Intelligent Residence Notes③:テレビは「置く」から「壁と一体化」へ

 取材/LWL online編集部

テレビの進化は、画質や音質だけで語りきれなくなっている。LGの有機ELテレビ壁掛け設置サポートキャンペーンをきっかけに、TCLのSQD-Mini LED、REGZAのRGB Mini LEDや純正壁掛けユニットなど、壁掛けにふさわしい大画面テレビが各社から揃い始めた。映像への没入感を高めるのは、画面の中の表現だけではない。配線、スタンド、周辺機器といった視覚的ノイズを消し、テレビを空間と一体化させることも、これからの住まいにおける重要な設計視点となる。

壁掛け設置。それは映像体験を高めるためのデザイン手法

テレビの進化は、これまで主に画質と音質の文脈で語られてきた。より明るく、よりコントラスト高く、より高精細に、より自然な色で、より自然な階調表現で映像を描くこと。あるいは、薄型テレビ単体でどこまで豊かな音場を再現できるか。もちろん、クオリティの向上が視聴体験を大きく左右することは間違いない。

だが、リビングや寝室といった実際の住空間でテレビを楽しむとき、没入感を決める要素はそれだけではない。どれほど高画質なテレビであっても、その周囲に配線、機器類、スタンドが見えていれば、視界の中には常に「映像以外の情報」が入り込む。人は意識していなくても、フレーム、ケーブル、周辺機器、さらに言えば壁面との段差を視覚的なノイズとして認識してしまう。

つまり、映像への没入感とは、画質・音質だけで成立するものではない。空間に置いたとき、どれだけ映像以外の要素を視界から消せるか。この視点から見直すと、テレビの壁掛けは単なる省スペースの設置方法ではなく、映像体験そのものを高めるためのデザイン手法と捉えることができる。

ここで参照したいのは、国内最大級のオーディオ・ビジュアルサイト、PHILE WEBでこの春に展開された議論だ。議論が展開された記事では、LGのGシリーズを採りあげ、インテリアデザイナーの町田瑞穂ドロテア氏が、テレビの没入感を画質や音質だけでなく、空間の中での存在感から捉え直している。テレビは、視聴時には映像体験の中心となり、非視聴時にはリビングや寝室の壁面に残る大きなプロダクトでもある。だからこそ、テレビのマテリアルとしての存在感をどう抑え、映像だけをどう際立たせるかは、インテリアデザインにおいても重要な論点となる。

LGのキャンペーンが後押しする「壁掛け」という選択

こうした流れの中で注目したいのが、LGエレクトロニクス・ジャパンが実施している、有機ELテレビ購入者を対象とした「壁掛け設置サポートキャンペーン」である。

LG有機ELテレビの壁掛け設置サポートキャンペーン
LGエレクトロニクス・ジャパンは、首都圏一部エリア限定で有機ELテレビの壁掛け設置をサポートするキャンペーンを実施

同キャンペーンでは、対象となるLGの有機ELテレビ(首都圏一部エリア限定)を購入した際、専門業者による壁掛け設置費用が最大10万円サポートされる。単にテレビ本体の購入を促すだけでなく、導入ハードルとなりがちな壁掛けの施工費用を負担してでも、より空間に馴染む視聴環境へと誘導している点が興味深い。

これは、LGのテレビ、とりわけGシリーズが以前から打ち出してきた方向性とも重なる。Gシリーズは、壁面に近づけたときの収まりを強く意識したモデルであり、テレビという物体の存在感をできるだけ抑え、壁面に映像が現れるような見え方を目指している。フレームや厚みの主張を抑え、テレビを家具の上に置かれる家電ではなく、壁面を構成する要素として扱う。その思想は建築やインテリアの文脈と非常に相性がよい。

これまでテレビの購入時には、パネル方式、画面サイズ、明るさ、コントラスト、音響性能といったスペックが重視されてきた。しかし今後は、「そのテレビをどの壁に、どの高さで、どのように納めるか」まで含めて考える必要がある。とくにリビングの中心に65V型以上の大型テレビを置く場合、テレビは単なる家電ではなく、空間の印象を大きく左右する建築的な要素になる。

壁掛けはテレビを「巨大な物体」に見せないための手法

大型テレビの存在感は、設置方法によって大きく変わる。たとえば65V型を超える大画面テレビをテレビ台の上に置くと、どうしても「大きな家電が部屋に置かれている」という印象が生まれる。脚部、台座、テレビ台、周辺機器、配線が画面のまわりに重なり、映像そのものよりも先に、物体としてのテレビが視界に入ってしまう。

一方、壁掛けにすると、画面は床面から切り離される。テレビ台の存在が消え、スタンドもなくなる。配線を適切に処理すれば、画面の周囲にある情報量は大きく減る。結果として、テレビは「置かれた物体」ではなく、「壁面に現れる映像」として認識されやすくなる。

これは映画館のスクリーンに近い考え方である。映画館では、スクリーンの周囲にモノが置かれることはない。視界の中から映像以外の情報を徹底して取り除くことで、観客は映像世界に入り込める。家庭のリビングや寝室を映画館のように敢えて暗くする必要はないが、画面のまわりにある視覚的ノイズを整理するだけでも、没入感は大きく変わる。

つまり壁掛けは部屋をすっきりと広く見せるためだけの方法ではない。映像以外のものをどれだけ見せないか。そのための設計手法である。

壁掛けにふさわしい大画面テレビが増えている

2026年のテレビに関するエポックな話題は、壁掛けにふさわしいテレビがLGだけに限られなくなっている点である。大画面化と高画質化を進めながら、空間への収まりを意識したモデルが各社から登場してきた。

たとえばTCLでは、X11LやC8LといったSQD-Mini LED搭載モデルが展開されている。Mini LEDバックライトと量子ドット技術を組み合わせ、高輝度・広色域・高精度なローカルディミングを訴求するモデル群だが、注目したいのは高画質だけではない。X11Lは「より薄く洗練されたボディ」を打ち出し、C8Lもインテリアに溶け込む薄型筐体設計を特徴としている。98型や85型といった超大型サイズでは、テレビ台に載せるより、壁面全体を映像面として構成する発想がより重要になる。

REGZAも壁掛けを考えたいブランドである。RGB Mini LED液晶レグザとして展開されるZX1/ZX1S、ZX2/ZX2Sといったシリーズは、超高画質化と大画面化を進める今期の注目モデルだ。さらにREGZAでは、純正の超薄型壁掛け金具として、「レグザすっきり壁掛けユニット」も展開している。FPT-WA20は116V型から65V型、FPT-WA18は85V型から55V型の取り付けに対応するオプションとして案内している。壁と一体化するような超薄型の壁掛け金具であり、85V型を超えるような超大型テレビを壁面にすっきり納めるための選択肢が整いつつある。

メーカーが純正の超薄型壁掛けユニットを用意する意味は大きい。従来、テレビの壁掛けは「こだわる人が施工業者に個別相談して行うもの」という印象が強かった。しかし、テレビ本体と合わせて壁掛け金具や設置オプションが明示されることで、壁掛けは特殊な施工ではなく、購入時に検討すべき標準的な選択肢になりつつある。REGZAのメッセージを受け止めたい。

非視聴時のテレビをどう扱うか

テレビの壁掛けを考えるうえで、もうひとつ重要なのが、視聴していない時間の見え方である。テレビは、映像を見ている時間よりも、電源を切っている時間のほうが長い。つまり大画面テレビは、日常の多くの時間、リビングや寝室の壁面に「黒い長方形」として存在することになる。

この黒い面をどう扱うかは、インテリアデザインにおいて非常に大きな問題だ。画面サイズが大きくなればなるほど、電源オフ時の存在感も強くなる。テレビ台の上に置かれていれば、その下には家具があり、周辺には機器や配線が集まる。すると、非視聴時にもテレビまわりだけが生活感の強い領域として残ってしまう。

壁掛けはこの問題を軽減する。壁面に近づけ、配線を隠し、周辺機器を収納に納めることで、テレビまわりの情報量を減らせる。

さらに、テレビ各社が採用している技術、アート表示やアンビエント表示を活用すれば、テレビは単なる黒い面ではなく、空間の表情をつくるキャンバスとして扱うことができる。 特にラグジュアリーな住空間において重要である。ラグジュアリー邸宅やホテルライクな空間では、設備や機器が過剰に主張することは好まれない。求められるのは、必要なときには圧倒的な映像体験を生み出し、使わない時間には空間の中に静かに馴染むこと。壁掛けは、その両立を実現するためのもっとも現実的な方法のひとつである。

壁掛けで重要なのは壁そのものの設計

テレビの壁掛けはテレビを購入してから思いつきで行うよりも、本来は空間設計の段階から考えておくべきである。重要なのは、テレビ本体を壁に固定できるかどうかだけではない。壁の下地、耐荷重、電源、アンテナ線、LAN、HDMIケーブル、周辺機器の収納、サウンドバーやスピーカーとの関係まで含めて検討する必要がある。

とくに新築やリノベーションでは、「どの壁を映像面にするか」を早い段階で決めておくべきだ。ソファの位置、視聴距離、画面サイズ、窓からの光、照明の映り込み、音響機器の配置などを総合的に考えなければ、せっかく壁掛けにしても、見やすさや美しさが損なわれる可能性がある。

テレビの高さも重要である。壁の中央に掛ければよいわけではない。ソファに座ったときの目線、寝室であればベッドからの視線、長時間視聴したときの首や肩への負担まで考えたい。壁掛けは見た目を整えるための手法であると同時に、視聴姿勢や快適性にも関わる設計行為なのである。

また、配線計画も欠かせない。壁掛けにしても、電源ケーブルやHDMIケーブルが垂れ下がっていれば、せっかくの効果は半減する。レコーダー、ゲーム機、ネットワーク機器、AVアンプなどをどこに納めるか。将来の機器入れ替えに対応できる配管を用意するか。こうした点まで考えてこそ、壁掛けは完成する。

テレビは空間と一緒に選ぶ時代へ

LGのキャンペーンは、テレビの壁掛けを改めて考えるよいきっかけである。しかしこれはテレビ全体にいえるだろう。今年は壁掛けにふさわしいデザインを施した、大画面・高画質テレビが各社から揃い始めている。さらにREGZAのように、超薄型壁掛けユニットを展開するメーカーも出てきた。この動きは画期的であり、今後のテレビと空間の関係を考えるうえで、ターニングポイントになるかもしれない。

こうした状況を俯瞰すると、テレビ選びの基準は確実に変わりつつある。高画質は当然である。そのテレビを空間のどこに設置するのか。画面の周囲にあるノイズをどれだけ消せるのか。非視聴時に、リビングや寝室の中でどのように見えるのか。そこまで含めて考えることが、これからのテレビ選びには欠かせない。

没入感を生み出すのは、画面の中の映像だけではない。画面の外側にあるものをどれだけ整理し、映像以外の情報を視界から消せるか。その問いに対する有効な答えのひとつが、テレビの壁掛けである。

テレビはいまや単なる家電ではない。大画面化が進んだことで、リビングや寝室の印象を大きく左右する空間要素、建築のエレメントになった。画質、音質、そして空間との調和。そのすべてを高める設置方法として、壁掛けは改めて検討すべき価値を持っている。

TCLの大画面テレビを壁掛け設置した木質インテリアのリビング空間
TCLの大画面テレビC8Lの壁掛け設置イメージ
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