【AIスマートホーム/ホームオートメーション特集】別荘とテクノロジー⑤ 別荘のセキュリティ設計とは? 顔認証ドアホン+Home OSで防犯・設備監視・アラートを統合する

 取材/LWL online編集部

別荘のセキュリティ設計は、玄関や窓まわりの防犯だけでは完結しない。家族、ゲスト、管理会社、清掃スタッフ、造園業者、設備業者など、多様な人が出入りする別荘では、動線設計、アクセス権限、入退室ログ、設備監視、アラート、管理会社との対応フローまでを一体で考える必要がある。さらに、プール、サウナ、露天風呂、ワインセラー、アート室などの特殊設備を持つ別荘では、設備の状態監視もまた広義のセキュリティとなる。本稿では、顔認証ドアホン、Home OS、JEM-A、電子錠を組み合わせた建築統合型スマートホームの視点から、別荘にふさわしいセキュリティ設計を考える。

別荘のセキュリティは「防犯」だけでは足りない

前回の記事では、別荘におけるサウナやプール、露天風呂、チラーといった特殊設備を、建築統合型スマートホームの制御・監視対象として捉える重要性について解説した。これらの設備は複雑な住宅インフラであり、施主には「遠隔からの快適な操作(空調や床暖房)」が求められる一方、管理会社には「建物を守るための実務情報(水位、水質、漏水、異常警報など)」を監視するダッシュボードが必要であると述べた。

別荘に設けられたサウナ室。高温設備の安全管理や遠隔監視、アラート設計が求められる特殊設備
サウナは別荘における体験価値を高める設備である一方、高温を扱うため安全管理も重要になる。遠隔操作の可否、状態監視、異常時のアラート設計を慎重に考える必要がある
Image:House 3D /Shutterstock.com
山並みを望む別荘のテラスに設けられたアウトドアバス。露天風呂や給湯設備も、状態監視やアラート設計の対象となる
露天風呂やアウトドアバスは、別荘の体験価値を高める一方で、給湯、排水、凍結、漏水などの管理が求められる特殊設備でもある。別荘のセキュリティ設計では、こうした設備の状態監視や異常時のアラートも重要な要素となる
Image:joojoob27 /Shutterstock.com

このような特殊設備の管理体制を踏まえると、別荘における「アラート」は単なる通知機能ではないことがわかる。異常が起きたとき、それを施主のスマートフォンへただ送ればよいわけではない。設備異常やメンテナンス情報は、管理会社のダッシュボード上で常時把握できるようにし、必要に応じてアラートを発報し、清掃会社、設備業者、プール管理業者、外構業者へつなぐ方が現実的である。一方、漏水、火災、侵入、長時間の停電、ワインセラーやアート室の重大な温湿度逸脱などは、施主にも即時に共有されるべき情報になる。

別荘におけるアラートとは、「何が起きたのか」「誰が知るべきなのか」「誰が対応するのか」「どの程度の緊急度なのか」を整理する運用設計である。

この視点に立つと、別荘のセキュリティは玄関や窓まわりの防犯だけでは語れなくなる。ドア、窓、門扉、シャッター、防犯カメラ、警備会社のセキュリティシステムとの連携はもちろん重要である。だが、別荘という建築を考えたとき、「セキュリティ」という言葉はより広い意味を持つ。家族やゲストが出入りする動線、管理会社や造園業者が使用する裏動線、プールやサウナ、露天風呂、ワインセラー、アート室といった特殊設備の状態監視、停電や通信障害への備え、そして異常時のアラート設計までもが含まれる。

別荘におけるセキュリティとは、「侵入を防ぐ仕組み」だけにとどまらず、建築、設備、人の動き、通信環境、管理体制を統合し、住まいを安全に運用し続けるための総合的な設計なのである。

別荘ではなぜ動線設計が重要になるのか

都市部のマンションや一般住宅と比べて、別荘は動線が複雑になりやすい。

正面玄関やガレージから入る家族の動線、ゲストを迎えるためのパブリックな動線。加えて、庭園・外構、プール、サウナ、露天風呂、設備室などへアクセスする設備業者や外構業者の動線。さらに、複数棟構成の別荘であれば、母屋、ゲスト棟、ガレージ棟、プールサイド、外構エリアなどが、それぞれ異なる性格を持つ。

このとき、全員が同じ入口から入り、同じ範囲にアクセスできる設計では不十分である。家族は正面ゲートから入り、ゲストは滞在エリアに限定して迎え入れる。一方、管理会社はサービス動線から入り、設備室や外構、プールまわりへアクセスし、造園業者は庭園や外構エリアへ、清掃スタッフは室内とリネン庫へ、設備業者は機械室へ入る。

それぞれの動線は、住宅の使い方だけでなく、警備、電気錠の施解錠、照明、空調、シャッター、アラートと結びつく。だからこそ、別荘のスマートホームでは「誰が」「いつ」「どこから入り」「どの範囲まで立ち入れるのか」を設計する必要がある。

夕景の高級別荘外観と外構空間。建築、照明、庭、設備を一体で運用するスマートホームのイメージ
別荘のセキュリティは、建物内部だけでなく、外構、照明、ゲート、庭、設備動線まで含めて考える必要がある。建築全体をどう安全に運用するかが重要になる
Image:House 3D /Shutterstock.com

スマートロックではなく、顔認証ドアホン+Home OS+JEM-A+電子錠という考え方

ここで重要になるのがアクセス制御の設計である。スマートホームでは、玄関まわりのセキュリティとしてスマートロックが語られることが多い。

しかし、建築統合型スマートホーム、とりわけ別荘やラグジュアリー邸宅においては、単体のスマートロックを後付けする発想から出発すべきではない。単体の後付けスマートロックは、クラウドやアプリと連携し、単体で誰もが簡単に使える一方、警備会社のシステム、大型門扉、シャッター、照明、シェード、空調、管理会社の動線、特殊設備のアラートまで含めた建築全体の制御と、必ずしも深く統合されているわけではない。

また、多くのスマートロックはIoTデバイスとして成立している。建築統合型スマートホームは基本的にインターネットに頼らず、ローカルネットワークで完結すべきである。そのため、建築統合型スマートホームにおいて、一般的な後付けIoTスマートロックを別荘の中核的なアクセス制御として据えるには限界がある。

建築統合型スマートホームにおいて推奨したいのは、AKUVOXなどの顔認証ドアホンを認証の入口とし、CrestronなどのHome OSを介して、JEM-A経由で電気錠を制御する構成である。一見すると、最新のIoT機器に比べて原始的に見えるかもしれない。だが、住宅インフラとして考えるなら、リレー、I/O、HA端子、JEM-Aを組み合わせた制御は、確実性が高く、長期的な運用に耐えうる仕組みとなる。

顔認証ドアホンで認証し、AKUVOXのリレー出力から情報をHome OSへ渡す。Home OSが警備、門扉、シャッター、照明、空調を統合し、必要なシーンを呼び出す。電気錠はJEM-A経由で開閉する。「扉が開閉しているか、あるいは施錠・解錠されているか」というリアルタイムなフィードバックをJEM-A経由でHome OS側が受け取る。
建築統合型スマートホームには、確実な信号のやりとりが必須であり、こうした構造が重要なのである。

AKUVOXの顔認証ドアホン。顔認証、ICカード、QRコードなど複数の認証方式に対応するアクセス制御端末
顔認証ドアホンAKUVOX。顔認証、ICカード、QRコードなどを使い分け、Home OSや電子錠、警備システムと連携することで、別荘のアクセス制御の入口となる

顔認証ドアホンはインターホンではなくアクセス制御の入口である

LWL onlineはこれまで何度かAKUVOXについて記事にしてきた。当サイトがAKUVOXを推奨する理由は単に顔認証が使えるからではない。顔認証、ICカード、QRコードなど、複数の認証手段を使い分けられ、リレー出力を複数系統備えているからである。例えば家族は顔認証、管理会社はICカード、スポットの工事業者や造園業者には期限付きのQRコードを発行する。こうした認証手段の使い分けによって、誰が、どの動線から、どの時間帯に入るのかを管理しやすくなる。

さらに、リレー出力が複数系統あれば、単なる電気錠の解錠だけでなく、警備解除、門扉開閉、シャッター制御、Home OS側のシーン呼び出しなどを分けて設計しやすい。たとえば、家族の場合、顔認証が成立すれば、正面ゲートが開き、警備会社の警備が解除され、玄関まわりの照明が灯され、夏は空調、冬は床暖房が入る、といったシーンをつくることができる。一方、管理会社のICカード認証では、サービス動線の電気錠だけを解錠し、必要な警備ブロックのみを解除し、照明が灯る場所も限定される。QRコードで入る一時業者には、指定された時間帯とエリアだけに入ることだけが許可され、例えば建物内部の警備はかかったまま、照明は灯らない状態とする。
リレー出力が複数系統あるので、上記のように、認証方法によって、複数のセキュリティ解除シーンを設定することができる。

このとき顔認証ドアホンは、単なる来客応対のためのインターホンではなく、建築統合型スマートホームにおけるアクセス制御の入口になる。

JEM-AやHA端子は古いが、住宅設備を確実につなぐ

JEM-AやHA端子は新しい規格ではない。しかし、住宅設備の制御においては、古いことが必ずしも弱点になるわけではない。特に、電気錠や空調、床暖房などの設備に対して、オン/オフの制御と状態フィードバックを扱う場合、JEM-AやHA端子はいまでも実務的な選択肢になり得る。重要なのは、設備を「動かす」ことだけではなく、動いた結果を「確認できる」ことである。

電気錠を解錠したつもりでも、実際には開いていなかった。施錠したつもりでも、状態が取れていなかった。こうした状態の不一致は、セキュリティ設計では絶対に避けなければならない。

特に別荘という不在時間の長い住宅を安全に運用するためには、こうした確実な制御と状態取得が重要になる。

入退室ログは、防犯だけでなく運用管理にも役立つ

アクセス制御とあわせて、別荘の運用で極めて重要な役割を果たすのが「ログ管理」である。

誰が、いつ、どの入口から入り、どの警備ブロックを解除したのか。どの時間帯にゲートが開き、どのタイミングで施錠されたのか。こうした記録は、万一のトラブル時に重要な手がかりとなる。

ただし、ログ管理は防犯のためだけにあるわけではない。たとえば、清掃スタッフが指定時間内に入退室したか。造園業者が作業日に外構エリアへ入ったか。設備点検が実施されたか。こうした確認にも、入退室ログは役立つ。

別荘は、所有者が常に現地にいるわけではない。だからこそ、現地で何が行われたのかを感覚ではなく記録で確認できることが重要になる。顔認証ドアホン側の認証ログ、JEM-A経由で取得する電気錠の状態、警備システムのブロック状態、監視カメラ、管理会社用ダッシュボード、そしてHome OS。これらを連携させれば、「誰が認証し、どの設備が動き、最終的にどの状態になったのか」を把握しやすくなる。

スマートホームのセキュリティは、単なる防犯から住宅の運用管理へと広がっていく。

別荘では、防犯と設備監視を分けて考えられない

従来の住宅セキュリティでは、侵入検知や施錠確認が中心だった。だが別荘では、建物に人がいない時間の方が長い。にもかかわらず、設備は動き続けている。

たとえばインフィニティプールには、ろ過装置、循環ポンプ、排水ポンプ、水位計、給水装置などがある。ワインセラーやアート室は温湿度の安定は資産価値に直結する。これら特殊設備の異常は外部からの侵入とは異なる。しかし、別荘を守るという意味では、広い意味で「セキュリティ」の一部である。

たとえば、漏水が起きた、ポンプが停止した、ワインセラーの温度が上昇した、サウナが異常停止した、アート室の湿度が上限から逸脱した、外構照明の一部が消えているなど、こうした状態を放置すれば、建築や設備、資産に被害が及ぶ。
別荘におけるスマートホームのセキュリティは、いわゆる「防犯」だけでなく、設備に対する「監視」まで含めて設計されるべきだ。

セキュリティは、建築と設備と人をつなぐ設計である

別荘は、通常の住宅よりも設備が多く、関係する者も多くなる。家族、ゲスト、管理会社、清掃スタッフ、造園業者、設備業者、警備会社。それぞれが異なる目的で、異なる時間に異なる場所へアクセスする。だからこそ、別荘のセキュリティは、防犯機器の導入だけでは成立しない。

必要なのは、動線設計、ゾーニング設計、アクセス権限設計、入退室ログ、設備監視、アラート設計、管理会社との対応フロー、ネットワークの安定性、停電・通信障害への備え、そしてフェイルセーフである。
ここで出番になるのが、建築統合型スマートホームである。

ドアや窓を守ることは、もちろんセキュリティである。しかし、それだけでは別荘は守れない。プールの水位異常を知ることやワインセラー室の温湿度の逸脱を検知すること、あるいは外出時に全扉・シャッター・警備状態・空調停止を一括確認することも、別荘におけるセキュリティといっていい。

建築統合型スマートホームにおけるセキュリティとは、単なる「侵入を防ぐ技術」ではなく、「住まいを安全に運用し続けるための設計」である。そして別荘という特殊な住宅形式において、その重要性はさらに高まる。別荘は人がいない時間が長く、多くの人が出入りし、特殊な設備を多く持つ。別荘のスマートホームでは、セキュリティ、設備監視、アラート、運用体制、この四つを一体で設計しておく必要があるのだ。

別荘に設けられたワインセラーの室内。温湿度管理が資産価値を守る設備監視の対象となる
ワインセラーは、温湿度の安定が資産価値に直結する特殊設備のひとつ。別荘のセキュリティ設計では、侵入対策だけでなく、こうした設備の状態監視も重要になる
Image:Rodenberg Photography /Shutterstock.com

関連記事
別荘から考える建築統合型スマートホーム──スマートホームのセキュリティは動線設計で決まる
別荘から考える建築統合型スマートホーム―― 別荘のスマートホーム設備監視とは?
別荘から考える建築統合型スマートホーム―― スマートホームのアラート設計とは?

FAQ 別荘のセキュリティとアラート設計

Q. 別荘のセキュリティでは、スマートロックを導入すれば十分ですか?

A. 十分ではありません。HOMMAで使用するスマートロックなど一部を除き、多くのスマートロックは後付けのIoTデバイスです。便利ではありますが、別荘のように動線、警備、門扉、シャッター、管理会社の出入り、設備監視までを統合するラグジュアリー邸宅では、単体デバイスだけでは成立しません。建築統合型スマートホームにおいては、堅牢なローカルネットワークとHome OSを前提に、顔認証ドアホン、JEM-A、電気錠、警備システムを組み合わせて設計する方が現実的です。

Q. なぜ顔認証ドアホン「AKUVOX」を薦めているのでしょうか?

A. 顔認証だけでなく、ICカードやQRコードなど複数の認証方式に対応できるためです。家族、管理会社、一時業者など、利用者ごとに認証方法を分けることで、誰がどの動線から入るのかを整理できます。さらに、複数系統のリレー出力を備えているため、Home OS側のシーン制御とも連携しやすく、電気錠、警備会社のシステム、門扉、シャッター、さらには照明やシェード、空調や床暖房などと連動できます。

Q. 電気錠の制御にJEM-Aを使う意味はありますか?

A. あります。JEM-Aは新しい規格ではありません。むしろ古い規格です。しかし、電気錠の開閉、空調や床暖房のオン/オフ制御、状態フィードバックに使われてきた実績があります。建築統合型スマートホームでは、クラウド依存のIoTよりも、リレー、I/O、HA端子、JEM-Aを組み合わせた確実な制御が有効です。重要なのは、動作させることだけではありません。動作と同時に、設備が実際にどの状態になっているかを、Home OS側で把握できることも必要です。

Q. なぜ設備異常の通知もセキュリティの一部と考えるべきなのでしょうか?

A. 別荘は不在時間が長いにもかかわらず、プール、サウナ、露天風呂、ワインセラー、アート室などの設備は常時稼働し続ける必要があります。漏水、温湿度異常、ポンプ停止、凍結、停電などを放置すれば、建物や資産に大きな被害が生じる可能性もあります。特にワインセラーやアート室の温湿度異常は、資産価値の毀損につながります。そのため、設備監視も広義のセキュリティとして捉えるべきです。

Q. 施主用UIと管理会社用ダッシュボードはなぜ分けるべきですか?

A. 施主に必要なのは、快適な滞在を支え、UXを向上させるためのUIです。一方、管理会社に必要なのは、水位、水質、湯温、ポンプ異常、漏水、凍結、停電履歴、清掃履歴、点検履歴などの実務情報です。必要な人に、必要な情報を、必要な粒度で届けるためには、施主用UIと管理会社用ダッシュボードを分ける必要があります。

関連記事
別荘とテクノロジー① 外構・自然・設備までつなぐスマートウェルネスホームとは
別荘とテクノロジー② サーカディアンライティングが導くスマートウェルネスホーム
別荘とテクノロジー③ 空気と温熱環境が導くスマートウェルネスホーム
別荘とテクノロジー④ サウナ、プール、露天風呂。特殊設備はどう制御する?

夜のプール付き高級別荘外観。防犯だけでなく設備監視やアラート設計まで含めた別荘セキュリティを象徴するイメージ
別荘のセキュリティは、玄関や窓まわりの防犯だけでは完結しない。プール、外構照明、空調、警備、設備監視、アラートまでを一体で考えることが重要になる
Image:dotshock /Shutterstock.com
  • 取材

    LWL online 編集部

Related articles 関連する記事

  1. home Home
  2. FEATURE
  3. 【AIスマートホーム/ホームオートメーション特集】別荘とテクノロジー⑤ 別荘のセキュリティ設計とは? 顔認証ドアホン+Home OSで防犯・設備監視・アラートを統合する