CEDIA Expo 2026が示すスマートホームの未来。「電力」でスマートハウスと融合へ
取材/LWL online編集部
照明、空調、電動シェード、オーディオ、セキュリティ。これまでスマートホームが統合してきたのは、主に住宅内の機器と、その操作体験だった。しかし、次に統合されようとしているのは、それらを動かす「電力」そのものである。2026年9月に米国デンバーで開催されるCEDIA Expo/CIX 2026では、電源品質、家庭用蓄電池、EV、負荷管理など、住宅のエネルギーマネジメントへの注目が拡大する。操作と体験を担ってきたスマートホームと、発電・蓄電・消費を管理してきたスマートハウスは、いま、ひとつの住宅システムへ近づこうとしている。
CEDIA Expoが「住宅の電力」に注目する意味
CEDIA Expo/CIX 2026は、2026年9月1日から4日まで、米国コロラド州デンバーのColorado Convention Centerで開催される。展示ホールは9月2日から4日、教育プログラムは9月1日から3日まで実施される予定だ。会場には300を超えるブランドが出展し、1万4000人以上の業界関係者が集まると見込まれている。

Image:Liz Albro Photography /Shutterstock.com
従来のCEDIA Expoは、ホームシアター、カスタムインストールオーディオ、映像機器、照明制御、ネットワーク、ホームオートメーションなどを扱う、住宅・建築統合システム分野の主要展示会として発展してきた。
そのCEDIA Expoが、2026年に電力とエネルギーマネジメントを前面に打ち出したことには、大きな意味がある。
「Power Lives @ Home」が問うのは、住宅のどこに電力が存在し、どう管理され、停電や電圧変動、ネットワーク障害、負荷の集中が起きたときに、住宅の体験がどう変わるのかという問題だ。 照明、AV、ネットワーク、電気錠、セキュリティ、電動シェード、EV充電、屋外設備、AIシステムが相互に連携するほど、電力は単なる前提条件ではなく、スマートホーム全体の信頼性を支える基盤となる。
「操作」「制御」「体験」を軸にしてきたスマートホーム
これまでスマートホームは、住宅内の設備や機器をつなぎ、住まい手の操作を簡単にする方向で発展してきた。
照明を一括で消灯する。エアコンを一括で消す。複数の部屋のシェードを一斉に降ろす。
あるいは、映画を見るときに電動シェードを閉じ、照明を暗くし、AV機器を起動する。外出時には電気錠、照明、空調、セキュリティをまとめて外出モードへ切り替える。
建築統合型スマートホームでは、こうした複数設備の動作を「シーン」として設計し、住まい手が機器の存在を意識しなくても、住宅全体が目的に応じて動作する環境をつくってきた。
つまり、これまでのスマートホームが主に統合してきたのは、住宅内の操作、制御、体験だった。
「電力」を管理してきたスマートハウス
一方、日本で一般にスマートハウスと呼ばれてきた住宅では、太陽光発電、家庭用蓄電池、エコキュート、空調、EV充電器などをHEMSで管理し、住宅内のエネルギー消費を把握、制御するものだった。
資源エネルギー庁はHEMSを、家電製品や給湯機器をネットワーク化し、エネルギー消費量の表示と機器制御を行う家庭用エネルギー管理システムと定義している。太陽光発電、蓄電池、EV、HEMSを組み合わせ、電力使用のピークをずらしながら、住宅の省エネルギー化を進める考え方である。
つまり、スマートハウスが主に統合してきたのは、住宅内の発電、蓄電、消費、エネルギー効率だった。
スマートホームとスマートハウスは、いずれも住宅内の設備をネットワーク化する。しかし、これまでは目的も、扱う設備も、設計や施工を担う事業者も異なっていた。
スマートホームはAVインテグレーターやホームオートメーション事業者が担い、スマートハウスは電気設備事業者、太陽光発電・蓄電池メーカー、HEMS事業者が中心となってきた。
両者は、同じ住宅の中に存在しながら、ひとつのシステムとして設計されてこなかったのだ。

生成AIを使用して作成
スマートホームの不具合は、本当に制御システムの問題なのか?
CEDIA Expo 2026が注目するのは、スマートホームの不具合に見える問題の背後に、電源品質や電力供給の問題が潜んでいる可能性に光を当てる点だ。
システムが突然再起動する。ネットワーク機器が不安定になる。AV機器が正常に動作しない。制御機器との通信が途切れる。
こうした症状が発生すると、ホームオートメーションのコントローラーやネットワークが疑われやすい。しかし、実際には電圧変動、瞬断、サージ、回路の負荷集中、バックアップ電源の不足などが原因になっている場合がある。
CEDIA Expo/CIXのSmart Stageでは、「Energy Management: Why Energy is the Real Issue Behind Smart Home System Issues」と題したセッションが予定されている。電源コンディショニング、家庭用蓄電池、インテリジェントな負荷管理を通じて、スマートホームの信頼性を高める方法を扱うという。
ハイエンドなオーディオやホームシアターでは、スピーカー、アンプ、プロセッサー、映像機器だけでなく、それらを支える電源環境も音質や映像品質、システムの安定性を左右する。
住宅全体がネットワーク化されれば、電源の問題はオーディオやホームシアターだけにとどまらない。照明、空調、電気錠、セキュリティ、Wi-Fi、サーバー、電動シェードなど、住宅内のあらゆる機能に影響を及ぼす。
電力設計はもはや電気工事だけの問題ではなく、スマートホームのシステム設計と交差しつつある。
蓄電池は非常用設備から住宅制御の一部へ
家庭用蓄電池は、停電時に電力を供給する非常用設備として普及してきた。しかし、スマートホームと統合されることで、その役割は大きく変わる。
停電が発生したとき、住宅内のすべての設備を同じように動かし続ける必要はない。冷蔵庫、ネットワーク、セキュリティ、最低限の照明、通信機器を優先し、ホームシアター、床暖房、一部の空調、大型家電などの負荷を一時的に停止することができる。
太陽光発電量が多い時間帯には、蓄電池やEVを充電する。電力価格が高い時間帯には、蓄電池から住宅へ電力を供給する。
こうした電力の流れを管理するスマートハウスの機能に加えて、たとえば災害時には、残りの蓄電量に合わせて空調や照明の動作を調整するといった制御が求められる。これには、住まい手の快適性や安全性を管理するスマートホームの機能との連携が不可欠になる。
家庭用蓄電池は両者をつなぐ重要な設備だが、蓄電池だけを導入すれば統合が完成するわけではない。太陽光発電、系統電力、EV、空調、給湯、照明、セキュリティを含め、住宅全体の負荷に優先順位を付ける制御基盤が必要となる。

Image:Aree_S /Shutterstock.com
EVがスマートホームの標準設備になる
CEDIA Expo 2026では、「Charged Up: EV Integration as the Next Smart Home Standard」と題した教育セッションも予定されている。EV充電に加え、車両から電気機器へ給電するV2Lや、住宅の電気系統へ電力を供給するV2Hを、住宅システムへどう統合するかが重要になる。EVは単なる移動手段ではなく、大容量のバッテリーを搭載し、住宅の電力システムと接続されるエネルギー設備でもある。
電力需要が少ない時間帯に充電し、必要なときにはV2Lで屋外設備や機器へ給電する。V2Hに対応した車両と設備であれば、太陽光発電の余剰電力をEVへ蓄え、停電時に住宅のバックアップ電源として活用することも可能になる。
この段階に至ると、スマートホームの役割は単なる「EV充電器をオン・オフするシステム」にはとどまらない。翌日の外出予定、EVの残量、太陽光発電予測、住宅内の負荷、電力料金、停電リスクなどを判断し、住宅と自動車の間で電力を配分する必要がある。
EVが住宅設備へ組み込まれることで、スマートホームの制御対象は、住宅の内部から、住宅とモビリティを含むエネルギーシステムへ広がっていく。
照明やシェードもエネルギー設備になる
照明と電動シェードは建築統合型スマートホームを象徴する設備だ。
これまでは、照明シーン、調光、色温度、自然光の演出、プライバシー、眺望など、快適性やデザインの観点から制御されてきた。しかし、エネルギーマネジメントと統合されれば、照明とシェードは住宅の負荷や熱環境を調整する設備にもなる。
日射が強い時間帯にシェードを閉じれば、室内温度の上昇を抑え、空調負荷を減らせる。太陽光が十分に入る時間帯には、照明を自動的に減光できる。停電時には照明の明るさを抑え、蓄電池の使用時間を延ばすことも可能だ。

(画像提供:Lutron)
CEDIA Expo 2026では、照明の電力・電圧、負荷計算、新たな給電方式、照明器具単位で制御を行うLuminaire Level Lighting Controlsなども教育プログラムで扱われる。
照明やシェードは、空間を演出するデザイン要素であると同時に、住宅の消費電力と温熱環境を制御するエネルギー設備へ変わりつつある。

システムインテグレーターの役割も変わる
「Power Lives @ Home」が示すもうひとつの変化は、スマートホームのシステムインテグレーターの役割拡大である。
従来、インテグレーターが主に扱ってきたのは、AV、照明、ネットワーク、制御、セキュリティなどだった。しかし今後は、太陽光発電、家庭用蓄電池、EV充電、電力分電、負荷制御、空調設備まで視野に入れなければ、住宅全体を安定して動かすことが難しくなる。
もちろん、インテグレーターが電気工事や空調工事を単独で担うわけではない。CEDIA Expoも、システムインテグレーターが、資格を持つ電気工事事業者やHVACの専門家と連携する必要性を示している。
重要なのは、工種ごとに設備を分断するのではなく、住宅全体をひとつのシステムとして設計することだ。建築家、電気設備設計者、空調設備事業者、照明デザイナー、AVインテグレーター、ネットワーク事業者、太陽光・蓄電池事業者が、設計初期から同じ図面と制御方針を共有する必要がある。
スマートホームとスマートハウスの境界が消えていく
これまでスマートホームは「暮らしを便利にするもの」、スマートハウスは「住宅の省エネルギー性能を高めるもの」として語られてきた。
しかし、電力を管理せずに、住宅の快適性や安全性を維持することはできない。反対に、住まい手の行動や住宅内の状態を理解せずに、エネルギーだけを最適化しても、快適な住環境は実現できない。快適性、安全性、ウェルネス、省エネルギー、レジリエンスは、本来、別々の目標ではない。
室温を一定に保つことや夜間の照明を適切に制御することは、住宅内の設備と電力を一体的に管理することで初めて成立する。
「Power Lives @ Home」が問いかけるのは、住宅の電力がどこから来て、どこへ流れ、何を優先して動かすのかという問題である。
住宅の知能と住宅の電力。この二つがひとつの制御基盤へ統合されたとき、スマートホームとスマートハウスの境界は消えていく。
CEDIA Expo 2026が示しているのは、住宅を「機器を操作する場所」から「電力と暮らしを自律的に調整するシステム」へと変える、パラダイムの大きな転換なのである。

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