【AIスマートホーム/ホームオートメーション特集】別荘とテクノロジー④ サウナ、プール、露天風呂。特殊設備はどう制御する?
取材/LWL online編集部
別荘のサウナ、プール、露天風呂は、どのように制御すべきか。チラー、ろ過設備、給排水ポンプ、凍結対策、管理会社ダッシュボードまで含め、別荘に必要な建築統合型スマートホームの考え方を解説する。
別荘の特殊設備はなぜ建築統合型スマートホームの制御対象になるのか
別荘は都市住宅とは異なる設備条件を持つ住宅である。一般的な住宅であれば、照明、ウィンドウトリートメント、空調、給湯、電気錠、セキュリティカメラ、AVなどがスマートホームの中心になる。だが、別荘ではそれだけでは足りない。庭、アプローチ、外構照明、ゲート、プール、サウナ、露天風呂、水風呂、チラー、給排水ポンプ、植栽管理、設備室、管理会社の巡回まで含めて、住まい全体を考える必要がある。
特に近年、ラグジュアリー邸宅としての別荘には、サウナ、プール、露天風呂、チラーなど、心身を整えるための特殊設備が数多く導入されるようになってきた。
別荘における特殊設備は滞在時の体験価値を高める一方で、常時監視や定期的な管理を必要とする住宅設備でもある。
所有者がいない時間にも、外構設備は風雨にさらされる。プールは水質の変化、露天風呂や給湯設備は凍結や漏水のリスクを抱える。サウナやチラーも、導入しただけでは長い間安心して使い続けられるわけではない。多くの別荘では、管理会社が定期的に巡回し、ガーデンの手入れや設備の確認を行い、必要に応じて清掃業者、外構業者、プール管理業者、設備業者と連携して対応する。
つまり、別荘に導入するスマートホームは、施主が別荘に出かける前にスマートフォンで設備や家電のスイッチを予め入れるだけの仕組みではない。建築、外構、特殊設備をつなぎ、管理会社にとって重要な監視機能を担うことができる、住まいを安全に維持するための統合制御システムである。
この視点に立つと、サウナ、プール、露天風呂といった特殊設備も、単なるラグジュアリー設備ではなく、建築統合型スマートホームの重要な制御対象として見えてくる。
建築統合型スマートホームとは、照明、空調、ウィンドウトリートメント、AV、セキュリティ、外構、特殊設備などを、建築設計や設備設計の段階から一体で計画し、Home OS的な上位制御システムによって運用する住まいのことである。
別荘では、この建築統合型スマートホームが都市住宅以上に重要になる。
サウナ制御で重要なのは、遠隔ONではなく状態確認・異常検知・OFF制御
別荘のサウナ制御でまず重視すべきなのは、稼働状態の確認、異常検知、そして必要に応じたOFF制御である。
サウナは高温を扱う設備であり、遠隔でON/OFFの操作ができればよいというわけではない。基本的には、遠隔からの起動を安易に前提とするのではなく、稼働状態の確認、異常検知、必要に応じた遠隔OFFを中心に考えるべきだ。
たとえば、サウナヒーターの運転状態、異常信号、温度、ドア開閉、換気状態、長時間運転の有無。こうした情報を統合制御システムに取り込むことができれば、管理会社がサウナの状態を把握しやすくなる。
実際の現場では、サウナヒーターが高度な通信インターフェースを備えているとは限らない。その場合、運転信号や異常信号をリレー接点で取り込み、統合制御システム側で状態表示やアラートに変換することが必要となる。換気扇、照明、ドアセンサー、温度センサーも同様に、リレーやI/O、あるいは各種プロトコルを介して統合することが考えられる。
Crestronのような上位の統合制御システムを使えば、サウナの状態確認だけでなく、照明、外気浴スペースの光のシーン、BGMとなるオーディオ、動線上の外構照明などまで含めて、ひとつのUIにまとめることができる。あるいは、Lutron HomeWorksのような照明制御システムを組み合わせれば、サウナ後の外気浴スペースに必要な足元灯や間接照明、プールサイドへの誘導灯を、過剰な明るさではなく、身体が休息へ向かう光として設計できる。
筆者は以前、度々サウナの制御を依頼されたことがある。サウナヒーター自体がホームオートメーションに対応していることはほとんどなかった。メーカーや施工側と確認したうえで、外部制御用の接点や状態出力を利用し、リレーとI/Oを介して統合制御システムに取り込むケースが一般的だった。
サウナ周辺の環境については、照明とウィンドウトリートメントなど、光まわりはLutronを介して制御し、その他のセンサーはCrestronの純正センサーを中心に用いることが多かった。また、制御内容は前述のとおりだが、異常検知・安全監視には細心の注意を払い、施主、建築家、施工業者、設備業者と綿密な打ち合わせを重ねたことを記憶している。
サウナは、熱、水、換気、照明、動線、安全監視を統合することで、建築統合型スマートホームの中に位置づけるべき設備なのである。

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チラー制御は「到着時刻」から逆算する。水風呂を整える時間設計
水風呂やチラーを備えた別荘では、到着時刻から逆算した制御が重要になる。
サウナと組み合わせる設備が水風呂であり、その水温を下げるためにチラーの制御が必要になる。注意したいのは、水はすぐには冷えないということだ。水量が大きい場合、冷却には相応の時間がかかる。水量や外気温、目標温度、設備自体の能力によって異なるが、最適な水温に近づけるには一定の時間が必要になる。したがって、チラー制御は到着時刻から逆算し、何時間前に運転を開始すればよいかを考えなくてはならない。
たとえば、オーナーが週末に別荘へ向かい、到着後すぐにサウナと水風呂を使いたいとする。その場合、到着してからチラーを動かすのでは遅い。到着予定時刻を踏まえ、たとえば都心のラグジュアリーマンションの一室を出発するタイミングで、あらかじめ準備を始める必要がある。
システムインテグレーターは、チラーの制御を、スマートフォンやタッチパネルのコントロール画面の中に「別荘到着」や「サウナ準備」といったシーンとして組み込んでおくことが多い。
施主にとって必要なのは、チラーの細かな運転情報ではない。到着時に水風呂が使える状態になっているか否かである。こうした機能を施主向けUIの中にわかりやすいシーンとして設けておけば、体験価値は大きく向上する。
一方、管理会社にとって必要なのは、現在水温、目標水温、運転状態、異常警報、到達見込み、消費電力、点検履歴である。こうした情報を管理会社がひと目で把握できるダッシュボードも必要となる。
チラー本体がBACnetやModbus、あるいはメーカー独自の通信仕様に対応していれば、統合制御システムへ比較的多くの情報を取り込める可能性がある。一方で、機種によっては、運転許可、運転状態、異常警報だけをリレー接点で取り込む場合もあるだろう。場合によっては、メーカーや施工側と確認しながら、状態出力や外部制御用の接点を用意する必要も出てくる。
重要なのは、施主と管理会社が必要とする操作と情報を、適切な粒度で可視化できることだ。

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プールは水景であると同時に常時監視が必要な機械設備
別荘におけるプールは、美しい水景である。水面は光を受け、風を映し、建築と外構に静かな表情を与える。インフィニティプールのように、景色と水面が連続する設計では、プールは建築と自然をつなぐ重要な要素になる。一方、建築統合型スマートホームの視点から見ると、プールは水景であると同時に、常時監視されるべき機械設備でもある。
プールには、ろ過設備、循環ポンプ、水位管理、塩素濃度管理、給排水、水質管理、清掃、漏水対策など、制御対象となる点が非常に多く存在する。水位異常が起きれば設備破損につながる可能性があり、ろ過やポンプが停止すれば水質は悪化し、塩素濃度やpHの管理が不十分であれば、安心して利用できない。
プールの制御では、上位の統合制御システムと現場設備をどう接続するのかが重要になる。
水位計、水温計、ろ過ポンプ、循環ポンプ、排水ポンプ、給水バルブ、水質管理装置、プール照明、電動カバー、漏水センサー。これらは、それぞれ異なる制御方式を持っている場合が多い。一部はBACnetやModbusなどの設備系プロトコルで連携できるかもしれない。ただし、大半はリレー制御や接点入力になるはずだ。
プールサイド照明はHomeWorksなどの照明制御に組み込み、プール全体の状態表示はCrestronなどの上位統合制御システムのUIに集約する、という構成が妥当だろう。
施主のUIに必要なのは、プールまわりの照明シーンや、パーティで使用する際のBGM、ナイトプールのシーン設定などである。一方、管理会社に必要なのは、水位、水質、ポンプ状態、塩素濃度、異常履歴、清掃履歴である。
つまり、プール制御では「使う人のためのUI」と「見守る人のためのダッシュボード」を分ける必要があるのだ。施主用UIと管理会社用ダッシュボードをそれぞれ分けて設計できることが、別荘におけるスマートホームの重要な条件になる。

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露天風呂とスパは湯温・水位・凍結・漏水を監視する
露天風呂やスパは、湯温だけでなく、水位、給湯状態、循環ポンプ、凍結、漏水まで監視すべき特殊設備である。
露天風呂やスパも、別荘ならではの特殊設備である。湯に浸かりながら森を見る。あるいは、湯に浸かりながら海風を感じる。そうした体験は別荘の大きな魅力になる。しかし、露天風呂は屋外にあるため、自然環境の影響を直接受ける。冬季には配管や水栓の凍結が課題になる。落ち葉や虫、風雨も無視できない。湯を張る、温度を保つ、排水する、清掃するという一連の運用が常に伴う。また、露天風呂は安全面でも注意が必要だ。凍結や漏水を放置すれば、設備だけでなく建物側にも影響が及ぶ。
そのため、プール同様、露天風呂やスパにも状態監視とアラート設計が求められる。
監視すべき項目としては、湯温、水位、循環ポンプ、給湯状態、排水状態、凍結警報、漏水、清掃後の復帰状態などが考えられる。給湯器や空調機器は、対応機器であればBACnet、Modbus、ECHONET Lite、メーカー独自ゲートウェイなどを介して状態取得や制御を行うことができる。機種によってはJEM-Aやリレー接点を使い、ON/OFFや一部状態信号を取り込む場合もある。
重要なのは、どの方式を使うかではなく、必要な情報をどの粒度で取得し、誰に見せるかである。ポンプやバルブは、リレー制御で十分な場合もある。漏水センサーや凍結警報も、接点入力で統合制御システムに取り込めることが多い。こうした信号を上位の統合制御システムへ集約することで、管理会社は設備状態を遠隔から確認しやすくなる。
また、露天風呂の体験価値を左右するのは湯温だけではない。足元の照明、植栽の陰影、外気温、湯気、夜の暗さ、視線の抜け。こうした要素をひとつのシーンとして統合できるかどうかが、別荘のスパ空間の質を左右する。
露天風呂でも、サウナやプール同様、Lutron HomeWorksのような照明制御が重要になる。夜の露天風呂に必要なのは、明るい照明ではなく、足元の安全をしっかりと確保しながらも、闇を壊さない光である。外構照明、間接照明、植栽照明、動線照明を統合することで、露天風呂は単なる設備ではなく、建築と外構に組み込まれたシーンになる。

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施主用UIと管理会社用ダッシュボードはなぜ分けるべきか
別荘のスマートホームでは、施主用UIと管理会社用ダッシュボードを分けて考えておく必要がある。
施主にとっては、細かな設備データは必ずしも必要ない。細かなデータを要望される方もいらっしゃるが、基本的には別荘で過ごす時間の価値、体験の価値が上がればよい。施主用UIは滞在体験を邪魔しない、わかりやすく美しいものであるべきだ。Lutronのラグジュアリーキーパッドなど、スイッチ類を含めて、体験価値を高めるためのラグジュアリーなUIを用意することも重要である。
施主に提示すべきなのは、滞在者に必要な情報である。たとえば「別荘到着」「サウナ準備」「外気浴」「ナイトプール」「露天風呂」「ゲストウェルカム」といったシーンをわかりやすく呼び出せること。サウナや水風呂、プール、露天風呂が利用可能かどうかを、過不足なく把握できること。これで十分な場合も多い。
むしろ、顔認証ドアホンやセンサー類を利用して、わざわざ操作しなくても、住まいが知性を宿したかのように振る舞うシステムを構築すべきだろう。
一方で、管理会社にとって必要な情報は全く異なる。
水温、湯温、水位、水質、pH、塩素濃度、ポンプの稼働状態、ろ過設備の異常、チラーの運転状態、給湯器の状態、漏水、凍結、清掃履歴、点検履歴、次回滞在予定、到着前準備の進捗、エネルギー使用量。これらは、現場を守るための情報である。管理会社用ダッシュボードでは、こうした情報がKNX、BACnet、Modbus、リレー、接点入力などを通じて収集され、画面に反映される。
この二層構造を設計できるかどうかが、別荘のスマートホームにおいて大きな差になり、システムインテグレーターの力量にも関わってくる。
同じ設備であっても、施主に必要なものと、管理会社が扱う情報は違う。ラグジュアリー邸宅のスマートホームに必要なのは、全情報を施主に見せることではない。必要な人に、必要な情報を、必要な粒度で届けることである。

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別荘の特殊設備は建築統合型スマートホームでこそ生きる
サウナ、プール、露天風呂は、別荘におけるラグジュアリーの象徴である。
しかし、それらは単なる贅沢設備ではない。高温、水、給湯、排水、換気、外気、照明、ポンプ、チラー、管理会社、設備業者まで関わる、複雑な住宅設備であり、常時監視と適切な運用を必要とする制御対象である。特殊設備は建築統合型スマートホームと切り離して考えるべきではない。
設計の初期段階から、Home OS/統合制御を前提に、建築家、設備設計者、外構設計者、システムインテグレーター、管理会社が連携して計画すべき領域である。
別荘におけるテクノロジーは、施主に細かな操作を強いるためのものではない。むしろ、その逆である。到着した瞬間から空気が整い、水温が整い、光が整い、庭が整い、サウナや露天風呂が安心して使える状態になっている。その裏側で、管理会社のダッシュボードには設備状態が表示され、異常があれば通知され、履歴が残り、必要な人だけが必要な範囲で介入できる。そうした「見えない運用」を支えることこそ、別荘における建築統合型スマートホームの役割である。
施主に見せるべきものと、管理会社が把握すべきものは異なる。
施主には、滞在体験を損なわない美しいUIが必要である。管理会社には、水位、水質、湯温、チラーの運転状態、ポンプ異常、漏水、凍結、清掃履歴、点検履歴を確認できる実務的なダッシュボードが必要である。この二層構造を設計できるかどうかが、別荘のスマートホームを単なる遠隔操作から、住宅全体の運用システムへと引き上げる。
別荘の特殊設備は単独の設備ではなく、建築、外構、設備、制御、管理が一体となって初めて成立する、ラグジュアリー邸宅の住宅インフラである。そして、そのインフラを裏側で支えるのが建築統合型スマートホームである。
別荘におけるテクノロジーは、目立つ必要はない。むしろ、目立たずに機能し続けることで、滞在者に安心と快適をもたらす。サウナ、プール、露天風呂が美しい体験として成立するためには、その背後に、精密な制御と堅実な運用設計が必要なのだ。

AIを使用して作成
FAQ 別荘の特殊設備と建築統合型スマートホーム
Q. 別荘における建築統合型スマートホームとは何ですか?
A. 別荘における建築統合型スマートホームとは、照明、空調、ウィンドウトリートメント、AV、セキュリティに加え、サウナ、プール、露天風呂、チラー、給排水ポンプ、外構照明、管理会社ダッシュボードまでを、住まい全体の制御対象として統合する仕組みです。単なる遠隔操作ではなく、建築、外構、設備、管理を一体で運用する点に特徴があります。
Q. 別荘のサウナは遠隔でONにできるようにすべきですか?
A. サウナは高温を扱う設備であるため、遠隔ONは基本的には避けるべきです。遠隔起動よりも、稼働状態の確認、異常検知、必要に応じた遠隔OFF、安全監視を重視する方が現実的です。
Q. チラー制御で重要なことは何ですか?
A. チラー制御で重要なのは、単純なON/OFFではなく、到着時刻から逆算した時間制御です。水を冷やすには時間がかかるため、現在水温、目標水温、外気温、設備能力、到着予定時刻を踏まえて、あらかじめ準備を始める必要があります。管理会社が水温や運転状態を確認できるダッシュボードも重要です。
Q. プールや露天風呂にもスマートホーム制御は必要ですか?
A. 必要です。プールには水位、水質、ろ過、循環ポンプ、塩素濃度、漏水などの管理項目があり、露天風呂には湯温、水位、給湯、排水、循環ポンプ、凍結、漏水などの監視項目があります。別荘では不在時間が長いため、これらを遠隔から確認し、管理会社が対応できる仕組みが重要です。
Q. 施主用UIと管理会社用ダッシュボードはなぜ分けるべきなのでしょうか?
A. 施主が必要とするのは、別荘到着、サウナ準備、ナイトプール、露天風呂などのシーン操作や、設備が利用可能かどうかのシンプルな確認です。一方、管理会社には、水位、水質、湯温、チラー運転状態、ポンプ異常、漏水、凍結、清掃履歴、点検履歴などの実務情報が必要です。必要な人に必要な情報を適切な粒度で届けるため、UIとダッシュボードは分けて設計すべきです。

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