スマートホームの見分け方。IoTガジェット型と建築統合型は何が違うのか?
取材/LWL online編集部
スマートホームという言葉は広く使われるようになったが、すべてが住宅のインフラとして成立するわけではない。家電操作を楽しむ「IoTガジェット型」と、照明、空調、シェード、AV、セキュリティを住まいの仕組みとして統合する「建築統合型」では、目的も寿命も設計思想も異なる。赤外線依存、クラウド依存、状態確認、設備系プロトコル、図面化、寿命という6つの視点から、2種類のスマートホームの見分け方を整理する。
スマートホームには「IoTガジェット型」と「建築統合型」がある
スマートホームには大きく分けて2つの種類がある。コンシューマー市場で広がる「IoTガジェット型」スマートホームと、ラグジュアリーレジデンスや別荘で求められる「建築統合型」スマートホームである。同じ言葉を使っていても、その中身はまったく異なる。
IoTガジェット型スマートホームは、IoT家電など、IoT機器をスマートフォンやスマートスピーカーで操作する、ガジェットファンのための便利ツールである。スマートリモコン、スマートプラグ、スマートスピーカー、後付けスマートロックなどは、その代表例である。家電操作を楽しむための道具と言えばわかりやすいだろう。しかし、住宅のインフラではない。
一方、建築統合型スマートホームは、照明、シェード、空調、床暖房、セキュリティ、AV、ネットワーク、エネルギーマネジメントなどを、住まいの仕組みとして統合する。CrestronやLutron HomeWorksなどに代表されるHome OS/ホームオートメーション基盤は、住宅そのものの機能を長期的に支えるためのインフラである。
ここを混同してはならない。「ホーム」と付いていても、それが住宅インフラと関係しているとは限らない。
以下、「IoTガジェット型」と「建築統合型」を見分けるためのポイントを整理していく。

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① 赤外線に依存しているか
もっともわかりやすい見分け方は、赤外線に依存しているか否かである。
IoTガジェット型では、ハブやスマートリモコンを通じて、テレビ、エアコン、照明などを赤外線で操作することが多い。既存のリモコン操作を、スマートフォンや音声操作に置き換える仕組みである。工事をせずに導入できるため、家電操作用のガジェットとしてはわかりやすい。
ただし、赤外線は一方通行の命令である。フィードバックが得られない。信号を送ることはできても、機器が本当に動いたか、現在どの状態にあるかを正確に把握できない。たとえば、外出先からエアコンに「電源オン」の信号を送ったとしても、実際に動作しているのか、冷房なのか暖房なのか、フィードバックが取れない。家族が本体リモコンで操作すれば、アプリ上の表示と実際の状態がずれることもある。
つまり、赤外線依存の仕組みは「操作したつもり」にはなれるが、制御しているわけではない。
建築統合型スマートホームでは、住宅の基幹制御を赤外線に委ねることはない。基本的に、KNXやBACnetなどの設備系プロトコルを使用する。赤外線信号が補助的に使われることはあっても、照明、空調、シェード、セキュリティなどの中心に据えるものではないし、据えてはならない。住宅インフラに求められるのは、命令を送ることではなく、確実に動作し、状態を把握できることである。
赤外線に強く依存しているなら、それは建築統合型スマートホームではなく、家電操作用のIoTガジェット型スマートホームだと考えるべきだ。
② クラウドに依存しているか
次いで、わかりやすい見分け方は、クラウド依存か否かである。
IoTガジェット型スマートホームの多くは、サービスを提供するメーカーのクラウドを経由して動作する。スマートフォンやスマートスピーカーから直接機器に信号を送って、動かしているように見えても、実際には大半が外部のクラウドを介して操作している。
クラウドを使うことで、外出先から操作でき、音声アシスタントと連携でき、アプリで設定しやすいといったメリットはある。こうした仕組みは、コンシューマー向けガジェットならではである。
しかし、住宅のインフラとして考えるなら、話は別である。インターネット接続が切れたとき、クラウドに障害が起きたときに操作ができなくなる。さらに、サービスそのものが終了したとき、住まいの機能はどうなるのか。これは単なる使い勝手の問題ではなく、住宅の運用と保守に関わる問題である。
クラウド依存型のリスクについては、これまで当サイトでは警鐘を鳴らしている。特にInsteon事件はクラウド依存型スマートホームのリスクを象徴する出来事である。
一方、建築統合型スマートホームでは、基本的にローカルネットワーク内で完結し、有線接続、設備系プロトコルを重視する。もちろん、遠隔操作やクラウド連携を使う場面はある。だが、住宅の基本動作を外部クラウドに預ける発想はない。
クラウドに強く依存しているか。インターネットが切れても、住宅の基本機能が動くか。サービス終了時にも、住まいのインフラとして維持できるか。ここは、IoTガジェット型と建築統合型を見分ける大きなポイントである。

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③ 状態確認ができるか
2種類のスマートホームを見分けるうえで、もうひとつわかりやすいポイントとしては、「状態確認」ができるか否かである。
単に機器を操作できることと、その機器がいまどういう状態にあるかを正確に把握できることは、同じではない。たとえば、照明に「オン」の指示を出せることと、実際に点灯しているかを確認できることは違う。
家電を操作するのではなく、住宅として制御するのであれば、重要なのは「命令を送ること」ではない。「いま、住宅がどういう状態にあるか」を正確に把握できることである。
IoTガジェット型では、操作はできても、状態確認が十分ではないケースがある。特に赤外線信号を使用している場合はフィードバックが取れないので、正確な状態把握はできない。スマートフォン上ではオンのつもりでも、実際にはオフになっている。あるいは、システム上は操作済みでも、現地では機器が反応していない。こうしたずれが起こりうる。
一方、建築統合型スマートホームでは、照明、空調、シェード、セキュリティ、センサーなどの状態を取得し、それに基づいて制御することを前提に考える。そのため、設備系プロトコルを使用する。住宅のインフラになるので、住まいを「動かす」だけでなく、住まいの「状態を読む」ことが重要になるからだ。
IoTガジェット型は、家電操作の入口を増やす。建築統合型は、住宅全体の状態を把握しながら、空間の動きを設計する。そもそもの発想の根源が異なるのだ。
④ ビルオートメーション系設備用プロトコルを使っているか
状態確認まで考えると、次に重要になるのがプロトコルである。
プロトコルとは、機器同士が情報をやり取りするための共通言語のようなものだ。照明、空調、電動シェード、センサー、AV機器、セキュリティ、エネルギーマネジメントなどを安定して連携させるには、どの機器を、どの方式でつなぐかを設計段階で考える必要がある。
IoTガジェット型では、操作するための信号として、赤外線やBluetooth、Zigbeeなどが使われることが多い。
一方、建築統合型スマートホームでは、KNX、DALI、BACnet、Modbus、IP制御、RS-232C、DMX、接点制御、JEM-A、ECHONET Liteなど、ビルオートメーションで使用される設備系プロトコルが中心になる。照明制御、空調制御、シェード制御、AV制御、セキュリティ、エネルギーマネジメントなどを、住宅設備として安定して扱うための考え方だ。
プロトコルでも見分けることが可能である。

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⑤ 図面に落とし込まれているか
建築家やインテリアデザイナー、インテリアコーディネーターにとって、もっとも明快な見分け方がある。それは、そのスマートホームが図面に現れているかどうかである。
建築統合型スマートホームであれば、照明図、電気図、弱電図、LAN配線図、スイッチ計画、分電盤・弱電盤計画、機器収納、ラック計画、センサー位置、電動シェードの納まり、タッチパネルや壁面スイッチの意匠に関わってくる。要するに、設備設計の一部だからである。
一方、IoTガジェット型スマートホームは、照明図、電気図、弱電図、LAN配線図、スイッチ計画に本質的に関わるものではない。せいぜいハブをどこに置くか、電源をどこから取るかという程度である。
図面に落ちてこないものは、住宅の骨格ではない。完成後に置かれる道具である。道具であれば、交換も移動もできる。だが、住宅のインフラとして扱うのであれば、柱、配線計画、電気計画、照明計画と同じように、最初から設計に含めなければならない。
これは家具にたとえるとわかりやすい。
IoTガジェット型は、後から置ける家具に近い。建築統合型スマートホームは、造作家具や設備設計に近い。既製の家具を造作家具のように壁へ埋め込めば、最初はきれいに見えても、交換、修理、更新、仕様変更のときに、納まりの無理が出てくる。IoTガジェット型を住宅の中核に据えるということは、それに近い。

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⑥ 寿命はどれくらいか
もうひとつ、見落としてはならない見分け方が寿命である。ただし、これはわかりにくい。以前記事化したWi-Fi設計でも記したが、IoTまわりと、住宅では寿命がまったく異なる。
IoTガジェット型はあくまでもガジェットである。スマートフォンが数年単位で買い替えられるように、IoTガジェットも数年単位で更新される。規格も、通信方式も、アプリも、クラウドサービスも、短い周期で変わる。長く見ても、家電と同じく10年程度の寿命を想定しておくべきだろう。
一方、住宅は30年、50年という時間軸で使われる。壁の中の配線、照明回路、スイッチ位置、LAN配線、分電盤、弱電盤、機器収納は、簡単には交換できない。
建築統合型スマートホームはこうした住宅の時間軸を前提に考える。CrestronやLutron HomeWorksなどのHome OS/ホームオートメーション基盤は、住宅設備として長期運用されることを前提に、設計・保守・更新が考えられている。数年で消費されるガジェットとは、そもそもの寿命の設計が異なる。
IoTガジェット型は、数年単位で更新される道具である。建築統合型は、数十年単位で住宅に寄り添うインフラである。この時間軸の違いを見誤ると、住宅の寿命に対して、ガジェットの時間だけが先に尽きてしまう。
「ホーム」と名乗っていても、住宅のインフラとは限らない
IoTガジェット型スマートホームと、建築統合型スマートホームは、どちらも「ホーム」が付いているため、混同されがちだが、そもそも目的が異なる。
IoTガジェット型スマートホームは、手軽に家電の操作を便利にすることが主たる目的である。赤外線中心、クラウド依存、インターネット中心、Wi-Fiなど無線中心となるのは、便利操作が目的だからだ。
一方、建築統合型スマートホームの目的は、住まいにおける体験価値を高めることである。
ビルオートメーション系設備用プロトコル中心、ローカルネットワーク完結、そしてフィールドバスが基本となるのは、照明、空調、シェード、AV、セキュリティ、ネットワーク、エネルギー設備を、空間の動きとして連携させる必要があるからだ。便利さだけにとどまらず、確実性、意匠性、保守性、拡張性、そして住宅の長い寿命に耐える設計が問われる。
暮らしを便利にするガジェットなのか、住宅に組み込むべき設備なのか、見分けるポイントについて記してきた。
建築家やデザイナーから、具体的なIoTガジェット名やコンシューマー系のプロトコル名を挙げて相談されることもある。しかし、LWL onlineが見据えるのは、ガジェットではなく、住宅における体験価値である。だからこそ、当サイトでは住まいのインフラとして設計される「建築統合型スマートホーム」を中心に採りあげていく。

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