし、本展で問われるのは市場価格だけではない。

どのような材料と技術でつくられたのか、どのように使われてきたのか、修理や再塗装をどこまで行い、どの痕跡を残すのかなど、家具の価値は、デザイン、製造技術、来歴、保存状態、文化的背景が重なり合うことで形成される。

家具を短期間で消費するのではなく、手入れを重ねながら長く使い、次の所有者へ渡す。Artek 2nd Cycleは、現在の循環型のものづくりや消費の価値観とも響き合う取り組みだ。その背景には、約90年にわたって受け継がれてきたArtekの設計思想と、長期使用に耐える製造品質がある。

「IN GRAIN」は、家具に刻まれた時間を読み取り、これから何を選び、どのように使い継ぐべきかを考える場でもある。

ヨハンナ・グリクセンによる限定バッグとポーチも登場

イベントの開催に合わせ、フィンランドを代表するテキスタイルデザイナー、ヨハンナ・グリクセンの協力による限定バッグとポーチも制作される。

ヨハンナ・グリクセンは、Artek創業者の一人であるマイレ・グリクセンの孫にあたる。限定アイテムは、ヨハンナ・グリクセンのテキスタイルを用い、グラフィックデザイナーの平林奈緒美とNumata(DESIGN+ART)Museumが監修。「IN GRAIN」のコンセプトを日常へ持ち帰るための、完全別注プロダクトとなる。

販売は会場限定で、通信販売には対応しない。数量限定のため、なくなり次第終了となる。

ヨハンナ・グリクセンのテキスタイルを使用した「IN GRAIN」限定バッグとポーチ
ヨハンナ・グリクセンのテキスタイルを用いた、「IN GRAIN」限定のバッグとポーチ。平林奈緒美とNumata(DESIGN+ART)Museumが監修し、会場限定・数量限定で販売される

「IN GRAIN」開催概要

「IN GRAIN」Artek 2nd Cycle Special Talk Exhibition

開催日:2026年10月11日(日)
開場:12時
開演:13時30分
会場:Numata(DESIGN+ART)Museum
所在地:宮城県柴田郡川崎町今宿字向古関184-5

チケットは抽選販売となり、応募期間は2026年8月1日から8月7日まで。

シート確約チケットは8,000円で、非売品のArtekトートバッグとイベント限定Tシャツが付属する。立ち見チケットは6,000円で、非売品のArtekトートバッグが付属する。

応募時には、参加者情報、希望する観覧方法とともに、トークショーで聞いてみたい質問を記載する。詳細および申し込み方法は、Numata(DESIGN+ART)Museumの案内を確認してほしい。

Numata (DESIGN+ART) Museum 「IN GRAIN」Artek 2nd Cycle Special Talk Exhibition

Numata (DESIGN+ART) Museum

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