CEDIA Expo 2026で見えた「マルチプロトコル住宅」とHome OSの役割

 取材/LWL online編集部

CEDIA Expo 2026で発表された「AVA OS 3」は、建築制御規格KNXへの正式対応を打ち出した。一方、Josh.aiはBACnet/Modbus/Matter、Somfy/Control4はZigbee 3.0、DendoはPoE、DevialetはDanteを採用する。見えてきたのは、設備ごとに最適なプロトコルや技術を使い、Home OSが上位で束ねる「マルチプロトコル住宅」という姿だ。CEDIA Expo 2026から、建築統合型スマートホームのレイヤー構造の位置づけを読み解く。

※アイキャッチ画像:Image:dotshock /Shutterstock.com

AVA OSとは何か。リモコンの背後にあるHome OS

スマートホームの世界では長らく、「通信言語の規格が統一されれば、すべてが簡単につながる」という未来が期待されてきた。しかし、9月1〜4日に米デンバーで開催された「CEDIA Expo 2026」で起きていることを見ると、プロフェッショナルな住宅市場の現実は、むしろ逆方向へ進んでいる。

CEDIA Expo 2026の会場となった米デンバーのColorado Convention Center
CEDIA Expo 2026は米コロラド州デンバーのColorado Convention Centerで開催。プロフェッショナル向けスマートホーム、AV、照明、シェード、ネットワークなどの最新技術が集まった
Image:Liz Albro Photography /Shutterstock.com

KNX、BACnet、Modbus、Zigbee、Danteなど。ラグジュアリー住宅で使われる通信・制御技術は一つに収束するどころか、設備ごとに最適なプロトコルが使い分けられ、むしろ多様化しつつある。

こうした複雑さをHome OSが上位のレイヤーで吸収し、住人にはひとつの住宅として見せるという「マルチプロトコル住宅」の姿が、CEDIA Expo 2026から見えてきた。

その流れを象徴するニュースのひとつが、「AVA OS 3」である。

まずAVAについて簡単に整理しておこう。

AVAは、プロフェッショナル・インテグレーター向けに住宅制御システムを展開する企業である。現時点では日本で広く流通しているシステムではない。ただし、今回の発表は、これからの建築統合型スマートホームを象徴するニュースなので、まずは紹介したい。

AVAの外見上もっとも分かりやすい製品は、タッチディスプレイと物理ボタンを組み合わせた「Cinema Remote」である。その背後で住宅設備やAV機器を統合する「AVA OS」が同社の中核となる。

AVA OSを操作するタッチディスプレイ搭載Cinema Remote
AVAの「Cinema Remote」。タッチディスプレイと物理操作を組み合わせ、AVA OSを介してAV機器や住宅設備を横断的に操作する

AVA OSは、テレビやプロジェクター、AVアンプなどのエンターテインメント機器に加え、照明やシェードなどを一つのインターフェースから扱うために統合するHome OSという位置付けだ。インテグレーターは、対応機器を組み合わせながら、「テレビを見る」「音楽を聴く」といった操作をFlowとして構築できる。

AVAは、当初AVを起点としてスタートしてきたが、徐々に住宅設備側へ守備範囲を広げてきた。

CEDIA Expo 2026では、「AVA OS 3」によって、その方向性が一段明確になった。

AVA OS公式

AVA OS 3、建築通信プロトコルKNXを正式サポート

AVA OS 3では100以上の新機能や改善が加えられた。

Home OSとしての完成度を高める機能として、Custom UI Builderによるインターフェース編集、Dynamic Keypadのカスタマイズ、バックアップ/リストア、多言語対応などが多数盛り込まれたようだ。

AVA Cinema RemoteのDynamic Keypadとタッチディスプレイ
AVA Cinema Remoteは画面表示と操作系を組み合わせ、利用シーンに応じたインターフェースを提供する。Home OSの複雑な制御を、住人にはシンプルな操作として提示する考え方だ

なかでも従来ベータ版として提供されていたKNXが正式対応になった点に注目したい。

KNXは、住宅やビルの照明、シェード・ロールスクリーン、空調システム、エネルギーマネジメントなどで世界的に利用されているオープンな建築制御規格である。

特定のメーカーだけに依存せず、多数のメーカーの設備を同じシステム上で組み合わせることができる。また、中央制御装置だけに依存しない分散型のアーキテクチャを採用できるので、欧州を中心に高級住宅やホテル、商業施設などでも広く使われている。発祥の地である欧州に加えて、中東やアジアでも利用されるケースが増え、中国では2013年にホーム/ビルディング制御の国家標準GB/T 20965として採用されている。

AVA OS 3では、従来ベータ版として提供されていたKNX統合がGeneral Availability、すなわち正式提供へ移行した。

KNX以外でも、LutronのHomeWorksやRadioRA 3に加え、Caséta、RadioRA 2にも対応。Philips Hueとの連携も拡張し、Crestron Homeとの互換性も新たに加わった。

要するに、AVAでは、KNX、Lutron、Crestron HomeをAVAへ置き換えるわけではなく、それぞれのシステムを残したまま、その上位あるいは隣にAVA OSを置き、横断的に扱おうとしているのだ。この考え方こそ、CEDIA Expo 2026を読み解く重要な鍵になる。

AVA Reveals OS 3 at CEDIA Expo 2026|Residential Systems

CEDIA Expo 2026で進む「マルチプロトコル化」

Josh.ai:BACnet/Modbus/MatterをHome OSで束ねる

同じ方向性は先日速報を入れたJosh.aiの動向からもうかがえる。

CEDIA Expo 2026で発表された「ProStudio」は、自然言語によって高度な住宅オートメーションを構築できるAI機能が大きな話題になった。LWL onlineでも、まずはそのニュースを中心に記事化した。

ただし、建築統合型スマートホームという視点でより本質的なのは機器統合基盤「Nimble DevSuite+」の登場だ。

Josh.aiはHome Assistant、Apple HomeKit、Matterを介して多数のスマートデバイスを取り込む一方、CoolAutomationとの連携によってBACnetやModbusを使用する空調設備にも対応する。さらにI/O Boxによって、RS-232、RS-485、IR、リレー、センサー入力までもカバーする。

BACnetやModbusで動く空調設備もあれば、AV機器はRS-232によるシリアル制御がまだ残る場合もあり、家電やガジェットではMatter対応デバイスもある。住宅設備では接点制御が必要になる場合もある。Josh.aiは異なる設備をそれぞれに適した方法で動かしたうえで、Home OS側でひとつの住宅として束ねようとしている。

要するに「マルチプロトコル」という発想なのだ。そして、この「マルチプロトコル」という考え方こそが建築統合型スマートホームの未来像だろう。

Josh.ai「ProStudio」公式発表

Somfy/Control4:Zigbee 3.0をシェードへネイティブ統合

CEDIA Expo 2026では、シェードという領域で、SomfyとControl4が今後のスマートホームを望見できる興味深い動きを示した。

Somfyは、Zigbee 3.0対応のシェードモーターをControl4へネイティブ統合を発表した。これまでは、外部ハブやブリッジが必要だったが、Control4側から直接モーターを検出し、現在位置などの状態を双方向で取得できるようになった。

厳密に言えば、ZigbeeはKNXやBACnetと同じ意味での建築制御プロトコルではないが、シェードという建築に固定される設備が、照明や空調、AVなどと同じHome OSの制御対象に入り、住宅全体のシーンに組み込まれていることは重要である。

Somfy × Control4 Zigbee 3.0統合発表

Dendo:シェードそのものをPoE/IP機器に

Dendo Systemsの「RENKEI Platform」は、少し異なるアプローチを取っている。

同社はシェードモーターそのものをネットワークネイティブな機器として設計し、Ethernet一本で通信と給電を行うPoE構成を採用した。モーターはネットワーク上で検出され、現在位置情報をリアルタイムで取得し、グループ化や設定もソフトウェアから行える。

PoEそのものは建築制御プロトコルではないが、この発想は重要だ。

照明やシェード、カメラ、タッチパネル、センサーなどがIPネットワークへ接続されるようになれば、住宅に張りめぐらされたLANは単なる「インターネット接続設備」ではなくなり、住宅機能そのものを動かす神経網になる。

Dendo Systems RENKEI公式

Dendo SystemsのPoE対応RENKEIシェードモーターとEthernet端子
Dendo Systemsのホームページより。RENKEI Platformは、シェードモーターをEthernet/PoEにつながるネットワークネイティブ設備として設計。住宅LANが設備制御のインフラへ変わる動きを象徴する。

Devialet:ラグジュアリーオーディオをDante/AoIPへ

AV側でも同じ変化が起きている。

ラグジュアリーオーディオブランドとして著名なDevialet。同社がCEDIA Expo 2026で披露した「Phantom Ultimate CI」は、Danteをネイティブにサポートする。

Danteとは、プロオーディオの世界で広く使われてきたAudio over IP技術であり、IPネットワーク上で多数の音声チャンネルを伝送でき、商業施設やスタジオ、大規模AV設備などで利用されているプロトコルだ。

しかし、数十台のスピーカーが住宅内外へ配置されるような大規模邸宅を考えれば、高級オーディオもまた「単体製品」だけではなく、ネットワーク上で管理される住宅設備になっていく。

リビング、ダイニング、キッチン、寝室、プールサイド、アウトドアリビングなど、音楽は部屋ごとに孤立するのではなく、建築のなかを流れるインフラになっていく。

このような姿もまた、建築統合型スマートホームの一部である。

DevialetのPhantomシリーズのラグジュアリーオーディオスピーカー
DevialetのPhantomシリーズ。CEDIA Expo 2026ではCI市場に向け、Dante/Audio over IPに対応する「Phantom Ultimate CI」を披露。高級オーディオも住宅ネットワークへ統合される方向に進む

Devialet Phantom Ultimate Theater公式ページ

Devialet Phantom Ultimate CI発表詳細(Residential Systems)

建築統合型スマートホームを5つのレイヤーで考える

では、建築統合型スマートホームとはどのような構造になっているのだろうか? CEDIA Expo 2026で見えてきた動きを踏まえると、5つのレイヤーに分けると理解しやすい。

建築統合型スマートホームを5つのレイヤーで示した構成図
建築統合型スマートホームを5層で整理した概念図。物理・ネットワーク基盤から設備・プロトコル、統合レイヤー、Home OS、ユーザーインターフェースへと積み上がり、複数の技術をひとつの住宅体験へ束ねる
生成AIを使用して作成

第1層:物理・ネットワークインフラ

これは文字どおり、電源、分電盤、Ethernet、PoE、Wi-Fi、Thread、光ファイバー、専用制御配線など、住宅設備を支える物理・ネットワークインフラである。当たり前だが、一度建物が完成すると簡単には変更できない、住宅の基礎的な神経網である。

ここを軽視したスマートホームは、どれほど高性能なHome OSを入れても長期的には安定しにくい。

第2層:設備・デバイスと、それぞれに適したネイティブ制御方式

照明、シェード、空調、床暖房、換気、給湯、セキュリティ、AV、エネルギー設備、そしてスマートデバイスなどと、それぞれを直接制御する技術から構成されるレイヤーである。

ここにはKNX、BACnet、Modbus、Zigbee、Matter、Dante、メーカー独自のIP APIや制御バスなどが含まれる。

ここに挙げたプロトコルをすべて同じ種類として扱わないことが重要だ。用途も技術階層も異なるが、住宅設備やデバイスがネイティブに使用する制御・通信技術という意味で、この概念モデルではわかりやすいように同じ第2層に整理している。

たとえば、Matter対応機器も、この層に位置する。Matter対応照明やシェード、サーモスタットなどは、Matter Bridgeを経由しなければ動かないわけではなく、Matter Controllerからネイティブに制御できる。

第3層:ゲートウェイ/ドライバー/相互運用

ここは、異なる設備、プロトコル、エコシステムを接続・変換するレイヤーである。

KNXインターフェース、BACnet/Modbusゲートウェイ、AVドライバー、メーカー間インテグレーション、I/Oゲートウェイ、Matter Bridgeなどがここに位置する。

なお、ネイティブMatter機器はMatter Bridgeを必要としない。そのままMatter Fabricへ参加し、Matter Controllerから制御される。Matterを建築統合型スマートホームのなかで正しく位置づけるうえで重要な違いである。

第4層:Home OS

Crestron Home、Control4、SavantOS、Josh.ai、AVA OSなどが担うレイヤーである。異なる設備を統合する役割を担う。

建築統合型スマートホームの中核という位置付けだ。

第5層:人と住宅をつなぐインターフェース

住空間の表に出てくるのがインターフェースである。ここにはタッチパネル、キーパッド、リモコン、スマートフォン、音声、AI、さらにはセンサーなどと連動した完全自動化が含まれる。

ラグジュアリー住宅では、実はこのレイヤーが重要になる。スマートホームで表に出てくるのはこのレイヤーだからだ。デザイン性と操作性を兼ね備えたタッチパネルやキーパッド、あるいはスマートフォンやタブレットのUI。以前LWL onlineで紹介したBasalteをはじめとするラグジュアリーキーパッドはこの層に含まれる。

理想を言えば、センサーがAIと連動した完全自動化だが、しかしそれでも物理スイッチやタッチパネルのUIはなくならない。最もデザイン性が重視されるレイヤーである。

ラグジュアリー住宅の壁面に設置されたBasalteのスマートホーム用キーパッド
スマートホームで住人が直接触れるインターフェースは、機能性だけでなく建築やインテリアとの調和も重要になる。Basalteに代表されるキーパッドは、Home OSと住空間をつなぐ「第5層」の一例だ

CEDIA Expo 2026の結論。ラグジュアリースマートホームはさらにマルチプロトコルになる

CEDIA Expo 2026で起きている「マルチプロトコル」をめぐる動向について、改めて並べてみよう。

「Josh.ai → BACnet/Modbus/Matter」「Somfy/Control4 → Zigbee 3.0」「Dendo → Ethernet/PoE+Direct IP Integration」「Devialet → Dante/Audio over IP」「AVA → KNX」。

住宅設備の高度化が進むほど、それぞれの用途に適した技術が採用され、住宅はさらにマルチプロトコル化していく。

勘違いしてほしくないのだが、このマルチプロトコルとは、規格統一に失敗しているという意味ではない。照明と空調とオーディオと家電では、そもそも要求される機能も、通信の性質も、耐用年数も異なる。同じプロトコルへ無理に押し込む必要はない。

こうした複雑さを住人から隠し、快適な住環境を実現するためにHome OSがある。これこそが建築統合型スマートホームの存在理由だ。現代の住環境をとりまく多種多様で複雑な住宅設備を快適に使いこなす、いわばまさにInvisible Technologyが必要とされる所以である。

建築統合型スマートホームでは、接続そのものは目的ではない。

照明、シェード、空調、AV、セキュリティ、エネルギーといった設備を建築と一体で設計し、10年、20年という時間軸で安定して運用し、それらを最後にはひとつの空間体験へ変換する。

その目的には、体験価値の向上とともに、たとえばサーカディアンライティングに代表されるようなウェルネスへの道筋もある。

住宅オーナーが、KNXやBACnet、Modbus、DALI、DMX、Danteなどを知る必要はまったくない。

朝の美しい光を受け止め、快適な空気環境に包み込まれ、音楽が流れ、シェードが景色と日射を整え、夜になれば住宅全体が静かに眠りへ向かう。

表側に現れるのは、それだけでいい。プロトコルではなく、体験価値こそが重要なのだ。

夜間照明とプールを備えたラグジュアリー住宅の外観イメージ
屋内だけでなく、外構照明、セキュリティ、プール、エネルギー設備まで住宅統合の対象は広がる。Home OSは住宅内外に分散する設備をひとつの体験へまとめる
Image:dotshock /Shutterstock.com

冒頭の話に戻ろう。

AVA OS 3のKNX対応は、日本市場にまだ導入されていないシステムのソフトウェアアップデートにすぎない。しかしJosh.ai、Somfy/Control4、Dendo、Devialetの発表と重ねると、CEDIA Expo 2026が示している方向は明確になる。

スマートホームの未来は、設備ごとに最適な技術を使いながら、その複雑さをHome OSによって美しく隠した住まい。Invisible Technologyであり、Invisible Wellnessである。

建築統合型スマートホームとは、そのための設計思想なのである。

関連記事
CEDIA Expo 2026速報:AIが「家をつくり」、シェードとAVがネットワーク設備へ

  • 取材

    LWL online 編集部

Related articles 関連する記事

  1. home Home
  2. FEATURE
  3. CEDIA Expo 2026で見えた「マルチプロトコル住宅」とHome OSの役割